真剣で可能性の獣に恋しなさい!(凍結中)   作:つばめ勘九郎

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 この作品を投稿して初めて前書きを書かせて頂いてます。予想以上に多くの方がこの作品を読んでくださっているとつい最近知り感無量です。
 さて、今回は箸休めみたいな回です。タイトルで色々察する方もいると思いますが、そういうことです。では


第九話 二人はメイド

 

 アル・シュバルツことバンシィ・ノルンは戦慄を覚えた。

 

「これは....!?」

 

 何故、今バンシィはこんな驚いた声を出しているのか。事の発端は数分前のことだ。

 

 

 ーーーーーーーーーー

 

 

 

 村人達と九鬼紋白、ヒュームにクラウディオを含めた全員で死者を送る宴会を行った翌日の朝。九鬼は村の復興のために尽力する事を村長と厚く約束を交わし、村長と村の大人の代表者数名で今後の村の方針を九鬼の復興担当と支部建築担当とで話し合いをした。

 

 そしてバンシィは紋白と同行しするため村を出る事を村人全員に話し、別れを惜しむ声があがりつつも最後は感謝の言葉をもらって快く送り出してくれた。紋白、ヒューム、クラウディオについて行きバンシィは九鬼家専用プライベートジェット機に乗り込むとあっという間に日本の川神に九鬼家本社ビルに着いたのだった。

 

 なんとも言えない圧巻の巨大ビル。外も綺麗に整理され、雑草ひとつない広場が広がっていた。ヘリポートからビルの中に入ってみれば床一面に真っ赤な絨毯、高級そうな装飾品に数多の扉。それだけで九鬼の財力が如何程なのかよくわかる。

 

 そしてクラウディオに招かれて入った部屋で()()()起きた。

 

 クラウディオから言われていた仮面選びを最初にすることになり、数点用意された中の一つをクラウディオは微笑みながらバンシィに差し出してきて、今に至る。

 

「いかがですか、バンシィ・ノルン?」

 

「いや...これは〜...」

 

「うむ。なんというか、通常の三倍の速度で移動しそうな仮面だな...」

 

 紋白と同様の感想を持ったバンシィ・ノルン。

 

 クラウディオが数ある仮面の中でバンシィに手渡したのは、目元を赤いフィルターのようなもので覆い、白を基調としたベネチアンマスクのような仮面だった。

 

「とある芸術家が国の依頼でプロパガンダ目的のために制作し、それをモチーフにした物ですが。お気に召しませんか?」

 

「できれば違う物で頼みます。これは色々危ないかと...」

 

 仮面をクラウディオに返却するバンシィ。

 

「困りましたね。これ以外で奇抜な物となるとあまり目を引くものはありませんが」

 

「わざわざ気を(てら)う必要はないだろう。まったく...」

 

「フハハ!クラの冗談は相変わらずパンチが効いてるな!」

 

 呆れたように口角を上げるヒュームに、快活な笑い声をあげる紋白。

 

 わりとクラウディオは真剣(マジ)だった気もするがバンシィは触れないでおこうと密かに思った。

 

「ではこの中から一つお気に召した物をお選びください」

 

「わかりました」

 

 そう言ってバンシィは机に広げられた仮面達を見渡した。

 

 さりげなくクラウディオがさっきの仮面を机に並べたが気にしない。気にしたら負けだ。

 

 そんな事を思いつつも机に置かれた仮面達を物色するバンシィ。

 

 正直どれも彼の琴線に触れるものはなかった。だがここで選ばないという選択をすれば間違いなく「赤子にそんな贅沢をする権利はない」とヒュームの蹴りが飛んでくるな違いない。ならいっそなこと適当に選んでしまおうとバンシィが手を伸ばしかけたその時。

 

 バシィーッン!

 

 勢いよくこの部屋の扉を開く音が響いた。

 

 その犯人は白衣を着たボサボサ頭で眼鏡をかけた男だった。男は部屋の中に入ってきて早々、バンシィに駆け寄りその手を強引に握った。

 

「君がバンシィ・ノルン君だね?!」

 

「あ、ああ...」

 

「教えてほしい!あの盾は一体どうやって作ったのかね?」

 

 盾?ああ、あの盾か。

 

「君が戦っている映像を見させてもらった。盾がひとりでに動いていたのはどういう原理なのかな?電力?いや、あれはそういう類のものじゃないか。あの光の壁もその理由と繋がっているんじゃないかね?それに君の腕と足もそうだ。仕組みは?素材は一体何を使っているのかね?それと...」

 

「こらこら。落ち着きなさい、津軽海経(つがるうみのり)

 

「紋様の前ではしゃぎすぎだ」

 

「あ!これはこれは紋白様、それにヒュームさんにクラウディオさんも。皆さんいらっしゃったんですね」

 

「フハハ!相変わらずのようだな津軽!」

 

 津軽海経(つがるうみのり)と呼ばれた男の怒涛の質問ラッシュにたじろいでいたバンシィだったがようやくそれに解放され、いきなり握られた手も離してくれた。

 

「バンシィよ、この男は津軽海経。九鬼で働く技術者の一人でとある企画を担当する総責任者だ!」

  

「取り乱して申し訳ない。紋白様がご紹介してくださった通り、私は津軽海経。よろしく、バンシィ君」

 

「あ、ああ。よろしく...」

 

 改めて手を握り交わす二人。

 

 一見大人しそうに見える津軽だが、さっきの様子から察するになかなか濃いタイプの人間なのだろうとバンシィは理解した。

 

「それで津軽よ、バンシィに一体どういう要件なのだ?」

 

「はい。紋白様、私に彼の盾を研究させていただきたいのです」

 

 バンシィはあの盾をこのビルに持ってきていた。突然自分の意思に呼応するように現れて、意のままに操ることができてしまった大楯。あの大楯にはバンシィの義手義足と同様に気が練り込まれていた。記憶には無いがあれも自分が作った物なのだろうとなんとなく直感したのだ。だからこそバンシィはあの大楯をこの地に持ってきた。それに、()()()()()()()()()気がしたのだ。

 

「一つ、いいか?津軽海経」

 

「何かな、バンシィ君」

 

「あなたはあの盾を研究してどうしたい?」

 

「それは...」

 

 津軽は考え込んだ。もし兵器開発のためだとか、営利目的のためだとか、僅かでもそんな雰囲気を津軽から感じた時は九鬼から離れようと決め、津軽の言葉を真剣な眼差しで待つバンシィ。

 

「申し訳ない。考えていなかった」

 

「...はぁ?」

 

 津軽の予想外な言葉にバンシィは拍子抜けした。

 

「いや〜、これは私の悪い癖だ。研究をするっていうならその後どうするか決めておくべきだったね。あの盾を見た時に感じた衝撃があまりにも鮮烈だったからつい興奮して先走ってしまった。あっはは」

 

 お恥ずかしい限りだ、と津軽はボサボサの頭を掻きながら若干照れた様子でそう言った。

 

 彼から感じる感情に嘘をついているようには見えない。津軽が本気でそう言っているのだとバンシィは驚きと呆れで言葉が出てこなかった。

 

「驚いたか?あやつはそういうやつなのだ。邪な心など一切なく、研究熱心というより研究一途な九鬼が誇る天才なのだ」

 

「天才だなんて私にはもったいないお言葉ですよ。それに、単に臆病なだけです」

 

 最初こそ彼をただの変わり者だと一括りに印象付けたが、バンシィはこの男もまた信用に値する優秀な九鬼の人材なのだと理解した。すると紋白がバンシィに近寄りその小さな体で見上げてきた。

 

「お前が心配しているようなことは九鬼は絶対にしない。それだけは補償するぞ。無理強いはしないし、お前が望むままにすればいい。だがどうだ?あの盾を研究してみるのは?何か記憶を取り戻すヒントがあるかもしれないぞ」

 

 バンシィは暫く考え紋白と津軽を見渡した。そして彼らを信じるてみようと決意し「わかった」と告げた。

 

「ということだ津軽!念を押すが下手にあの盾をバラしたり悪用などしないように!」

 

「ありがとうございます!もちろんそのつもりです。バンシィ君ありがとう。よかったら君も研究に立ち会ってみないかい?私としては君からも是非話を聞きたいんだ」

 

「俺で良ければ」

 

「では決まりだな!」

 

「...ところで皆さんはここで何をしているのですか?」

 

 津軽の質問に対しクラウディオが巻頭から今に至るまでをかいつまんで話した。

 

「なるほど!つまり彼の仮面を探してるんですね。そういうことなら私に任せていただけませんか?彼に相応しい仮面を私がご用意しましょう!盾の研究をさせていただけるお礼もしたいですし」

 

「いいではないか!用意してもらって悪いがここにある仮面はバンシィには似合わない。なら、似合うやつを用意するまでよ!津軽!九鬼の技術者としてバンシィに似合う最高の仮面を作って見せよう!」

 

 そうしてバンシィ・ノルンに似合う仮面製作が津軽海経の元、行われることになった。作るまでにかかる時間は僅か一週間とのこと。さすがの九鬼と言わしめる作業時間だ。その間、バンシィは執事としてある一定の振る舞いができようみっちり訓練を受けつつ、津軽に盾や義手義足の説明をすることになった。

 

 そして今は津軽と別れ、紋白、ヒューム、クラウディオも別件で席を外しており取り残されたバンシィはこのビルの案内人がこの部屋に来るのを待っていた。

 

 紋白曰く、「お前の事を知っている奴だ」と言っていた。

 

 一体どこで知り合った相手なのだろうかと、皆目見当もつかない相手のことを考えていた。

 

 するとコンコンコンっと扉をノックする音がした後、「失礼します」と女性の声が聞こえ一人の女性が入ってきた。

 

「お久しぶりです。アル・シュバルツ」

 

「まさかあんたがここで働いていたとはな、龍」

 

「その名前は当時の仕事名前です。今は李静初(リー・ジンチュウ)、リーと呼んでください」

 

「わかった。それと知っているとは思うが今はバンシィ・ノルンだ。これからよろしく頼む、リー」

 

「ええ。こちらこそよろしくお願いします、バンシィ」

 

 かつて戦場を駆けていた頃、多くの人を助けていた分人に恨まれることは多々あった。その度に命を狙われ続けたが、ある時アル(バンシィ)は一人の暗殺者と出会った。それが当時、裏社会では龍と呼ばれていた凄腕の暗殺者であった彼女だ。

 

 あの時のアルはまだまだ未熟だったために突然現れた謎の暗殺者に驚き強引な撃退方法を取ってしまった。結果彼女に深手を負わせ危うく殺しかけたのだが殺すつもりがなかったアルは彼女を手当し、目を覚ました彼女と色々なことを話した。その甲斐あって依頼人こそ真に殺めるべき相手だと理解した彼女と別れ、李は依頼失敗を物理的な方法で帳消しにした。

 

 その後二人は一切会うことはなかったが、その理由がアルを暗殺するよう依頼する人間を悉く李が暗殺していたことは彼女以外誰も知らない。

 

「しかし、紋様が言っていた俺を知っている相手がリーだったとはな」

 

「いえ、私は紋様にあなたと面識があるということを話していませんし、あなたに用意する服の採寸を測りに来ただけです」

 

「ん?ということは他にも俺を知っている奴がいると?」

 

「ええ...そろそろ入ってきたらどうです?」

 

 李はバンシィの言葉に頷き、扉の向こう側に声をかけた。

 

「うぅ...わかったよ!入ればいいんだろ、入れば!」

 

 するとまたもや扉の向こうから女の声が聞こえ、恐る恐る扉を開け「し、失礼しますっ!」と実に辿々しい入室時の挨拶をした。

 

「...よ、よう...久しぶりだな、アル」

 

「なんだ。お前もいたのかステイシー」

 

「いたのかってなんだ!いたのかって!...こっちにも色々事情があるんだよ...」

 

「フっ、そうか...」

 

「なんだよ、その含みのある言い方!言っとくけど好きでメイドになったわけじゃねぇからなぁ!」

 

「わかってる。だが似合ってるぞ?」

 

「褒めたって何もでねぇよ...ったく」

 

「ッ!!あのステイシーが...デレた...!?」

 

「デレてねぇ!!」

 

 悪態をつきながらも、どこか照れ臭そうにしているステイシーに対して李がボケをかました。

 

 彼女の名前はステイシー・コナー。

 

 今は九鬼の従者部隊に所属しているが、元傭兵で彼女と出会ったのは当然元傭兵同士であるから戦場だった。

 

 彼女とは以前、一悶着あって以降も戦場でよく顔を合わせていたし、時には味方となって一緒に戦場を戦い抜いた戦友でもある。

 

「...てことは、ステイシーが俺の案内人か」

 

「なんだよ。不満でもあるのかー?」

 

「いいや。むしろお前の仕事ぶりの一端を見れるのだから興味深いと思っただけだ」

 

「さらっとハードルを上げてくんじゃねぇ!それより早く採寸してとっとと行くぞ!」

 

 ゲシゲシッとバンシィの足を蹴らながら急かしてくるステイシー。

 

 わりと強めに蹴られているがバンシィの防御力は高い。ステイシーは舌打ちをひとつして「相変わらずロックな体してるぜ」と呟いた。それでも足蹴りをやめない。

 

「そういえば一つ聞きたいんですけど...ステイシーと何があったんですか?」

 

「ッ!?!」

 

「なんだ、言ってなかったのか?」

 

「言えるわけねぇだろ!あんな...こと...」

 

 突然話題が変わり驚いたステイシーはようやく蹴りをやめた。

 

 そして何を思い出したのか顔を赤らめ、ハッキリと言葉を告げられずにいた。

 

「えーっとだな、実は...」

 

「ロック!ロック!ロック!ロック!ロック!ファック!!」

 

 バンシィの言葉を遮るようにステイシーが叫んだ。

 

 自分の言葉を遮られたことより、その口癖にそんな使い方があったとは...とずれた感想を抱いたバンシィだったがそれは表には出さなかった。というか、最後ファックになってたぞ?

 

「これ以上は言わせねぇぞ!もし言ったら...わかってるよなぁ?」

 

 ギロリとステイシーは凶暴そうな目を向けてきた。

 

「...すまんなリー」

 

「なんですか?すごく気になるのですが。私だけ仲間はずれですか......まあいいです。次の機会にでも聞き出します」

 

「ぜひそうしてくれ」

 

 流石にこれ以上無理に聞き出そうものならステイシーが()()()しでかすかわからない。

 

(まあ、大体想像はつくが...)

 

 とりあえず話を一区切りさせ李はバンシィの服の採寸をテキパキと行い、バンシィはステイシーにビルの案内をしてもらった。その間ステイシーはバンシィが話しかけても全て無視して返したので、これはしばらく根にもたれるな、とバンシィは思ったのだった。

 

 




 いかがでしたでしょうか?津軽海経を出した手前、彼の話し方や癖なんてもう全く覚えていませんでした。雰囲気で書いてますので至らない点は多々あるかと思います。
 今回李とステイシーが出てきましたが意外と彼女達の出番は多いですね。あとバンシィとアルの使い分けが非常に難しかったです....へこたれず結びまでもっていきたいですね。

 もしよかったら意見、感想、誤字脱字、評価の方をよろしくお願いします。
また次回お会いしましょう。では
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