モンスターハンター・トータス2   作:綴れば名無し

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 ブルックの町からゲブルト村へ続く街道をハンターが三人歩いていた。

「む~…ねえグランツ~!なんで移動に馬使わないのさ~!」

「しょうがねえだろラウラ。今は国内外での移動に一部制限が掛かってるんだから、通行止め食らって申請書通したら何日も掛かるんだよ」

「だからってさぁ…こっそり町を抜け出して、徒歩でハルツィナ樹海に向かうって、すっごく非効率的じゃない?商人の荷馬車に便乗するとかさ~やり方は色々あったでしょ~」

「だーっ!俺に文句を言うな俺に!決めたのはシグだぞ!」

 三人組のリーダー格であるシグは後ろの二人が言い争ってもまるで意に介さず、黙々と遠くに見えるハルツィナ樹海を目指して歩みを進めていた。
兜に隠れてその表情は窺えないが、歩く姿に感情が現れている。

「ちょっとシグ!一人でズンズン先にいっちゃわないでよー!」

「ったくウチのリーダーは…マイペースなのは相変わらずだぜ…」

(…ただのキノコ集めと思ってたが…依頼主の話とギルドから寄せられた情報を照らし合わせるなら…恐らく…)

 このクエストは一筋縄ではいかない。
数多くのクエストをこなしてきた彼の勘がそう告げていた。
英雄の引退騒動で不機嫌だった彼が、ほんの少し良くなるくらいには…

「楽しみだぜ…ハルツィナ樹海での狩りがよぉ…!」

 彼の目には樹海の端に隣接する村など入ってもいなかった。



乙女の心は複雑怪奇 前編

 

 白崎が記憶喪失になっていたという衝撃的な話を聞いた後、八重樫が坂上達を呼びに行くというので俺は混乱する頭を整理整頓したい思いもあってその場ですぐに別れた。

 

 去り際に俺とはどういう関係だったのか白崎に聞かれたが…

クラスの面倒事(天之河とその他)を引き連れて話しかけてきた事くらいしか覚えていない。

記憶のない本人に言うのは酷かもしれないが、迷惑してた事を隠さず伝えると―――

 

「そう…なんだ…ごめんなさい」

 

 あからさまに落ち込んでいる様子だったので慌ててフォローしてしまった。

…細かい事を言うなら、白崎が絡んでくる=あいつ等が俺に突っかかってくるだからな…

横で申し訳なさそうにしている八重樫曰く「周りが全く見えてなかった」そうだ。

 

 どうして俺と話す時だけそうなのかは…まぁ…()()()()()…なのか?

記憶を無くした今となっては確かめる術もないし、俺としても今更そんなものを向けられても反応に困る。…というかそれで記憶取り戻したとかになったら余計ややこしくなるから絶対に却下だ。

 

「…もう気にしなくていい。…過ぎた事…だからな」

 

「…うんっ、そうだよね!過去は過去、今は今!記憶がなくても、私は今出来ることを精一杯やるだけだから!―――ありがとね、南雲くん!いこう、雫ちゃん?」

 

「え、ええ…。それじゃ南雲くん、またね」

 

「おう」

 

 八重樫は前からそんな気はしてたが、白崎もクラスメイトのいざこざが無ければ普通に話してて不快感を感じるような娘ではなかった。これが二人の素…なんだろうな。

八重樫はトレイシーさんの所で働くって言ってたし…顔を合わせる事も少なくなるんだろうけど、白崎はこの村に留まるみたいだし…まぁ、何か困った事があったら手を貸すくらいはしてやるか…

 

―――さて、陽も顔を出してきた事だし…俺も帰って朝飯を―――

 

「なっ、南雲っ――――――!!」

 

(…二度あることは三度ある…ってか)

 

 聞き慣れた声のする方に顔を向けると、優花が小走りに駆け寄ってきた。

昨日は他の奴らもいたから話もせずにさっさとマイハウスに帰ったんだよな。

周囲を軽く見回して、周りにクラスメイトがいない事を確認する。

 

「園部。昨日は悪かったな、顔を合わせたのに声も掛けられなくて」

 

「……南雲……あんた、あの時―――」

 

 クラスの奴らと一緒にいるって事は、俺が嘘ついた事も知ってて当然か…

 

「悪かった。あの時はお前達に余計な心配をさせたくないと思ってつい―――」

「―――――――――ッ!」

 

 キッと鋭い目で睨む優花の勢いに怯んで一歩後退る。

ブルックの町でもそうだったが…女の子にこういう反応をされると動揺してしまう。

 

「心配…したんだから…!南雲が私やノイント達を気遣って嘘ついたって事は察しがついたわ…!でもっ!!…それでも…アンタが無事かどうか…それが分からなくて、私っ…」

 

「………すまなかった」

 

 バレてしまった時を考えなかった訳じゃない。ただ、結果的に無事であれば少し怒られる程度で済むのだと、自分の事を軽んじていた事は否定できなかった。

目の前で小刻みに肩を震わせている優花を見て、罪悪感が胸を締め付ける。

それから暫く優花が落ち着くのを待ってからホルアドで起きた事の顛末を話した。

 

 

 俺の話を聞いた後、優花はウルに着いてからの話を教えてくれた。

ノイント達はリンネさんの宿屋に暫く泊っているのか…手紙もそろそろウルに着く頃か?

宿代はリンネさんがある程度負担してくれるらしいが、俺が元々払う予定だったのだからきっちり全額支払うように次の手紙に書いておこう。

 

 ミッドガルさんとマリアンナさんがウルに居た優花達を途中まで護衛したらしい。

じゃあ二人は今、帝都グラディーウスに居るのか…酒奢って貰う約束、忘れてませんからね。

ようやく話せる相手とも話し終えて、マイハウスに帰ろうかと思ったのだが…

 

「―――なぁ、園部」

「…なに?」

 

「もし良かったら俺の家で飯でもどうだ?」

「…えっ」

 

 まだ先の話だがノイント達にも改めて嘘をついたことを謝るつもりだ。

だからその一歩目として、優花にここで俺が出来る俺なりの誠意を見せたかった。

こんな事(朝飯)でしか誠意を見せられないというのも情けない話だが…

言葉で誠意をキチンと伝えられるほど、俺は器用な男じゃない。

 

「…いいの?」

 

「迷惑でなかったら…な。心配かけた罪滅ぼしをさせてくれ」

 

 クラスメイトの女子を朝飯に誘うってのは人生でそう出来る体験じゃないだろう。

しかし邪な感情がある訳でもなく、他にもちゃんとした理由があって誘ってる。

問題は優花がこれに対して肯定的な態度をしてくれるかだが…

 

「…南雲の家でご飯かぁ…」

 

 んん~小声でなんか言ってるけど聞き取れない…表情がどちらともいえない…

男の手料理なんて嫌がられるか…と不安に思っていた直後、彼女はあっさりと答えた。

 

「…うん…じゃあ…ご馳走になろうかな?」

 

 良かったと内心ホッとしつつ、優花の浮かべた表情に微かな違和感を感じた。

独り言を言い終えた後から、ほんの少しだけど頬に朱が差しているような…

怒ってた時はそんな風には一切見えなかったのに、この瞬間だけ色気づいた…

…いや、ないない…俺の考えすぎだ考えすぎ。

 

「じゃ、ついてきてくれ―――といっても、すぐ目の前にあるんだけどな」

 

「えっ…?ひょっとして、あの立派な家が南雲の…?だって前は―――」

 

「あぁ、それも含めて話したい事が山ほどあってな」

 

 いつまでも立ち話している訳にもいかず、マイハウスに向かって歩き出す。

優花の横を通り過ぎようとした時、髪の毛にキラリと光るものが見えて足を止める。

明るい茶髪の中でひと際目立つそれは、ブルックの町で彼女に買った髪飾りだった。

 

「園部、その髪飾りは…」

 

「えっ…?あぁ、これすごく綺麗だし、使い心地よくてずっと使ってるのよ。…あの服は流石に人前でずっと着てるのは恥ずかしいから…大事にしまってるわ」

 

「…そうか」

 

「…クラスの皆には内緒にしてよ?」

 

「あぁ、勿論だ」

 

 アセビの花を模したクリスタルの髪飾り…気に入ってくれてたんだな…

家族以外の人に何かをプレゼントするのはあれが初めてだったかもしれない。

ちょっとだけ嬉しさと照れ臭さで頬が緩みそうになったのを引き締める。

 

 マイハウスの中に入ると、まだ部屋の中に明かりがついている様子はなかった。

しかし微かに上の方から物音がする…方向的にシアの泊ってる部屋か?

アイツもハンターだし、俺のように訓練所で早起きする癖がついたのだろう。

 

「…南雲、他に誰かいるの?」

 

「ん、あぁ…実はな―――」

 

 二人の事を話したら優花は案の定…というか予想していたよりも驚いていた。

優花と入れ替わりで村に戻ってきたシア、大迷宮で色々あって行動を共にしたアレーティア。

片や歳の近い兎人族の少女、片や見た目だけなら年下だが超絶年上の吸血鬼の少女。

吸血鬼と聞いて彼女は少し身構えたが、いきなり噛みついて血を吸おうとするような事はないと伝えるとすぐに安心してくれた…のだが――――――

 

「…ふぅん…南雲が血をあげたんだ…」

 

「あぁ、俺の血なんか美味しくないと思うんだが、本人も他に頼める相手がいなかったし、断りきれなくてな。―――ところで園部、なんで急に不機嫌そうな顔を?」

 

「は?別に不機嫌じゃないけど?」

 

「いや、どう見てもさっきとテンション違うだろ…」

 

「別に、さっきと何も変わらないし…」

 

…これはあれか?見知らぬ少女を二人も部屋に連れ込んでる俺に対する不信感が募ってるのか?

だとしたら優花の怒りは正しい。俺だって普通に考えたら自分の家に女の子を泊めたりしない。

アレーティアは天涯孤独の身。今回ばかりは仕方なかったんだ。

シア…は謎なんだよなぁ…兎人族の人達と同じ家で住んでた筈なのに…

 

「…兎に角、二人が起きてきたら改めて話すよ」

 

「…分かった」

 

 そんなこんなで朝食の準備に入る訳だが…何故か隣に優花の姿が。

いや、そんなさも当然のように一緒に作りますみたいな雰囲気出されても困る。

 

「…園部、誘ったのは俺なんだし…お客さんとして寛いでくれてる方が…」

 

「…私も久しぶりに料理したいと思ったの…ひょっとして…迷惑?」

 

 ウッ…そんな風に上目遣いで聞かれると男はNoって言えないんだぜ…?

とはいえ、まぁ…優花がどんな料理を作るのか気になるところではある。

今まで接点のなかったクラスメイトの違う一面を見られるのは中々に興味深い。

 




 すいません私事ですがコロナに罹りそうになったりショッキングな出来事が起きたりと色々あったのでこれ以上筆が進みませんでした…前後編に分けます。
外伝の方は明日には投稿できるよう努力します…

感想、質問、ご指摘等お待ちしております。
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