ハジメ率いるフェアベルゲン救援隊が出発するより少し前。
ギルドからクエスト遂行の一時中断とハルツィナ樹海へ向かう事を制限されたハンター達の多くは稼ぐことも出来ないならと早々に寝床へ向かってしまった。
一部の物好きなハンター達も、後にギルドマネージャーから張り出された古龍出現の情報を聞いて恐れ戦き、災害級のモンスターが過ぎ去るのをじっと待っている。
教授はギルドマネージャーと話を終え、件の古龍イナガミの討伐クエストを受注していた。
クエスト制限下で張り出されたそれに他のハンター達は興味本位で目を通すが、内容を見た途端に血の気が引いた表情で逃げ出す。
彼らの多くは崇高な目的や正義感など持たず、ただ己の力が届く範囲での稼ぎがしたいだけ。
挑めば確実に命を落とすと分かっている相手と戦う命知らず身の程知らずはそうそういない。
だがこの時、この集会所にはハジメの同期で最も頭の螺子が緩んだ馬鹿三人組がいた……
「オイ、そこにいる
声を掛けられた教授はアイテムボックスから一歩離れて彼の方へと振り返る。
そこには討伐クエストの受注者リストに三人分の名前を雑に書いた太刀使いの男シグがいた。
「ええ、そのクエストは私が受注したもので相違ありません。しかし”ゼクスシリーズ”の貴方……見たところハンターランク上位に昇格したばかりに見えますが――――――」
古龍討伐クエストは上位ハンターの中でもギルドマスターか例外のハンターに実力を認められた者しか受けられない超高難易度クエストだ。
以前ライセン大峡谷に現れた古龍ラオシャンロンを討伐した四人の内、ハジメとテレサベルを除く二人…ロスマンとアイクがそれに該当する。
自信ありげに兜の中で笑みを浮かべているのが、同じようにアーティアの重ね着装備で顔が隠れている教授でも感じ取れた。
やんわりと彼の自尊心を傷つけないように言葉を選んで断るつもりだったが―――
「アァ!?ランクなんざ今重要な事じゃねえ、質問してんのは俺だ。こいつぁ古龍の討伐クエストなんだってな?古龍狩り……俺にも一枚嚙ませろよセンパイ」
―――どうあっても参加する意思は変わらない様子だった。
そこへシグの仲間であるスラアク使いのラウラと操虫棍使いのグランツがすっとんでくる。
「ちょ―――ちょっとシグ!?アンタ何とんでもない事言ってんのこのバカ!」
「つーかお前さ、初対面の先輩にいきなり失礼過ぎるっての。…いやーすいません先輩、こいつ昔っからこうなんですよ。ガキの頃から口悪くてホントに困ってて…」
「うっせぇ!戦う気が無ぇならテメェ等も他の腰抜け共と一緒に留守番してろ!」
シグの言葉を耳にした先輩ハンター達がピクッと反応し、怒りのオーラをメラメラと発する。
それに気づいているラウラがアワアワしだし、グランツは額に手を当てて呆れた。
一方で教授は何も言わず、静かに彼ら三人の特徴を捉えていた。
数多くのハンターを見てきた彼の目が、装備品の状態で彼らの力量を一瞬で見抜く。
「……成程。貴方達は既に
「あ!?なんだ声ちぃせえよもっとハッキリ喋れやテメェ!!」
「アンタ本当にそんな口の利き方してると、マジでいつか痛い目見るからねっ!?ていうかさっきの!!アタシは
「お前らやる気だけは一流だよホントに……。まあ…ってな訳で先輩、俺ら三人足手纏いにならない程度にアシストしますんでお零れに預からせて貰えませんかね?このとーりっ!」
「おやおや…そうですか。それほどの熱意があるなら、断る理由はありませんね」
教授はギルドマネージャーにもう一度会ってシグ達のクエスト参加許可を貰う。
本来なら止めなければならない立場の彼だが、例外である教授が太鼓判を押したハンター三人を止めることは出来ないだろうと判断し、諦めの境地で許可を出した。
条件としてギルドのアイルーを同行させたのは彼なりに出来る自己保身の策だった。
「…マネージャーさん」
ギルドマネージャー専用の椅子に腰かけた彼の前に、元気ドリンコが入った瓶が置かれる。
彼が顔を上げるとギルドガールズの一人が立っていた。
クエスト受注の仕事が無くなって窓口に立つ必要がなかった彼女らは奥に引っ込んで他の職員の仕事を手伝っていたのだ。その内の一人、下位クエストを担当する赤いメイド風ドレスに身を包んだ少女である。彼女は彼と教授達のやり取りを一部始終見ていたのだ。
「こんなものしかあげられませんが、元気出して下さい」
「…うん、ありがとうね…」
ハンター達が受付嬢を天使だ女神だと呼ぶ理由がこの時分かったギルドマネージャーだった。
――――――どれくらいの時間が経ったんだろう。
ハンマーの柄の先を地面に刺し、肩に寄り掛からせる形で杖代わりにして休む。
目に映るのは赤、赤、赤…未来視の悪夢で似たような光景。
恐怖はない。戦いが始まった時点で
疲労は限界だ。何十匹というモンスターの頭を潰し骨を砕き、死体の山を積み上げた代償だ。
意識も曖昧だ。自分がいまどこに立っていて、何をしているのかさえ忘れかけている。
「………っ!ぅ、ぐ……ぁ!」
まただ…私の中に眠る占術師の未来視が、私の意志に関係なく未来を見せつけてくる。
目を閉じた先、黒い意識の世界に広がるのは樹海の何処か。
フェアベルゲンの中に踏み込んでくる新しいモンスター達の姿だった。
「――――――はぁ、はぁ、ふ、ぐっ……!」
ハンマーの柄を握る両手指の先が痺れていても、手放すことだけはしない。
歯を食いしばって立ち上がり、未来視の反動でまだ痛む頭とふらつく体に鞭打つ。
武器を背中に引っ掛けて納刀し走れと訓練所では教わってきた。
だけど私は亜人だから、重いハンマーであろうと両手で構えたまま走れる。
訓練所にいる間、ずっとそれを教官に叱られて不思議に思っていたけど、周りに合わせなきゃいけないから態々武器をしまって走る事を意識してきたけど、今はそれをする必要がない。
木の幹に絡まった蔦に捕まって、足の力だけで枝分かれしているところまで駆け上がる。
太い枝から他の木の枝へ、跳ねては飛び移りを繰り返して未来視で見た場所へ向かう。
「!!―――見つけたっ」
未来視で見たモンスターはまだ中に入ってきていなかった。
だが私達兎人族の特長である長い耳が、あまり遠くない距離にいるモンスターの気配を察知する。
フェアベルゲンと外の境界線に位置する木の上まで飛んで、目標の姿を捉えた。
鳥竜種”ドスランポス”とその子分”ランポス”が群れで押し寄せようとしている。
「はあぁぁぁっ!!」
モンスター達の注意をこちらへ逸らすと同時に木の上から飛び降りた。
仕掛ける直前にハンマーを上段に構えて振り上げ、力を溜めて狙いを定める。
(親玉を討てば、子分は散り散りになる筈……!)
ドスランポスが顔を上げてこちらに気が付いた時には、既に私はハンマーを振り下ろしていた。
ごきゃっ!と朱色のトサカごと頭部の骨を粉砕する勢いで、ドスランポスの体は地面に沈み込む。
鮮血が飛び散り、辺りをまた血の池に染め上げる。
―――ギャ、ギャアギャア!?
―――ギャオゥッ、ギャオッ!
狙い通り、ドスランポスがやられた途端にランポスの群れはリーダーを失って混乱し、一目散にフェアベルゲンとは反対方向の来た道へと引き返していく。
それを見送る私の足下でドスランポスの死体が死後痙攣を起こしている。
「……っはぁ、はぁ、はぁ」
潰した頭からハンマーを離すと、付着した肉片の一部がベチャベチャと地面に落ちていく。
呼吸を繰り返す度、血の臭いで全身が満たされていくのを感じた。
少し前の私なら、この状況に悲鳴を上げて近くの茂みで嘔吐していただろう。
「……あは、はは……」
今更自分の変わりように驚いてしまい、狩った後の余韻も相まって掠れた笑い声が零れる。
今が昼なのか夜なのか、時間の感覚はとうに忘れ、ひたすらモンスターを狩り続けた。
―――どうして?私を忌み子と罵り、一族諸共に殺そうとしてきた相手を、どうして私は守る?
故郷への愛着だけで彼らを守っている訳ではない。私は、アルテナさんという初めて出来た同い年の友達を助けたいと思ったからだ。
(――――――あぁ、そういえば…まだちゃんと――――――)
「………いぎっ!?」
また、こめかみが割れるような痛みと共に未来視がロクでもない未来を見せつける。
私はこの未来視が嫌いだった。頭が痛くなるし、体も怠くなって、近くに誰かいた時はいつも余計な心配をかけてしまうから。
でも、これがあったお陰で一族の皆を助けられた。ハジメさんにも出会えて、ハンターになった今の私がある。望まず得た力だとしても、感謝すべきなんでしょうか…?
「――――――これはっ!?急がないと――――――」
未来視で見えたのは先ほどのモンスターとは比にならないほど手強い相手だった。
今度は近くに刺さっていた岩を足場に跳躍して枝へと移り移動する。
目的の場所へとたどり着く前から、モンスターの姿は視界に捉えていた。
小山のような巨躯を持ったそれの足下で、亜人族の悲鳴が聞こえる。
「あなたの相手はっ…私です!!」
本来は落下中に行う溜め攻撃を、水平に枝から枝へと飛び移る間に行う。
ハンマーの先が相手の体に触れると直感で気づいた瞬間に横向きで叩きつけを繰り出す。
これも本来の使い方ではなく、無理な動きをした私の両腕が軋みを上げる。
「っ…忌み子!?」
「何故、こんなところに―――」
着地した私の姿を見て驚愕の声を上げたのは狼人族だった。
虎人、熊人に続く武闘派の種族で族長が戦士団の団長をしているらしい。
その団長の名前までは憶えていなかった。私にとっては自分達の一族を殺そうとしてくる相手だったし、覚える必要がなかったから記憶の片隅に種族の名前と特徴を留めておく程度の存在だ。
「…逃げて下さい。森人族の集落は無事です」
「に、逃げろだと!!我ら狼人戦士に向かって忌み子風情が―――」
「止せ!ここで今そんなものの相手をしている場合か!」
一人が私に向かって牙を剥き出しにするが、それを団長さんが制止する。
その間にも私に攻撃を食らったモンスターは敵意を向けて襲ってきた。
「―――ッ!!」
地面に角を突き立てて巨体が突っ込んでくるのを横に跳んで躱した。
狼人族の二人もなんとか回避には成功したが、すっかり戦意を喪失している。
私は横にハンマーを構えて地面から角を抜いて顔を見せるモンスターと向き合う。
「……尾槌竜”ドボルベルク”」
今まで私が戦ってきた青熊獣、盾蟹、怪鳥、水獣、賊竜とは比べ物にならない。
茶色い鱗と殻に刻まれた傷痕は見紛うことなき上位個体の証。
蛮顎竜ですらリーナさん達と協力しなければ倒せなかった私にとって…一番の強敵…!
―――グルブオオォォォォォ!!!
余談ですがシアがフェアベルゲンで狩ったのは呼び名がついていないドス鳥竜も含めて20体近くになります(小型は大型が片付けてくれたから直接狩ったのは大型より少ない)フェアベルゲンに攻めてくる小型が少ない理由は他にもありますがね…
ハンマーっぽい特徴持ってるモンスターvs某ゴッドイーターみたいな動きしてるハンマー使い
原作だと名前あるっぽいけどこれ以上出番あるか分からないから名前ハブった狼人族の団長さん(団長って聞くとED流しながら人差し指立てて倒れてる某ガンダムのミームしか出てこない…)
この調子で投稿、止まるんじゃねえぞ…
感想、質問、ご指摘等お待ちしております。
勢いで書いていますが、このままで大丈夫でしょうか?
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狩れ、この生きる大地と共に!
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大丈夫だ、問題しかない
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尻尾切って、役目でしょ
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絵の練習は…?