モンスターハンター・トータス2   作:綴れば名無し

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 救援隊が出発して一時間程度経った頃、ゲブルト村の周りを囲う見張りから警鐘が鳴り響く。

「南からヤオザミの群れが向かって来てる!!見える範囲だけで50以上だ!!」

 夜も遅く、子供達が眠りに落ちようかというタイミングでそれは始まった。
跳び起きた母親に叩き起こされて、異様な空気に子供達も目を覚ます。
救援に一人反対して村長宅を出て行ったアゥータが、一番早く異変に気付いて反応するが―――

 南側の警鐘が鳴って数分も経たない内に、今度はライセンの荒野に面した西側と、ハルツィナ樹海へ向かっている救援隊がいた東側から警鐘が鳴り響く。

「西門に集まってた駐屯兵がランポスの群れに襲われてる!至急救援を!」
「東の川沿いに集まってるのは…ルドロス!?奴ら、こっちに向かってるぞ!」

「ちぃっ…!!(なんでこう面倒事ばかり立て続けに…クソッ!!)村にいるハンターの半数は南に!残りは西門の救援に回れ!兵士と動ける野郎の残りは使える武器かき集めて東門を死守するんだ!非戦闘員はキッチンのアイルー達を先行させて荒野の避難場所に移動!急げ!!」

 アゥータは苛立ちを隠そうともせず、咥えた煙草を地面へ吐き捨て足で踏みつける。
それでも判断を間違わずに指示を飛ばせるのは、彼が経験豊富なハンターだから。

 彼の指示に従って、村中の人々が慌ただしく動いている。
そんな中、ふと一人の兎人族が頭上から近づいて来る小動物の気配に気が付いた。
一匹、二匹、否…月の見えぬ夜空に似た色のそれらは百を超える群れ。
血走った目でけたたましい鳴き声を上げながら、松明の火に照らされたそれが姿を現す。

「うわぁぁっ、ニクイドリだぁっ!!」
「何ッ―――!」
「きゃあああぁぁっ!」
「ぐあっ!?なんだこいつ等っ!」

 ニクイドリの群れが、獲物に集る羽虫のように村中の人々へと襲い掛かった。
咄嗟に体が反応して攻撃を避けられた者、掠り傷で済んだ者、まともに攻撃を食らって地面に倒れる者、様々な反応をする彼らに群れは追撃の手を緩めない。

 異変にすぐ気づいたアゥータは、自分のところへ飛び掛かってくるニクイドリに気づいたと同時に腰の剥ぎ取り用ナイフを抜いて応戦する。
ニクイドリの爪が彼の赤い髪を掠め、数本の髪が落ちた。

(ニクイドリが生きてる奴を襲ってきた…!?)

 ニクイドリは肉食性の鳥であるが、その脆弱さ故に自ら進んで生きてる獲物を襲って食べたりはしない。大型モンスターの近くを飛び回り、それらが仕留めた獲物のお零れを貰うスカベンジャーのような立ち回りで知られていた。

 だが目の前の群れは、明らかに生きている人間を狙って襲い掛かってきた。
上空から突如として大群で襲い掛かるなど、過去に無かったことだ。
この異常事態に、大抵のハンターは動揺を隠せないだろうがアゥータは違った。

 一度距離を取って旋回したニクイドリが、再び彼を襲おうと接近する。
彼は直線的な動きのそれを先読みして、接触直前にナイフの先で相手の腹を突く。
ギャア!と鳴いて、ニクイドリは血をまき散らしながら地面へと倒れた。
しかし、倒した直後に次のニクイドリが襲い掛かる。
今度は一匹で仕留めきれないと判断したのか、三匹が一斉に爪を突き立てた。

「失せろ!!」

 怒りを込めて叫ぶアゥータは脇にあった松明を手に取って振り回す。
すると三匹のニクイドリは悲鳴を上げ、襲うことを止めて上空へと飛び去る。
咄嗟に取った彼の行動が、結果的にニクイドリへの対処法を決定づけた。

「松明だ!!荷物を捨てて松明を持て!何十匹襲って来ようが奴ら火は恐れる!」

 アゥータの叫びを聞いて、ゲブルト村の住民達は迅速な対応で松明を手に取って応戦する。
しかし村の外から来た行商人や、まだ村の生活に慣れていない兎人族の一部がパニックを起こす。

「う、うわぁぁっ!助けてくれぇっ!わしの、わしの大事な荷がぁ~!」
「荷物なんかどうでもいいだろ!このままじゃ奴らの餌だぞ!?」
「こっ、こんな状況じゃ松明なんか持てないわ!早く逃げないと!!」
「助けて!死にたくない!!折角生き延びたのに!嫌だぁっ!!」

(クソが…!村人だけならまだしも、外の連中まで面倒見切れるか…っ!)

 冷静さを失わないように指示を出してはいるが、アゥータ自身苛立ちと焦りを感じていた。
樹海で起こっている古龍らしきモンスターの活動と、村に突如押し寄せた群れの襲撃。
この二つが関係しているのか、それとも全く別の原因なのか、彼には考える余地も与えられない。



 愛子は与えられた寝室で一日に溜まった疲労を解消しようと服も着替えず横になろうとしていたが、突然の騒ぎに飛び起きて部屋を飛び出し生徒達と合流する。
彼女より早く異変に気付いた優花が既にほかの神の使徒達を呼び集めていた。

「愛ちゃん…これマズい状況だよ!」
「私達も一緒に逃げないと…!」
「でもどこに逃げればいいの…!?」

 優花の訴えにパーティーメンバーの妙子が同調するも、奈々が混乱して問いかける。
生徒達の不安そうな表情に、彼女も釣られて不安になりかけたが湖の町で神殿騎士のデビットが見せた的確な指示を出す者としての振舞いを思い出してハッと我に返り、毅然とした態度で彼女らを見回して話す。

「…っ…皆さん落ち着いて!!こういう時こそ個人で判断せず指示に従ってください!」
「先生の言う通りよ、みんな先ずは全員この場にいるか確認して!」
 
 アゥータの叫び声は彼女達の耳にも届いていた。優花が補助する形で、愛子はまず自分の護衛隊の生徒達がこの場にいることを目視で確認する。

「みんな此処にいますね!?谷口さんと坂上君―――」
「鈴も坂上君も此処にいるよ愛ちゃん!」

 龍太郎に起こされて合流した鈴が勢いよく手を上げて返事をした。

「永山君達は―――」

「お、おい!?遠藤はどこにいった―――」
「此処にいるよ!?さっきからずっと!!」

「「「「「うわっ!遠藤、そこにいたのか!?」」」」」
「もうそのリアクション聞き飽きたよ!」

 重吾達が困惑して浩介の姿を探すと、彼は鈴と龍太郎のすぐ近くに立っていた。
どうやらアゥータの後の叫びにも反応していたのか、その手には松明が握られている。
だが光源となる松明を持っていながら周囲に認識されない影の薄さは健在らしい。

「っていうか俺達もさっさと村長さん達の所に―――」

「―――行かせるわきゃねーだろ」

 いつものコントをやっている場合じゃないと呆れて移動を促そうとする浩介。
だがそれを離れたところから見ていた少年の発した言葉と、彼らの周りを囲むように頭上から降ってきた黒い棒状の何かが地面へと突き刺さり愛子達をその場から動けなくした。

「!!?その、声…は…」
「よう先生、こんなところで俺と再会するなんて思わなかったか?」

 暫く聞いていない、だが確かに聞き覚えのある彼の声に愛子は驚愕で目を見開いた。
その声の主が今どうしているのか、彼女は既にハジメから聞いている。
だが、あまりにも衝撃的過ぎる内容に彼女の脳は、精神をこれ以上壊すまいと無意識にその事を本人に考えさせないようにしていた。
傍らで愛子同様にその話を聞いていた優花は、腹の底が冷えるような気分で歯噛みする。

(そんな…ハジメに警告されてから、いつかはこうなるかもしれないって最悪の予想はしてたけど…まさかハジメのいない、このタイミングで…!?)

「園部、お前も運良く生きてたんだな。…いや、この場合は()()()()か?」

「「「「「――――――清水(くん)!?」」」」」

 漆黒の外套を身に纏い、目を細めて無の表情を浮かべる幸利は予想通りの反応だと思いながら、特にそれ以上の感情を彼ら彼女らに向ける事もなく淡々と言葉を述べる。

「…魔王の命令だ、神の使徒を抹殺する」

 言うと同時に彼は外套の内側に隠れていた両手を広げて、無詠唱で発動させた闇属性魔法”黒槍”を展開する。後ろに仰け反って、その狙いを目の前にいる集団の中央に立ち尽くしていた愛子へと定めると力を込めて投擲した。

「まずはアンタからだ、先生」
「―――ッ愛ちゃん!」
「先生!!」



復讐の夜/兎人少女の激戦

 

「くぅ…っ!このっ!!」

 

 ジンオウガとシアの戦いは熾烈を極めていた。無双の狩人と呼ばれるだけあって、牙竜種の中でも一、二を争う攻撃速度は並みの獲物であれば瞬く間に殺されていただろう。

 

 アイアンハンマーLv2の研ぎが終わると同時に、迫ってきたジンオウガの前脚の振り下ろしを紙一重で後ろに転がって回避するシア。溜めの構えを取って距離を詰め、振り下ろされた前脚目掛けて叩きつけを放つ。

打撃はジンオウガの右前脚に当たったが、それに怯む様子は全くない。

 

―――グルオオォッ!

 

「きゃあぁぁっ!」

 

 お返しと言わんばかりに今度は左前脚で叩き潰そうとするジンオウガ。

避けきれずシアは後方へ吹き飛ばされるが、倒れる寸前に体勢を立て直す。

 

(一撃で、このダメージ…何度も受けられない…!)

 

 口の端から零れた血を手の甲で拭い、彼女は自分の受けた痛みから逆算してあと何回攻撃に耐えられるかを想定するが、動きを止めたことが逆に悪手となる。

 

―――グゥ…ルオォォ…!

 

「っ!!まさか、アレは…!?」

 

 ジンオウガはシアに追撃をせず、その場に留まって身を捩らせ鳴き出した。

同時に樹海の至る所から青白い光を放つ雷光虫が、ジンオウガの体へと集まっている。

 

(アレは止めないと…まずいっ!)

「せい、やぁぁぁぁっ!!」

 

 シアは考える事を止めて、無防備な状態のジンオウガにハンマーによる殴打の連撃を放つ。

流石に攻撃を受け続けることを良しとせず、三度目の攻撃で顔の付近を殴られたジンオウガはぎろりとシアを見下ろして鳴くのを止め、その場で身体を一回転させた。

 

 予兆動作に気づけたシアはその攻撃を転がって避け、また前足で踏みつけようとするジンオウガに対し、今度は後ろではなく敢えて前へ転がる事で前脚と後脚の間に潜ることで直撃を免れてカウンターの横殴りを命中させる。

 

「せいっ!てやぁ!!」

 

 今度は尻尾を振り回して彼女を吹き飛ばそうとするが狙いが外れて、その隙を逃さず彼女は縦振りの二連打とフィニッシュの振り上げを食らわせる。

一度距離を取ってスタミナを回復させるが、彼女の顔は焦りを浮かべていた。

 

(まともに胴で受けて、怯みもしない…っ)

 

 今まで狩ってきたモンスターなら4、5発も殴れば怯んだ様子を見せていた。しかしジンオウガは全く怯まず、先ほどの雷光虫を身に纏い始めてから動きのキレが増しているように彼女は感じていた。

 

―――グルゥ…!

 

(―――――――これはっ!)

 

 唸り声を上げると同時にジンオウガの背中に雷光が迸るのを見たシアは武器を背にしまう。直後、その場で宙返りをしたジンオウガの背中から数発の電撃を放つ玉が左右にカーブを描きながら彼女の方へと飛んでいく。

 

(屈むのも転がるのも確実に避けられない……ならっ!!)

 

 彼女はバッと勢いよく近くの樹に向かって走り、電撃の玉が迫る直前に跳躍して木の幹を駆けあがり、すぐに宙へと跳び出して地面へと着地する。

通り過ぎた電撃の玉は近くの樹に当たって霧散したが、電撃の当たったところに焼け焦げた黒い痕が残っている。シアは自身の毛が激しく逆立つのを感じた。

 

「ふぅ…。――――――ッ!!しまったっ!」

 

 避けて一安心したのも束の間、電撃の玉にばかり気を取られていた彼女はジンオウガが雷光虫を集めていることに反応が遅れてしまいすぐさま武器を取り出して攻撃を仕掛けようとする。

だが、ジンオウガの双眸は鳴きながらも近づいて来る彼女に向けられていた。

 

―――グルアァッ!!

 

「なっ――――――うぐっ…ごッ、がはぁっ!?」

 

 彼女がハンマーを振りかぶったと同時に、ジンオウガは再び宙へ跳び上がり。蓄電殻のある背中を地面に向けた状態で叩きつけて電撃を伴う衝撃波を発生させた。

避けることが出来ずにシアはまともに食らってしまい、何度もバウンドして地面に倒れる。

激痛に耐えながら、両手を使って起き上がろうとした彼女の口から大量の血が吐き出された。

 

(骨が…何本か折れて…内臓も…)

 

 先ほどの叩きつけとは比べ物にならない強力な一撃。

シアはこれ以上のダメージを受けるわけにはいかないと、アイテムポーチから回復薬を取り出して鉛の味がする口の中へ流し込んで無理やり飲み干す。

そして、その隙をジンオウガは逃すはずもなく―――

 

―――グルオオォォォォォン!!!

 

(…防げ、なかった…最悪の状態に持っていかれた…っ!)

 

 ジンオウガが牙竜種の中で特に危険と判断される理由が今の状態である。

帯電毛や蓄電殻といった電気を蓄えることが可能なジンオウガだが、単独では大した電撃を放つことが出来ないと言われている。

 

 ではそんなジンオウガに電撃の玉を放つほどの力を与えているのは何か?

 

 その正体は彼の体に集まっている雷光虫が、彼から供給される電力によって活性化することで”超電雷光虫”へと状態を変化させ、彼はその超電雷光虫から発生する電気を利用しているのだ。

 

 ジンオウガは肉食であり雷光虫を襲うことはないが、ジンオウガが餌とする小型のモンスターは雷光虫を食べることがある。故に雷光虫は身を守るためにジンオウガへと集まり、その対価として電力を使わせている。大型のモンスターには珍しい共生関係が築かれていた。

 

 そして集まった超電雷光虫の数に比例して増加した電力が最大限を迎えた時…

ジンオウガの角と蓄電殻は上向きになって全身から目に見えるほどの電光が迸る。

この姿を”超帯電状態”と呼び、ジンオウガの危険性が最も高まる状態だ。

 

 回復薬のお陰で傷は癒えたが、戦いはより激しさを増し、彼女を徐々に追い詰めていた。




 お知らせというほどのことではありませんが来月からまた少しニートに戻れます(嬉しくて悲しい複雑な感情の大行進)
目標としては新作ワイルズが始まる前にせめて帝国内での話くらいは終わらせたい…
まだ王国編、公国編、その他とプロット見直して眩暈がしました。

感想、質問、ご指摘等お待ちしております。

勢いで書いていますが、このままで大丈夫でしょうか?

  • 狩れ、この生きる大地と共に!
  • 大丈夫だ、問題しかない
  • 尻尾切って、役目でしょ
  • 絵の練習は…?
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