非常に長い失踪から復活……と断言は出来ませんが、スランプの泥沼から脱却するために短めの一話投稿してみました。出来はよくありませんが、これを再出発の一歩目として二歩目を踏み出せるよう温かい目で見守って下されば幸いです。
前回は失意の底にいる先生をなんとか引っ張り上げようとハジメ、優花が言葉をかけていたところに記憶喪失状態で元気溌剌としたヒーラー娘こと香織が乱入してきたところで終わりました。
「さぁめしあがれ!私特製ごった煮スペシャルだよ!!」
「「「「…………」」」」
さっきまでお通夜も同然の空気だった部屋の中に大鍋を持って現れた白崎と、彼女が手にした鍋から漂う食欲を誘う匂いに条件反射で鳴った先生の腹の虫。
微妙な空気になりかけたこの瞬間を逃さず、優花にアイコンタクトを送る。
白崎の登場で怯んでいた彼女は俺の視線にハッとした表情を浮かべて無言で小さく頷いた。
「…ねっ先生…悩んだり悔んだりするのも大切だけどさ」
「まずは飯食って落ち着きましょう。―――他の奴らも昨日の騒ぎからなんも食べてないんだろ?とりあえず考えるのは後回しにして、飯食うぞ」
言い方がまるで俺がこの場を取り仕切るリーダーみたいになってしまったが、誰もそこに突っ込まず曖昧な表情で白崎の鍋をじっと見つめたまま二、三回首を縦に振った。
白崎は部屋の真ん中にある机にドン!と鍋を置いてから蓋を開ける。
いい匂いに釣り合う見た目も問題ないポトフ風の料理が入っていた。クリーム色のスープの中から顔を覗かせる食材は見ただけで分かる。
火を噴くほど辛いと言われているが、調理次第でその辛さを巧みに抑えて体を芯から温める効果と旨味を引き出せる激辛ニンジン
根菜類の中では安価で素朴な味という評価を受けているが、どんな劣悪な環境でも育つ万能性と圧倒的ボリューム感、腹持ちの良さから貧しい家庭の味方ドテカボチャ
調理した料理人がちょっと味見をしただけで大げさに唸るほど美味いと言われ、採取クエストでの納品依頼が絶えない厳選スジタケ
食べる前の想像に過ぎないが、この料理はあえて硬い根菜類を豪快にぶつ切りにしていた。
恐らく煮込みに時間をかけることで、根菜類を柔らかく仕上げているのだろう。
(…ん?ちょっと待てよ…この鍋なんか見覚えがあるような)
村で過ごした日々の中で、誰かの家の台所にあったものだ。
記憶の片隅に残っていた情報に確認が持てず、小声で白崎へと質問を投げかけた。
「…なぁ白崎…これ…食材と鍋はどこから…」
「えっ?あぁ、これね!ちょうどアイさんとテムさんの家で濡れた服を乾かすついでに皆にご飯を食べさせたいって相談したら、快く台所を貸してくれて食材も好きに使っていいって」
「そ、そうか」
サムズアップと共に答える白崎に俺は苦笑いを浮かべる。
後で二人のところにお礼の品とか食材の代金を持っていこうかと思ったが、絶対に二人は受け取らないだろうし逆にあれこれ世話を焼こうとする光景が容易に浮かんだ。だから言葉でのお礼だけ、帰り際にしっかり伝えようとだけ心に刻んだ。
男子達がそれぞれ声掛けをして、机を一箇所に固めて周りに椅子を並べる。
女子達は戸棚から食器類を取り出し、人数分を配っていく。
その光景は久しく見ていなかった小中学校の給食の時間のようだった。
「……ふふっ」
小さく笑う声が聞こえて、横目でチラと先生を見る。
どうやら俺と似たようなことを思っていたのか、その目が言葉に発さずとも物語っていた。
先生を挟んで反対側にいる優花もそれに気づいて、彼女は安堵の笑みを浮かべる。
楕円のように形作った食卓は先生から時計回りに俺、永山パーティーの男子3人、坂上、先生護衛の男子3人、谷口、白崎、女子2人、優花という順番になっている。
坂上達と俺が机を挟んでもっとも離れた位置に座っているのは、永山が何も言わず気を利かせてくれたからだとすぐに気づいた。
わざわざ口に出さず、小さく頷いて感謝を伝える。
「さて、みんなの食器に料理は行き渡ったかな?それじゃ…いただきますっ!」
「「「「「いただきます」」」」」
白崎が真っ先に合掌して、俺と他の全員がそれに続いて合掌する。
本当に懐かしい学校給食の様な雰囲気で、食事が始まった。
まずは食材を口にする前に、スープを掬って一口目。
(ん…思ったよりスパイスが効いてるんだな…)
シチューのような見た目と打って変わって、感じる辛味はカレーのそれに酷似している。
だが決して子どもが食べられないような辛さじゃない。
辛さの中に時折顔を出す清涼感のある甘味、これは……
「白崎さん、これ煮込みの最後にリンゴの擦りおろし入れてる?」
「えっ園部さん分かるの!?すごいな~ほんの少ししか入れてないのに」
「うちの実家喫茶店だからさ。メニューにあるカレーの隠し味で、お父さんが前に子供向けで作ってたの味見してて…なんかそれに似てるなーって思ったの」
優花の家族が喫茶店を営んでいることは旅の途中で教えてもらった。
彼女自身も手伝いで厨房に何度か立っているらしく、料理に対する同年代とは思えない視点や感想はそこから来ているのだろう。
「へーっ園部さんの家って喫茶店なんだ!じゃあ園部さんは看板娘だね!」
看板娘と白崎が言ったことで、不意に優花が給仕服を着て働いている姿を想像してしまった。
恐らく同級生の前では見せないような客先用にこやかスマイルを浮かべて…
(って何を考えてんだ俺は…)
折角の料理を前に妙な妄想をしてしまったことを恥じて、二口目はカットされたドテカボチャをほおばる。皮までほろほろとはいかないが、ある程度噛む力が要る方が俺は好きだ。
この口から喉にかけてねっとりする山芋にも似た食感が唾液腺を働かせる。
「…南雲くん。南雲くんのご両親はどのようなお仕事を?」
不意に口を開いた先生が、ちょっとだけ不安そうに会話の糸口を探るように話しかけてきた。
白崎と話していた優花の視線が少し緊張気味に俺へと向けられる。
…そんな心配しなくても振る話題全てが俺の地雷とか、ありえないから安心して欲しいが無理か。
「母は漫画家、父はゲーム会社の社長です」
「漫画家と社長!?」
「社長といっても、大手と比べたら小規模な会社ですよ。自社でゲームを作って売ることはほぼ無いですし、大手から仕事を貰って開発とか管理を中心にしてるみたいです」
「大手からお仕事を貰えるだけでも十分凄いですよ…」
そう言われると確かに。
大手企業の代表取締役の名前で送られてきた毎年開かれるゲームショウイベントの招待状とか、超人気シリーズの新作先行プレイとか中小の下請けとしては破格の待遇なのだろうか…
「母は少女漫画描いてます。〇〇の令嬢とか〇〇!とか―――」
「えっ、それ私知ってます!」
「私もそれ読んでる!てか漫画全巻あるよウチに!!」
「南雲くんのお母さんがあの漫画の先生なの!?」
「あぁ」
親父の話題はいまいち続かないと判断して、母さんの話題を出したら女子達が反応した。
〇〇の子とか〇〇フラグみたいな大人気作と言えるかは微妙だが、出版社から催促の電話とメールに加え、ファンレターが箱で送られてくる程度には知名度のある母さんの作品だった。
「ちょっとだけど、アシスタントみたいな事やらせてもらったりしてる」
「「「えええぇっ!?」」」
会話の中で一番デカい驚きの声を女子達+先生があげた。
…気持ちは分かるよ…俺みたいなのが少女漫画のアシスタントって普通あり得ないよな。
だが事実は小節よりも奇なり。
母親の頼みで主人公の少女が切れ目ロン毛のイケメンに抱っこされたりキスするシーン。
あれら全てとは言わないが、世に出した作品の総ページ2割くらいには俺が関わっている。
お陰様で変に下ネタというかその手の話題に耐性がついてしまった。
男が下ネタで笑う会話が可愛いと思えるレベルで、女性漫画家のドギツイ下ネタの意見交換の場に半強制的に出席させられて感想を求められた時の内容は思い出すだけでも悪夢だ。
「南雲くんが…少女漫画のアシスタント…?」
「信じられない…」
「えっ、あの胸キュンなシーンとか南雲くんが描いてるの…」
おい最後、ちょっと引いてんじゃねえよ。ネタ考えてるのは母さんだ母さん。
俺に出来るのは精々が男の視点から見た女の言動に対して、男なら普通はどう捉えるかとか、そういう反応を幾つか案として提出して、その中からよりフィクションとして面白いと思わせるものを形作っていくだけだ。
前に思わず「俺じゃなくて父さんに頼めよ!」と言ったが、返ってきた答えは―――
「え~だって愁ってば非童貞の癖に初心なんだもん。非童貞が初心ってダメじゃない?それならまだ童貞で少年期を捨てられない中二病な息子の意見の方がおもしr…参考になるし~」
これを言われた時は流石にキレて一か月アシスタントをボイコットした。
そしたら原稿を上げるのが遅れてしまい、最終的に出版社のマネージャーさんに何故か謝られて俺はアシスタント復帰を余儀なくされた。その時の母さんは後ろでグスグス泣いてた。
この話はしたら大うけするだろうが、自分の羞恥を晒す羽目になるので黙っておいた。
登場はずっと先になりますが南雲父母、園部父ちょっとだけ話題に登場。
私事ではありますが、実はチャットGPT先生にAI画像なるものを伝授していただきまして
リンネ達オリキャラの立ち絵が作られていたり…
(アップして問題ないかガイドライン等を調べてから活動報告等で告知します)
感想、質問、ご指摘等お待ちしております。
立ち直ったついでに…
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本編の更新を鬼人化汁
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もっと投稿作品の数を増やして追い込め
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いっそリメイク
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イラストはどうした?