モンスターハンター・トータス2   作:綴れば名無し

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生きることは食べること 後編

 食事中の会話はマナー的によろしいとは言えないが

今この時間だけは学校給食で和気藹々とする学生らしい時間を送れた。

…特に俺はあまりそういう思い出がなかった分、他のクラスメイト達とは違う給食の時間の過ごし方というものに新鮮さを感じられた。

 

 全員の腹が満たされる頃には多過ぎると思われていた鍋の中も空だった。

食後に優花が気を利かせて淹れたお茶の素朴な味に落ち着いていると

先生を挟んで右にいる優花を含めた女子達から奇妙な目で見られている。

 

「…南雲ってさ…前から思ってたけど…大食いとかするタイプ?」

「いや、特にそういうのは興味ないな」

 

 むしろ逆だ。

食事に拘りなかった分、ハンターになる前…トータス召喚前は胃に入ればいいという考え方だったから必然的にカロリーメイトとかウィダーインみたいなもののお世話になっていた。

 

「…突っ込むべきか迷ってたけど…アンタさっきの煮込み何杯おかわりした?」

「………10杯目くらいだったか?」

「15杯よ」

 

 おぉ、我ながら凄まじい健啖っぷり…

しかし俺自身は驚かないが、そうか周りからすれば異常な量なのか…

これくらい食べておかないと、いざというとき動きが鈍る。

 

「え…逆でしょ普通」

「あんなに食べてたら、動けないよね…」

「無理無理、アタシなら絶対に無理」

「すごいよね南雲くん!たくさん作った甲斐があるよ~」

 

 女子ズがドン引きする中、ただひとり嬉しそうに笑っている白崎。

何故かはわからないが、優花の背中に対抗心の炎みたいなオーラがゆらめいていた。

静かにお茶を飲んでいた先生も横目でチラと俺の腹具合を心配している。

 

ハンター(俺たち)は狩りに体も頭も使う。灼熱の中でも極寒の中でも、数日間寝ずに狩りをしなきゃいけない時もある。気力・体力・思考力…どれか一つでも欠けたら死に直結するような場所に身を置く以上、生きる力(エネルギー)を身体に蓄えてなきゃダメなんだ」

 

 俺の発言で、ちょっとだけ緩んでいた空気が引き締まる。

申し訳なさを感じつつも、彼らが直面した問題に対する答えを

俺なりに考えたものを伝える時がきた。

 

「先生。もう俺から清水のことをどうこうしろとは言いません。あいつに敵対する道を進ませてしまったことを先生が悔やむのも、あいつを何とかこっち側に引き戻したいって気持ちも、理解は出来ますが全面的に賛同は出来ません」

 

「っ…」

「なっ、南雲っち―――「鈴ちゃん、ちょっと待って」っ」

「………」

 

 辛そうな表情で俯いた先生を見て、咄嗟に割って入ろうとした谷口を白崎が止める。

それをチラと横目で見てから一呼吸置いて、話を続ける。

 

「先生、確かに貴女はこの世界に召喚された俺達の中でたった一人の大人で、俺達の命を守る義務があるのかもしれません。けれども、一人一人の意志や心まで抱える必要はないんですよ。…そんなことは…歴史上のどんな偉人にも出来なかったんですから」

「――――――ぁ」

 

 ストンと何かが心の奥に落とし込まれた。そんな表情を浮かべる先生を見て、内心で確かな手ごたえを感じながら緊張は緩めずに、頭の中で必死に練った言葉を口にする。

 

「清水の意志や心に向き合うのは、多分俺にしか出来ないと思います。逆に俺は他のクラスメイトの意志や心に向き合う努力をしていますが、俺にも絶対に埋められない溝があります。これだけは…絶対に変わりません」

 

「っ」

 

 坂上の息を呑む音がやけにはっきりと聞こえた。

意識はしてなかったつもりだが、どうやら無意識にあいつに向けているような言い方になってしまったらしい。俺の精神の未熟さを恥じはするが、それを後悔はしない。

 

 

「だから、先生は俺が埋められない溝の分を補ってください。先生が背負おうとしてるものを俺が背負うかわりに、俺が手放そうとしているものを先生が代わりに背負ってください」

 

「………!」

 

「優花が言ってたこと同じになっちゃいますけど…責任はみんなで背負いましょう。頼ることも、頼られることも…そこに大人も子供も関係ありませんよ。今度は、皆が先生の傍にいますから」

 

「あっ…ぅぁっ…!」

 

 今まで状況が変わっていく中で、こんな簡単なことに気がつかなかった。

先生の目の届くところに―――若干数名いないけど、敢えてそこは触れずに―――生徒がいる。

すかさず優花が席を立って、先生を顔を隠すように胸の下へと抱き寄せた。

 

「泣いていいよ先生。アタシはたくさん泣いたから…次は先生の番」

 

 その言葉を告げた瞬間、先生は堰を切ったように声を上げて泣き出した。

女子だけに留まらず、男子達も数名がもらい泣きしている。

泣くほどじゃなかったけれど、俺も少しだけ感情は動いた。

きっとこういうのが…先生と生徒、大人と子供の…あるべき姿の一つなんじゃないかと思った。

 

 飲み終えたカップを机にそっと置いて、お邪魔にならないよう部屋を出ようとする。

そんな俺に白崎が鍋を抱えたまま小声で話しかけた。

 

「南雲くんは泣かないの?」

「…俺はもう十分過ぎるくらい泣かせてもらったよ」

 

 ルゥムさんの腕の中で、この村の人達に囲まれて…一生分泣いたといっても過言ではない。

元々泣くのはそんなに好きじゃないし、泣かれるのも辛い。

次泣くとしたら…故郷に戻って、家族に会えた時だろうな。

 

「そっか」

「―――そういうお前はどうなんだ?」

 

「うーん…よく分かんないね。なんか記憶をなくす前の私って泣き虫だったような気もするけれど…今は泣くより先に体を動かし続ける方が大事かなって思ってるんだ。…おかしいのかな私」

 

「…さあな。ただ、お前の心がそれを正しいと思っているなら、それを疑わずに貫く方がお前にとって後悔しない生き方になるんじゃないか?俺はそれをおかしいとは思わねえよ」

 

 そうかな…そうかも…と言いたげな表情で考え込む白崎に「後は頼む」と言い残して部屋を出る。…リンネさんに言われたことを思い出して似たようなことを言ってしまった…

人に偉そうにそんな事を言える立場じゃないと、分かってる筈なのにな。

 

(俺自身、自分の正しさを見つけなきゃいけない…)

 

 きっと後悔はずっと付いて回るんだろう。

リンネさんの言う通り、間違いだってこれから何度もする。

間違いから正しいへと軌道修正することが目下俺の目標ってところか…

 

「言うは易く行うは難し…だな」

 

 思わずカッコいいと思った言葉を口にしたせいか、マイハウスへの帰り道途中で道端の小石につまずいた。どうやら俺はカッコつけると碌な目に合わない星の下に生れてきたようだ。

 

 




先生の落としどころとしてはこれが限界かなって…
鬼畜路線なら「苦しめ!そのまま一生罪の十字架背負って惨めに生きろ!」ですし
聖者路線なら「あいつの心もアンタの心も全部救ってみせる」となりますが
本作のハジメはどっちにも振り切れないでしょうね(原作もそこまで鬼ではないと思いますし、というか原作の先生の方がまだ精神的に強そう)こっちの先生メンタルの下がり方が尋常じゃない…

白崎さんまるでワーカーホリックみたいだぁ、社畜戦士の鑑やね。

感想、質問、ご指摘等お待ちしております。

立ち直ったついでに…

  • 本編の更新を鬼人化汁
  • もっと投稿作品の数を増やして追い込め
  • いっそリメイク
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