モンスターハンター・トータス2   作:綴れば名無し

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 真っ赤な炉の中で鉄鉱石を溶かし、銑鉄から炭素を除去して鋼へと変える。
それを鎧の型に流し込むことでハンター達が使う防具の基となる。
ヘファイは工房の中で滝のような汗を流しながら、黙々と作業をしていた。
彼の背後には新装備の完成を楽しみに待っているハジメと、そんな彼の様子を見て楽しそうに話すシアとアレーティアの姿があった。

(…ワシの鍛冶場がこんなに賑わうなんざ、少し前には想像も出来なかった…)

 耳障りとは言わないが、それでも慣れない環境の変化に戸惑いはあった。
彼が人生の大半で向き合ってきたのは、今も目の前で変化を続ける鉱石達だった。

 余談だが、トータスに於いて製鋼の技術を持つ鍛冶職人はあまり多くない。
現代人が長い歴史の中で培ってきた技術の道を、飛び越える存在があったから。
それはヘファイの後ろにいるハジメがこの世界で得た最初の異能の力。
錬成師の存在が、鉱石の歴史を狂わせたといっても過言ではない。

 人型の生き物の中から稀に天職を持って生まれる者達がいる。
戦える技能を持つ天職、魔法の力を引き出す天職、守る技能を持つ天職、そして…錬成師や治癒師といった事象を変える天職。
前者は稀であり、後者はごく一般的なありふれた天職として認知されていた。
だがそれは()()()()()()()()()()()()()()()だ。

 天職を持って生まれなかった者達はハジメ達の世界と同じ、戦える力を自力で体得し、魔法の適性を得るために理解を深め、物を作ったり直したりする技を先人達から学んだ。
錬成師が「錬成」の一言で鉄を瞬時に鋼へと変化させるに対し、鍛冶職人は製鋼技術を持つ師匠に弟子入りしてから技術を学ぶのに数年。技術を完全に受け継いで独り立ちした後も研鑽は一生と言われている。

 錬成の力を持たない職人達が、錬成師に思う所がなかったと言えば嘘になる。
ヘファイも若い頃は自分に出来ないことを易々やってのける錬成師達を妬んでいた。
ヘルシャー帝国には錬成師の力を持って生まれる人の数が少なく、殆どが国や貴族の専属にされている。一方で凡百の鍛冶職人達が非効率的だと軽んじられていた時代もあった。

 それがある時、ハンターの装備を作製するにあたってギルドは錬成の使用を禁じた。
モンスターの素材(主に鱗や爪、皮など)を主とする武器・防具に、錬成が適応されない事が理由の一つであったが、一番の理由は国からの指示だった。
上記の錬成師と鍛冶職人の差別化が職人の減る原因となり、戦争で必要な兵器の量産に不可欠な技術者不足が深刻なものになっていたからだ。

(錬成師が、鍛冶屋(ワシら)の弟子になるとは思いもせなんだ…)

 ハジメのことをアゥータから紹介された時、ヘファイには戸惑いがあった。
流石に年を取って錬成師に敵愾心を抱くようなことはなくなったが、それでも「自分達にあんな便利なものがあったら…」と羨むことは多々ある。
だから村に来た若い彼を精々こき使ってやろうと考えていた。
しかし、彼はこき使われるのを嫌がるどころか、むしろ嬉々として働いてくれた。

(誰かの役に立って、褒められることが嬉しい…か)

 ハジメが村に来た夜、宴の席で酔った拍子にポロっと口にした言葉を聞いた時、ヘファイは鍛冶の道を歩むと決めた若き日の自分を思い出した。
以来それから錬成以前に鍛冶の知識がド素人だったハジメに一つ一つ教えていた。
炉の使い方、道具の使い方、火の管理、鉱石の覚え方と使い道等々…
彼がハンターになってから必要ないものと切って捨てられるのかと心配していたが…

(…野郎、まだ熱心に見てやがらぁ…ったくよぉ)

 振り向かなくても、ハジメのキラキラした眼差しがヘファイの手元に注がれているのを感じる。
いつか彼がハンターでいられなくなった時、鍛冶屋を継がせるのも悪くないかもしれない。
そんな事を頭の片隅で考えながら、ヘファイは次の加工へと移るのだった。



新たな装備・瞬速を持つ鬼人の力 後編

 

「そら完成だハジメ、着心地を確かめてくれい」

 

「おぉっ!待ってました!!」

 

 おやっさんに通されて鍛冶屋の奥で作られたばかりの防具に胸が高鳴る。

台の上に並べられた5つの防具は順に頭、胴、腕、腰、足の順で完成されていた。

まずは頭、ハンターの文字通り顔となる装備に手を伸ばす。

 

 素材は大迷宮で戦ったモンスター痺賊竜”ドスギルオス”の皮と鱗で出来ている。

真っ黒なシルクハットを思わせる頭に赤いゴーグルが煌く。ペストマスクを彷彿とさせるフルフェイスのそれは今まで見てきた装備の中でアーティアに次ぐ異様な雰囲気を放っていた。

 

頭装備”ギルオスヘルムβ”(笛吹き名人Lv+1)空きスロット:1

 

「…これは」

 

「そいつの皮と鱗は雷と龍属性に強いが、水には弱い。気をつけなぁ」

 

 被ると視界が真っ赤…という訳ではないらしい…見た目だけで戦闘に支障はないか。

既に頭防具だけで興奮冷めやらぬ中、二番目に手を伸ばしたのは胴防具。

 

 橙色の皮は毒狗竜”ドスフロギィ”と子分”フロギィ”の素材だ。

右肩から左脇腹に巻かれたベルト、近代的なデザインは西部劇のカウボーイっぽくて良い。

 

胴装備”フロギィSメイル”(毒属性強化Lv+1,速射強化Lv+1)空きスロット:1

 

「こいつも雷に強いが、氷と水には弱い」

 

「いいですね…これは、すごくいい」

 

 頭と胴の見た目はミスマッチかと思ったが、これはこれで悪くなかった。

順番にいって次は腕…貴重な鉱石類を大量に消費したが…その分防御力が桁違いだ。

これまで使ってきたアロイアームとは比べものにならない強固な造りの腕防具。

 

腕装備”ハイメタアームβ”(防御Lv+2)空きスロット:1

 

「こいつは生産素材を旧式で済ませたが、仕様は新型になってる。氷耐性が上がった分、雷耐性が落ちてるのに注意しろよ」

 

「はいっ!」

 

 旧式では新型と真逆で雷耐性が高く、氷耐性が下がっていたらしい。

更に新型のデザインは胴と腰も合わせるとずんぐりむっくりした見た目になる。

これで動きが阻害されないんだから改めて防具の凄さを思い知ったよ。

 

 残り二つ…腰の装備はハイメタに合わせたのか、ゴツゴツとした見た目をしていた。

スカートアーマーの表面に使われているのは岩竜”バサルモス”の素材だ。

全体を統一したデザインを見せてもらったが、正統派の甲冑を彷彿とさせる。

今回は素材が足りず腰だけの生産になったけど、スキルが魅力的だった。

 

腰装備”バサルSコイル”(砥石使用高速化Lv+2,防御Lv+2)空きスロット:2

 

「物理的なダメージには強いが、こいつは水と龍に弱い。頭と胴も合わせてかなり弱体が入ってるから気を付けろ」

 

「了解です。…そういえば…」

 

「あん?どうした」

 

「――――――あぁ、いや…なんでもありません。独り言です」

 

 思い返すと水属性のモンスターとはあんまり戦った事がなかったな…

フューレンの近くを流れる河には時々海から遡ってくる水竜とか水棲獣がいるらしいけど。

後はミュウの故郷エリセンは海の上にあるって聞いたし…話に聞いた海竜種とやれるんだろうな。

 

 そんな事を考えながら遂に最後の防具…上位になってもお世話になります先生。

胴体や腰にこれでもかと使われているピンク色の鱗や甲殻だが、足にはあまり見られない。

代わりに白布に青みがかった脚絆の膝部分だけ甲殻の一部が使われている。

 

足装備”クックSグリーヴ”(攻撃Lv+1,防御Lv-1)空きスロット:2

 

「防御が下がっちまうのが難点だが、攻撃の底上げと火耐性プラスだ」

 

「……ッおぉ、うぉぉぉっ」

 

 思わず心の中で抑えきれなかった感動の声が漏れてしまった。

おやっさんが「ガキみてぇにはしゃぐなよ」と笑っているが、こればっかりは仕方がない。

するとカウンターの方からアレーティアとシアの呼ぶ声がした。

 

「ハジメ、着替え終わった?」

 

「ハジメさん、早く見たいです!」

 

(…よし、二人にもお披露目だ…)

 

 俺は2人の呼ぶ声に応えて防具を着けたままカウンターの方へ向かう。

この時俺は少し勘違いをしていた。俺にとってのカッコいいの方向性が、十代半ば(片方は中身三百歳だけど…)の感性を持つ女の子には理解出来ない代物だった。

 

「「………」」

 

「……え、ノーコメント……?」

 

 唖然とした2人の顔を見て思わず心の声を口に出してしまった。

しかし鏡に映る自分の姿を見て、ようやく俺は見た目のインパクトに気づく。

頭防具の時点でヤバかったのだ。よくよく考えてみればシルクハットにペストマスク、血のような赤色のゴーグルを着けた人が町中を歩いていたら誰だって言葉を失うだろう。

 

「…あ、えっと…似合うと思いますよハジメさん!」

 

「…んっ…独特なセンス」

 

「…う、うん。絶妙な間を置いたフォローありがとう2人共…」

 

 後ろでおやっさんが「まぁ、こうなるだろうとは思ってたよ」と呆れかえっている。

そういえば防具を選ぶ間、何度か俺の方を見て「本当にこれでいいのか?」って確認してたけど…あれは稀少な素材の消費を気にしてたんじゃなかったのか…先に言ってくれよおやっさん。

 

「…そんで、武器はどうすんだハジメ?」

 

「さっきのツインダガーを強化して装備しようかなと…強化先の図面を見せて貰えますか?」

 

「あいよ、ざっとこんなもんだ」

 

ツインダガー(Lv1~Lv7まで強化可能)

 

派生1(ツインダガーLv3から)

デュエルツインダガーⅠ

ビークダガーⅠ

マクロピアサー

ハリケーン

オーダーレイピア

 

(攻撃力と切れ味優先ならツインダガーLv7まで上げるのが無難か…)

 

 ふと双剣の強みを思い出して、その考えは早計だと頭の中から除外する。

双剣の強みは攻撃の手数と、武器に付与される属性ダメージの蓄積値だ。

無属性武器のツインダガーではそれが生かし切れていなかった。

属性の相性に振り回されないという点では使い道があるかもしれないが、それだけの為に稀少な鉱石類を消費してまで強化するべきか迷う気持ちもある。

 

 そして何よりも…何よりもだ。

さっきから俺の目が釘付けにされているのは一番下の図面。

”オーダーレイピア”…なんだこのクソカッコいい見た目の双剣は!?

あれか?キ〇トさんになって「スターバーストストリーム!」って叫ぶ為の武器か!

水属性というのも今後使い道は増えてくるだろう…よし、これを作ろう。

 

「―――おやっさん、このオーダーレイピアを―――」

 

「…あぁ、ハジメ…すまねえがそいつは作れねえな…」

 

「えっ!?どうしてですかおやっさん!!」

 

 この時俺はショックのあまり見るべきものを見ていなかった。

ツインダガーLv3まで難なく作れて、オーダーレイピアを作れない理由、それは―――

 

「…お前さん…”黒真珠”持ってねえだろ?」

 

「………」

 

―――ここにきて痛恨の素材不足が、俺の夢を粉々に打ち砕いたのだ。

俺はショックのあまりその場で膝を着いて項垂れる。後ろで見ていた2人が急に落ち込んだ俺を見てオロオロしているが、それすら気にかける余裕もなかった…

 

「俺の、夢が……双剣で…スターバスト…したかった…グスッ」

 

「は、ハジメさん元気出して下さい!素材が足りなかったら、集めにいけばいいじゃないですか!たしか南の湿地帯に甲殻種が沢山居るから討伐依頼が出るかもってギルドの人が―――」

 

「ッ!!?」

 

 砕けた筈の夢に希望の光が差し込む。

顔を上げた俺を覗き込むシアが、この瞬間は眩しいくらいの救世主に見えた。

ガッとシアの肩を掴んで顔を近づける。

 

「ハ、ハジメさん―――!?か、顔がちか―――」

 

「今の話マジかシア!?」

 

「えっ、い、いまのって―――「甲殻種の討伐依頼だ!」―――は、はいぃ…多分ですけど…」

 

「…マジか、マジかマジかよオイ…渡りに船ってまさにこの事じゃねえか…!」

 

 既に防具作成と武器強化の代金はおやっさんに支払ってある。

急いで立ち上がった俺はおやっさんに頭を下げて、シアの手を引いて鍛冶屋を飛び出す。

呆気に取られていたアレーティアが小走りでついて来る。

 

「は、ハジメ…待って…早すぎ…!」

 

「2人共ついてこいぃぃぃ!今夜は飽きるほどカニ鍋食わせてやるぜええええ…!」

 

 向かう先は集会所、受けるクエストは甲殻種の討伐依頼。

そこで確実に黒真珠が手に入る。そうしたら…そうしたら俺は…俺は…!

 

「わはははははっ!!ハンターライフ最高ーっ!!」

 

「は、ハジメしゃん待ってくだひゃいぃぃぃ腕千切れますぅ…!!」

「ぜ、ぇ…ひゅ…肺が、裂ける…!」

 

 この後、集会所に着いてから汗まみれのアレーティアに滅茶苦茶怒られた。

シアは流石ハンターになった事もあって、息一つ切らしていなかったが。

鬼気迫る顔でクエスト受注をしに来た俺に、受付嬢さんも軽く引いていた。

 




 絶対にどのシリーズでも完成しない夢のキメラ装備(頭と腕はMHW、胴と腰はRISE、足だけXX)スキル表記だけMHW仕様に(MHXXのマイナススキルは数値で妥当なLvに換算しました)
現状ハジメの装備ステータスはこんな感じです。

攻撃力:100
武器の切れ味:緑
武器の会心率:0%
防御:224
火耐性+5 水耐性-9 雷耐性+2 氷耐性-3 龍耐性-2

余談ですが大迷宮で使っていた老山龍砲(MHXX)の攻撃力は310。原作ではG級から討伐可の古龍武器だから仕方ないとはいえ、攻撃面で大幅な弱体化を食らった感が否めない…

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