これは重大な問題だ。
自室にて椅子の背もたれに寄り掛かって自責の唸り声を漏らす。
村の復興は順調だ。
兎人族の協力と、男衆が戻ってきたことで瓦礫の撤去が半日で終わっている。
作業中に誰かが怪我をしても、白崎の嬢ちゃんがすぐに治して作業が滞ることはない。
「んぁ~……」
モンスターの襲撃も殆どない。
樹海は例の古龍討伐から戻ってきた大型モンスター達が縄張りを取り戻そうと躍起になっているらしいが、それはあくまで樹海奥深くの出来事。俺達の村には何の影響もないのだ。
「んんぅ~……」
だが、あのハジメのダチとかいう奴が村を襲ったせいで商人が来なくなった。
元々、革命とやらの影響で人の行き来が制限されてたのもあるが
今回の襲撃と樹海での一件で、安全が確保されるまで商人が訪れないのは容易に想像出来る。
その結果――――――俺の心の拠り所だった煙草が在庫切れだという。
これはまずい、どのくらいマズいかと言うと酔って姐さんの顔にコップの水ぶっかけちまった時と同じくらいまずい。人生始めてそろそろ30年に差し掛かるところだが、後にも先にも死後の世界ってのを体感したのはあの時くらいだった。
いま俺の精神はまさに、心の拠り所を失ってその時と同じ状態になりつつある。
自分で作ってもいいが、味わいも深みもない
(なんか手はねえか……ヤニキメる手段は……)
「んぉ~……っ!」
天井を見上げて半白目になってても良い考えは浮かばず
気分転換にと席を立ち、窓の外の景色を眺める。
ほんの少し前まで、農道を歩く姿はちらほらしか見かけなかった人の数が、瞬く間に数えただけで両手足の指だけでは数えきれない数に増えていた。
「……いぃ~ことの筈……なんだよなぁ」
ジジイに怒られて頭を冷やしたつもりだったが、それでも心の何処かで納得がいかない。
余所者を入れて村を活気づかせる。それが果たして正しいことなのだろうか?
村の治安問題、住居の区画整理、移住者の身元確認や近隣町村への書簡の届け等々―――
山積みの問題を前に、ヤニ切れを起こした頭がジクジク痛んだ。
「あ~た~ま~が~……いーたいー」
【挿絵表示】
帝国の宰相から呼び出しの書状を受け取ってから一日が経った朝。
―――アルテナとシアを交えたお茶会は、とても有意義な時間だった。
同じ年の少女とは思えないほどアルテナは人と話すのが上手かった。
口下手な俺や、やや緊張していたシアでも興味を持てるような話題をぱっと出したかと思えば、俺が迷った挙句、咄嗟に出した他愛もない話題のどのような単語にも耳をピコピコ揺らしながら反応し、丁寧な所作で聞き入り、些細な疑問を持つと会話が終わった絶妙なタイミングで新しいネタとして話を弾ませる。……いつの間にか食べきってしまったお茶菓子のお代わりを、誰から言うでもなく互いに用意して顔を見合わせ自然に笑ってしまうほど、二人との話は楽しかった。
そのお陰もあって、話疲れた俺は日が落ちて夕食を摂ったあとすぐに寝てしまった。
いつもの習慣で朝日が顔を出すより先に起きると、物音を聞きつけてシアが目を覚ます。
二人で簡単な朝食を摂ってから、まだ眠っているアレーティアとアルテナを残して家を出る。
「シア、今日は南側から東にかけて鳴子の確認を頼む」
「はいっ!ハジメさんは北から西をお願いしますね」
「あぁ。終わったら村の中央広場でな」
アボクさんに見つかったらまた怒られそうな気もするが、
シアの背中を見送りながら、俺も気を取り直して北側へ向かおうとし―――
「あっ……お、おはようございます、南雲くん」
「先生?」
村の人達と同じような衣服を着た畑山先生が、俺の向かおうとした方角から小走りに駆け寄ってきた。
村長の家で泣いて、少し気が紛れたと思ったがその瞳はまだどこか暗い。
単に夜明け前だからそう見えるというのではなく、彼女の纏う空気そのものが湿っているような気がした。
「えっと……その……どこに行くんですか?」
「村の外に仕掛けた鳴子の様子を確認しに。人……は滅多に来ないと聞いていますが、モンスターが村の近くにいないか見て回ってるんです」
「そうなんですね。…………」
先生は何か言いたそうだが、きっとそれを言えば俺が気を悪くすると思ったのか
俯いて左右に視線をぎこちなく泳がせてから、作り笑いを浮かべた。
「その、頑張ってください!先生応援してますよ!それじゃあ……」
「――――――見に来ますか?」
「えっ」
言葉にしなくても分かる。
俺がまたふらっと、どこかにいなくなってしまわないか心配なのだろう。
或いはモンスターのいる外に生徒一人で出歩かせることを
教師としての自分が容認できないと思いつつ、自身の無力さを理解しているから
何かあった時に迷惑をかけることを極端に恐れている。
予想もしなかった先生は驚いた顔で俺の顔をじっと見つめる。
その目を真っ直ぐに見つめ返すことが出来ない俺は、夜明けの空を眺めながら言った。
「ちょっと村の周りを見て回るだけですし、危険はほとんどありませんよ」
「……でも」
「何かあったら俺が叫ぶので、そしたらすぐ逃げてくれれば大丈夫です」
俺の言葉を聞いて、諦めかけていた気持ちが戻ってきたのかもしれない。
だが理性が簡単に彼女の意思を片方に傾けようとはせず、迷い、決めあぐねている。
このままいつまでも立ち往生というわけにもいかず
先に歩き出して促そうとしたその時だった。
「よおハジメ?朝からご苦労さんだな」
「っ!アゥータさん……おはようございます」
「おう、おはようさん」
アゥータさんが遠くから手を振りながら小走りで駆け寄ってきた。
その背には見たことのない黒いヘビィボウガンを背負っている。
飛竜種……いや、鉱石系のボウガン……なのか?
いまの俺には判別が出来ない重厚なそれは老山龍砲と同等かそれ以上の力強さを感じさせる。
「やぁ先生、こんな夜明けに女性が独り歩きとは感心しませんねえ~」
「あ……アゥータさん。その、あの……ごっごめんなさい!何かやましいことをしようとかそういうつもりではなくて、あの――――――」
また変に疑われてると勘違いした先生が慌てて頭を下げようとした。
それをアゥータさんがスッと彼女の肩に手を置いて制止する。
「あっはっは冗談冗談。そんな慌てなくても大丈夫ですよ、何も疑ったりしてませんて。ちょっと会話を小耳に挟んで聞いてたんだが――――――アンタはハジメの見回りについていきたいけど、自分がいたら迷惑をかけるかもしれないと思って迷ってる。――――――当たってます?」
「……は、はい。その通りです」
「なら、俺が貴女をエスコートしましょうか?」
思わぬ誘いの言葉に、先生は若干頬を赤らめながら困惑する。
そんな反応を見たアゥータさんは自信満々に拳を握って強そうなアピールする。
「えっ……その……いいんですか?」
「ええ勿論。少なくとも、俺はハジメよりずっと強い。貴女一人くらい守るのなんて余裕ですよ――――――そうだよなハジメ?」
「そうですね。アゥータさんがいてくれるなら絶対に大丈夫です」
この人がいたら飛竜種が襲ってきても即座に返り討ちだろう。
ましてや、俺が来た頃ならいざ知らず……今の発展したこの村に襲い掛かる物好きな飛竜などいない。
…………商業都市フューレンの近くで見たクルルヤックみたいのは別としても。
俺からの誘いとアゥータさんの提案で、ようやく先生は決心したらしい。
それから二人の前を歩いて、俺はいつも通りの鳴子の確認を行った。
俺が黙々と作業をしている間、二人が何か話している様子だったが聞かないことにした。
鳴子の点検に集中したいという理由もあるけれど……
大人だけの話ってものに餓鬼が首を突っ込むのも野暮だと思ったからだ。
早速AIイラストを乱発する作者ェ……
容量がいっぱいになっても知らないぞ!(自戒)
感想、質問、ご指摘等お待ちしております。
立ち直ったついでに…
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本編の更新を鬼人化汁
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もっと投稿作品の数を増やして追い込め
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いっそリメイク
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イラストはどうした?