モンスターハンター・トータス2   作:綴れば名無し

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 ハジメ達がクエストを開始してから30分が経過。
当の本人達は時計なんて便利な道具を持っておらず、太陽か月の位置で時間経過を把握するよう訓練を受けているのだが、湿地帯ではそれで確かめることも儘ならない。

 そして予想もしなかった魔人族、ショウグンギザミとの遭遇が、彼らの予定を完全に狂わせた。
ショウグンギザミと戦う事も出来たが、魔人族を放置するわけにもいかず…
だからといって戦う相手を逆にするのは自殺行為だと馬鹿でも分かる。

 そもそも魔人族と戦う術を持っているのは3人の中でアレーティアだけ。
ハジメとシアは武器を使わずに素手で魔人族を拘束するしかなかった。
もっとも二人がその気になる可能性は限りなくゼロに近いが…

 獲物を選ばず暴れ回ったショウグンギザミから逃げている内に、アレーティアとシアは近くにいて逸れずに行動できた。洞窟の奥寄りにいたハジメがショウグンギザミを惹きつけて行方知れずとなっている。

 追われていた魔人族側、幸利と彼の操る支配種クルルヤック、副官のフラウは彼女達と同じ方向へ逃げ、結果としてエリア6の湿地帯に戻ってきていた。

「――――――ッ!」

「あ、わ、わわ…!」

「………」

 お互いにホッと一息ついたのも束の間、一触即発の状態に陥った。
フラウが腰の細剣(レイピア)を抜き、シアに向かって切っ先を向ける。
向けられたシアは手にしたハンマーを向けることが出来ず途方に暮れて、代わりにアレーティアが彼女を庇う様に立って両掌をフラウに向けて魔法が撃つ構えを取った。

―――グエエェッ、クエェケケケッ!

 クルルヤックが威嚇する声を聞き、幸利はこの状況は良くないと判断した。
実戦経験の浅い彼だが、トータスに来てから最強と呼べる存在と最弱である自分、その間にいる者達を数多く見てきたお陰で、目の前の少女2人が数的不利にありながらも実力だけは自分達を上回っていると直感で気づく。

(特に金髪の小さいのはやばい…ここは一つ穏便に…!)

「―――な、なぁフラウ。クルルヤックも…今は戦ってる場合じゃないと思うんだが…」

「…清水様、何故ですか!?ここは敵地!目の前にいるのも任務遂行を妨げる敵!敵は排除して、我々は任務を完遂しなければここに来た意味が―――」

「だからだよ。任務達成にはあらゆる手段を尽くす必要がある。…それがたとえ、敵対する人間側と戦わない選択肢であっても…な。そっちのお2人さん…はどう思うよ、この状況で?」

 幸利に声を掛けられて、シアが彼の言葉に同意するように首を何度も縦に振る。
それでもまだ剣を構えたままのフラウに対し、アレーティアがゆっくりと手を下ろす。
彼女の紅い瞳は、目の前で不敵に笑っている―――ように見えるが、内心かなりパニクってる―――幸利が何を考えてこのような提案をしてきたのか、真意を掴みかねていた。しかし…

「…私達はハジメと…さっき一緒にいたハンターと合流する事を望んでいる。そっちも一緒にいた青髪の男と合流する事が望みなら、ここで争うのは互いに利がない」

「………分かりました。ひとまずこの場は休戦と致しましょう」

「あぁ…そっちのウサ耳の君も、それでいいよな?」

「は、はひぃ!勿論ですぅ…!」

 ようやくフラウが細剣を下ろして幸利は胸を撫で下ろす。
それからまだ威嚇していたクルルヤックに「もういい」と言って静かにさせると、彼は深い溜息をついて後ろの切り株に腰を下ろしてから、改めてアレーティア達に話しかける。

「ところで君達は「アレーティア」「わ、私はシアといいます!」…アレーティアさんとシアさんは、ハジメとはその…どういう関係なんだ?」

「…色々あってハジメに救われた」
「私も似たようなものです。…貴方は?」

「俺?…うーん…どこから話せばいいものか…」

 両者の出会いが、後に戦争の渦中でありながら暗い影を落とすことなく命のやり取りを繰り広げた稀な例として歴史に記されることを、まだ誰も知らない。




湿地帯の将軍・鎌蟹

 

(参ったな…こいつの相手は二度目とはいえ、この武器ではこれが初だ…)

 

―――シャアアァァ!

 

 シア達と逸れた後、魔人族のレイスを狙っていたショウグンギザミはいつの間にか魔法で姿を暗ませた奴の代わりに、ガミザミの血の臭いを体中に纏わせた俺を見て標的を変更する。

 

―――間違いなく、目の前の人間は同族を殺した。

縄張りに入ってきて消えた奴も絶対に殺す。一緒にいた掻鳥も殺す。

だがそいつらより先に…武器を構えて戦う意思を見せたコイツ(ハジメ)を殺す!

黒々とした瞳がそう言っているように見えた。

 

「おっと!ぁっぶねぇ…」

 

 折り畳まれた鋏が頭上に迫り、舌打ちと共に後ろへバックステップを踏む。

衝撃で水をたっぷり含んだ柔らかい地面が割れて、辺りに泥水の飛沫が飛び散った。

対抗するようにツインダガーの切っ先をショウグンギザミへと向けて考えを巡らせる。

 

(こいつの爪も脚も、共通して刃が通りにくい……シアの武器、ハンマーの打撃があれば部位破壊で転倒狙いからワンチャンあったかもしれないが……。……いや、此処でないものねだりしても始まらないか。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…!)

 

「やるぞぉ!!おっしゃぁぁぁ!!」

 

 自分を鼓舞する為の掛け声を上げる。

俺は鬼人化してショウグンギザミとの距離を詰めようと駆け出す。

対する向こうは左右交互に牽制攻撃を仕掛ける。

 

「――――――ッ!」

 

 走るだけでは避けきれない。そう判断して足の裏側に力を込める。

フッ!と息を切って前のめりに急加速する体。

左右から迫る鋏の攻撃を掠りもせず奴との距離を詰めた。

 

 これが双剣の長所である鬼人化の高機動力だ。

常時スタミナが減る…人体で云うところの筋肉や関節の動き、血液や酸素の活動が人体の害となる一歩手前まで追い込まれる極限状態になってしまう。

その代わり、双剣使いは身のこなしが近接武器で一番軽やかになる。

 

「ふぅ、はッ!せぇッ!ぜぁっ!」

 

 鋏の下、藍色の殻に包まれたショウグンギザミの本体を支える脚の近く。狙いを定めた脚一本に集中してツインダガーを振るう。

足下に入り込まれたショウグンギザミは諦めずに鋏で俺を攻撃しようとする。

 

 だが、それも俺にとって想定の範囲内だった。

距離を詰めた時から、関節可動域を外れた場所に立つことを意識していた。

虚しく空を切る鋏を視界の端に捉え、俺は勝気な笑みを浮かべる。

 

 これがショウグンギザミの弱点の一つである。

懐に入ってさえしまえば、攻撃に於いてはハンターが一歩先をいく。

賢い個体ならそれを理解してハンターを懐に入れさせないようにするのだが、幸運な事に眼前の個体は只の上位個体。自身の体の大きさを気にして戦うほどの知能はなかったようだ。

 

―――ギシイィィィッ!

 

「甘ぇ!!」

 

 煩わしいと言わんばかりにショウグンギザミは右回りに回転して吹き飛ばそうとしてくる。

俺は攻撃の手を一旦止めて、迫りくる鋏、脚、ヤドの隙間を狙ってステップ。

腰を低く落とした鬼人化時のみ使える”鬼人回避”

全ての攻撃を避けた直後、全身から発せられる異様な重みでスタミナの限界に気づく。

 

(…ちッ、鬼人化解除…!)

 

「―――ッふぅぅ!」

 

 じっとりと項に汗が滲んで、心臓の鼓動がやけに大きく聞こえる。

ここから数秒間、最低でも5秒以上は鬼人化を使わずに攻撃する必要があった。

その隙を逃さずショウグンギザミは鋏を使って地中へとその身を隠す。

 

「不味いな…このままだとッ―――!?」

 

 口から思わず零れた不安は一秒半で的中する事になった。

地面の揺れを感じて、俺が武器を納刀して走り出そうとした瞬間。

足下から飛び出してきた一対の鋏が脇腹を殴りつける。

 

「ご、ぁ…っ」

 

 うめき声を上げて衝撃を受けた体が壁際へと体が転がっていく。

喉奥からせり上がる血を吐き出して、襲ってくる痛みに苦悶の表情を浮かべた。

…だが、覚悟していたよりもダメージは大きくなかった。

 

 そこで俺は初めて自分の着る防具が以前とはけた違いの性能だった事を思い出す。

上位防具単体の防御力に加え、スキル”防御”Lv3の発動がダメージを抑えていた。

血をペッと吐き出してから不敵に笑って起き上がる。

 

「くっはは!…効いたぜ、()()()?」

 

 再び足下が揺れる。しかし既に武器は納刀済み、同じ轍は踏まない。

迫りくる鋏を、前方にローリングして躱した。

また震動、躱す。震動、躱す。震動―――5回目でようやく地中からの追撃は止む。

地面を掘り起こして奴が出てくる所に向かってツインダガーを抜き放ち襲い掛かる。

 

「こいつはお返しだ!」

 

 鬼人化からの連撃を、狙っていた脚目掛けて繰り出す。

一度振り回したら止められない。隙だらけになるのを承知の上で双刃を叩き込む。

 

「オオオオォォォォ――――――チェストォ!!」

 

 上段に構えた双剣を地面へ叩きつける勢いで振り下ろす。

鬼人化の連撃に耐えきれなかったショウグンギザミの脚を包む甲殻がひび割れる。

 

―――ギシィィッ!?

 

 狙い通りに転倒したところを間髪入れず、鬼人化を継続して二度目の連撃を食らわせた。

今度は脚ではなく本体、硬い殻に包まれた箇所を執拗に何度も刃で切りつける。

転倒から復帰して、ショウグンギザミの体に変化が現れた。

俺もスタミナが限界を迎え、鬼人化を解いてから後ろへ二歩跳んで構え直す。

 

 棍棒のように畳まれていた鋏が、呼び名の通り鎌状へと展開される。

口から頻りに泡を吐いているのは怒り状態に入り、体内の運動が活発になっている証拠。

 

「よっしゃあ…やってやらぁな…!」

 

 さっきの攻撃を食らって必要以上に恐れる事はないと理解した。

体に戦いの熱が入り過ぎた反動で、脳内麻薬(エンドルフィン)がドバドバ溢れて来るのを五感が感じている。

遠くから誰かの視線を感じるけれど、そんな事も気にならないくらい……

 

「俺とお前、どっちが狩られる側か、タイマン勝負だカニ野郎ォッ!!」

 

―――ギシシィィィッ!

 




 まずは皆さま投稿が遅れてしまった事を深くお詫び申し上げます。
活動報告の方にも書きましたが、ぶっちゃけ仕事に忙殺されていた+遊び呆けていたのが原因です。主にAPEXです。全部APEXが悪いんです(責任転嫁するプレイヤーの屑)
そして週末に競馬の宝塚記念…おどれはやる気あんのかオォン?(自問自答)
ついでに大して重要じゃないけど本作初のアンケートやります。

感想、質問、ご指摘等お待ちしております。
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