とある科学のホワイトルーム生   作:嫉妬憤怒強欲

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とある科学の超電磁砲の連載終了しましたね。
少し寂しいです。


教え子たち

「もしかして、君の友人の身体ってファンタジー?」

「知りませんよ」

 

 風紀委員の支部を出た後、知り合いのカエル顔の医者から上条が怪我をして入院していると連絡がきて、病院に向かった。

 病室には右腕を包帯でグルグル巻いて吊っている上条がベッドに寝かされている。

 

「…………なあ、上条。お前先週退院したばかりだよな?いったい何をどうしたら一週間後にまた入院になる。しかも今度は右腕って…………手品の解体ショーを真に受けて試してみたくなったのか?」

「んなわけあるか!どんだけ上条さんがお馬鹿さんだと思ってるんだよ!?」

 

 大怪我した割にすごい元気だな。やはりゴキブリの親戚じゃないかと疑ってしまう。

 もし高台で瓦礫の下敷きにならなかった反動が翌日に来たというのなら、こいつの不運は半端ないな。

 

「…この調子が続くなら来週の入院の予約を入れたほうがいいな」

「なんで来週も大怪我する前提なんだよ!?」

「ここはホテルじゃないから勘弁してほしいね」

 

 カエル顔の医者から冷静にツッコまれた。

 

「で、なにをどうしたら右腕切断に?」

「いや、その…ちょっとな……」

 

 急に歯切れが悪くなったな。上条のことだからオレの知らないところできっと誰かの為に闘ったんだろう。

 他人を基本巻き込みたくないこいつのことだ。

 オレに気を遣って話すら持ってこなかったか。呼ばれても内容によっては行かないが、なんか癪だ。

 

「…さては、インデックス絡みの事件に首を突っ込んだな?」

「ギクッ」

 

 図星か。ギクッて擬音を口で言うの初めて聞いたぞ。

 

「……話さないとうっかり口を滑らせて上条が修道服のコスプレをした女子と同居してること青髪あたりに話しちゃうかも」

「なっ!!?おいこら卑怯だぞ!黙認してるお前も同罪だろ!つかあのロリ好きに言うなんて絶対面倒くさいことになるわ!」

「なんか訳ありみたいだけど節度は保ってよね」

「お医者さんに真っ先にバレちまったよ!?どうしてくれるんだ!」

 

 この人口は堅い方だから大丈夫だろ。

 

 医者に一度退室してもらい事情を聞く。

 要約すると、イギリス清教のステイルに「三沢塾」という科学崇拝する頭のおかしなグループに監禁された姫神秋沙という少女の救出の手伝いを依頼され、共に潜入するもそこを乗っ取っていたアウレオルス=イザードという錬金術師と戦うことになり、右手を切断されるもなんとか倒したと。

 しかもその錬金術師はインデックスの元パートナーで、彼女を救う為に色々と奮闘していた、と。

 

「…………なんだかな」

「あ?どうしたんだよ清原」

「いや、なんでもない」

 

 正直、魔術サイドの問題に科学サイドの上条に協力を仰いだっていうのが引っかかる。

 わざと上条が死ぬような目に合わせているんじゃないかと疑ってしまうのだ。

 

 ステイルがいる必要悪の教会の上層部はインデックスに呪印なんか仕込んで記憶を消させる連中だぞ。なにがなんでも裏切られる前に早く回収して新しく呪印を仕込みたいはずだ。だが無理矢理上条から引きはがそうものならそれこそ反撃される恐れがある。滅茶苦茶強いだろう神裂やステイルも含めて。

 ならどうするか。別の奴に上条を殺してもらえばいい。直接手を下さなくてすむし、後はいろいろと言い訳できる。今回はぎりぎり五体満足でこいつは生き延びたが。

 

 まあ今回その錬金術師を無力化できたことは、上層部にとって都合がよかったはずだ。

 アウレオルスはインデックスを救おうと奮闘していた。もしインデックスが苦しんでいたのが上層部の仕業だって耳に入れば、アウレオルスは連中を皆殺しにしていただろう。インデックスがもう助かったのを知り、八つ当たりで上条達に襲い掛かってきたくらいだ。必ずそうなる。

 

 だからやられる前に、邪魔者同士をぶつけて先手を打ったってところか。

 

 実際はどうなのか定かではないが、どっちにしても上条はその姫神という少女を助けに行ったのだろう。例え利用されていると分かっていても、自分が深手を負ったとしても、結果的に誰かが助かればそれでいいと自己完結してしまう人間だ。

 

「…………お前ってつくづくイカれてるな」

「えっ、急になんだよ」

「いや、右腕切断されたら大笑いしたんだから」

「人を変態扱いするな!あれはあいつの魔術を破るための演技で――――」

「わかったから。そういうことにしておく」

「そういうことって、全然わかってねえだろ!」

「あまり病院で大声出すな。他の患者に迷惑だろ」

 

 そろそろお暇しよう。

 

「それじゃあオレはそろそろ行く。早く退院しろよ。インデックスも腹を空かせて待ってるだろうし」

「お、おう。それはいいけど………って、なんかその言い方だと俺がインデックスのご飯作る係みたいに聞こえるんだが?」

 

 実際そうだろ。

 

「そう思うならイギリス清教に経費を請求してみたらどうだ?今回の治療費と入院費、ついでにインデックスの食費も負担してもらえば少し楽になるだろ」

「清原、お前天才か!?」

 

 いや上条、お前が馬鹿なだけだから。

 病室を出ると、廊下でカエル顔の医者が待っていた。

 

「随分話し込んでいたね」

「そんなに長くは話してないと思いますが?」

「いや、最初に君と話したときは淡々としていて会話が長続きしなかったからね。あの頃に比べれば君は変わったと思うよ」

「変わった、ですか」

 

 いや、ただ周囲の環境にある程度適応(・・)しただけだ。根本的なところは何も変わっていないと思う。

 

「……まあオレのことはいいです。それより、あっちの患者達の容態はどうですか?」

「途中までは治療が順調にいってたんだけど……やはり最後のところでかなりの難関に躓いてしまってね。彼女もお手上げ状態だよ」

 

 そう言って医者はオレにカルテに挟んだ資料を渡す。

 資料に一通り目を通したオレはすぐにそれを医者に返した。

 

「その難関……ひょっとしたらなんとかなるかもしれませんよ?」

「?どういうことなんだい?」

「まだ具体的な方法は考え中なので言えません」

 

 本当はすでに仕込みが終わっている。後は待つだけ。

 それを伝えても良いが、話したら猛反対するだろうしな。

 

「一つ言えることは、オレにできることは無いということですね」

 

 オレはあの連中に顔を見られるわけにいかないし。

 

「それじゃあオレはこれで。上条のこと頼みますよ」

「ああ。君からも彼に無茶しないように言ってほしいんだがね」

「無理ですよ。あいつ学習能力皆無ですもん」

「すごい辛辣だね、本当に友達?」

 

♢♢

 

 日が沈もうとしていた時間帯。

 初春と白井が連絡を取り合いひとまず和解した後、初春から木山春生の潜伏先を特定したと告げられた。

 

「え、ここって……」

 

 御坂が白井に協力(もとい強引について来た)して空間移動(テレポート)した先は、第七学区にある病院だった。

 

「黒子、本当にここ?」

「初春がここ数日の監視カメラの映像を洗い出したところ、深夜の時間帯に木山先生らしき人物が運転している姿が映像の端に映っていました。走行ルートは日毎にバラバラでしたが、映っていた学園都市中のカメラの位置と車線、移動パターンから逆算してみたところ、木山先生はその周辺を拠点にしているみたいです」

「でも、病院に隠れてるって流石に無いんじゃない?病院も身元を確認するだろうし……」

「ですがお姉様。木山の供述によると子供たちは全員植物状態にあり、何度も転院を繰り返しています。全員が一か所に集められているとしたら、病院のように設備の整った場所でないと生命維持が難しいでしょう」

「………まあ、確かにそうね」

「それに今のところ木山晴生の足取りを掴む手がかりは初春の有力な情報だけです」

 

 いつも御坂の前では変態丸出しの白井も今回は風紀委員モードである。

 仲違いしていたとはいえ、初春を信頼していた白井は彼女が掴んだ情報なら間違いないと確信していた。

 

「お姉さま、あれを」

「あっ、あの車!」

 

 病院の地下駐車場を足を踏み入れると、木山が使っていたのとまったく同じ型の外車、赤のランボルギーニが駐車していた。

 

「間違いないようですわね。木山はこの病院にいるみたいです。まずは中に入ってくまなく探しましょう。ひょっとしたら、病院関係者の中に顔を見ている人物がいるかも―――」

 

 ガチャ

 

「「ん?」」

 

 直ぐ側から扉の開く音がした。

 白井と御坂が反射的に音のした方向に目を向けると

 

「おや、君たちは………」

「木山春生!?」

 

 非常口の扉から出てきた女性、幻想御手(レベルアッパー)事件の首謀者であった木山春生がいた。

 

「こうも早くまた君たちに会うとはな」

「アンタ!」

「ちょ、落ち着いて下さいお姉様!」

 

 御坂から電気がバチバチいっているのを見て白井が止めようとするが既に遅く、辺りにあった車のセキュリティアラームが誤作動を起こし、けたたましい警告音が鳴り響いた。

 

「あっ」

「お姉様…」

「わ、わざとじゃないわよ!」

「…はぁ、こっちだ」

 

 木山は仕方ないと諦めたのか、二人について来る様に促す。

 騒ぎになってしまいその場からすぐに離れたかった御坂と白井は、警戒しながら木山の背中を追う。

 

 病院内の通路をしばらく進むと、一つの病室に辿り着いた。

 

「これは……!?」

「私の記憶を覗いた君なら知っているだろう」

 

 ガラス張りの病室。その中には十人の少年少女たちが、生命維持装置のようなものを取付け、眠っているようにベッドの上に横たわっていた。

 木山の教え子たちも丁度十人。その中には春上の友人である枝先絆理らしき少女の姿もあった。

 

「ではこの子達が?」

「………私の教え子たちだ」

「やっぱり………!ポルターガイストを起こしていたのは―――」

「だから落ち着いてくださいましお姉さま!病院の機器が壊れたらシャレになりませんわよ!」

「うっ」

 

 御坂がまた能力を使わないように抑えた白井は、木山と向き合う。

 

「木山春生さん。貴女は自分の教え子たちを目覚めさせようと必死になり、幻想御手事件を起こしました。事件の首謀者であった貴女が釈放された後も諦めずに尽力していたはず。最近多発しているポルターガイスト現象………彼らが起きようとしている際に起こる副作用なのではないのでしょうか?」

「………ほう、そこまでたどり着いているか」

 

 当たりだった。

 

「風紀委員にも優秀な人材がいるんだな」

「いえ、とある方からの知恵を借りただけです。詳しいことはまだ………どういう状況なのか貴女の口からお聞かせ願えますか?」

「………わかった。今この子達の身体は『能力体結晶』に侵されている」

「能力体結晶?」

「能力者に意図的に拒絶反応を起こさせ、超能力を暴走状態にさせる薬物だ。あの実験で投与されたこの子達は昏睡状態になり、意識が覚醒に近付くと連鎖的にRSPK症候群を引き起こす、眠れる暴走能力者と成り果ててしまった」

「そんな……」

「あの実験……暴走能力の法則解析用誘爆実験のことですわね。主導者は木原幻生という科学者だったとか」

「私はあの男にまんまと利用された。そのせいでこの子達はこんな目に………後から知ったことだが、その誘爆実験すら方便………本当は能力体結晶の投与実験だったんだ」

「なんのためにそのような実験を?木原幻生の目的とはいったい?」

「それは――」

「――それは僕の口から説明しよう」

 

 

 通路の奥から一人の白衣姿の人物が現れた。

 

「貴方は――」

「リアルゲコ太!?」

「久しぶりだね。なんだかすごく失礼な覚え方されているみたいだけど」

 

 幻想御手事件の際、白井と御坂の方で捜査に協力していカエル顔の医者だった。

 

「どうして貴方が…」

「あの事件に関わり、事の経緯を知ってね。色々と手をまわしたんだ」

「えっ、それじゃあ……」

「ああ。木山君の保釈手続きや、子供たちをここで匿うのに協力しているのは僕だ」

「「ええっ!?」」

 

 意外過ぎる事実に二人は驚く。

 

「なんで…」

「なんでって、僕は医者だよ?患者の命を救うのが仕事だ」

「あっ、いや、そういうことじゃなくて……」

 

 当たり前のことを言うが、そもそも患者を匿ったり犯罪者を保釈することができるこの医者は何者か気になる。

 が、それよりも今は…

 

「ご存知ならお聞かせ願えますか?彼の、木原幻生の目的について」

「――――絶対能力者(レベル6)

「「?」」

 

 医者の口から出た単語に、二人は首を傾げる。

 学園都市では能力の強度は6つの段階に分けられていて、その頂点が超能力者(レベル5)となっている。絶対能力者(レベル6)なんて段階はなかったはずだ。

 

「公になっていないから知らないのも無理ないね。絶対能力者とは超能力者の先にあるもの。その創造が学園都市における超能力開発の究極の目的だよ」

「えっ」

「神ならぬ身にて天上の意思に辿り着くもの――SYSTEMへと至る第一歩。木原幻生は学園都市におけるSYSTEM研究分野の元老だ。絶対能力者の創造に憑りつかれている彼は、自分の目的のために数多の能力者と研究機関を破滅させてきた。木山君が救おうとしている置き去り(チャイルドエラー)達も、その一部に過ぎない」

「そんな…」

「ですが、能力を暴走させることと絶対能力がどう関係していますの?」

「暴走能力者の脳内では通常とは異なるシグナル伝達回路が形成され、各種の神経伝達物質、様々なホルモンが異常分泌されている。能力体結晶はこれらの分泌物質を採取し、凝縮、精製したものだ。木原幻生曰く、それを選ばれた能力者に投与すれば絶対能力者を生み出せるんだと」

 

 馬鹿げている。

 そんな都合よく生み出せるのなら苦労しない。

 正気の沙汰とは思えない試みに、二人の中には嫌悪感しかなかった。

 

「そんなとっかかりも見つかっていない者のために、そんなイカれた実験のせいで、この子達はこんなにされたって言うの!?」

「前に学会で彼と顔を合わせたことがあってね。いったいどれだけの犠牲を出したのかとね。すると彼はこう言った」

 

―――私の研究に犠牲者などいない。いるわけがない。

 

「彼がその存在をどう認識していたかは知らないが、犠牲者はいたんだよ。あの事件(幻想御手)に関わり、事の経緯を知り……そして確信したんだ。しかも木山君から聞いた話では、幻想御手の元となった脳波調律のインストラクションのアイデアも、木原幻生から授かったものらしい」

「「え!?」」

「………だがあれを作ったのは私の意思だ。その事実は決して変えられない」

 

 『幻想御手』のアイデアの元を考えたのが木原幻生。

 木山が『幻想御手』事件を起こした原因も木原幻生。

 元を辿れば全て木原幻生に繋がっていた。

 

「僕にできるのは患者であるこの子達を救う事だけだ。幸い、全員を集めるのにそう時間はかからなかった。僕はこの街では多少顔が利くからね。あとは目覚めさせるために専門家の話が聞きたくて…」

「それで保釈を………」

「無理を言ったのは私の方だ。先生には感謝している。ここの設備を使えたおかげで、この子達を目覚めさせる目処がついた」

「えっ、でも………」

「ああ。そこで問題が発生した。覚醒が近付くと、AIM拡散力場が異常値を示した。能力の暴走………それがRSPK症候群の同時多発へと繋がった。目を覚ませばポルターガイストが起こる」

「何か方法はないの?」

「………暴走を鎮めるワクチンソフトを開発している。ただ、能力体結晶の根幹をなしているのはファーストサンプルと呼ばれる、最初期の人体実験の被験者から精製された成分だ。ワクチンソフトを完成させるには、どうしてもそのデータの解析が必要なんだ……!そのデータを探すため、ここ数日木原幻生と関わりのあった研究所にいくつか足を踏み入れたが、空振りに終わった」

「それで走行ルートがバラバラだったんですの………」

「………だが、諦めるものか。あのデータは能力体結晶の研究に必要不可欠なものだ。それだけの物が廃棄される筈がない。どこかに必ず……!私はどんなことをしても見つけ出してやる……!」

 

 木山の言葉に噓は感じられなかった。

 自分の教え子たちを救いたい。ただそれだけの為に必死になっている。

 あの事件も、その思いが暴走して起こってしまったのだ。

 そしてそれは周囲に多大な影響を及ぼす危うさがあった。

 学園都市と教え子たちを天秤にかけられた時、真っ先に教え子たちを選ぶ、そんな危うさだ。

 

「………もし、見つからなかったら?」

「この子達は覚醒させる!」

「ポルターガイストが起きるのを承知の上で!?」

「これ以上、この子達を眠らせてはおけない!」

「だからって、そんな………!」

「―――そう。そんな事はさせない」

 

 新しい声が聞こえて後ろを見ると、テレスティーナが部下を引き連れて後ろに立っていた。

 

「て、テレスティーナさん⁉︎」

「どうしてあなたがここに……?」

警備員(アンチスキル)の方に匿名で通報があったの」

「通報?」

「第七学区の病院周辺で木山春生によく似た女性を見かけた、ってね。事態が事態だから私たちが代わりに出向いたの。で、ちょうど貴女達が病院に入っていくのを見かけて後をつけさせてもらったってわけ」

「いったい………?」

先進状況救助隊(MAR)です。子供たちを保護します。大人しく我々に従ってください」

「………それは命令か?」

「ええ、レスキューとして学園都市に被害が出る事態は断固阻止します。令状も用意しましたが、私としては自発的に引き渡していただけることを望みます」

 

 テレスティーナから手渡された一枚の紙を、医者が受け取って確認する。

 

「本物のようだね?」

「安心してください。我々は人命救助のスペシャリストです。能力者を保護し、治療するための設備は整っています」

「しかし……」

「貴女にアクセスできないデータも、我々であれば合法的にアクセスできます。今のお話しにあったファーストサンプルのデータも入手できる可能性が高いのです」

 

 確かに。それならテレスティーナに任せれば子供たちを救える可能性が高い。

 その場の誰もが考える中。

 

「待て!」

 

 再び子供たちと離れてしまうことを恐れと責任感から、木山は子供たちを運び出そうとするテレスティーナの部下たちを阻もうとする。

 だがその前に御坂が立ちはだかった。

 

「……何の真似だ?」

「気に入らなければ邪魔をしろと言ったのはあんたでしょ」

「お姉さま……」

「どけ!あの子達を救えるのは私だけなんだ!」

「救えてないじゃないっ!」

「!?」

「幻想御手を使って、ポルターガイストを起こして………でも一人も救えてない」

「あと少し………あと一息なんだ。だから………!」

「枝先さんは今、助けを求めているの。春上さんが………私の友達が、彼女の声を聞いているのよ」

「……!」

 

 御坂の口から事実を突きつけられ、木山は膝から崩れ落ちて動けなくなった。

 子供たちがテレスティーナ達によって運び出されるのを止められないままずっと………。

 

 

 

 

『まもなく、完全下校時刻です。生徒の皆さんは下校を―――』

 

 完全下校時刻を告げるアナウンスが聞こえる中、オレは公園のベンチに座り、スマホの画面に映る映像を確認していた。

 

 ここまでは予定通りだな。後は………

 

『いったいどういうつもりなんだね?』

「ん?」

 

 突然声を掛けられ、振り向くとソイツはいた。

 

「アンタか」

 

 茶色のリュックを背負ったその生き物は、リュックから伸びたロボットアームを使って葉巻に火を点けていた。

 

「どういうつもり……とは何の話だ?」

『とぼけなくていい。君が裏でコソコソ動いているのは知っているよ。ちょうど『幻想御手』事件のすぐ後、君が唯一君に調べ物を頼んでからだね』

 

 あの女、こいつに告げ口したな。やっぱりお菓子で買収は無理があったか。

 

『君が学園都市に来た時に取り決めがあったはずだ。”私と私の弟子以外の一族に干渉しない”半年以上経って忘れてしまったのかい?』

「いいや、ちゃんと覚えている。こうして接触しないように立ち回っているんだから問題ないと思うが……」

『物は言いようだな。』

「それに、もうとっくに巻き込まれた。友達……と呼んでいいか微妙な関係だが、知り合いがな」

『友………まさか君の口からそんな言葉が出てくるとはね―――ホワイトルームの最高傑作』

「………その呼び方やめて欲しいな」

 

 それが通るのはホワイトルームの中でだけ。あそことこことを比べたら、所詮オレはここでは井の中の蛙だ。

 

「それはそうと、アンタの身内の方こそどういうつもりなんだ?あんな無意味なことをして」

『ん?何の話だね?』

「なんだ。アンタでもちゃんと把握していないのか。アンタの身内の一人が、とっくの昔にメインストリームからは外された計画を完遂させようとしているみたいだぞ?」

『なに?』

 

 思いがけず、葉巻を落とす。

 

 いずれこいつに事情を説明する必要があった。気付かれるのは許容範囲内。

 向こうから来てくれただけでも好都合だ。

 

「下手すれば、学園都市そのものが消えてなくなる。アンタらも巻き添えにして」

 

『………詳しく聞かせてくれ』

 

 

 

 ママー、あのお兄ちゃん犬とお話ししてるよー

 しっ、見てはいけません!

 

 




よう実二年生編がアニメ化しましたね。
一夏が小悪魔で少しゾッとしました
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