「…ぐ…すぅ」
「霊覇君…」
あの後霊覇は早苗の膝で眠っていた
その表情は穏やかな顔から一瞬苦痛へと変わる
そしてまた、憎悪と怒りにも変わる
「…アンタの友人?」
「ええ、外の世界で同級生…同い年だったんです」
そう言う早苗の顔は少し悲しそうだった
「お前友人は選んだ方がいいぞ…」
「霊覇君だって最初からこうじゃなかったんですよ」
魔理沙の青ざめた顔に早苗はポツリと言う
それに興味を持ったのは勇儀だった
「へぇ?確かに"殺す"と言ってた割には嘘が入ってたが」
「あれがなければ今頃普通に暮らせていたかもしれませんね」
「あれ?」
霊夢は首を傾げた
その反応に思わず守矢神社勢は驚いた
「知らないのか?」
神奈子が聞く
「まさかここにそれは伝わってないのかい?」
諏訪子がお酒を飲みながら言った
「何を言っているのかしら?」
「外で戦争でも起きたのかぜ?」
「死人は多くないですよ?」
「知らないわね」
霊夢、魔理沙、妖夢、咲夜は同じように言う
それに早苗はある事実を突きつけた
「病気が流行って男性の九割は死亡してますよ?」
「――はっ?」
場の空気が凍った
この少女は何を言っているのだろう
その内容が全く頭に入ってこなかった
「…おいおい、冗談キツイぜ」
「…本当だ、今や男の世界人口は1000にも及ばない」
「あ!霊覇君起きました?」
目と口が開き、言葉を繋ぐ
早苗が嬉しそうに声を弾ませる
皆が武器を構えた
「…何警戒してんだお前――」
膝枕から飛び起きて低く構える
瞬間また霊覇の目の色が消え――
「気を確かに!霊覇君!」
「――っあ」
霊覇はその場に座り込んだ
「あぁ、燦莉の言ってたヤツか、これが」
本人は自覚していないようだ
その間に何があったなんて
「推測すりゃ俺が迷惑かけたようだなぁ、まぁ悪いのはスキマのほうだが」
霊覇は視線を気にすることなく煙草を咥えて火をつける
その行為が早苗にとって違和感しか無かった
「…煙草、吸うんですか?」
「当たり前さ、もうコイツが無いとやってけなぇ」
煙を吐く
「…アンタ、名前は」
「俺は気桐 霊覇…俺と話す時には1体1にするんだな」
「トラウマ持ちかしら?」
霊夢と霊覇が会話を続ける
「あぁ、基本的に俺は(お前らみたいな)美人を信用してないのさ」
「…何が繋がるのかしら」
「美人程嘘をつくんだよ(お前もそうか?)」
「(確かに)そうね」
「不細工の方が信用できる気はするがね…」
「本当に!?(私達を信用してくれるの!?)」
「ああ、そうだよ(お前らは無理そう…か?)」
「ありがとう(信用してくれて)」
「あぁ、こちらこそ(信用できねぇ)」
言葉のすれ違い通信中である
早苗がわくわくしながら聞く
「私は信用出来ますか?」
「美人…まあ幼なじみの友情よな」
「友人として見ているのかしら?」
「そうだろ、普通」
そういうと霊覇は手を杯に伸ばす
「気分変えに酒を飲ませてもらう、異議ないよな?」
「まぁ宴会なら普通でしょう」
幽々子がそう言った
「…あー、何かあんたと話すと変な感じがする」
「あら、何故かしら」
「スキマと同じ雰囲気というのもあるが…何だか」
釈然としない顔で酒を飲む
「…ただアンタに心を許したくない、いや他の連中もそうだが」
「本心を話してくれないのかしら」
「会ったばかり、女、話す要素が何処にある?」
また杯を煽った
「――あ」
「どうかしたか…あー」
「霊夢、博麗霊夢よ…その」
「歯切れ悪いな」
「…アンタ何処に住んでいるのよ」
…その杯私が飲んでいたのだけど
その言葉を抑える
赤面している霊夢を不思議に思いながら霊覇は言葉を繋げる
「妖怪の山辺りだ、気をつけな、ブービートラップがあるからな」
「関節キス…私は飛べるからいいわよ」
直では無いが、何かを失った気がした
「はん、お前を見ているとアイツを思い出す」
「誰よ」
「孤児だった時かね、路地裏で出会ったんだが…はぁ」
変な空気に場が変わった
それを変える様に美鈴が話しかける
「私、紅美鈴と言います…ちょっと質問があるのですが」
「何だ」
「先程の近接格闘術は一体…?」
霊覇は首を傾げた
それを使った記憶が無いのか
「CQC?…あー」
大体を察したらしい
霊覇は言葉を選ぶ
「そうだな、独学で近接格闘術をやっていたらこうなった、としか」
「実演出来ますか」
「早苗、1戦やるか」
「ナイフは?」
「ナシで」
「…ナイフ?」
思わず呟く
その近接格闘術にはナイフが必要なのだろうか
「一種の武器さ、有る方がいいならそれでやる」
「いえ、大丈夫です」
「さて…」
そのするりとした会話に嫉妬を霊夢は覚える
どうしてあんなに仲がいいのだろう
私は彼の事をもっと知れる気がする…
そんな嫉妬を蓄積する霊夢を尻目に構える
左手を長く、右手は少し曲げるポーズで構える
一方早苗は両腕を曲げ、縦に並行して構える
ぐっと拳を握る
「早苗…」
そのポーズは早苗には似合ってない、というとした諏訪子
たが、それは意外と彼女とマッチしている
「行くぞ!」
「いつでも」
先制は霊覇だった
構えの下側…腹の辺りに拳を入れる
それを掴み、捻って拘束するような姿勢になる
霊覇はそれを解いてまた同じような事を早苗にする
そして早苗の気が緩んだ瞬間、地面に投げ飛ばそうとする
しかし、流石は教え子とでも言おう、手を地面に突く勢いでそれを回避する
お返しとして足を霊覇の足に引っ掛けて地面に叩きつけようとする
それを前回り受け身で回避し、また距離を離す
「…凄い」
そのスタイルに美鈴が感嘆の声を出す
こんな戦闘を見たことがない
「あんな事も出来るんだね、早苗は」
「彼には感謝…か?」
二柱は少しの会話をした
その間に早苗は叩きつけられ、決着はついていた
「良し、あれから成長はしているらしいな」
早苗に手を伸ばす
彼女はそれを握って立ち上がった
…なんか嫉妬の視線を感じたような
「明日辺りに守矢神社に来てください!
色々とお話をしたいです!」
「へへ、思い出話は尽きなさそうだ」
…なんで早苗と霊覇があんなに仲が良いのよ
私だって、彼と仲良くしたのに
霊夢は嫉妬をまた蓄積していった