「よっと」
霊覇は傘を開く
雨の当たる音が心地よいものだ
森を抜けた先は原っぱだ
獣道が所々にあり、冒険心を擽られる
…今は博麗神社に向かう事が先決だ
といっても深い用がある訳では無い
やることがないから行こうと思ったのだ
「さてさて、行きますか」
一応のお土産程度に作った料理を持っている
山賊焼き等々だ、美味そう…
「食う前に早く行くか」
霊覇は低い山に向かう
その山に霊夢がいると聞いている
確かにまぁ、居そうな感じだ
あの神社にあまり"人間"は来ていなさそうだったし
「失礼か?」
失礼だろ、普通…と自問自答する
当たり前の事だな
と、思っているとその山の麓に来た
見たことの無いくらい長い階段がある
「…行くか」
〇
「…暇」
私は縁側で日向ぼっこをしていた
やる事が無いから、である
いつもの依頼も今日は来なかった
…霊覇が来てくれないかなぁ
私はとっさに首を振る
多分、来ないだろう
用が無いのに来るバカが居るだろうか
…それだといつも来る奴ら馬鹿だな
クスリと笑いが零れる
あぁ、笑ったのは何時ぶりだろうか
彼が来てから色々と変わったものだ
主に、私の心が
あれから小さな事で笑うようになった
魔理沙からも「楽しそうだな」と言われるくらいだ
多分、今も私は笑顔なのだろう
博麗霊夢は嬉しそうに微笑んだ
そして、階段から近づいてくる気配に気づく
「いや、そんな事…」
霊夢は少し驚いた感じで言う
まさか、本当に来るとは思っていなかった―――
「あー疲れた…」
霊覇は軽く背伸びをするとこちらに近づく
そして持っていた料理を差し出した
「ほら、迷惑料だ」
「あ、ありがとう」
霊夢は少し顔を赤らめた
霊覇は気にすることなく
「感謝は要らん、じゃあ―――」
な、と言おうとした
手を振って言おうしとした
その手を掴んだ
「…少し、お茶飲んでいかない?」
霊夢はじっと霊覇を見た
少し視線を這わせた後霊覇はため息をついた
「少しだけ…な」
「ありがとう」
霊夢は微笑んだ
その後に霊夢と霊覇は神社の中に入っていった
〇
「さ、どうぞ」
中に入ったといっても縁側だ
外に近いと言える
霊夢がお茶を出してくれた
オマケで和菓子もついている
「和菓子なんていつぶりだか」
その餅のようなお菓子を食べる
甘さも今まで感じたことの無いくらい甘い
「ここに煙草が来るからいいんだよな…」
カチンと火をつける
霊夢が目を細めた
「霊覇、煙草吸うの?」
「当たり前さ、これが俺のアイデンティティ…」
ふぅーと煙を吐き出す
霊夢が顔を顰めた
「出来ればして欲しくないわ」
「賛成が多ければやってやるよ」
鼻で笑い、お茶を飲む
その風味も感じたことがない
「いつもの紅茶よりも美味い…」
「紅茶が飲める環境って中々…」
「泥水の有害性を中和してくれるからな」
「ああ、そういうことね」
霊夢は遠い目でどこかを見た
「あー、ここは平和で良い」
少しトロンとした瞳で霊覇は言う
それはどうやら本音だったらしい
「戦いから身を引けたのはいいがねぇ…」
「が?」
霊夢は好機と見て質問する
いまなら何でも答えてくれそうだ
「はは、困るもんだよ、平和過ぎるのも…」
霊覇は付け足す
「お前さんみたいな、可愛い奴が居るのも」
「からかいは止めてよ」
霊夢はむっとした様子で言う
だが、赤面しているあたり本気じゃないらしい
「そういうのも可愛いもん…だ…」
ふらりと霊覇が揺れる
「早苗と人里で合流すってのに…眠い…」
「少し眠っていったら?まだ夜には遠いわ」
「そう…だな、膝を借りる」
すとんと霊覇は霊夢の膝に落ちた
「少し…眠る…」
彼はそういうと目を閉じた
〇
私は彼の頭を撫でた
その顔は安堵に満ちているのが分かる
「…やっぱり」
私はある事を確信した
その髪を撫でる
洗っていないはずの髪はかなりサラサラだった
もしかして秘密裏に洗っているのだろうか
「…かわいい」
その寝顔は安らかで、安心の顔だ
それが嬉しくて、幸せな気持ちだ
「けけけ、青いねぇ…お前は」
「萃香…寝ときなさいよ」
左側に現れた鬼を睨む
伊吹萃香、鬼だ
勇儀と同じような鬼で四天王の1人
その頭の両側から生えた角は猛々しい
酒をラッパ飲みしながら嗤う
「やっぱり良い人間だ、欲しくなるね」
「止めといたら?私が抑えられなくなる」
「けけ、やっぱりお前は青い」
笑いながら言う
それが 霊夢にとって不満だった
「こいつは面白い博麗の心を動かすなんて」
「彼は大切な物よ、渡さない」
「言っとけ言っとけ、こいつの心がどうなるか…ははは!」
最後に豪快に笑うと萃香は煙となって消えた
いや、粒子と言うべきだろうか
「…死ね」
その残余に暴言を吐き、霊覇の頭を撫でる
やっぱり、良い人だ
トラウマがあっても、礼は返す
「…ああ」
欲しい、彼が欲しい
こただ話す為だけに睡眠薬を入れたのに
こんな事になるなら、儲かり物か
私は小さく笑いながら頭を撫でた
「可愛い…かわいい…ふふふ」
口を三日月にして、目を細めながら