「機長がシートベルト着用サインを消灯しました
幻想郷をお楽しみ下さい」
先程のパルクールの光景、録画してある
というより家に帰るまで録画するつもりだ
既に真っ暗だ、光は無いに等しい
雨が月明かりに輝く
月が妖艶に輝いた
天狗達に勝ったのはいい
貸一だ、やったね
ともかく、家に早く帰ろうではないか
「…?」
ふと、雲の合間に何かが見えた気がした
それは黒くてよく分からない、だが大きい
「…帆船?」
だが、大きな帆が見えたのはわかる
だとすれば艦底から生えている棒は…オール?
「古いな…ま、気にしないでいいか」
霊覇はそう思うと急降下した
さっさと自分の家に帰宅したいのだ
妖怪の山が見える
あの時把握出来たのは高度な技術がある事だ
あの…透明装置を譲ってくれた奴に感謝だ
絶賛修理中、とても複雑な回路だ
かなり時間が掛かるだろうな…
「…」
霊覇はもう一度後ろを見た
先程の黒い影は既に居なくなっていた
どうやらあの雲に隠れたようだった
「…面倒そうだ」
にしても妖忌の山に居た時、よく殺さなかったものだ
軽く狂気に陥りかけたが何とか制御した
完全に落ちなかっただけマシだ
ちなみに堕ちると例の宴会の様な事になる
まぁ、あれで死人が出なかったのはいい
作者がそういうタグを付けていないおかげか?
まぁ、いいか
「はっ」
俺は家の前に着地する
そこには何ら変わり無い借り物の家がある
主人が居なくなっていたから随分たっているように見える
霊覇は外見を綺麗にする気が無い
中身は綺麗で新品同様なのだから、ね?
それと外見は偽装として使える
こんな廃屋に来るのは余程の物好きだろう
霊覇はそう思うと中に入った
そして、雨が降っていたことに気づく
「あ…傘忘れた」
〇
主人?主人は何処に?
細い足を無理やり動かしながらわきちは進む
あの神社に置かれて、忘れられた
あの巫女も気づかないままだった
口からくぐもった声が漏れる
どうして、皆わきちを捨てるのだろう
どうして、忘れるのだろう
どうして、どうして
どうしてどうしてどうしてどうして…
わきちは呪詛のように言葉を漏らす
そうやって、歩いていると主人の家をようやく見つけた
傘はあまり壊れていない、これくらいなら直せる―――
「…?傘?」
「!」
わきちは思わず傘に戻る
バレたら退治されてしまう…!
〇
「少し妖力…霊覇の物も混じっているわね、物好きな…」
少し傘を舐めまわした後持つ
それは神社にあったけど…途中で落としたのか?
まぁいいか、霊夢はそれを振る
飛沫が辺りに散った
「今居る―――」
「さて行く―――」
戸から勢い良く現れた霊覇が霊夢にぶつかる
思い切り絡み合った後地面に倒れた
霊覇が霊夢の上に乗っている状態だ
「…んぐぅ…もう全く何―――」
先に起き上がったのは霊夢だった
顔を上げると目の前に霊覇の顔があった
「ちょ、ちょっと―――!?」
声を掛けようとした瞬間、ある事に気づく
―――胸に何か乗っている
恐る恐るそれを見ると、霊覇の手がそっと乗っていた
「ん?あぁ…?」
霊覇が顔を上げた
そしてこちらを見た
互いの息が顔に当たる
これは…この光景は…
「なんだ?…退くぞ―――」
「へ、変態!」
「ぶべら!?」
恐らく、今まで言うことのなかった言葉を霊夢は叫んだ
顔は赤面し、俯いて表情はよく分からない
霊覇は何事かと立ち上がった
「な…何だお前…?」
「こ、ここここっちのセリフよ!
アンタ…アンタ…私の…!」
「何だ?覆いかぶさった事は謝るが…」
「そうじゃない!」
霊覇は相変わらず首を傾げていた
そんな霊覇に霊夢は叫んだ
「私の胸触ったじゃない!」
「あれ腹だろ?」
「アンタデリカシーって知ってる?」
そのキョトンとした顔にキレそうだった
何が腹だろって阿呆、思い切り胸だわ
「…あ、やけに柔らかいと思ったが…」
霊覇もようやく事情を理解したらしい
「はー、女のソレなんていつぶりだか」
「は?アンタ女侍らせてたの?」
「彼女は居たさ…初めてはまだ持っているがね」
つまりとこまだ童貞ということである
それが霊夢を安心させ、落ち着きを取り戻した
彼がまだ持っているなら、私の初めても―――
「どうした」
「…なんでもないわ、ほら、傘」
「あぁ、それか…ありがとよ」
霊覇はそれを受け取ると部屋の中に入れた
「それと、少し休んでけ」
「汚れたわ、色々と」
「それも加味してな」
そういうと霊覇と霊夢は中に入っていった
〇
「ふぅ…」
「…お前さん、結構際どい格好だな」
服は脱いで上半身は全裸に近い
胸を隠しているのはサラシのみだ
霊覇の迷彩ズボンを履いているおかげで軍人の様だ
なおそれは霊覇のズボンだ、本人は履かせたくなかったらしい
その証拠に無心でタバコを吸っている
「霊覇は全く気にしないじゃない」
「男だぞ、お前」
「別に良いわ、もしかして襲いたい?」
挑発的にサラシに人差し指を入れる
霊覇は少し目を伏せた後鼻で笑った
「は、なるかよ」
「ちぇっ…そうねぇ」
手を囲炉裏に当てる
「少し医者に行かないかしら?
精神状態の確認がしたいし」
「ま、そうだな
俺もそろそろ医者にあたりたいところだ」
そういうと霊覇は立ち上がる
霊夢はその挑発的な服装のまま外に出た
既に雨は晴れていた