「豪華な旅館みたいだ」
山荘にある大きな旅館を思わせる内装
純和風で生成された本物の旅館と言うべきだろう
床と壁の感触もプラスチックではなく本物の木だ
恐らく、松とかの重厚な木を使っているのだろう
まぁ、どうでもいいけど
「いつも思うけど、こんな所に住みたいわねぇ」
霊夢がしげしげと内装を見る
いつも衣食住をしている神社よりずっと良い
出来るならばここに住みたくなるだほうが…
霊覇的には不安になるので神社の方を選ぶだろう
こんな所に招かれれば睡眠薬が食事に混じっていること間違い無し
「で、そいつは何処に居るんだ」
「永琳は…こっちだ」
永琳と言うのか、聞いたことの無い名前だ
にしてもこちらの女は名前と見た目中身が見合っている
外の奴らのように名前だけという事はあまり無さそうだ
妹紅について行くと、戸の前にたどり着いた
「ここか」
他と変わりない扉だ、本当に永琳が居るのだろうか
まぁ、居なければ居なけれで別にいい
ガチャりと扉を開けて中に入る
そこには銀髪の奇天烈な服装の女が居た
赤と青が強調されすぎな気がする、なんだあれ
「あら、お客さんかしら…」
こちらを見た
その顔は見た事がないくらいの美人
切れ目を見るに性格と外側が合っている感じがする
「妹紅?男を連れてきたのかしら?」
「いや、霊夢のだ…私は帰らせてもらう」
そういうと妹紅は部屋から出ていった
残されたのは霊覇と霊夢、永琳と呼ばれる人物だった
「…自己紹介を済ませよう」
「そうね、私は八意永琳、どうとでも呼んで」
「気桐霊覇、霊覇と呼んでくれよ、ドクター」
霊覇はそういうと永琳と握手を交わした
…その、何かかなり力が強い気がしたが
「で、何かしら」
「彼をレントゲンやらの…まぁ健康診断ね」
「はいはい、分かったわ」
そういうと永琳は霊覇を見たままベッドを指す
「寝て頂戴」
「分かった、ドクター」
霊覇は言われた通りにベッドに寝る
永琳は点滴をベッドの隣に置く
―――そして間を置かずに首に注射器を突き刺した
霊覇は目を見開いた
暴れようとする頃には注射は完了し、抜かれていた
「何をする!?ドクター!?」
「貴方の振る舞いからして"こういうこと"に警戒心が高いと思ってね
こうでもしないと注射はやらないでしょ?」
「―――謀ったな」
霊覇の意識は闇に消える
〇
注射されたのは睡眠薬だ、害は無い
そんな永琳は注射器をゴミ箱に投げ捨て霊覇に向き直った
「で、レントゲンかしら」
「それだけよ、本当にそれだけ」
霊夢はそういう
永琳は再度質問する
「それだけでいいのね?」
「ええ、私はここに居るから…よろしくね」
そういうと彼女は霊覇の顔を眺め始めた
どうやら良くない夢を見ているようだ、顔が歪んでいる
眠りへの過程が良くなかったのだろうか…
「…」
永琳は黙々と作業を進める
霊覇を抱えると、レントゲン装置に寝かせる
「これで大丈夫ね」
そういうとポチリとボタンを押した
レントゲンはほぼ一瞬で終わり、永琳はまたベッドの上に霊覇を寝かせる
また、霊夢は霊覇の顔を見始めた
「…」
椅子に座り、PCに向き直る
カタカタと作業を続け、表示していく
透けた黒画像がプリントアウトされる
「これね…」
それを見た瞬間永琳が凍った
本当にぴしりと動かなくなったのだ
霊夢が不審に思って近づいた
「どうしたの」
「見てみて」
永琳が震える手でこちらに画像を渡す
それを受け取るとじっくり見る
「これは…」
その霊覇のレントゲン写真はおかしいものだった
人間のレントゲンは骨や皮などが映る
だが、ここでは霊力や妖力の血管のような物が映るのだ
付け足せばそこから溢れた物が霊力として使える
霊覇も同じように霊力の血管がある
それは良い、いいのだが…
「…何、これ」
上半身の喉から股間辺りまである"七支刀"は何なんだ
彼の体に刀がある
霊夢はその事に気づき、永琳に顔を向ける
「彼は刀を飲み込んだの?」
「いえ、それなら生活に支障が出てしまうわ」
それもそのはずだろう
こんな物が体内に"形として"あれば激痛を伴う
それに体を捻るなどの事も出来ないはずだ
彼はまるで体内に異物が無いかのように行動している
恐らく、これは今霊力になっている
その力が強すぎてこんなにくっきりと写っているのだ
霊覇の霊力のと似ているような感じはする
だが、彼は刀を持っていた、それとは違うのか
「…謎だらけの人間ね、貰っていいかしら?」
「ダメね、面倒になるし」
そういうと霊夢は霊覇を持ち上げ、歩き始める
永琳は少し残念そうにしていたが直ぐにPCに向き直った
「また来るわ」
「霊覇と一緒によろしくね」
霊夢は何も返さずに部屋を出た
木材の匂いが鼻に入ってくる
先程の部屋の空気が綺麗にされていたのか、いつも以上に入る
少し顔を顰めたのち霊夢は出口を目指した
〇
「…はぁ」
"やはり"辿り着けない
いつまで歩いても、何処まで行っても出口に行けない
先程から景色が変わっていない気がする
なんだろう、物凄く面倒なんですがそれは
思っていた通り―――
「邪魔、しないでくれる?」
「嫌ね、私は帰す気ないわよ」
そこに居るのは…最凶の女
その顔は全てを失禁させ、昏倒する程の破壊力を持つ
彼女の命は薬によって永遠となり、死ぬ事は無い
―――蓬莱山輝夜
霊夢はそれに歯ぎしりしながら耐える
「面倒ね、退きなさいよ」
「男なんて何時ぶりだか…だからこそ帰す気はないわ」
輝夜は笑いながらそう言う
どうやら帰す気は本当に無いらしい
ならば―――
「押し通る」
「来なさい」