女嫌いのあべこべ幻想郷入り   作:回忌

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焚き木でウトウトしているうちに朝が来たようだ

朝日が己と日の消えた焚き木を照らす

 

「…家を探さないとな」

 

流石にこのままホームレスになる訳にはいかない

 

「どこかに…廃屋でもいいから無いものか」

 

大抵はボロボロだろうが、ないよりかマシだ

雨風しのげれば俺は寝れる人間だから

また外で寝るのもああいうのが来るかもしれないから却下

この…おそらく別世界にそういのがあるのか

 

丸太から立ち上がり体を包んでいた猪の皮を投げる

そして眠気覚ましに一本のタバコを吸う

 

数秒間それを続けた後立ち上がる

 

空を見ると、大きな山が見える

岩肌が見えるそれは日本であまり見たことが無い

取り敢えず現在地を確認する為にそこに行こう

 

火のついたタバコを咥えて俺は歩き始めた

 

道の無い森をただひたすらに歩き続ける

 

感じる匂いはタバコと、森の匂いのみ

 

というよりこの森の終わりが見えないのだ

霧があるのもそうだが、如何せん深い

 

「…はぁ」

 

俺はM500のグリップに手を添える

そして間を置かずに後ろに照準を向けた

 

「ギ!?」

 

そいつはバレたのに驚いたようだ

見た目は肉を継ぎ足したようなおぞましいバケモノ

爪は限界まで鋭く生え、鈍く光る

 

「There you are」

 

まるで大きな風船が破裂したかの様な音が3回響く

そのバケモノ…"妖怪"は気にする事も無く走る

 

「アホが」

 

「――!?」

 

腰と思われるあたりからずるりと倒れる

俺が撃ったのは腰の部分だった

 

「さて、逃げるか」

 

「ギャア!」

 

そのバケモノの後ろを見てみれば同じような奴らが迫っていた

おそらく同族意識があるのだろう

殺気が思い切りこちらに向かってきている

 

「走る事なんて何回もしたぜ」

 

時たま後ろにM500を放ちながら逃げる

発砲音と共にバケモノの悲鳴が聞こえた

 

そうして何回もリロードを挟みながら走る

 

「…はあっ…はあっ…」

 

どれだけ足を動かしたか覚えていない

覚えているのはまだ建物が見えていない事のみだ

何回撃ったなんて覚える暇も無い

 

「しつ…こいぞ!」

 

3発の弾丸を放つ

それは正確に三びきのバケモノの頭に当たる

 

「HAHA!yippee-ki-yay!」

 

俺は笑ってリロードする

といってもそんな暇は無くなりそうだが

 

「どんだけいるんだよ!」

 

振り返ってみれば全く減らないバケモノ

こちらを殺す事にしか興味が無いらしい

 

「…!」

 

視線を前に戻すと廃屋が見えた

それだけで嬉しい

しかも損傷も少ない家だ

 

「yippee-ki-yay!」

 

扉を飛ばす様に開け、入ると直ぐに鍵を掛ける

ドンドンと扉が音をたてる

 

「…しばらくは安泰だな」

 

そう言って室内を見やる

 

「…なんてこった」

 

そこは廃屋では無かった

キチンと掃除が行き届いた家だ

囲炉裏や箪笥などがある

 

「少し昔の家か」

 

世界観は未だに掴め無い

だがそれでもなお生きているという感覚はあった

 

「へへ…疲れたなぁ」

 

そんな時、脳裏にアイツの姿が浮かぶ

路地裏で俺と同じく孤児だったアイツ

 

「…笑われちまうな」

 

あの興味の無さそうな目で「弱い」って言われちまう

室内には気の利く事に布団が敷かれていた

布団で寝るのはいつぶりだろう

 

「あぁ…」

 

布団の傍に座る

そして口に煙草を咥えた

 

「…火を付けるか」

 

いや、それだと奴らを刺激するだろう

囲炉裏に近づけたZIPPOを戻す

俺は煙草に火を付ける

 

「疲れたな」

 

「お酒は如何?」

 

「有難いね、ここの所酒なんて飲めた試しが無い」

 

横に座っていた女から杯を受け取り傾ける

 

吹く

 

「だ、誰だお前」

 

即座にM500と刀を抜いて

 

「あら、物騒ね」

 

「…な」

 

手に持っていた傘が首元に添えられていた

こちらはM500をソイツの眉間に向けていて、刀は抜けていない

つまりこれは早業だ

早く引き金を引かないと

 

「人差し指に力を入れたら切るわよ」

 

「…っ」

 

首に感じる小さな痛み

それは傘の刃だろうか

 

いや、この傘に刃なんて無い

 

「気になる?まぁ気にならないでしょうけど、ブスのことなんて」

 

「…?」

 

少し悲しそうな顔をする

 

「はん、お前さんがブスなんてな(信じられねぇ)」

 

「皆(貴方を除いて)私が醜いって言うわよ」

 

「ほーん、酷い奴らも居たもんだ(女はそれ以上に信用出来ねぇ)」

 

俺は軽口を叩きながらM500を握り直す

 

「でも、貴方は違う感じがするわ」

 

「人は全員同じさ、怪物さん」

 

「私は妖怪よ」

 

ソイツが不満そうに言う

 

「同じものだ」

 

俺は溜息を吐く

ソイツは傘を己の肩に当て開き、クルクルと回す

その姿は見惚れそうな程優雅だった

 

「ほら、その瞳」

 

「俺の目は死んでるさ」

 

「顔かしら?まぁいいわ」

 

そいつは顔を近づける

吐息が顔に掛かる

 

「これだけ近づいても気持ち悪く思わないようだし」

 

「どうかな?」

 

「私の顔を直視した者は即座に顔を背けるわよ?」

 

「…なんだお前さんは」

 

俺は1歩下がる

少し危険な香りがする

 

「そうね…私は八雲紫、此処、幻想郷の管理者よ」

 

「幻想郷?そんな郷は無いぞ」

 

「当たり前よ、後は藍に聞いてみなさい」

 

その言葉と同時に額にいつの間にか持っていた扇子がぶち当たる

結果俺は意識を失い布団に倒れた

 

「…革命が起きそうね」

 

「主に、恋愛の」

 

紫は扇子を仰ぎながら呟く




主人公はyippee-ki-yayを嬉しい時に使います

勝った時とか、上手くいった時とか
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