ブロロロとバイクが進む
3人はヘルメットを被り、辺りを見ていた
言うなれば、世界の終わり
家が燃え、人々が狂乱し、走り回る
その合間を避けながら、バイクは進んで行った
障害物は少なくなかった
人
人
物
人
人
どれもこれも、人が多かった
道路で立ち尽くす、口を半開きにした奴らが
クラクションで現実に引き戻すこともした
やがて、市街地を抜けた
まるでそこだけ、江戸時代のような景色だった
広がるは大量の畑、田、田、畑
農作地
「この先か」
その奥に、階段が見えた
寂れた、大きな鳥居も
燦莉が後ろを振り返った
その目には、太陽が沈む姿
それに、都市が遠くなっていくのが写った
「…ケッ、まだ声が聞こえる」
霊覇がヘルメット越しにでも聞こえるそれに悪態を示す
愛人が死んだのを嘆く悲しみの声
夫が死んだ、長年の愛人
ソイツが本当に愛してるか、分からないくせに
「どうせ静かになるぜ」
「その為に走らせてんだよ」
フルスロットル
ハーレーが更にスピードを上げた
更に風が強くなる
「もう少しで着く」
「あい」
そうして、その守矢神社前に止まった
ハーレーから2人が降りる
「2人は先に行け」
「了解」
「分かりました」
2人は素直に階段を上がって行った
霊覇は近くの茂みにハーレーを隠すと、当たりを見る
特に、何も居ない
「…っ」
気味が悪くなり、2人に追いつくレベルで駆け上がる
ダダダと走って2人に追いついた
鳥居の3歩くらい前だった
「どうしたんです?」
「んなもん取り出して…なんか居たか?」
霊覇は首を振る
そして、3人は鳥居をくぐった
瞬間、変な気がしてM500を構えた
「…」
何か居る
何だ、何が居るんだ───
「これはこれは、驚いたね」
現れたるは、女の子
カエルの目を帽子に付けた、金髪の子
それがサイトの真ん中でカエル座りしていた
「諏訪子様!?どうして霊覇君は見えてるんですか!?」
「…信仰」
燦莉が呟く
その言葉に諏訪子と呼ばれた女が頷く
「いきなり助けを求める人が増えた、か」
それをいまさっき聞いた筈だ
都市の外まで聞こえた助けの声
それは、神に助けを乞う声もあったはずだ
人は死に伏した時、人外に助けを求める
今回は、それが大量に居た
消えかけた、こいつも出てきたのだろう
「と、言っても一時的なものだ」
「…神奈子、と呼ばれた奴か」
「これでも神だよ、少しは敬いたまえ」
次に現れたのは背中に大きな輪がある女
赤服で、胸に鏡がある
「神、ねぇ
もう少し気がしっかりしてれば良いんだが」
信仰が増えた
そんな事だが、浮いた泡が水面に3mmくらい戻される事である
そんなに意味がある事でもないのだ
「最近は引越し先が見つかったんだ
直ぐにでもそこに行く気だったんだけど…」
「あぁ、早苗が転校するってそういう…」
「はい、そういう事です」
これから3日後くらいに早苗は転校する
が、それはただの偽装だったわけだ
「ま、運が良かったか」
「だ、な」
燦莉がため息をついた
どうやら、何やら悩み事があるようだ
「これ、男だけ死んでるだろ」
「成程、ねぇ…そりゃこれから苦しくなりそうだね」
「え?」
神奈子はどういう事か分かったらしい
早苗は何かも分からないらしい
「ケロケロ、人間はつがいじゃないと生き残れないだろぅ?」
「…あ」
つまるところこれから2人は追い回されるのが確定した
ここにくるまで、目撃情報は大量である
ハーレーを隠しているとはいえ、いつかバレる
「私たちは直ぐに出るからね、ここはただの寂れた神社になる」
「その時は私達に変わって有意義に使ってくれ
ま、追っ手がくるまでだね」
つまり長くは居られないということだ
長くても半年くらいだろう
無意識に、銃を握る手が力む
「やれ、少し重い話をしてしまったね
夕食にしようじゃないか」
「カレー?」
「カレー」
諏訪子がそういう
今回は人数が増えている
それに関して、早苗に聞くと
「多分、"奇跡的"に二つ余りますよ」
なんて、適当なことを言ってきた
神が実際に居たとはいえ、奇跡なんて
というかこいつら飯食うのか
信仰はウマウマ食っているのかと思ってた
そう思っていたのだが、違うようだった
本当に"奇跡的"に二つ余ったカレーを食べながら話をする
「信仰で生きてけれるんだろ
んだったら食事なんて要らないだろ」
「いやね、昔からの癖だよ
早苗と同じような風祝と家族みたいに食べてたんだ」
「同じような、か
――早苗の先祖だったりしてな」
台所でご飯を追加している早苗を見る
あんな緑髪が普通に生まれるなんて、考えられない
「…私の古い旧い子供みたいなものさ」
「あんたに恋焦がれる男が居たなんてなぁ」
神がヒトを好きになる
それは一種の縛りつけか
ある人が言うには、神には人の個別は分からない
神職や霊媒師などの特別な力を持つ者は別、らしい
それ故に神は人よりも愛する者を近くに置く
気づいたら、その者が死んでいるかもしれないから――
「怖いねぇ」
燦莉が、抑揚もなくそういうのだった