女嫌いのあべこべ幻想郷入り   作:回忌

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眠い

「……、…、……ハッ!」

 

危ない、寝るところだった

傾いたサングラスを直し、パンパンと頬を叩く

夜の冷たい風が上裸の体を嬲る

 

あの二柱から止めてくれと言われたが、知らん

 

これが1番いいんだよ

鳥居の真下で胡座をかきながら都市を見る

明日、あの3人はここからいなくなる

 

異世界、とでも言うべきところだろうか

 

妖怪、人間、神に幽霊が共存するという郷

 

その名を「幻想郷」と呼ぶ

 

そこでは妖怪と人間が対等な世界らしい

忘れられし達の、最後の楽園

 

とはいえ、怪しいものだ

 

力が強い者が弱いものを制す

弱肉強食の理論が強くなっているのではないか

 

ま、自分達がそこに行くとは思えないが

 

「…、……。」

 

 

この数日、何も起きない

都市の方で派手な光が出ていたのはよく覚えている

オレンジ色の、明るい炎

 

その楽しませてくれる存在でさえ、もう消えた

 

そうして、眠い目を擦った

 

「12時過ぎだ、交代」

 

「寝る」

 

後ろから聞こえた声で、腰を上げる

最近、ヘリやなんやらが動きまくっている

変に捕まると後が無いと考えている

 

家畜みたいな扱いは御免だ

 

「よっこらせ」

 

「これ使え」

 

「どうも」

 

霊覇は燦莉から双眼鏡を受け取る

それで、都市の様子を見た

 

特に、変わった様子は無い

 

差し入れ、と言わんばかりに置かれた干し肉を食う

食う、というより歯で噛み締めると言った方がいい

硬い肉を噛み、味をシミ出す

 

その味は美味いこと美味いこと

 

それを、2人はこの日まで、続けた

 

 

「…?」

 

何かが、欠けた気がした

太陽が出たその時、ナニか、何かが

霊覇は立ち上がると、本殿に向かう

 

酷く寂れた、神社

 

そこに人は住まうはずも無いので、少し貸してもらっている

 

本当に、そうだったか

 

本当は、ここに誰か居たような…

 

「あぁ、早苗だ、早苗が住んでたんだ…」

 

そう思い、本殿に入った

 

「よ、転校して誰も居なくなった本殿」

 

「ほんの数日前だろ、気にすんな」

 

先に起きた燦莉が軽く料理を作っていた

食料が長く続くはずがないので軽い物を作る

干し肉用や、ただの焼いた肉等

 

ま、腹を満たせりゃなんでもいい

 

「食料は何時までもつよ」

 

「あと1ヶ月…も無いな、これ」

 

消費、賞味期限を考えればそこまで長くない

缶詰めのようなものも無い

保存食がないと言うのが1番痛かった

 

しかも冷蔵庫が無いというおまけ付きである

 

なんだこの物件、クソじゃねーか

まぁ食料があっただけでも儲けものである

 

 

 

それはそれとして

 

 

 

 

「最近は派手な動きが無いな」

 

「ほんの数日だぞ、ある訳ねぇ」

 

「そこテレビ付けてみな」

 

燦莉が食事を食卓に置きながら言う

霊覇はリモコンを使い、テレビを付けた

 

そこには、有り得ぬことが報道されていた

 

『まさか男性の世界人口が一割になっているなんて』

 

『故に、男性を保護して人類の滅亡を防ぐ訳です』

 

アナウンサーと思わしき女が解説者と思しき女に聞いていた

いや、人口が減ったとかはどうでもいい

 

保護って、なんだ

 

その映像が切り替わる

 

ベッドの上に横たわる男

各々の部屋に入っていく男達

その景色は、拘留所や牢屋を想起させる

 

これは保護じゃない

 

収容じゃないか…

 

テロップとかで誤魔化しているだけで、実態は酷そうだ

今なら生活費は全て無料、とでかでかと書かれている

安全も保証され、将来も明るい、なんて

 

そんな、つまらないものなんて

 

「…ッ」

 

「まだ、見つかってない」

 

燦莉が食事しながら言う

つまらなさそうな瞳が、微かにサングラスの合間から見えた

 

「見つかればああなる、ということだ」

 

「クソッタレ…どうすれば…」

 

霊覇は策を探す

頭を抱えながら、どうにかしないと、と

 

その一方で燦莉は冷静に物事を捉えていた

どうにかするにも協力者が必要である、と

 

それもどこも、情報が必要である

 

「…兎も角、情報を集めてみたらどうだ」

 

「そ、そうだな」

 

かなり焦っていたのか、オドオドしながら情報を探す

今のところ、インターネットが1番良い

 

だが、自分達が使えば男性と即分かってしまうだろう

確か、男で登録していたし

 

「何か…何か」

 

テレビはさっきからどうでもいいニュースばかりを流している

有益な情報なんてこれっぽっちも無い

 

「あ、スマホ置いてあるやん」

 

「お前女子のスマホ見るとか最低…早っ!?見るの早ッ!」

 

スマホが置いてあるのを見るとニュースを探る

ほとんど予備動作がない動きで

 

なお、それは早苗のスマホである

 

彼女が何処かに行く時に忘れてしまったらしい

にしても固定画面がマジンガーなのはどうなのだろうか

 

「…、………」

 

霊覇は様々な単語をならべ、調べる

これがダメならアレを、あれがダメならソレを

 

己の脳内書斎にある単語を使い尽くす

 

「…うえ」

 

その指の速さに少し、燦莉は引いた

これほどに、集中するのか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから、1時間

 

 

 

「…こ、れ?」

 

とある記事で指が止まる

 

「なんだ、頭おかしくなったのか」

 

「ようやっと見つけた…」

 

はぁと深いため息をつき、カタンと携帯を置く

 

燦莉は肩越しにそれを見た

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…男性の反乱軍?」

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