「お、おーい、起きてるかー?」
私は彼に声を掛ける
彼は固く目を瞑ったまま起きない
「…完全に寝てるな」
いつも通り橙を起こしに行こうとしたら、居た
和室の一角で仰向けで寝ていたのだ
最初はびっくりして弾幕を放ちかけた
男なんてココ最近見ることが無かったからだ
「…男とはどう接すればいいんだ」
私は…八雲藍は頭を悩ませる
彼女にとって男というのはあまり好きなものでは無い
己を殺生石に入れたのも人間の男だからだ
こちらに来てからは不細工と罵られる
このスタイルに生まれた事を最大に後悔している
彼も起きて私を見れば再度眠りに(失神)つくのだろう
「…う、ん」
「ひ!?」
彼が目をゆっくり開ける
「お、起きたか?」
「…ここは天国か?」
「へ?」
私から惚けた声が出る
その男は眠そうな顔でこちらに再度聞く
「何、目の前に九尾のべっぴんさんがいるもんでな」
「べっ…べべべべべべべっぴんさん!?ベッピンサン!?」
私は思わず聞き返す
「ははは…俺も現世でいい事したもんだな…」
「私が…べっぴんさん…ふへへへ…」
どこか遠い目をして彼は言う
赤らめた顔で私は呟く
「…痛い」
「え?」
彼を見ると頬を抓っていた
その真意が最初はよく分からなかった
なぜなら、それが古典的すぎたからだ
「…なるほど、まだ"地獄"か」
「…!」
雰囲気が変わる
その眠そうな顔は一瞬にして変わっていた
その顔をよく知っている
戦士の顔だ
口を一文字に噛み締めている
目は獲物を捉える鋭い目
「さて、ここは何処だ?」
「へ」
一瞬で構えられる…銃
「あ、いや…待て待てな」
「阿呆ぅ待ったら手玉に取られるやろがい」
カチリとハンマーを上げる
「…そこまでよ、霊覇」
「お前さぁ…」
彼はつまらなさそうな声で銃を下げる
そして私に向けて手を差し伸べた
「え…?」
「ほら、立ちな」
「あ…あぁ」
私は彼の手を掴む
その手はゴツゴツとしているものの、暖かった
これが…男の手の感触
「…何を惚けてるんだ?」
「…すまないね」
「礼は結構、さぁ紫、説明してもらおうか」
霊覇は睨むように紫を見る
紫は相変わらず真意の読めない笑顔していた
〇
夢を見ていた
アイツとの夢だ
彼女が突然居なくなるまでの幸せな日常
それが俺にとって心地いいものだった
…物音がしてそれは直ぐに切り替わってけど
ただ夢見心地は晴れなかった
「…う、ん」
俺は瞳を開けた
見えたのは人型の九尾
その9つの尻尾に触りたいと言う欲求が一瞬で芽生えた
べっぴんさんだ、とても美しい
思わず言ったことの無い言葉が口から漏れる
「…ここは天国か?」
「へ?」
驚いたアホズラをそいつは晒す
それがなおも可愛いものだった
「何、目の前に九尾のべっぴんさんがいるもんでな」
「べっ…べべべべべべべっぴんさん!?ベッピンサン!?」
そいつからおかしな声が出た
主に最後のベッピンサン!?だ、お前はゲゲゲー!かよ
「ははは…俺も現世でいい事したもんだな…」
「私が…べっぴんさん…ふへへへ…」
そいつは酷く赤面していた
流石にこれはやりすぎじゃないかい?神さんよ
俺は真実を確かめるために頬を抓る
…そして心は地獄に戻った
「…痛い」
「え?」
全てを察した
夢見心地のお陰で変な事をしていたようだ
…でも現実にこんなべっぴんさんなんて居るのか信じきれなかった
それはどうでもいい
「…なるほど、まだ"地獄"か」
「…!」
雰囲気を変える
いつもの通りの雰囲気へと全てを変える
夢見心地な感情を戦場の感情へ
全て女を信じない心へ
「さて、ここは何処だ?」
「へ」
一瞬でM500を眉間に定める
こんなべっぴんさんであっても女であるなら殺るしかない
「あ、いや…待て待てな」
「阿呆ぅ待ったら手玉に取られるやろがい」
俺は当たり前な事を言う
これ、戦場の鉄則、古事記にも書いてある
カチリとハンマーを上げる
「…そこまでよ、霊覇」
「お前さぁ…」
瞬間俺はかなり脱力した
この瞬間を止められたのもある
1番はこいつが嫌いなのもある
俺は仕方なく手をそいつに差し伸べる
「え…?」
「ほら、立ちな」
「あ…あぁ」
彼女は俺の手を掴む
その手はツルツルとしていて触るだけで胸がドキりとする
これが…女の手の感触
「…何を惚けてるんだ?」
「…すまないね」
「礼は結構、さぁ紫、説明してもらおうか」
霊覇は睨むように紫を見る
紫は相変わらず真意の読めない笑顔していた
〇
「まず、幻想郷には忘られた存在が来るわ」
「俺は忘れられたか、有難いね」
俺は自嘲気味に言う
おそらく資料が燃えたのなんだのしたんだろう
まぁ、どうでもいい
「となると神さんやら妖怪やらなんやらいる訳か」
「貴方もその仲間入りよ、阿呆みたいな能力を持ったね」
「能力?」
俺は質問する
「各々が持つものよ、生きる者は確実に持っている」
「はん、お前さんのは?」
紫は傘を回す
「私は"境界を操る程度の能力"よ」
藍はお辞儀をして言う
「私は'式神を使う程度の能力"だ」
「面白そうだな」
俺はタバコを咥え、火を付ける
「そんでもって、俺のは?」
「いつも使ってるでしょ、自分で見つけなさい」
「ケチが」
「倹約よ」
紫は減らず口を叩く
「…まぁいい、俺は帰る」
「あらそう、さようなら」
そう紫が言うと浮遊感が俺を襲う
その降下中に聞こえた巫山戯た物があった
「近いうちに宴会が開かれるから、来てもらうわよー」
「はぁ?」
と言う頃には着地していた
空間の裂け目…スキマと言ったか、それはひとりでに閉じた
「…マジかよ」
この感じ、実力者は女しか居ないのだろうな
俺はため息とタバコの煙を交えて吐いた