女嫌いのあべこべ幻想郷入り   作:回忌

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帰還

階段は来た時と打って変わって普通だった

血文字も、落ちていた札も、何処にも無かった

最初から厳重な独房、みたいな所だったのか

 

不思議な事もあるものだ

 

「不思議な事だらけだ」

 

階段を上り、そう呟く

何か、物語のように進んでいる気がする

確かに修羅場は通った

 

だがまぁ、普通あんなの死んでしまうだろう

 

銃で撃たれたり、砲で吹き飛ばされたり

 

なんならあの拷問、耐えなければ死んでいただろう

 

ここまで生きれてるのは豪運故か

それは分からないが、まぁ、生かしている者に感謝しよう

 

階段を登りきる

雰囲気は相変わらずどんよりとしている

地獄のような雰囲気は絶えず続いている

 

覗き窓から見てみると、殆どが首を掻っ切られたりして死んでいた

頭がぐちゃぐちゃになってたり、滅多刺しにされているのもあった

 

と、異音が頭上からした

 

『 今この場所にいる人に伝えるねー 』

 

それは真上のスピーカーからしたもので、監視室にいる燦莉のもののはずだった

だが、声は似ても似つかない幼女のもの

 

…燦莉は、どうした?

 

『 不法侵入者が2人も居るの! 』

 

大胆にバラシやがった

恐ろしいな、声に反してとても恐ろしいことしやがる

とはいえここに居るものは殆ど死んでいる

 

ここ独房の奴らのみだが、バレる事は無いだろう

 

 

『 みなさーん!侵入者はここにいますよー! 』

 

俺は聞こえないという安心と嘲笑を込め、スピーカーに言った

 

 

「他人任せにしてないで、自分で来たらどうだ」

 

 

『 も し も し 』

 

「は――!?」

 

不意に、"自分"のヘッドホンから声がした

ヘッドホン越しなのに、妙に甘ったるい、吐息が暖かい声が…

 

いや、それ以前に何故ヘッドホンから聞こえる

周波数は極秘である為、無線部隊や味方しか知らないはずだ

 

それにしては、聞いたことのあるような

 

 

 

 

 

 

 

――この声は…あの地獄の様な悪夢で――

 

「うぐっ…」

 

「あがああああ…!」

 

頭が割れる程の痛み

それに加え、脳味噌をぐちゃぐちゃにかき混ぜられたかのような痛み

 

「 わたし、メリーさん 」

 

不意に、背中に何かが抱きつく

耳元で、そいつが囁いてくる

 

やめろ、くるな、近寄るな

 

それ以上、それ以上言葉を放つな…!

 

「 今 貴方の 後ろ に 」

 

「ああああああああぁぁぁ!!!!!!」

 

"振り返り"、M500を早撃ちする

あっという間に5発使い切り、カチリカチリと鉄音を鳴らす

叫びながら狙いもろくに定めなかったそれはあらぬ方向に飛ぶ

 

だが、そこには誰も、何もいなかった

 

虚無感と疲労がどっと押し寄せる

 

なんだ、ただの幻覚、幻聴だったか

緊張感が体を襲っていたんだろう

 

帰って、休まなきゃ――

 

「 ばぁ! 」

 

「あが!?いやがぁぁああああ!?!!」

 

目の前から、あの女からナイフで刺される

ドス、ドシュ、ザクッ、グシャッ

酷い音が自分かは発せられる

 

彼女は無垢な笑顔で笑っていた

深い緑の瞳を爛々と輝かせながら

 

酷い痛みが、痛みがぁ

 

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁ!!!!!!!

 

奴を蹴り飛ばす

 

蹴った感覚は無く、足は空を蹴るだけ

そこには誰も居らず、それどころか自分に刺傷は1つも無かった

 

「…、なんだったんだ…」

 

「おい、デイモス!」

 

燦莉の声が後ろから聞こえた

いつの間にかへたりこんでいたらしい

腰を上げ、M500をリロードする

 

「何かあったのか?」

 

「いや…多分疲れてるだけだ」

 

「…何だ」

 

「イカれた野郎に滅多刺しにされる幻覚を見た」

 

燦莉の少し口端が少し引き攣った

多分、自分がそうされたのを想像したのだろう

彼は少し考えた後、蓮子を指差した

 

「考えても仕方ない、運ぶぞ」

 

「ラジャー」

 

彼女を脇に抱えると、移動する

鉄格子のはめ込まれた通路を抜け、外に通ずる扉に向かう

 

そこまで、敵は一人もいなかった

 

代わりに独房に居たような死体がそこらにあった

多分、兵士全員だと思われる

首を掻き切られたり、ぐちゃぐちゃに四肢がされていたり

 

見てるだけで、おぞましい

 

 

 

 

 

 

ただ、ひとつ思ったことがある

 

先程の幻覚はこのような死体を見た後に起こった

幻覚で、それでいて現実のように鮮明

この緊張感だと、へたりこんで気絶していたことは無い

 

それに、あの女の子の声

 

未だに耳にこびり付く甘い声

 

彼女も幻覚には見えず、現実に居るかのように思えた

 

刺された時の痛みも鮮明に思い出せる

それを思うと、ズキリと痛みが現れる

 

 

本当に、本当に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さっきのは、幻覚だったのだろうか

 

 

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