現れたのは階段
石畳のそれはとても長く、霞のように門が見える
飛ぶのが楽そうだ
うん、それがいいだろう
「…志那都比古神様、力を」
服に緑の刺繍、色が刻まれて体を風の鎧が覆う
体は綿のように軽く、直ぐに飛べそうだ
そう思うと、体は正直に動く
飛ぶ
早く、速く、夙く
石の階段はサーッと移動していき
気付く頃にはもう門の前に立っていた
「…あぁ、やるか」
こきりと首を回し、門に両手を添える
そして、ぐっと、力を入れた
酷く悲しい音を立てながら門は開く
その先にあるのは桜と、御屋敷
見てわかる豪勢なそれは冥界の主の物に相応しいだろう
さて、その主さんは何処にいるのやら
霊覇は散策する事にした
「眠いな、寒いからかね」
冥界の温度は低い
何故かと言えばそこらでふわふわしている幽霊共だ
こいつらは神霊と違いちゃんとしている…実体はないよな
魂だけの彼らはその冷たさを周りに振り撒いている
故に、寒い
それが神霊に寄せられてからかかなり近付いてくる
「人気者ねぇ」
主が来るのも、必然か
顔をあげればそのにいるのはいつしかの宴会で俺を殺した奴だった
何故、俺が死んでいないのか、よく分からない
そもそも、生きているのか
「よぅ、いつも通りヒマそうだな」
「そうでも?妖夢がでかけたから心配なの」
水色の着物、ふわふわとした雰囲気
母性豊かな感じの、冥界の主
心配をしている上でヒマなのだろうか
西行寺幽々子だったか?そんな名前だった
「それで、貴方もこの神霊達の事かしら」
「ま、そうだ…ここのじゃ無さそうだし、意味無さそうだ」
肩を竦め、縁側に座った
幽々子も、同じように隣に座る
水のような動きで、自然に
どすんと座った自分とは大違いだ
そこから見えたのは、手入れされた庭だった
はて、いつの間に庭まで来たんだか
だがそんなのは直ぐに夢のように消えた
左腕に感じた、冷たいナニカの感触
それを見てみると、幽々子が大事そうに左腕を抱いていた
幽々子の胸が当たって、柔らかく形を変える
それは何故か、暖かった
少し、冗談の様に言った
「人の腕を勝手に抱くなって教わらなかったか?」
「2人も致すなんて、節操が無いわね」
ドキ、と心臓が跳ねた
何故?何故彼女がその事を知ってる?
このことは他言無用の事である
いや、おかしいだろ何でだよ
その視線を彼女に向ける
「紫から、まぁ、後は匂いかしら」
紫は潰す
とはいえ、匂いか
何だろう、確かに、匂いを染み込ませるかの様なプレイはされたが…
そんな、嗅げる程のものとは思えない
耳元で荒い息が聞こえた
幽々子の顔は、赤く染まっていた
生暖かい息が顔や、耳に当たる
「こんなにしたの、責任とってくださる?」
いつの間にか、押し倒された
彼女から、ひとつ大きな神霊が出た
欲望
ドロドロとした、欲望
博麗の兄と交わる
そんな、背徳感の凄まじい欲
「どいつもこいつも節操がねぇ…」
「覚悟してほしいわぁ」
霊夢に吐くほど犯されるんだろうな、明日
俺はそう思いながら服を脱ぐ、ぬがしてくる彼女を見つめたのだった
○
「…少彦名神様、つまらない事ですが力を」
手のひらに薬が生成される
口に放り込み、飲む
ほんのり甘い酒の味が口の中に広がる
ガクガク震える足がマシになった
何ともまぁ激しい人だ…俺は彼女に目を向ける
布団でスヤスヤ眠ってるだけなのに絵になる
はだけた姿は見ていてとても…
いかん、ラウンド2は死んでしまう…
俺は立ち上がると妖怪の山を目指すことにした
射命丸なら何か知っているかもしれない
それと、厄神というのも人目見たかった
――
妖怪の山へ到着
風の神の力は凄まじい
本当に一瞬で移動が出来る
射命丸といい勝負が出来そうだ
「着地ー」
妖怪の山に着陸、そして神を探すことにする
神の触媒となり得る者、神と親交を深めるのは大事だと思う
そして、山を散策する
冥界と違い、そこらの木がかなり邪魔だ
だが切り倒せば天狗がはっ倒しにくるので出来ない
そうグチグチ思っていると何かが見えた
赤色の、回転する何か
それは神だと直ぐに分かった
緑髪の女はクルクルと回る
グルグル回る
「おい、アンタ」
「くるくる、くるくる…何かしら」
こちらに気付くと回転を止め、顔を向けてきた
俺は見た感想を告げた
「いや、回る女なんて不思議なものでな」
「厄を振りまくからねぇ…貴方も相当だけど」
彼女は俺の胸に手を置く
厄神の、厄吸いだ
こうして人の厄を吸い、自らの糧にする
厄を糧にするからこそ、自らが厄になる
だから、誰も近寄らない
「どうも、わざわざありがとう」
「いいのよ、神の触媒となる人にはこれくらいしないと
鍵山雛っていうの、覚えておいて」
彼女はそう言うと笑った
その笑い顔に釣られて、俺も笑う
とてもいい笑顔で、気付かなかった
「で、お前らは」
「私達?」
「私達は秋姉妹よ」
「秋の神様よ」
雛はそういった
こいつらは秋の…収穫とかなのかいな
多分触媒となれば秋の味覚がボンボン湧き出てくるだろう
食べ物には困らなくなるだろうな
「名前は」
「秋静葉、姉よ、紅葉の神って言われるわ」
「秋穣子、妹で、豊穣の神様」
帽子を付けている方が妹で、無い方が姉か
にしても似た奴らだ
帽子を除けば違うのは服の色くらいじゃないかね
まぁ、そんな事はどうでもいい
「ありがとよ、また会おう」
俺はそう言うと、空を飛んだ
射命丸の家は知らない
なら、守矢神社に行く事にしよう
元外来人である早苗を、取材しているかもしれないから