「…」
目を開けると灰色の大地が見えた
視線を動かせば己がいたと思われる建物が見える
かなり下まで言ったハズだが、どういうことだろうか
体を起こし、辺りを確認する
建物から兵士がわらわらと現れる
「はぁ…」
ナイフを抜く
はっきり言ってコイツらは雑魚だ
持っている武器は当たれば致命傷になるものの使えてない
エイムが酷すぎて逆にわざとなのか疑ってしまう
霊覇はポツリと呟く
「お前も、お前もお前も…お呼びじゃねぇ!」
敵に飛びかかる
突然の攻撃に相手は発砲出来なかった
簡単に敵の首を斬ることが出来る
雑兵に出来ることは一切無かった
霊覇の姿が"あった"場所に弾丸を打ち込むことくらいしか出来ない
兵士の銃を奪い、頭を吹っ飛ばす
そして、最後の兵士と思われる奴が倒れた
倒れた兵士からデザートイーグルを拝借する
「…!?」
瞬間、ガゴンと建物の壁が吹っ飛び何かが体にぶつかった
そいつは見覚えがある顔だった
というより、さっき会ったことがある
「…おいおい、なんだってんだ」
椛だ
強大な何かに吹っ飛ばされたらしい
彼女はこちらの聞きたい事がよく分かったらしい
大剣を支えに立ち上がると乾いた笑いを零す
本人はその乾いた笑いに気付いていないようだった
「はは…ちょいと投げられましてね」
「何にだ――」
ドシャン、と地面がへこむ
建物の中から二人の前にソイツがジャンプしてきたのだ
角は片方がへし折れ、顔は岩に侵食され左目が潰れている
右手がちぎれ飛んでいて片腕が使えないようだった
…何故だか、その右手の部分から懐かしい気配がした気がした
だがそれも、鬼の咆哮によって霧散する
「面倒事を…」
霊覇は恨みの籠った声を椛にぶつけた
だが彼女は飄々とした顔で武器を構える
「マシな部類でしょうよ」
「面倒事を押し付けたくせによく言う」
椛はもはや霊覇を敵としていなかった
そして霊覇もまた、椛を敵としていなかった
彼女は脅威では無く一時的な味方として、認識していた
鬼と呼ばれる種族は強めの妖怪でも手に余る存在である
それこそ団体でヤンチャされると八雲紫が困る程に
あの胡散臭BBA…もとい永遠の17歳でも手に余るのだ
人間と白狼天狗じゃ確実に持て余す
鬼の拳が振るわれる
グォンと風と衝撃波を巻き起こす
こんなのはハッキリ言って障害にもならない
この意思の前にそんな遊びのようなものは効かない
だが、そんな意思反して足はよろめく
霊覇は悪態をつく
「クソッタレ、やはり鬼ってのは出鱈目だ」
霊覇はデザートイーグルを鬼に撃ち込む
五十口径の弾丸は近距離ならスイカを粉砕出来る威力がある
人間なら致命傷になる傷が生まれる
だが、この鬼は簡単に腕で弾いた
その腕が石化しているのもあるが、石を砕く五十口径だ
単純にこの鬼の肌が固いのだ
「五十口径を防ぎやがる、銃は悪手か」
霊覇はナイフを構える
遠距離がダメなら直接攻撃しかない
主題は他にない
狙うのはその頭…細かく言えばその口
内側が柔らかいのはどの敵にも言えることだ
体内からの攻撃を想定した生き物なんていない
「鬼に近接戦闘はほぼ自殺行為と言っておきますよ」
「ほぼ、だろ…ならその少しの希望でやってやる」
椛に警告されるが、霊覇からすれば知ったことでは無い
というか、どうでもいい
これ以外手段は無いのだから
ナイフで突く
狙うのは腋や股間といった怯みやすい場所
ちゃんとそういうのは効くのか鬼が少し怯む
そこに椛が大剣を上から下に叩き込む
小さな得物より大きな得物に怯みやすいのは世の摂理だ
鬼が大きく怯んだ
「今!」
「言われなくても」
デザートイーグルの銃口を口にねじ込む
鬼に口はちゃんとあった
石化で無くなっているかと思いきやちゃんとあった
しかも普通に開く、どういうことだろうか
引き金を正確に三回引く
五十口径が口内を貫通し、後頭部をぶち抜いた
手応えアリ、だが鬼はこの程度で死にはしない
「――!!!」
「おいおい、まだ死なないってか」
「鬼ですからねぇ…四肢切断くらいしないと」
マガジンを変えている霊覇に椛が言う
椛の言う通り鬼の生命力はそのくらいしないと消えない
鬼が妖怪の中で最強と言われるのはその生命力と力である
リロードが終わると同時に鬼の姿が歪む
性格には鬼の右肩と顔だ
「…っ」
生々しい音が辺りに響く
骨を砕き、再生し、肉が生える
グチャり、バキ、グシャ、ゴリッ
それを何度も繰り返し、終わる頃にはソレは鬼とは思えない物になっていた
頭は五十口径で吹っ飛ばされた後遺症か花が咲いたかのように再生していた
そして真ん中…鼻のあった所に大きな目玉が一つ
それを囲うように小さな目が大量に忙しなく動いていた
後頭部はデザートイーグルでぶち抜かれた穴を中心に昆虫の足のような物が生えていた
右肩から、無くなった手を補うように三本の腕が生える
ソレは何ともやせ細った物で、不気味だった
「…うわ」
「やめてね」
視界の暴力
気持ち悪いの一言に尽きるそれは空に向けて咆哮する
その咆哮は人間の古くからある感情であるそれを刺激する
久しく感じることのなかったそれは何故だか懐かしさを覚える
恐怖
「へへ…おもしれぇ」
口からポツリと小さな声でそれが漏れる
久しぶりにこの感情を思い出させたコイツは派手に死なせてやらないと
ナイフは使えない
拳を構える
次にあったのは左腕だった