女嫌いのあべこべ幻想郷入り   作:回忌

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Danger

振るわれた腕を避ける

全てがスローモーションになり、散る土片がよく見える

全能の世界とでも言ってしまおうか

ただ自分もスローモーションで動きも遅かった

ただ見ているスピードが遅くなっただけだった

 

その中で見えたのは火花

 

椛の大剣が腕を紙のように切断する

その刃が進む度に火花が散る

 

そして世界は元のスピードに戻る

 

「――――!!!」

 

絶叫

 

己の片腕が切り裂かれたなら当たり前だろうか

反撃の為か右腕の一つで攻撃してくる

攻撃は鬼らしく幼稚なものだ

 

ただ、見た目がおぞましい

その鬼とは思えない老人の腕の様なものが迫ってくる

 

「気持ち悪い!」

 

罵倒を飛ばし、足を蹴り上げる

見た目通りの脆さだったようで簡単に蹴りで引きちぎれた

鬼が怯みその巨躯が…その腹が顕になる

 

「最後のトドメじゃオラァ!」

 

構え

拳を地面と水平に、突き飛ばす

皮膚を貫通し簡単に鬼の内部に入り込む

感覚でわかる…あとは探っていく

腹の中を掻き回すように探す

 

そして、それは思ったよりも早く見つかる

見つけたそれを鷲掴みにしてやる

ソレは激しく振動する

 

心臓だ

 

「――――!――!!」

 

鬼が叫ぶ

流石にこれ以上はマズいと直感したのだろう

その巨躯に力がみなぎるのを傍で感じた

 

「黙って…死ね!」

 

椛が大剣で鬼の頭を切り飛ばした

注意が霊覇に向いていたため、簡単に斬首することが出来た

みなぎっていた力が一気に抜けるのを感じる

 

それを感じながら、俺は心臓を引き抜いた

幾つも血管が繋がったそれを握り潰す

肉の感触は肌に比べれば圧倒的に柔らかく、簡単にすり潰せた

飛び散った血が、顔を服を汚した

 

元より血濡れなのだ、気にする程でも無い

 

土煙を上げて、鬼の巨体が倒れた

 

「いっちょ上がりー」

 

パンパンと手の汚れを軽く取り、ZIPPOを点火する

そしてその火をタバコに移す

ZIPPOの火を消し、俺は苦い煙を吐き出した

 

「…貴方は」

 

大剣を持ったままの彼女が聞いてきた

カチャリとZIPPOにフタをすると俺は彼女に言う

所属?いや、違うなそんなご大層なものでは無い

彼女が聞きたいのはまだ言っていない俺の名前だろう

 

元の、名前か

 

「気桐霊覇、コードネーム・デイモス

 アンタとは奇妙な縁があるようだな」

 

「犬走椛、コードネーム…狼、ですかね

 本当に奇妙な縁があるようで」

 

そう言って、彼女が少し笑った時だった

形容し難い腕が地中から現れ、椛を掴む

彼女が驚いた顔をするが俺は特に何もしてやらない

 

ただ、羨ましそうに

 

「おお、先に脱出とは運の良い奴め」

 

それを言い終わる頃には彼女は既に腕に攫われており――

最後に見えたのは彼女の赤い瞳だった

 

やけに静かになった荒野を見渡す

見渡しても目立つのは殺した鬼の死骸だけだ

その死骸も、もはや岩のようになってしまってるけど

 

「…さて」

 

これからどうするか

俺は少し考えた後、あの建物に戻ることにした

外で暇を持て余すより探索する方がいいだろう

待ってたら退屈で干からびてしまう

 

そう思いながら霊覇は建物に向かった

 

 

「はいはいそんな無駄弾撃たなくていいわよ」

 

「アグッ!?」

 

霊夢は当たらない弾を撃つ敵に向けて面倒くさそうに言う

地面を突き抜けて建物に戻ってきたのは良いものの、ここがどこから分からなくなってしまった

それなので適当に掃討しながら移動しているのである

あと運が良ければ霊覇に会えれば、というのがある

 

「ふん」

 

「アギャッ」「フガァ」「イグァッ」

 

三方向に針を投げる

正確に敵の心臓を貫く

肋骨等の隙間を通り抜け、的確に心臓のみを貫いた

 

「面倒ね」

 

ポツリと呟く

部屋を移動する度羽虫のように現れる

こいつら、居なくならないのだろうか

ここが辺獄という性質上、死なない…死にきれないのは分かる

だがこんなワラワラ現れていいものでは無いだろう

 

「もういいわ、私は先に行かせてもらう」

 

現れる敵を無視し、先に行く

視界の下には敵兵がかなりの数居る

だが、そんなのは関係ない

なぜなら撃たれても意味が無いから

当たらない弾なんて撃っても意味が無い

 

「…あそこね」

 

一つだけテープが張られた鉄扉を発見する

霊夢は扉の前に陣取っていた敵兵を的確にヘッドショットする

他に道を妨げるものは居ない

 

霊夢は鉄扉の中に入った

 

「閉めとくか」

 

霊夢は扉を閉める

重い音を伴ってそれは閉まる

ドンドンと扉を叩く音が聞こえるが意味は無いだろう

この扉、外で言う金庫のような分厚さだ

 

そして、霊夢がため息をついた時だった

 

「…霊夢?」

 

「…お兄ちゃん?」

 

後ろから声がした

そちらを向くと、強化ガラスがあり、その先に霊覇が居た

霊夢は強化ガラスに張り付く

部屋の構造は刑務所にある面会室のような構造だ

 

「霊夢、お前…後を追ったのか」

 

「まだ、生きてるわ…ここは閻魔の前でも、白玉楼でもない

 

霊覇も強化ガラスに近寄り、ぶん殴る

だが、少し汚れただけで割れることは無かった

 

「くそ…こりゃC4でも無いと無理だぞ…」

 

「…お兄ちゃん」

 

「何だ?」

 

霊覇が霊夢を見ると、霊夢は壁を指さしていた

霊夢から見て右、霊覇から見て左だ

そちらを見るとそこの壁は透明になっていた

そして、そこには

 

少年とも言える年齢の、霊覇と霊夢が

 

「…これは」

 

「…嘘」

 

そこにあるものが信じられなかった

あるのはとある家族だ

 

霊夢と霊覇の家族

 

ただ、信じられないものが

 

父は懐かしい顔を、笑顔をして霊覇の頭を撫でていた

若い霊覇はキリッとした顔をして気を付けの姿勢だ

それはまだ、いや、良くないかもしれない

 

「…嘘だ」

 

その横、母の方に問題がある

"彼女"は真面目そうな顔を緩ませてスカートを掴む霊夢を抱き寄せていた

それは至って普通なのだ、普通の家族なら…

 

化けの皮が剥がれるように、"彼女"の服が変わる

 

それは、霊夢の膝をつかせる事を…

そして、霊覇が透明な壁を殴らせる物だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤い服

 

白い袖

 

黄色のネクタイ

 

白の模様

 

頭の大きなリボン

 

 

 

"彼女"の服装は、博麗のソレへと変わっていた

それが示すのはただ一つの史実であった

 

 

霊夢…いや、俺たちの母さんは

 

 

「…お母さん…先代、だったの?」

 

 

霊夢は、泣きそうな声で、呟いた

 

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