女嫌いのあべこべ幻想郷入り   作:回忌

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母と父の真実

霊夢は先代の背中を追っていた、と思う

先代巫女はかつて最強と呼ばれた巫女である

彼女は様々な妖怪を討ち滅ぼきてきた生きる伝説だった

それを確立させたのが吸血鬼達の侵攻…いわゆる吸血鬼異変である

故に霊夢と先代は比べられることもある

 

しかし、大半は娘より"醜い"事で結果がつく

 

そう、霊夢の母は人ならざる美しさ…こちらで言う醜さを持っていたのだ

それ故に恐れられ、忌み物として、腫れ物のようにあ使われた

 

彼女は困惑したのだろう

 

なぜなら外の世界では少なからず視線を集めたのだから

それがこちらでは全く反対の視線が集まってきた

元々優しい彼女は妥協したのだろう

 

仕方ないと

 

このような視線を受けても生きていくと

 

そもそもその道しか無かったのだろう

巫女としての役目があった彼女は選べなかったのだろう

父と母がどう出会ったか分からないが、恐らく父は幻想郷の人間だ

その二人がどうやって外で暮らしていたかよく分からない

 

そもそも親の記憶が既に曖昧だ

 

…予測だが、恋をした2人は休める場所を探したかったのだろう

結婚したのは間違いなく吸血鬼異変の後

その後には大きな異変も無い平和な時代だったらしい

それどころかスペルカードルールが制定され、彼女は無用の長物と化した

 

故に彼女は恋した男と外に出たのだろう

 

そこで俺と…霊夢が生まれたに違いない

 

そして霊夢は天才的な才能があった

恐らく紫はソレを知り、次代の博麗巫女としたいと彼女に言ったのだ

 

無論彼女は抵抗したに違いない

最終的に彼女は折れて幻想郷に帰ることにしたのだ

 

だが、もう1人の子が、それを止めかけた

 

俺が、母さんの足を引っ張った

俺は誰が育てる?母さんは霊夢でていっぱいだろう

 

白羽の矢が立ったのは父だった

 

愛した妻と別れるのは辛かったに違いない

何か、言葉を残したのだろう

永遠に会えないから、何か――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    『…あなた』

 

 

            『――また会おう』

 

 

 

 

 

しかし、その言葉が叶うことは無かった

なぜなら彼はウイルスに感染し、死んだからだ

いま思い返せば、彼は何かを握り締めていた

ソレは、恐らく…いや、絶対に彼女との写真だろう

天狗から貰った写真機で撮った、2人の写真

 

俺は1回それを見た事がある

 

男女が晴れ着―今思えば博麗巫女の模様があった―を着て笑顔でこちらを見ている

女の方はとても美して、写真で惚れる程の物だった

 

俺がそれを見ていると、父はいきなりそれを取り上げ、棚に隠した

何か文句のひとつでも言おうとしたけど、止めたのをよく覚えている

 

その父の顔がとても悲しそうだったから

まるで永遠の別れを告げられた(実際そうだ)ような…

その頃はまだ若かったから父から母について何も言わなかったのだろう

今くらいの年なら何かひとつ、教えてくれたんじゃないか

 

だがそれが叶うことは無い

 

彼は死んだ

 

死人に口なし、何聞いたって答えてくれない

なら状況証拠を整理し、考察するしかないのだ

それをしようとも、頭は追いついては来ない

 

なぜなら否定しているからだ

 

死んだ、そして秘密は失われた

それ自体を忘れようとしているのだ

 

…忘れることは出来ない

 

この真実は目を背けることは出来ない

 

真実は意外と単純なものであることが大半である

霊夢は先代が母と認識していたのか

恐らく変な誤解を招かな為霊夢から彼女が母であるという記憶は消された

俺ですら母を思い出そうとすると砂嵐が思考を覆うのだ

霊夢は俺が兄弟ということだけはしっかり覚えている

 

それだけが、救いに思えた

 

術を施したのは確実に紫である

今思い出せば彼女はまるで俺を知っているかのように接していた

かく言う俺は彼女が何故だか全否定できない…何故か妙な感覚だった

まぁ彼女に文句は言わない、俺も同じ事をするだろう

 

「…そうか、そういうこと…だったのか」

 

父について、母についての謎がハッキリした

俺がその結論にたどり着くなら、妹である霊夢も同じだった

 

いや、霊夢とってそれは残酷としか言いようがない

 

「うぅ、…あぁ、か、お母さん…!あああああぁ……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何故なら、彼女は既に死んでいるから

 

先代博麗巫女は行方不明の後、死亡が確認されている

とある場所で何かに思い耽っている途中、後ろから切り裂かれた

その後は逃げることも出来ず、食い殺されたらしい

 

 

その事実を、俺はまた後程聞くことになる

 

霊夢はそれを知っているから、泣いている

俺は、まだそれを知らなかった

 

仕切りが、突然シュンと消える

 

霊夢は兄を探し、腕を彷徨わせる

その姿は酷く頼りなくて、幻想郷の最強とは思えない姿

どちからかと言えば泣きながら助けを呼んでいる女だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は、その腕を、手を掴む

 

彼女は俺に抱きついた

 

「悪かったな、1人にして」

 

彼女は鼻を啜り、泣く

嗚咽の交じったソレを、俺は背中を撫でながら最後まで聞いてやった

 

不思議と思い出した、寝る時に母さんが歌っていた子守唄を口ずさみながら。

 

心は、深層からどんどん浮いていく

 

 

 

死せし者たちの世界から体は"浮いていく"

 

 

 

 

俺は自分の体重が無くなったかのような軽快さを覚えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ありがとう、思い出さしてくれて

 

 

 

 

 

 

 

 

「母さん」

 

俺と霊夢を更に抱く女

瞳には、鏡には俺に抱きつく霊夢…更に俺と霊夢を抱く母さんの姿

 

母さんは、ちゃんと居た

 

成仏出来ずに此処に居たんだ

 

心配させたね

 

ごめんね

 

 

 

 

 

 

そして、ありがとう、母さん

 

この言葉が、俺は伝わって欲しかった

多分伝わったと思う

 

 

 

 

何故なら――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――母さんの顔が、笑顔に変わったから

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