選王の魔術師と、王器の褪せ人   作:ただ好きだからTSさせたのだ。

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 果たして、エルデンリングが砕かれた時、既にまともな者などこの狭間の地に残ってはいなかったのではないか。
 しかし、デミゴッド達は大ルーンを得て、その臣下達は各々が選んだ王の器の為に死ぬ大義名分を得た。
 なればこそ、この戦争を否定はできまい。たとえ、終わりが正しくないモノになったとしても。

 宮廷魔術師メルリヌスの手記より抜粋


回想・第一話

 

 

 朝、目が覚めて。

 目に見える文明レベルは明らかに衰退。その上特に意味も無いだろうに女の子になっていて、正直言って何の罰ゲームなのかと思わずにはいられなかった。

 

 多分、俺は転生したのだろう。

 そう判断するのに時間はかからず、そしてその後すぐに俺は絶望することになる。

 

「メルリヌス! メルリヌスよ!」

 

 野営地に、大男の大きな声が響き渡った。

 それは確かに俺、魔術師メルリヌスを呼ぶ声であり、()()()()()()の声であった。

 

 ……いや、ね。うん。将軍ラダーンの声なのよ。

 

 もうお分かりだと思うだろうが、俺は空前絶後の大ヒット作『エルデンリング』の世界に転生してしまったらしい。

 

 

 

 ……これなんて罰ゲーム???

 

 

 

 □

 

 

 切っ掛けはそこそこ昔のことだった。

 

 

 まだ余裕で齢二桁にも満たなかった頃の俺は、しかしどうやら魔術の素養に優れていたらしく、レアルカリアの学院で魔術を学んでいたという母によって半ば強制的に魔術を学ばされた。

 この時点で、まだまだ成熟していなかった俺の脳は前世の記憶なんて欠片も俺に意識させることはなく、ただ周囲とはズレた感覚のままに魔術の研鑽に励んだ。

 

 母はカーリア王家に仕えていた輝石の騎士、要するに元カーリア騎士だった。

 俺を身篭ったことで一線を退いていたようだ。

 それでもかなりの強さを誇る母は幼い俺に対して恐ろしいほどスパルタに剣技を教え、輝石とカーリアの魔術を学ばせたのだ。

 

 

 暫くして俺が九つとなった頃、母は俺を古い伝手であるという魔女のレナに預けた。レナは星の世紀エンディングに関わるラニと瓜二つの女性だ。あちらと違って人形ではないが。

 閑話休題。

 そしてそのすぐ後のこと。母は王都ローデイルより攻め込んできたラダゴン率いる軍勢に対するカーリアの軍勢の一員として戦い、死亡した。後に第一次リエーニエ戦役と呼ばれる戦いだ。

 多分、騎士として衰えた母は予知していたのだろう。自分がその戦いで死ぬのだと。だから、俺を雪の魔女レナに預けたのだ。

 幼い俺でも分かった。というか、そもそもレナは俺に何一つ憚ることなく真実を伝えた。

 悲しいと、俺は確かに思った。涙は出なかったが。

 

 

 

 そうしてレナによる過酷な教えと俺自身の身体に宿った才覚によって、カーリアと雪の魔術をあらかた修めた頃か。

 

 十歳になった俺は前世の記憶を取り戻し、そして軽く絶望した。

 それは単に性別の逆転や、現代人には耐え難い文明レベルの衰退に拠ってだけでは無い。

 転生したこの世界と俺自身がゆえだ。

 

 前世の俺はエルデンリングをプレイしていた。

 リリース初日にプレイを開始して、ムービーや会話を全スキップしながら翌日にはクリア。そのままさっさとトロフィーをコンプリートしようとしていた。まず最初にトロコンしてからゆっくりとエルデンリングの世界を楽しもうと考えていたのだ。

 だが、俺の記憶にはトロコンしたところまでの記憶しかない。

 つまり、登場人物やボスのことは知っていてもストーリーや背景はほとんど頭の中に無かったのである。

 

 おお、その資格はない。ところでおお、その資格はない。

 頭の中に、時たま祝福の上に書かれていたメッセージが過ぎる。その通りです、本当にありがとうございました。

 こんなことになるなら、狂い火の周の時くらいは真面目にストーリーを読めば良かった。

 後悔してももう既に遅過ぎるが、嘆かずにはいられない。

 どうにもならず、どうすることもできない。エルデンリングが砕け、デミゴッド達が殺し合い、褪せ人達が帰還して物語が始まるまで俺に打てる手段は何一つ用意されておらず、力を蓄えること以外にできることはないのだ。

 

 

 

 失意の中、第二次リエーニエ戦役が始まった。

 俺はレナから与えられたお使いの為にアルター高原まで出向いていて、一連の戦争に全く関わることは無かったが。

 レナラとラダゴンはどうやら互いに恋に落ちて結婚したらしく、それによりカーリア王家とローデイルは和解して第二次リエーニエ戦役は終結。めでたしめでたし、ということらしい。

 ツッコミどころしかないが、まあ半ば神話の世界なのだ。そんなものなのだろう。

 

「フロー、ありがとう」

「……」

 

 差し出された書物を受け取る。

 礼を述べれば、帰ってくるのは軽い唸り声。犬のように低い姿勢のまま鎧に身を包んだ彼は、お使いで赴いたアルター高原で出会った猟犬騎士のフロー。あの慣れないと本当に面倒くさい猟犬騎士である。

 よく分からないうちに懐かれた?らしく、レナの魔術師塔に戻ってきてもこうして付いてきた。顔を見た事はないものの体格的にも中身は大男なのだが、犬みたいで可愛らしいし下心みたいなのも皆無。その上、従順なのでほとんどペットみたいになっている。レナに聞けば、猟犬騎士は仕えるべき主を各々が選び、決して裏切らない忠犬であると言う。しかし、どうして彼は俺なんかを選んだのだろうか。

 まあ、懐かれて悪い気はしない。が、すぐに他人に威嚇するのはやめてほしい。

 

 さて、この時俺も既に十五歳。この世界では立派な成人だ。

 そしてラダゴンを婿として迎え、ローデイルとの和睦もあってカーリア王家の威光はリエーニエでの権勢を確かなものとしていた。

 レアルカリア魔術学院は、カーリア王家の女王レナラを英雄であると称え、支配者として仰ぐ。

 俺は一応というかガッツリカーリア王家の所属であり、魔術師としては既に数少ないカーリア騎士より上に、剣術においてもカーリア騎士相応には修めていた。満月の女王、レナラの再来であるとまで言われる程度には。

 

 結果、俺はレアルカリア魔術学院のラズリの教室に特別講師として招かれることとなる。

 ラズリの教室というのは、カーリアの魔術を修める教室のことだ。

 そこに学ぶのは水縹色、もしくはこの世界における満月色のローブに身を包み、青い輝石の嵌め込まれた男性の輝石頭を被った魔術師である。

 特に教師としてやることと言えば、輝石剣での剣術やカーリアの魔術について教え、受け売りで月と星は同じだと語るくらい。

 

 

 そんなこんなをしていれば、気が付けば俺も二十歳。見た目は十五歳くらいの時から変わらないが、流石にもう立派な魔術師。己の魔術師塔を立ててレナとは別居するようになっていた。

 数年、ローデイルとカーリア王家は栄華を極め、レアルカリアの中で蠢く不穏はフローが勝手に対処……うん、対処してくれていた。

 

 そして、俺は今、レナラ女王の前にいます。

 その隣にはまだ幼いのに既に身長140cmの俺より背が高い赤髪の少年と、それよりは低いがそれでも俺と同じくらいの背丈の少年。

 

 曰く、彼らはラダゴンとレナラ女王との間に生まれた二人の兄弟、ラダーンとライカード。つまりあの大ボス二人である。半神のふたりかな?

 ちなみにライカードが兄でラダーンが弟だ。そうは見えないが。いや、ラダーン君本当に七歳? 十三歳も歳上の俺が見上げる背丈ってやばくないか???

 

「メルリヌス、よく参りましたね。楽にしなさい」

「労い痛み入ります、殿下。それで、私めへの要件とは?」

 

 なお、今現在のレナラ女王は本編で戦った感じではなく、はっきりとしていて女王の貫禄というかオーラというか、そんなものを纏った人物だ。とても三児の母とは思えない。

 

 

「この二人への魔術の指導を、貴女に任せたいのです」

 

 

 ……なんで???

 

 俺は困惑のまま杖を取り落とした。

 

 




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