暁音はいつものように朝目を覚まし、リビングで朝食を食べて学校に向かう。だが、今は何故か一人ではなく、隣に男性が一人居た。
「なんでいるの」
「心配だからだよ」
「今までそんなことしてこなかったじゃん」
「久しぶりに会ったら熱。それに気づかずどこかに向かっていたじゃん。そんなの見たら、普通に心配するよ」
「偶然だよ」
「その偶然を起こさないように、今一緒に学校向かっているの」
「そっちの学校は大丈夫なの?」
「普通に間に合うから問題ないよ」
「そう」
そんな会話をしてるのは、暁音の幼馴染である
隣で本を読みながら歩いている暁音を横目で見て、ため息をついている。
「普段からそんな感じなの?」
「うん」
「それ、しっかりと読めてる?」
「うん」
「…………にしては、表紙上下逆なんだけど」
「え? そんなこと…………あ」
確認するように表紙を見ると上下逆になっていることに気づく。何事も無かったかのように直して、再度読み始めた。
「なるほど。表紙だけが逆になっていたのか……」
「昨日家で落としてしまった時、表紙が取れて慌てて直したんだけど。多分、その時に間違えた」
「しっかりしているように見えて、そうでも無いよな。暁音って」
「そんなことないよ」
そんな会話をしながら歩いていると、どんどん周りに暁音と同じ制服を着た人達が見えてきた。その人達は、何故か暁音達に目を向け頬を染めたり、ピンク色の声を上げている。
そんな視線や声が煩く感じでいるのか、暁音は眉間に皺を寄せ何かを言いたげに隣に立っている瑠爾を見た。
「え、何?」
「…………別に。早く学校行ったら?」
「え」
「ほら、もう私の学校には着いたから」
「いや、まだ見えて──」
「ここまで送ってくれてありがとう。それじゃ」
「あ、ちょっ──」
暁音は瑠爾を振り切るように歩みを早め、歩き去ってしまった。その際、こだわりというように本からは目を離さない。にもかかわらず、誰ともぶつからないのはある意味すごい。
そんな彼女の後ろ姿を唖然と見て、瑠爾の無意味に伸ばされた右手は空を掴んでいた。
「な、なに?」
目元に薄く涙を浮かべ、悲しげな声をこぼし、瑠爾は肩を落としながら鞄を握り直し自身の学校へと向かって行った。
☆
いつものように学校を終え旧校舎へ。3ーBには変わらず月海が窓の外を眺めていた。
今はまだ日は昇っており明るい。
「月海さん。こんにちは」
「あぁ」
「何を見ているんですか」
「闇」
「…………それは分かっております」
「なら、聞く必要ないじゃん」
「そういう意味ではありません」
「へぇ」
興味なさげに会話を終わらせ、月海は顔を窓から離した。そして、暁音の方に向ける。
いきなり顔を向けられた彼女は驚きで少し目を開き「なんですか」と問いかける。
「なんで君はここに来るの?」
「それは月海さんにおんがえっ──」
「それだけじゃないでしょ。他にもあるはず。君をつなぎ止めている何かが」
暁音の言葉をさえぎった月海の言葉に、彼女は肩を少し震わせる。目線を泳がせ、なにか言おうと口を開く。だが、言葉にならず直ぐに閉ざしてしまった。
暁音の困惑が月海に通じたのか。溜息をつき、乱雑に頭を掻く。
「もしかして、もう一人の僕に口止めされてるとか?」
「………ソンナコトナイデス」
「声ちっさ」
暁音は誤魔化す言葉が思いつかず、とりあえず否定だけを口にしていた。
「別に、口止めされていたらいいよ。なにか考えがあるということだし」
「どういうことですか?」
「もう一人の僕が、今の僕に知られたら不味いことって無いんだよ。だって、どうせ僕は僕だ。性格や思考などが大きく変わるわけじゃない。内に秘めている今の僕の感情を、もう一人の僕が発散してくれているに過ぎない。なら、なんで君に口止めをしているか。これは僕の勝手な想像だけど、今の僕に知られると、心底めんどくさいことになる。そう、考えているんじゃないかな」
月海は顔を逸らし、近くにある机をトントン叩きながら口にする。その言葉に、暁音は首をかしげ口を開いた。
「心底めんどくさい、ですか? そんなことないと思いますが」
「なら、教えて」
「それはちょっと」
「あっそ」
しっかりと月海の申し出を断り、暁音は顔を背けた。
「だって──……」
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『おめぇはくそよぇな』
『そりゃ。貴方みたいにそんなカッターナイフで相手を殺すほどの力は、私には無いですよ』
『そうじゃねぇ。おめぇは、もう諦めている』
『諦めている?』
『そうだ。おめぇには自分を強くする意思がねぇ』
『意味がわかりません』
『だから、俺がてめぇの意志を引き出してやるよ』
『……え?』
『おめぇが「死ぬのが怖い」と思うまで、俺はてめぇを"死"という物の近くに居続けさせてやる』
『なんですかそれ』
『おめぇが自分の意思で逃げたり、身体を震わせ怖いと感じた時──俺がお前を
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「だって」と口にしてから、その後の言葉が繋がらない。月海は不思議に感じたのか片眉を上げ「どうした」と、問いかける。
「…………いえ、なんでもありません」
「なんなんだよ」
「多分、そのうち知ることになるかと」
「そんなの当たり前じゃん。僕は完全なる無関係ではないんだから」
「そうですね」
その後は特に会話をせず、二人はそれぞれの事をして時間を過ごした。
それから夜になり、暁音はいつも通り旧校舎から出て帰宅。
教室に残った月海は、外を歩いている暁音を見届けながら、ソッと口を開いた。
「なんか、もう一人の僕の方が、暁音と距離近くない?」
ここまで読んでいただきありがとうこざいます
次回も読んでいただけると嬉しいです
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