夜、月明りが照らされる夜道。一人のサラリーマンの男性が帰宅していた。片手に付けている腕時計を確認しながら焦り気味に歩いている。
腕時計が指している時刻は23:46。残業で遅くなってしまい、慌てて帰宅していた。
「早く帰らないと…………」
ポケットに入っているスマホが音を鳴らし通知を知らせる。その画面には、今世間を騒がせている”大量殺人失踪事件”の最新ニュースが映されていた。だが、男性は通知に気づかず、駆け足で夜道を進んでいた。
街灯が点滅し、辺りが見渡せなくなる。雲が月を隠し、男性の周りが完全に暗くなってしまった時。ペタ……ペタ……と。サンダルの音が聞こえ始めた。
辺りは暗く誰がいるのかわからない。男性も足音は聞こえてるが人の姿を確認する事が出来ず、眉間に薄く皺を寄せる。
一瞬だけ止めた足を再度動かし、足音を鳴らし始めた。だが、重なるようにサンダルの音も聞こえる。
男性の足音とサンダルの音が響き、恐怖心が込み上げてくる。姿が見えず、足音だけが聞こえる状況なため無意味に周りを見渡し警戒していた。
「…………ヒッ」
後を確認しながら歩いており、ゆっくりと顔を前方に戻した時、人影が現れ声が口から洩れる。
「だ、誰だ?」
目を凝らし、前にいる人を見る。その人影女性らしく、スカートを風に揺らし立っていた。肩より少し短い髪に、学校指定の制服。癖のように右手で右側の髪を耳にかける。
「貴方に恨みはないですけど、すいません。私のために、死んでください」
コツ……コツ……と。履いているローファーの音を鳴らし、物騒な言葉を吐きながら女性は男性に近付いていく。
異様な雰囲気を纏っている女性に男性が戸惑い、近づいて来るのと同じタイミングで後ろに下がる。距離を近づかせないようにしていた。だが、その時後ろを見ていなかった男性は背後にいた人に気づかずぶつかってしまった。
「あ、あの。助けてください!!!」
情けない姿など晒しているが気にせず、縋るようにぶつかってしまった人に助けを求めた。だが、それは間違いだった。
「あ、あ……。なん、で…………」
次の瞬間、男性の足元が赤く染まっていく。その赤色の液体は、男性の腹部から流れ出ており、その腹部は銀色に輝くカッターナイフが刺さっていた。
「こんな時間に夜道を歩いていると危ないぞ。しっかりニュースを確認しないからこうなるんだ。まぁ、俺的にはターゲットが揚々と歩いているからいいんだけどよ」
そう口にし、目元に巻いている赤い布を靡かせ、白衣を纏った青年が勢いよくカッターナイフを引き抜いた。
「がはっ!!」
そのまま男性は血だまりに倒れ、動かなくなった。
「お疲れ様です」
「もっと耐えてくれれば面白かったんだけどなぁ」
もう動かなくなってしまった男性を見下ろし、つまんないというような顔を浮かべた。
「もういいの?」
「あぁ、構わねぇよ」
「やった!!!」
青年の左側から黒いモヤが現れ少年の形を作る。そこから現れたのは、黒い髪のおかっぱ少年。自身の背丈にあっていない執事のような服を纏い、袖で隠してしまっている両手を上にあげ喜びを表現した。
下唇を舐め、狂気的な左右非対称の瞳を浮かべる。我慢できないというように口から息を吐いた。その息は黒く、どんどん増え少年を包み込む。
そのモヤは徐々に膨らみ、周りの建物を超える大きさの狼に変貌した。
狼は大きな口を開き、ブラックホールのような口内を覗かせ、地面に倒れている男性に向ける。そのまま屈み、男性の上半身咥える。
体を戻し、顔を上へと向け、口を開いた。男性の身体が吸い込まれるように、狼の体内へと消えてしまった。
人間を一飲みし、残ったのは血痕のみ。
狼は男性を完全に腹の中に入れると、少年の姿に早変わり。お腹をポンポンと叩き、唇を舐め満足そうな顔を浮かべた。
「少し辛かった」
「でも、うまかったんだろ? 満足そうな顔を浮かべてんじゃねぇか」
「うん!!!」
さてと、というように。少年は笑顔を消し、残された血痕を見た。
「消さないとだめだね」
「任せたぞ」
「了解だよ!!」
カッターナイフの刃を拭きながら、青年は少年にお願いした。その言葉に元気に返事をし、血痕に手を伸ばした。
少年の左右非対称の瞳が真紅と藍色に輝き、少年の出した手に連動するように路上に付着している血痕光り、ウゴウゴと動き出した。
少年が手を上に動かすと、血痕も同じ動きをする。空中に浮かび、雫となり少年の周りをくるくる回る。
赤い雫を動かし始めたかと思うと、少年が指を鳴らした。それと同時に、赤い雫はパンと弾け、雨のように地面へと降り注ぎ姿が消える。
「これで終わり。またほかの人を探しますか?」
「いや、もう朝日が昇る。お前は寝る時間も考えねぇとダメだろ」
女性が青年の隣に移動し問いかけた。その問いにすぐ返答。足を踏み出し、青年は帰路に向かった。
青年の返答に少し物足りないような顔を浮かべた女性だったが、次の青年の言葉に少しの喜びを感じていた。
「次はお前が殺してみるか?」
「…………え、良いんですか?」
「逃がさないと言い切れるのならいい」
「…………自信ないのですが…………」
「安心しろ。サポートはする。作戦もしっかり立てるぞ。それでも無理なら次も俺がやる」
背中を向けながら青年は口にする。その言葉に薄く笑みを浮かべ、女性は駆け足で青年の隣に立ちはっきりといい放った。
「次は、私が殺りたいです!!」
赤布の言葉 〜悪魔憑きの少女と盲目青年〜 end
最後まで読んで頂きありがとうございました!!
ここまでかけたのは読んでくださった方のおかげです!
本当にありがとうございました(*´∇`*)