ダンジョンでドラゴンと戦うのは間違っているだろうか ~マンチキン・ミィス~   作:ケ・セラ・セラ

106 / 270
13-2 レベルアップおめでとう

 食後、キャンプを畳んで帰還準備を始めるロキ・ファミリアと別れ、イサミ達は一足早く地上に帰還した。

 "グワーロンのベルト"で気体化し高速移動すると、ものの20分で第一階層に到着する。

 バベルから外に出ると、もうすぐ夕方になろうかという時刻であった。

 

「二日ぶりの日の光ですねえ」

「普通あんな奥まで遠征してたら、二日どころじゃすまねえんだがな・・・

 お前が一番反則なのはそれじゃねえかといつも思うよ」

 

 イサミのベルトに目をやりながらしみじみつぶやくシャーナ。横でレーテーがうんうんとうなずく。

 ロキ・ファミリアほどではないものの、彼女たちの属していたガネーシャ・ファミリアやイシュタル・ファミリアも深層に遠征を行っている。

 一度深層に潜ったら半月は日の光を拝めないのが普通なのだ。

 

「まぁそれはさておき、シャーナ達は先に帰っててくれ。

 俺は夕食の買い物してから行くから」

「ん、換金はしないのか?」

 

 首をかしげるシャーナ。

 

「自分で今言ったじゃないか、反則だって。

 こんな最深層の魔石やらドロップアイテムやらを、しかもロキ・ファミリアより前に持ち込んだら一発で怪しまれるだろ?」

 

 なるほどそりゃそうだとシャーナが掌を打つ。

 

「それじゃそういう事だから」

「あー、じゃあ私もイサミちゃんとお買い物行きたーい」

 

 だめ? と顔を覗き込んでくるレーテーにイサミが戸惑う。

 普段はイサミが買い物、シャーナとレーテーが換金担当だったのだが、ついていきたくてうずうずしていたらしい。

 

「いや、いいけど・・・別についてきても面白くないぞ?」

「いーの。イサミちゃんと一緒なのがいーの」

 

 言いつつ、イサミの腕を取る。(抱きつくと"変装帽子"の効果で誤魔化しきれなくなるからだ)

 

「・・・ま、いいけどな」

 

 かくして、イサミはにこにこ笑うフルプレートの巨女と、大剣を担いだロリエルフ(ついでについてきた)を引き連れて魚屋や八百屋を廻ることになったのだった。

 普段着に見えなくもないイサミはともかく、フル装備の二人が目立ちまくったのは言うまでもない。

 

 

 

「ふうん? 何だか随分いい顔してるじゃないか、イサミ君」

 

 バイトから帰って来たヘスティアが、開口一番感心したように言った。

 少し照れくさそうにイサミが返す。

 

「そうですか?」

「ああ。これは期待できそうかな?」

 

 いつもより遅めに帰って来たベルとリリが2mの丸岩(魔石入り)を見て驚いたりと言った一幕を経て、食後のステイタス更新。

 

「・・・何ですか、この"(プラス)"って」

「そんなのボクが知りたいよ。なんでこう、君たち兄弟は訳のわからないステータスを発現させるんだい?」

「そう言われましてもですね・・・」

 

 

 

 イサミ・クラネル

 Lv.1+

 力:I68→H112 耐久:F375→E462 器用:H192→G232 敏捷:G277→F322 魔力D:544→B:798

 

《魔法》

 

《スキル》

 

 

 

「レベル1プラスもそうだけど、何だよこの魔力の異常な伸びは?!

 ベルくんじゃあるまいし・・・いやベルくんでも流石に一度に200も上がったりは――そうそう――しないぞ?」

 

 顔を引きつらせながら問い詰める紐神。

 うーむ、と沈思黙考するイサミ。

 

「そうですねえ・・・強いて言えば、身を捨てて浮かんだって事でしょうか」

「わけがわからないよ」

 

 でしょうね、とすまし顔で頷くイサミ。

 察するに、常軌を逸したウィッシュの連続使用による負担が規格外の成長に繋がったと言う事だろうか。

 だとしても、もう一度やる気は無いが。

 

 ただ、レベル横の"プラス"については心当たりが無くもなかった。

 何となく、壁を乗り越えた感触がある。

 "プラス"というのがそういう意味であるならば・・・やっておかねばならないことがあった。

 

「うっしゃ、ランクアップだぜぇ!」

「やったー!」

「すごい! これで第一級冒険者ですね!」

「おめでとー!」

「やったな、シャーナ!」

 

 こちらはまっとうにランクアップしたシャーナを祝福しつつ、イサミはそれに備えた「組み立て」のラインを考えていた。

 

 

 

 翌朝。

 

「イィィィィヤッホォォォォォウ!」

 

 ホームにイサミの歓声が響き渡る。

 とは言ってもベルたちは一階部分で朝の特訓中。駄女神は朝の惰眠を貪っており、その声を聞いたのは居間で準備をしていたリリだけだ。

 

「い、イサミ様・・・?」

 

 どこかおっかなびっくりで扉を開いたリリの目に映ったのは、ベッドの上に片足を乗せてガッツポーズを取るイサミの姿。

 

(そんなことをするようなキャラではないと思っていましたが・・・)

 

 うーん、と唸りながら引っ込もうとすると、喜色満面のイサミにがしっ、と両手を掴まれる。

 そのまま引っ張られて、部屋の中央でたらったらった、と歌を歌いながら踊るイサミに巻き込まれた。

 

「イサミ様!? ちょ、一体なんですか?」

「なったんだよ、リリ! 俺は、"超英雄(エピック)レベル"になったんだ!」

「は、はあ・・・?」

 

 それから五分ほど、リリは訳がわからないままイサミのダンスに付き合わされた。

 

 

 

 通常D&Dのキャラクターのレベルの上限は20。

 "超英雄(エピック)"、もしくは"伝説級"とはその限界を超えた、21レベル以上の存在を指す。

 オラリオのLv.7がD&Dの19~21レベルに相当するので、レベルだけなら"頂天"オッタルに並んだことになる。

 

 もちろんオッタルとは圧倒的なステイタスの差があるのだが、D&D冒険者にもオラリオの冒険者にはない利点がある。

 恩恵を受けたレベル2以上の冒険者が下級冒険者に持てない発展アビリティを持てるように、エピックレベルの冒険者はそうでない冒険者の持てない「"伝説級(エピック)"特技」と呼ばれる特殊な《特技》を修得できる。

 

 ほかにもエピックレベルのみの技能、呪文、クラス、マジックアイテム等々が存在し、エピックレベルと非エピック冒険者の能力差は恐らく上級冒険者と下級冒険者のそれを上回るだろう。

 

 そしてこれでようやく、あの赤い老人の言った生き残るための条件をクリアしたことになる。

 もっとも「最低限」とも言ってはいたが。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。