ダンジョンでドラゴンと戦うのは間違っているだろうか ~マンチキン・ミィス~ 作:ケ・セラ・セラ
「ジャーン!」
ノリノリのシャーナが両手を広げて叫ぶ。
「告発せよ! 告発せよ! 告発せよ!」
「まさかの時にヘスティア純潔裁判!」
妙に懐かしいノリと共に開幕する臨時
「それでは被告人、イサミ・クラネル。何か弁明はあるかい?」
ソファの中央にふんぞり返る、裁判官兼検事兼死刑執行人のヘスティアが氷のような瞳でイサミを見つめる。
なお弁護士はいない。
「いやその・・・いつも通り情報収集で酒場に行ったらアスフィさんと出くわしまして。
アスフィさんが酔いつぶれたもんで、介抱してたんですよ」
「イサミ様、不潔です」
「いかがわしいことはやっとらんわ!」
ジト目のリリに反論するイサミ。
「えー? ムキになるのがあっやしーなー?」
「黙ってろよ貧乳クソロリエルフ」
ニヤニヤしながら顔を覗き込む――完全に楽しんでいる――シャーナに全力で呪文を叩き込みたい衝動に耐えながら、イサミは弁明を続ける。
なおベルは先ほどから顔を真っ赤にしてうつむいたままだ。
「それでですね、ベッドに寝かせたらマントを握って離さないものだから、やむなくベッドの横の床で一晩過ごしたわけですよ。
それ以上のことはじいさんに誓ってやってません」
「ふーむ・・・」
アゴに手をやってイサミをじっと見つめるヘスティア。
「・・・・・・・・・・・」
じー、とずっと睨んでくるレーテー。
非常に居心地が悪い。
横からシャーナが口を出した。
「で、どうなんです? 神様だったら本当か嘘かわかるでしょう?」
「いやそれがね・・・ボク達は確かに子供達の心が読めるんだけど、イサミ君にはそれが効かないんだよ。
嘘はついてないと思うんだけどね・・・」
「へえ?」
「ええっ!?」
ベルが目を丸くする。
「どういうことなの、兄さん?!」
「どういう事と言われてもなあ・・・あ」
ぽん、と手を叩いて思い出したのはミストラの加護の一つ、常動型、解除不可の"
ミストラの使徒「マジスター」に与えられる、探知と精神干渉の完全な無効化能力だ。
「かくかくしかじかと言うわけで、俺には精神系の能力は効かないんですよ。
まさか神様の読心能力にまで干渉できるとは思いませんでしたが・・・ひょっとして最初の頃避けられてたのはそれが原因ですか?」
「まぁね・・・ボクたちからしてみれば、君みたいに心の読めない子供って言うのはあり得ないんだ。
どこかの神がボクをからかうためにやってるのかと思ったくらいだよ」
彼ら兄弟がオラリオに来た当初はイサミがファミリアを探し、ベルは適当にオラリオを観光していたのだが、その間にベルとヘスティアが出会い、これも縁と言うことで彼らはこのファミリアを結成したのである。
それがなければ、恐らく二人はガネーシャあたりに入団していたであろう。
(ちょっと情報収集した限りでも、ひどいもんだったからな・・・
ガネーシャ以外にまともなのはヘファイストスとゴブニュ、デメテルくらいって、どれも冒険者系じゃないし)
「まともな神がいねえ!」と絶叫した当時をまぶたを揉みつつ思い出すイサミ。
本拠地の建物を自分の座像にしてライトアップするような神がまともかどうかはこの際おいておく。
「まあ呪文でも同じ事は出来ますけどね。シャーナ、ちょいと・・・"
「お?」
「おおっ!?」
前にそうしたようにシャーナに呪文をかける。
今度はヘスティアが目を丸くした。
「本当だ! シャーナくんの心も読めなくなったよ!」
「そうなんですか? こっちは全然変わった気がしないんですけどね・・・」
自分の体を見下ろして怪訝な表情になるシャーナ。
「まあ、表では余りやらないほうがいいね。
今まではお調子者の神達に運良く見つからなかったみたいだけど、まじまじと見られたら多分一発でばれるよ」
「わかりました、気をつけます」
イサミが頷いた。
「だがそれはそれとして、ボクのファミリアで不埒な行為はゆるさーん!
イサミ君には何か罰を与えないとね!」
「えー・・・・て、いたた、痛い! ほっぺたつねるなレーテー!」
「せやで、奴は心が見えんのや・・・最悪、人間やないっちゅーことも十分あり得る話やな。
例の怪人の同類ってのも考えとかなあかん」
ある高級酒場の一室。
ディオニュソスを前にして、ロキが語り終えた。
「聞くのは二回目だけど、やはり信じがたいね・・・」
「ほんまやで。少なくともベートとほとんど相打ちにまで持ってく所はうちがこの目で見とった。
それだけの戦闘力がありながらLv.1で登録しとんのやで。あっからさまに怪しいやろが」
しかめっつらのロキが行儀悪く椅子の上にあぐらをかく。
一方ディオニュソスは、こちらはあくまでも優雅に眉をひそめた。
「確かにね。それに、彼の弟のこともある。一ヶ月半でランクアップなどと有り得る訳がない。
・・・
「ないない。あのクソロリドチビおっぱいにそんな真似する知恵があっかいな。
栄養が乳にばかり行ってて、頭に廻っとらんからな」
へっ、と吐き捨てるロキにディオニュソスが苦笑した。
ロキもそうだがディオニュソスも、ヘスティアが表裏のない単純な神物だと知っている。
表情を真剣な物に戻し、ディオニュソスが口を開いた。
「下界には未知が溢れている。我々神にも計り知れない未知がね。兄か弟、どちらかだけならそうした未知の現れと考える事も出来ただろう。
だが、そんな未知が、偶然が、果たして重なるものだろうか? それも兄弟で、しかも作ったばかりの新興のファミリアでだ」
「まあ、ないわな・・・後ろ暗いところのある連中があの単細胞ドチビジャガ丸おっぱいをダマくらかしとると考えた方がまだしもや」
「フレイヤはどうだい? 例の兄弟を随分とかばっていたが」
「あれは・・・あいつはあいつで男にしか興味のないやっちゃからな。
ベル・クラネルやったか、あのがきんちょに手を出されたくないだけやろ」
言葉が途切れる。
ディオニュソスは手元のカップを見つめ、ロキは天井を睨み、数日前の神会のことを思い出していた。