ダンジョンでドラゴンと戦うのは間違っているだろうか ~マンチキン・ミィス~   作:ケ・セラ・セラ

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14-5 【疾風】

 翌朝、いつも通りにダンジョンに出たイサミ達。ベルが誰かの視線を感じてしきりに不審がっていたが、ともかく別れて第一階層の脇道に入る。

 周囲から人の気配がなくなったところで、三人が一斉に振り向いた。

 

「さあ、出てこいよ。何者か知らねえが、俺たちゃちょいと手強いぜ・・・お?」

 

 通路から出てくる、覆面姿の冒険者らしき姿。

 まさか素直に出てくるとは思わなかったのか、シャーナが虚を突かれた顔になる。

 同時にイサミも。

 

「え? リューさん?」

「申し訳ありません、クラネルさん。お話ししたいことがあり、後をつけさせて頂きました」

 

 覆面を外し、リューが一礼する。

 

「それは、やはり昨日の?」

「はい。アリーゼ・・・クラネルさんはレヴィスと呼んでいましたが・・・」

「あ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!」

 

 不意に、レーテーが大声を上げる。

 リューはおろか、イサミやシャーナまでがぎょっとした顔で振り返った。

 

「な、何ですか?」

「思い出した! あなた、【疾風】ちゃんでしょ! アストレア・ファミリアの!」

「え? あっ!」

 

 一瞬眼をぱちくりさせたシャーナもまた驚きの表情になった。

 アストレア・ファミリアはかつてオラリオに存在した、正義の女神の眷属達である。

 

 過去にガネーシャ・ファミリアはアストレア・ファミリアと協力してオラリオの犯罪組織や闇派閥と戦っており、彼女(当時は彼)もアストレア・ファミリアのエースであった【疾風】とは多少の面識があった。

 

「? その歳で私を知っているのですか? 私がその名前で人前に出たのは五年前が最後ですが・・・」

「あ、いや、ガネーシャ・ファミリアの人から聞いたことがあって・・・」

「ああ、なるほど」

 

 もちろん、リューの方で相手がハシャーナ・ドルリアだと気づくわけもないが。

 

「【疾風】って、正義の女神(アストレア)の派閥のエースでしたよね。

 敵対派閥にファミリアが壊滅させられた後、復讐をやり過ぎてブラックリストに載り、最後は生死不明・・・でしたか」

「よくご存じで。ですがそれはおいておきましょう。私が伺いたいのは、あの赤髪の女性。

 私の目が節穴でないなら、彼女は私の親友だった、そして死んだはずの人物なのです・・・」

 

 沈黙が落ちた。

 イサミ、シャーナ、レーテーの三人が視線を交わす。

 二人の視線は「お前に任せる」と言っていた。

 しばし悩んだ末、洗いざらいぶちまけることにする。

 

「実はですね・・・」

 

 

 

「・・・」

 

 これまでレヴィスにかかわったほぼ全てを――シャーナの事は別にして――話し終えると、リューは沈黙した。

 イサミの語った事実を受け止めきれていないようでもある。

 

「正直、信じられません。生きていたことも、そうした者達に手を貸していることも・・・」

「アリーゼさんは迷宮内で罠にはめられてお亡くなりになったんでしたね。

 生きていたことに関しては、27階層の惨劇の時に半身を失って死んだはずの"白髪鬼(ヴェンデッタ)"という例もありますので、アリーゼさんとレヴィスが同一人物だとすれば、同様の経緯で命を繋いだ、ないしは蘇生したと言う事は十分に有り得るかと」

 

 再度沈黙したリューが顔を上げた。

 

「クラネルさん。話してくれてありがとうございます。それで、厚かましいと思いますが、もう一つお願いが」

「あの赤い外套のことですか?」

「ええ。あなたは、彼らを知っているのではありませんか?」

 

 確かにイサミには思い当たる節がないでもない。

 ショックを受けた状況だったろうによく見ているな、と感心する。

 さてどうするか、と考えるが、結論は既に出ていた。

 

「わかりました。心当たりにコンタクトを取ってみましょう。ただ、一連のことはご内密に」

「! ありがとうございます!」

「気にしないで下さい。愚弟のナイフを取り戻してくれた時のお礼をまだしてませんでしたからね」

 

 にかっとイサミが笑った。

 

 

 

 ちょっと待っていて下さい、と言ってイサミが脇道に引っ込む。

 ややあって戻ってきたイサミが頷いた。

 

「しばらくしたら来るそうです」

「・・・? そう、ですか」

 

 やや胡乱なまなざしになるものの、リューが頷く。

 しばしの時が流れ、雑談やシルの料理の話などで時間を潰していた時。

 

「お、いたぜ! よう、イサミっち! 昨日はありがとよ!」

「リド、声が大きい」

 

 黒いフードと赤いフードの、見るからに怪しい一団が迷宮の通路に姿を現した。

 黒い方はいわずと知れたフェルズである。

 

「・・・!」

 

 本当に来た、と口に出しはしないものの、軽い驚きにリューの目が見開かれる。

 昨日赤い外套団の外套を見て占術阻害その他の効果を持っていると気づいたイサミは、彼らが自身の顔を知っていたと言う事もあって、フェルズと関係あるのではないかと見当をつけていた。

 そして"送信(センディング)"呪文でフェルズとメッセージのやりとりをし、こうして彼らがやってきたと言うわけだ。

 

「ご足労頂き申し訳ない。まさか本人達も連れてきてくれるとは思いませんでしたが」

「君が【疾風】の名前を出したからね。アストレア・ファミリアは言わば彼らの先輩だ。会わせておきたかったのだよ」

「そりゃどういうことだ、フェルズ?」

 

 リューが問う前に、リドと呼ばれた男――恐らく、昨日の赤外套のリーダー格――が首をかしげる。

 言いつつフードを取って見せた顔は30絡みの、快活な笑みを浮かべるヒューマンの男だ。

 

 その他の赤外套たちも次々とフードを取る。

 エルフや小人族、獣人など種族は様々だが、それらの顔を見たイサミの眉がぴくり、と動いた。

 

変装帽子(ハット・オブ・ディスガイズ)か)

 

 変装帽子による変装はあくまで幻覚。イサミの"真実を見抜く目(トゥルーシーイング)"には全くの無力である。

 そのイサミの視覚は、トカゲ人間や翼の生えた美しい女性型モンスター、小人サイズの二足歩行するウサギなど、モンスターとしか思えない彼らの真の姿を捉えていた。

 

 ちらり、とフェルズの顔を見る。

 フェルズが頷き、イサミはそのまま何事も無かったかのように視線を戻した。

 フェルズが改まった様子で口を開く。

 

「おほん。改めて紹介しよう。彼らは"赤い外套団(レッドクローク)"。都市にはびこる犯罪や闇派閥の残党と戦ってくれている。

 ハシ・・・シャーナくんだったな。彼女に最初に宝玉を取ってきて貰ったときにも、バックアップをしてくれていたんだ」

「へえ、そりゃ気づかなかったぜ」

 

 アゴをつまむシャーナに、リドがにやっと笑ってみせる。

 

「それでフェルズ、こっちの姐さんが俺らの先輩だってのは?」

「言葉通りの意味だよ、リド。ゼウス・ファミリアとヘラ・ファミリアが倒れた後、都市の治安を守っていたのは彼女の所属するアストレア・ファミリアとガネーシャ・ファミリアだったのだ。

 残念ながら彼女のファミリアは壊滅してしまったが・・・その名はいまだに都市住民の間で語り継がれている」

 

 おお、と赤外套たちから感嘆の声が上がった。

 わらわらとリューの周囲を取り囲み、口々に質問や賞賛を投げかける。

 

「あ、その」

「こらこら君たち。リューさんが困っているだろう。少し遠慮しなさい・・・リューさん?」

 

 リューの様子を見たフェルズが首をかしげる。

 無表情な彼女にしては珍しく、その顔には驚きや戸惑い以外の何かが浮かんでいた。

 

「いえ・・・」

 

 ぎゅっ、とリューが拳を胸の前で握った。

 その口元が僅かにゆるんでいる。

 

「ただ、少し嬉しかったのです。

 私たちのファミリアは壊滅してしまいましたが、ガネーシャの人たち以外にもその志を受け継いでくれている方々がいたとは・・・

 私たちのやって来たことは無駄ではなかった、そう思えて」

「へへ・・・」

 

 リドが鼻の下をこすりながら照れたように笑う。

 残りの赤外套達も、程度の差はあれ似たり寄ったりの表情をしていた。




異端児登場~。
変装帽子(ハット・オブ・ディスガイズ)はマジックアイテムとしては凄く安い(普通のプレートアーマーが金貨1500枚、変装帽子が1800枚)ので、あれ、そうすると異端児の問題の大半は解決しちゃうんじゃない?とw
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