ダンジョンでドラゴンと戦うのは間違っているだろうか ~マンチキン・ミィス~   作:ケ・セラ・セラ

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14-6 捜査は足や

 ふう、と息をついてからリューが表情を戻す。

 

「まぁそれはこの辺にしておきましょう。私がお聞きしたいのは、昨日あなたたちを追っていた赤い髪の女・・・

 アストレア・ファミリアの同胞にして私の親友だった、アリーゼという女性です」

「!?」

「け、けどよ! 姐さんの仲間っていうなら、その人も都市のために戦っていた人じゃあねえのかい?」

 

 リドの問いに、リューは目を伏せ。

 

「もちろんです。彼女が、都市の破壊をもくろむ敵にくみすることなど有り得ません。

 しかし、それ以上に彼女は――五年前、死んだはずなのです」

「なぁっ?!」

 

 今度こそ、赤外套達は驚愕に固まった。

 フェルズも少なからず驚いているようだったが、はっと顔を上げる。

 

「そうか、あれだな? ルルネ・ルーイの報告にあった白仮面の男――オリヴァス・アクトと同じと言う訳か」

「そうじゃないかとは睨んでます・・・リューさん、アリーゼさんの当時のレベルは?」

「私と同じ、Lv.4です」

「【白髪鬼】が死んだ時Lv.3だったか? それでLv.5以上の戦闘力があったんだから、レヴィスもまあ妥当なところか」

 

 実際に戦ったシャーナの指摘にイサミが頷く。

 

「それで、彼女と出会ったのはどういう経緯だったのですか?」

「彼らには動きの怪しい商会を探って貰っていたのだ」

「その商会の倉庫を調べてたんだけど見つかっちまってなあ。

 即座に撤退したんだがそのまま追撃を受けて、イサミっちとリューっちに助けて貰ったってことよ」

 

 リド達の言葉にリューが考え込む。

 

「ですか・・・では今からもう一度その倉庫を調べても無駄でしょうね」

「やっぱそうかね?」

「そこで急いで掃除もしないような連中なら、とっくに尻尾を掴んでるさ」

 

 リドが顎をかき、フェルズがため息をついた。

 

「そう言えばリド達には透明化のアイテムか何か持たせてないのか?」

「もちろん持たせてるさ。起動していた状態で見抜かれて、襲撃を受けたそうだ」

「これだから本物の一流はなあ・・・それとも、透明看破のアイテムでも持ってたか?」

 

 24階層で戦った時点でのレヴィスの戦闘力は、Lv.6のアイズにやや劣る程度。

 だが強化種である怪人は魔石を大量に摂取することで短期間に大幅な能力上昇が可能だ。

 現状ではLv.6の域を超えて強化されている可能性もあった。

 

「それで、リューさんはこれからどうするつもりなんだ?」

「よろしければこちらのフェルズさん、リドさんたちと行動を共にさせていただけないものかと。

 店の方は女将さんにお願いして休みをいただいておりますし」

 

 ふむ、とフェルズが考え込む。

 一方リドは喜色をあらわにして拳を握った。

 

「いや、姐さんが参加してくれるなら千人力だぜ! ひょっとして魔法とかも使えたりすんのかい?」

「あ、はい。攻撃魔法と、いささか効きは遅いですが回復の――」

 

 会話を交わす二人をよそに、シャーナがイサミの顔を見上げた。

 

「向こうさんは話がまとまった感じだが、俺たちゃどうするんだ?」

「レーテーはぁ、イサミちゃんがいいほうでいいよぉ」

「うんまあ、お前さんはそうだろうな」

 

 肩をすくめ、シャーナが再度イサミを見上げる。

 

「で? おまえさんはどうするんだ?」

「まあその・・・ここではいさよならってのも後味悪いじゃないですか?」

「そう言うと思ったよ」

 

 困ったように言うイサミに、シャーナは大剣を担いでため息をついた。

 

 

 

 "空白の心(マインドブランク)"に類する強力な占術妨害を得ているのだろう、イサミの呪文でレヴィスの位置はつかめない。

 

「まあ、だろうとは思ったがな」

「そこまで甘くはないか」

 

 軽く方針を話し合った後、一行はフェルズと別れてくだんの商会の近くに来た。

 

「それじゃ、打ち合わせ通りに」

 

 "集団不可視化(マス・インヴィジビリティ)"で不可視化した一行がイサミの言葉に頷いた。

 (この呪文で一緒に透明化したものは、互いの姿を見ることが出来る)

 そして一人透明にならずにいたイサミが呪文を唱え、彼らの前から姿を消した。

 

 

 

 "上位不可視化"で姿を消したイサミは商会の内部に潜入する。

 "精神探査(プロウヴ・ソウツ)"呪文で管理職の記憶を片っ端からさらっていく力業に打って出たのだ。

 

 フェルズにも近いことは出来るが、彼は透明にこそなれるものの尋問や隠密、捜索と言った盗賊系の技能の心得がない。

 本質的には技術屋のたぐいだろうなというのがイサミの見立てだ。

 

 かくして忙しく動き回る商会員にぶつからないように、また時折歩いてくる高レベル冒険者に悟られないよう注意しつつ、イサミはそれとおぼしき地位の人間の記憶を探る。

 冒険者やモンスターと異なり、【恩恵】を受けていない商会の人間がイサミの術に抵抗するのはほぼ不可能だ。

 

「赤銅色の髪の女を知っているか?」

「黒ひげの戦士を知っているか?」

「赤髪の女を知っているか?」

「白い仮面の男を知っているか?」

「知っている人間は誰だ?」

「知っていそうな人間に心当たりはないか?」

「怪現象や怪しい人物を目撃したことはないか?」

「目撃した人物を知らないか?」

「目撃したという噂は?」

「商会内できな臭い噂のする部署は?」

「商会内の倉庫やその他の建物で噂がある場所は?」

 

 等々、上級冒険者が護衛についているであろう幹部級は避け、現場責任者クラスから一人一人洗っていく。

 記憶をさらう行為自体それなりに時間がかかるため、必然作業時間は長きにわたる。

 

 商会に入っていったのが午前の九時過ぎ。

 "上位不可視化"を二度ほどかけ直し、めぼしい人物の記憶を探り終えて商会を出てきた時にはもう昼の三時を回っていた。

 

 

 

 待ち合わせの場所に戻り、"上位不可視化"を解除する。

 待機組の不可視化は解除しないままに、片手を上げて挨拶。

 

 シャーナ達は互いの姿が見えるし、イサミの魔力視覚は不可視化を見通せるので、このままでも不都合は無い。

 端から見ると空気に話しかけるイタい人だが。

 

「お疲れさん。首尾はどうだった?」

 

 路地裏の何もない空間からシャーナの声がする。

 一流の冒険者であれば、その周囲に多くの息づかいや身じろぎの気配を感じていぶかしんだことだろう。

 

「商会主はいなかったが、幹部の一人が知っていた。8番街の商会主の別宅だ。

 それと、そいつにデヴィルがついていた――もちろん、姿は変えていたけどな」

「やっぱり黒か」

 

 と、リドの声。

 そこにレーテーが言葉をかぶせてくる。

 

「見破られたりはぁ、しなかったのぉ?」

「ただの"不可視化(インヴィジ)"ならともかく、"上位不可視化"は"真実の目(トゥルー・シーイング)"くらいでしか見破れない。

 その辺の雑魚がそうそう持ってるような能力じゃないさ」

「へー」

「ただ、何人か凄腕の冒険者とすれ違ってな。バレないかどうかひやひやものだったよ」

 

 ぴくり、とリューの眉が動いた。

 

「護衛ですか?」

「いや客、というか取引相手のようでした。明らかにまともじゃない面構えでしたね。後で似顔絵を描いて渡しますよ」

「あなたも多芸ですねえ・・・」

魔術師(ウィザード)ですから」

「いや魔術師関係ねえし」

 

 シャーナが突っ込むのをスルーしてイサミはリドに視線を向ける。

 

「で、どうする? 今から行くか?」

「いやあ・・・やっぱ夜じゃねえか? 昼間に騒ぎがあったらまじぃよ」

「同感です。この場合、世間の目はあちらの味方だ」

 

 と、これはリュー。

 

「じゃあそれで行こう。夜11時に、北西の城壁の見張り詰め所で」

 

 短く呪文を唱えて、ぱちんと指を鳴らす。

 赤装束の一団と、シャーナ、レーテー、リューの姿が現れた。

 

「そりゃ構わないけど・・・どこ行くんだ?」

「日銭稼ぎさ。しがない冒険者は生活が厳しいんだ。ほれ、行こうぜ、シャーナ、レーテー」

 

 バベルへ向かって歩き出しながら、イサミが後ろ手に手を振った。

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