ダンジョンでドラゴンと戦うのは間違っているだろうか ~マンチキン・ミィス~   作:ケ・セラ・セラ

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15-8 ドラゴンロード

 一緒に来ていたティオネたちの案内で一行はリヴィラを歩いていく。

 バラックの連なりながら巨大な水晶をちりばめた美しい町並みに感嘆し、並べられた商品のぼったくり具合に驚いていると、突然一行に――正確にはベルに向かって声が掛けられる。

 

「あっ、てめえは!?」

「え?」

「あっ!」

 

 道ばたの商店から出てきてベルを指さしているのは、剣を背負った若い男だった。

 全体的に整った顔立ちではあるのだが、目つきの悪さがそれを台無しにしている。

 

「ゲドさん!」

「ゲド様!」

「久しぶりだな、お前ら! ランクアップしたんだって?」

 

 かつてリリをはめようとしたが、成り行きでジャイアント・アントクイーンと共闘した冒険者、ゲドであった。

 なんだかんだで一応リリとも和解している。

 

「ええ! ひょっとしてゲドさんも?」

「ああ、上級冒険者様だぜ! 聞いて驚け、二つ名は【電撃稲妻熱風の竜王(ドラゴンロード・ドラゴンロード)】だ!」

「うわ、すごい、恰好いい!」

「だろう! うちの主神様には足向けて寝られんぜ!」

 

 二つ名で盛り上がるベルとゲド。その無邪気な子供達の会話に。

 

(無難な名前を勝ち取れてよかった・・・!)

 

 深いため息をつくヘスティアだった。

 

 

 

「そーいやお前、俺の仲間見なかったか?」

「どんな人です?」

「えーとだな、モルドって人で、いかにもチンピラぽいっていうか・・・」

「つまりゲド様の同類ですか」

「おいリリルカ」

「なにか?」

 

 ゲドがリリを睨み付けるが、リリはにっこりと笑い返す。

 

「まあとにかくだな、三日前に一緒にこっちに来たんだが、その日の内に他の二人と一緒にどっかに消えちまってな。

 どこかにしけ込んでるんだとは思うが・・・どうだ?」

 

 ベル達は互いに顔を見合わせるも、やはり知るものはいない。

 

「アイズさんたちは二日前からここにいるんですよね? 見ませんでしたか?」

「私たち、リヴィラには入ってないから・・・」

「今まで見てきたと思うけど、ここ、ぼったくりもいいところだからねー。宿屋だってまともな値段じゃないし」

 

 ティオネの言葉に頷こうとして、ふとティオナが首をかしげる。

 

「でもなんかさ、今日は人少なくない?」

「そういえばそうねえ」

 

 普段は数百をくだらない数の冒険者が行き交う街だが、今日に限っては妙に人通りが少ないようにティオネにも思えた。

 もっとも、一級冒険者である彼らが中級者向けの拠点であるリヴィラに入ること自体それほどあることでもないので、最近はこんなものかも知れないと言えばそれまでのことではある。

 

「まあともかく、私たちは知らないわね」

「ですか・・・」

 

 うーん、と唸るベルの頭をゲドが抱え込んだ。

 

「つか、なんでお前が【剣姫】や【大切断(アマゾン)】と一緒に歩いてるんだよ、おい!」

「い、いや、遭難して命からがらたどり着いたところを助けてもらって」

「それで一緒にリヴィラ観光か! うらやましいだろうがおい! 俺の仲間はむさいおっさんばかりなのに! ちくしょう、一人位俺によこせ!」

「そんな事言われても・・・」

 

 実際、今ベルと一緒にいるのはヴェルフを別とすればヘスティア、リリ、アイズ、ティオナ、ティオネと美少女ばかりである。

 こればかりはゲドの怒りも正当?なものと言えた。

 

「っていうか、ひょっとして地上に帰れないんですか?」

「ああまあ・・・ランクアップしたばかりだからなあ。最悪ロキ・ファミリアが出発するときに尻にくっついていこうかと思ってたんだ」

 

 ばつが悪そうに頭をかくゲド。

 実際ここはパーティメンバーをLv.2で揃え、かつアイテムをそれなりに用意してやっと到達できる階層であって、Lv.2単独や、Lv.1の足手まといを大量に連れて地上と往来するのは難しいと言わざるを得ない。

 そうした冒険者が、十分な戦力を有するパーティの後について地上に帰還するのもさほど珍しいことではなかった。

 

「僕たち明日出発するんですけど、良かったら一緒に行きませんか? 兄さんたちも一緒なので、安全に戻れると思いますよ」

「マジか!? ありがてぇ!」

 

 明日までにモルドたちが見つからなければ同行させて貰うという事で話がまとまり、ゲドは笑顔で去っていった。

 その後ヘルメスのおごりで18階層名物のフルーツを楽しんだり、甘すぎる果実にベルが目を白黒させたり、ベルが口を付けた果実をリリが取ろうとしてヴェルフに奪われてキーキー泣いたりして昼飯時。

 

「くはぁ~っ、キくのう! リヴィラで手に入る安酒なんぞ及びもつかぬわ!」

「これ東方の料理でしたっけ。ちょっと油がきついですけど美味しいですね」

「あーもーおいしーっ! ねえねえ【美丈夫(アキレウス)】君、うちの料理人にならない?」

「よしなさいよ、無理に決まってるでしょ」

「だから【美丈夫】はよせっつーに。リヴェリアさんはお酒は召されないので?」

「ああ、飲まないんだ。済まないな」

 

 イサミが作った"英雄定食(ヒーローズ・フィースト)"は相変わらず好評である。

 朝のイングリッシュ・ブレックファスト風とは打って変わり、昼は中華料理系統。

 揚げ物やおこげ、餃子など、油を多用したこってり気味の、こちらでいえば北京風か。

 

 冒険者は体を使う仕事であるから、基本的に高カロリーの食事の方が喜ばれる。

 もっとも英雄定食の場合、料理の内容が異なってもカロリーは変わらないのだが。

 

 

 

「それじゃ、もっぺん出てくるわ」

「またぁ?」

「晩飯には戻るよ」

 

 食後、イサミ達が再び深層に向かう一方で残ったヴェルフは椿に拉致されていた。

 ロキ・ファミリアの女性陣が揃ったテントの中でクロッゾと精霊の血筋についてバラされた後、根掘り葉掘り質問攻めに遭う。

 アイズが精霊の血筋を引いているのではないかという疑問解明のためなのだが、彼にとっては煩わしいとばっちりでしかない。

 

「他に精霊について何か知っておらんか? 英雄譚に出てくる『アリア』という精霊について情報が欲しいのだが」

「知るか。精霊と直接関わりがあったのは初代だけだ。言い伝えなんてものは残ってない」

「ええい肝心なところで役に立たんやつめ! だからお主の作品は残念扱いされるのだ!」

「本当にいい加減にしろよお前?!」

 

 頭から湯気を立てながらヴェルフが帰った後は、哀れな生け贄としてベルが召喚された。

 

「あ、あの、どうして僕はここに・・・」

「フッフッフ、ベル・クラネルよ。貴様はヴェル吉に売られたのだ。観念するがよい」

「う、売られた?!」

 

 邪悪な笑みを浮かべる椿に、小兎が怯える。

 しかしおとぎ話のたぐいにこそ詳しかったものの、彼もティオナになつかれたり、レフィーヤたちエルフ陣につるし上げを食らったのみで、彼女たちとしてはさして得る物はなかった。

 

「あ、でも兄さんなら何か知ってるかも・・・凄い物知りですし、ギルドの図書館の本を全部読んだって言ってましたから」

「マジで!?」

「本当に凄いんですね・・・じゃあ、次はお兄さんのほうに聞いてみましょう!」

 

 そのままであれば次はイサミが召喚されたろうが、結局リヴェリアが介入して、その場はお開きとなった。

 もっともイサミが来たところで話はさして進展しなかったであろうが・・・。




ゲド君は当然原作ではLv.1のまま死んでしまった(多分)わけですが、この話ではフィーンディッシュ・キラーアントクイーン相手に偉業経験値を稼いでレベルアップした設定です。
二つ名は「ゲド戦記」の同名の主人公ゲドの尊称「竜王(ドラゴンロード)」をイタい感じに適当に改変しました。
というかWiki見るまで彼にフルネームが設定されてるなんて知らなかったwww
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