ダンジョンでドラゴンと戦うのは間違っているだろうか ~マンチキン・ミィス~   作:ケ・セラ・セラ

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15-15 吸血鬼

「《最大化》《威力強化》《二重化》"陽光爆発(サンバースト)"ぉ!」

 

 戦いはまばゆい光から始まった。

 直径48mを照らす巨大な光の爆発。

 効果範囲こそイサミの持つ呪文の中でも突出して広大だが、威力自体は素の"炎の泉(ファイアーブランド)"にくらべても大きく劣る。

 まっとうな人間やモンスター相手なら、だが。

 

「「「ギャアアアアアア?!」」」

 

 悲鳴を上げて目を覆う冒険者、否、ヴァンパイアたち。

 名前の通り光で攻撃するこの呪文は、光に弱い一部の存在に対して絶大な効果を持つ。

 

「《即時高速化》《最大化》《威力強化》《二重化》"陽光爆発(サンバースト)"!」

 

 続けての一撃で、全身を焼けただれさせて半数以上のヴァンパイア達が倒れた。

 

「ちっ! 退くぞ!」

 

 敵のリーダーの判断は迅速であった。

 残る数人のヴァンパイアを引き連れ、夜の木立の中に姿を消す。

 一瞬で木立に姿を消した彼らを、もう呪文でも攻撃することは難しい。

 シャーナとレーテーも彼らをあえて追おうとはしなかった。

 

 敵がいなくなったのを確認し、三人が息をつく。

 その視線が、倒れたヴァンパイア達とそいつらが担いでいた袋に向かう。

 三人が頷き合ったのと、【風】をまとったアイズがその場に飛び込んでくるのとが同時だった。

 

「え・・・クラネル、さん?」

「アイズか! 状況どうなってる? こいつら、野営地を襲ってきたのか?」

 

 状況にややついて行けないのか、戸惑いながらもアイズが頷く。

 

「はい・・・寝入って少しくらいした後に突然襲われて、何人かが・・・」

「ベル達は無事か?!」

「弟さんは無事だったみたいです。全員はわかりません」

「そうか」

 

 ほ、と安堵の息をついてイサミはかがみ込んだ。

 転がっている袋の口を開け、中を確かめる――中は、イサミの想像したとおりだった。

 

「ルカさん・・・」

 

 アイズの表情がゆがむ。

 イサミ達にも見覚えがある顔だった。

 ロキ・ファミリアのサポーター、レベルは確か3だったはずだ。

 その顔に血の気はなく、呼吸もしていない。

 

 残りの袋も開いていく。

 それらの中にもロキ・ファミリアのサポーターたちがいた。

 いずれも息はしていなかった。

 

(・・・・!)

 

 遺体を手早くあらためたイサミの顔が僅かに険しくなった。

 遺体にはいずれも傷一つない。僅かな打撲痕があるだけだ。

 

 生命力吸収(エナジードレイン)

 いわゆる「レベルを下げる」攻撃である。

 生命力を吸収された人間は動きが鈍くなり、限界まで吸い尽くされると肉体的な負傷に関わらず即死する。

 イサミ自身、24階層でビホルダーのザナランタールをその手で仕留めている。

 ロキ・ファミリアのサポーター達の死因がヴァンパイア達による限度を超えた生命力吸収なのは明らかだった。

 

(絶対に後で面倒なことになるよなあ・・・)

 

 悲しみに目を伏せるアイズをちらりと見る。

 この世界では絶対にあり得ないことではあったが、イサミは限定的ながら死者を蘇生することができる。

 もちろんそんな事が知れたら大騒ぎになるし、このまま放置しておくのが一番波風立たない選択ではあるのだが・・・

 ここで彼らを見過ごせるほどイサミも冷たい人間ではなかった。

 

「? クラネルさん、何を・・・?」

「まあ見てな」

 

 太ももの辺りに手をやったイサミの手に、長さ150cmほどの長杖が忽然と現れた。

 取り出した魔杖(スタッフ)に、おのれの呪文のエネルギーを注ぎ込む。

 魔剣のように内包された力ではなく、外部から注がれたエネルギーが呪文の回路を走り、魔杖(スタッフ)がその魔力を起動させる。

 

「"完全蘇生(トゥルー・リザレクション)"」

 

 かつてシャーナを蘇生させたときと同じく、強大な癒しの魔力が遺体の周囲に満ちる。

 吸収され枯渇した生命を新たに肉体に付与し、召喚の魔力が天界より魂を呼び戻す。

 

「・・・あ」

「・・・・・・・!?」

 

 ぱちり、と目を開けるルカ。

 声も出せずに驚くアイズ。

 

「仮死状態になってただけなんだよ。あいつらは非常に珍しいモンスターでね。そう言う能力がある。

 俺はそれを元に戻す魔法が使えるんだ」

「・・・・・・・・・・・・・・」

 

 じーっ、と露骨に疑わしげな視線を向けるアイズ。

 さすがに疑われてるな、と思いつつイサミが言葉を探していると、アイズがため息をついた。

 

「いえ、なんでもないです。ありがとうございました」

「・・・どういたしまして」

 

 魔杖(スタッフ)を再度発動し、残りのロキ・ファミリアメンバーも素早く蘇生させる。

 

「ありがとう、助かったよ・・・何かやられる前より調子がいいみたいだ」

「ついでにその他もろもろの症状や疲労も回復しますからね。まあおまけってことで」

 

 そう言ってイサミは誤魔化した。

 "完全蘇生(トゥルー・リザレクション)"は文字通り完全に人間を蘇生させる。

 それはたとえ肉体が残っていなくても一から再構成できるほどの魔力であり、ルカ達が注意深く体を観察していれば、古傷までも完全に治っているのがわかっただろう。

 

「それじゃ戻りましょうか。弟たちも心配だ」

「そうだな、フィン達も心配してるだろうし」

 

 アイズも頷いたのを確認し、イサミ達は足早に歩き始めた。

 第一級冒険者とは言わないまでも、全員それなり以上のステータスの持ち主である。

 ただ早足で歩くだけでも、常人の全力疾走を上回る移動速度だ。

 10分とかからず、一行はロキ・ファミリアの野営地に帰還した。

 

 しかし、そこでイサミ達を待っていたのは思いがけない知らせであった。

 

「大変だよ兄さん! 神様が・・・神様と春姫さんがさらわれたんだ!」

「なっ・・・!」

 

 イサミの顔から音を立てて血の気が引いた。

 




イサミもあれからレベルが上がって、更に二つエピック特技を習得しております。
うち一つは《呪文容量強化》(呪文の使用レベル上限を+1)。
なので、《呪文使用回数強化》特技も9レベルまでOK=9レベル呪文撃ち放題=9レベル呪文のスタッフも起動し放題なわけですね。
《マスタースタッフ》はなかったことになりましたので、そうするとあと二つ(パスファインダー仕様なので23レベルで2つめのエピック特技を習得できる)は《マルチスペル》と《物質要素完全無視》かなあ。
対ロビラー用の《戦闘発動強化》は《発動を守る盾》でどうにかなりますし、パスファインダー仕様だとウィッシュのコストは経験点ではなくて25000gp分のダイヤモンドなのでこれで踏み倒せるwww

ちなみにベートはまだ帰って来ていません。
イサミが来て回復呪文をかけたのでベルが早く覚醒した分、タイムテーブルが一日繰り上がってます。
原作通りなら彼が帰って来るのは翌日の午後遅くになります。
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