ダンジョンでドラゴンと戦うのは間違っているだろうか ~マンチキン・ミィス~ 作:ケ・セラ・セラ
しばらくしてもろもろ完全に落ち着いてから情報交換が始まった。
美少女フィギュアサイズになったヘスティアはベルの肩にちょこんと乗っている。
「ふむ、つまり俺以外のみんなは所属ファミリアごとに固まって飛ばされていたと」
「ぼく達は石造りの神殿の廃墟みたいな所に出たんだよ、にいさん」
「わたしたちもー」
「私もです」
「それがしどももだ」
ベルの言葉に頷くティオナたちとリュー、椿(及びヘファイストスの鍛冶師達)。
「レーテーは砂漠の真ん中の廃墟みたいなところだったんだよ・・・」
「私は壺や壁画、彫刻などがガラスケースに並べられている場所でしたね」
「俺は泥沼のド真ん中だったな。何もなかったぜ」
「レーテーはどこかの遺跡、アスフィさんは博物館かな。ゲドさんはちょいとわからんけど」
レーテーは事実上ヘスティアファミリアのようなものだが、【改宗】はしていないので厳密にはいまだにイシュタルファミリアである。
「俺たちは・・・なんだろうな、極東のどこかの神殿のような場所だった」
「タケミカヅチの面々は・・・ふむ・・・それって、ひょっとしてここだったりするか?」
イサミがショルダーバッグから取りだしたタブレットに画像を映してタケミカヅチ・ファミリアに見せる。
「うお、何だこりゃ? マジックアイテムか?!」
「あ、そうです、ここ! このお社の前に出たんですよ! この池と石の鳥居もありました! お社の人に怪しまれたので逃げたのですが」
「あの建物はなんだったんですか? 何か懐かしい感じがしたんですけど・・・」
「鹿島神宮と御手洗池。
目をパチクリさせる千草に、イサミは肩をすくめてみせた。
なお赤外套達はそれぞれバラバラに飛ばされていたらしい。
「後一応確認するけどゲドさんの主神は?」
「オグマさまだが」
「ケルトの戦いの神か・・・タケミカヅチと赤外套の人たちは取りあえず置いておくとして、ここに来る前レーテーの所は夜になって少し、ベル、アスフィさん、ヘファイストスのみなさんはもうすぐ夜。
ティオナたちはそれと同じか少し早いくらい。ゲドさんはまだ昼間の太陽が傾いた辺り。それで間違いないかな?」
それぞれに頷く面々。
いぶかしげな顔のベルが口を開く。
その肩のヘスティアは滅多に見れない厳しい顔になっている。
「あの、にいさん・・・それでこれはどういうこと?」
「そうだよ。服装も変だし、何か知ってるんじゃないの?」
おずおずと尋ねるベルと首をかしげるティオナ。
残りの面々は無言だが、椿だけは何かを期待するようなキラキラした目でイサミを見ていた。
「うーむ。話せば長いことなんだが」
「待った。多分ボクの方が正確に説明できるだろう。そもそもだ・・・」
ぐう、と腹の音の鳴る音がした。
しかも二重奏で。
みんなの視線が集まる中で、レーテーが顔を真っ赤にして縮こまっている。
その横ではティオナがあっはっはー、と頭をかいていた。
「まあ取りあえずは飯にするか。冷めかけで悪いけど」
肩をすくめると、イサミは後ろに積んであったフランチャイズのカツカレー弁当の山を取りだした。
「あれ? リドさんたちは食べないんですか?」
「あ、いやなんだ。俺達は・・・」
「ああ、他人に食事をするところを見られると恥ずかしいという所もあるんだよ。
ほれ、そっちの箱の影で食ってきな」
「わ、悪いな・・・」
積まれた木箱の影に赤外套達が入っていく。
その外套が所々、人間のシルエットとは思えない具合にふくらんでいるのにはまだイサミ以外誰も気づいていない。
もっとも装備品などでそうした不自然なふくらみができることもあるので、一概に周囲の人間が鈍いというわけでもあるまい。
「洗い場はどこ? お皿とこのスプーン洗わないと・・・」
「これは使い捨てなんだ。まとめて後で捨てる」
「えええええっ!?」
という会話も挟んで食後。
これもイサミが用意していたペットボトルのお茶やら水やらを手に、一同が車座になる。
「それで神ヘスティア。イサミ・クラネル。一体どういう事かな? 何事か知っておるようじゃが、できる限り話して欲しいのだがな」
この中では年長であり、Lv.5かつ派閥首領と言う事で一番格上でもある椿が代表して問いかける。
ただその顔にも声にも隠し切れない好奇心が溢れているのであまり威厳はない。
ベルの手前、イサミのショルダーバッグの上に立ったヘスティアが腕組みをしてうむ、と頷いた。
「実はだね・・・」
ヘスティアの話の内容はおおよそエルミンスターが語ったのと同じであった。
かつて起こったタリズダンとの、多元宇宙を引き裂く大戦。
それを封印するために、この世界の全ての神々が力を結集したこと。
今までいた世界はその封印の中であり、その封印の外にあるのがこの世界だということ。
語り終えたとき、イサミを除く全員が程度の差はあれ感嘆のおももちであった。
「神様達って凄かったんですね・・・」
「ああ。もっと褒めてくれてもいいんだぞ、ベルくん!」
「正直ほとんどの神は遊興にふけりすぎと思うておったが・・・彼らにとっては牢獄のような世界、しかも永遠にそこにいなくてはならぬとなれば、必死なまでに退屈しのぎを捜すのも無理はないかもしれんなあ」
珍しく神妙な顔で椿が頷く。
「いや、あれは割と元からだから。神なんて大体ああいうろくでもない奴ばかりだよ」
「「「元からかい!」」」
椿とイサミとヴェルフが同時にツッコんだ。
まあ、ろくでもない奴らばかりだから、超越神に神の力を奪われて地上を彷徨う羽目になったりするのである。
「まあともかく、ボクやベルくんたちが現れたのは、多分だけど元々ボクの神殿だった場所なんだ。
他の子たちも、それぞれの"
「でしょうね。神様たちやアスフィさん、リューさん、ヘファイストスの人たちはギリシャ、ロキの人たちは北欧、レーテーはイラクかイラン。
桜花達は日本の鹿島。ゲドさんはアイルランドかイギリスってとこでしょう」
「でも神様、どうして僕たちが世界の外に出ちゃったんですか?」
「そこはボクにもわからないなあ。よっぽどのことでもボク達の施した封印を通り抜けることはできないはずなんだけど・・・
そっちのほうはイサミ君が説明してくれるんじゃないか?」
ミニサイズの主神に視線を送られ、イサミが頷いた。
「まず転移した理由だが・・・やっぱりあの魔力の奔流だろうな。
恐らくだがあの人造迷宮はダンジョンの周囲を螺旋状に取り囲むように作られている。
ダンジョンの持つ魔力を利用して次元間転移をするための超巨大な魔道具だったんじゃないかと思うんだ」
おお、と感嘆の声を上げたのはアスフィ。
頬が興奮で紅潮している。
「魔道具! あの迷宮が丸ごとですか! なんと言う壮大な・・・」
「あの、アスフィさん。それについては後で話しましょう。今は話の続きを・・・」
「あ、はい、すいません」
アスフィが今度は羞恥で頬を染めてうつむく。
この人やっぱり俺と同類だなあと思いつつ、イサミは話を続けた。
「で、俺は元々この世界の人間で、死んだ後に封印の中の世界に生まれ変わったわけだ」
「えっ?! それじゃ、兄さんは僕の兄さんじゃ・・・」
ショックを受けた顔になるベルに、慌ててイサミがフォローを入れる。
「待て待て待て! 生まれ変わりと言ったろう。俺とお前が兄弟なのは間違いない。
大体それを言ったらお前も生まれる前はどこかの別人で、生まれ変わってベル・クラネルになったわけだしな」
「あ、そうか、そう言う事だね」
心底安堵した表情になるベルに、こちらもホッとした表情になるイサミ。
何人かが頬をゆるませ、周囲に柔らかい空気が流れた。
「まあともかく、俺はそう言うわけでこっちで転生するはずだったと思うんだが、それが色々あって封印の中の世界に送られたわけだな」
「前にお前が話していた、生まれる前の予言とやらか」
「ああ。それ以外にも実はしょっちゅう赤いローブの老人の夢を見ていたんだが、その爺さんの正体がエルミンスターって異世界の大魔術師でな。タリズダンが復活しつつあるので、その対抗策、恐らく偵察要員としての意図もあったんじゃないか」
「えっ」
「えっ?」
きょとんとした顔になるヘスティア。
思わずオウム返しに声を漏らすイサミ。
互いにまぬけな声を出し、一人と一柱はしばし見つめ合った。
なお原作でゲド君の主神は不明です(たぶん)。
この作品ではモルド達と同じファミリアなので、彼らと同じオグマ・ファミリアと設定しています。