ダンジョンでドラゴンと戦うのは間違っているだろうか ~マンチキン・ミィス~   作:ケ・セラ・セラ

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17-8 Open the GATE

 遅れていたレベル3以下の後続組が到着したことで更に戦いの激しさは度を増した。

 基本能力では吸血鬼の方が圧しているとはいえ、レベル3の冒険者達でも数人集まればレベル4の吸血鬼一人の相手くらいは出来る。

 互いに魔法が放てないぶん、戦いは消耗戦の度合いを増していった。

 

「ぐっ・・・!」

「下がれ! それ以上は危険だ! ポーションはねえんだぞ!」

「す、すまん・・・」

 

 味方が一人また一人と戦闘不能になっていく。相手は高速治癒を持つ吸血鬼、そして数は減ったが銃器もある。

 レベル3~4程度のモンスターとは言え、死霊王が途切れることなくエルダー・エレメンタルを召喚しているのも地味に大きい。

 ベルが新たに会得した魔力剣で気を吐くが、それにも限界はある。

 

「くそっ!」

「シャーナちゃん!」

「こっちくんな! 大丈夫だ!」

「う、うん・・・きゃあっ!」

「危ねえっ!」

 

 シャーナに気を取られたレーテーを、リドが辛うじてフォローする。

 彼ら三人のレベル5が残った主力である故、かかる圧も厳しい。

 

「ちっ!」

 

 大剣を大振りして間合いを取る。

 その隙につけ込もうとする一匹を赤外套の一人が牽制。

 そうした連携で辛うじてもたせてはいるが、問題は向こうも連携を取ってくることだ。

 高度に息のあった動きは、間違いなくその辺のモンスターが持つようなものではない。

 

「・・・これだから冒険者同士の戦いってな嫌なんだ」

 

 歴戦のシャーナをして愚痴をこぼすほどの激戦がそこにあった。

 

 

 

 半壊した警察署の入り口にイサミとリューの姿が現れたのは、そのようなときだった。

 

『あれじゃ! 撃て!』

 

 めざとくイサミを見つけた死霊王の命令で、控えていた吸血鬼が最後のロケットランチャーを発射するが、リューのファインプレイにより回避。

 

『ちっ、じゃが・・・』

 

 次の行動に移ろうとした死霊王の目前から冒険者達の姿が消えた。

 同時にその全員がイサミの周囲に姿を現す。

 

("再集結(リグループ)"じゃと? 一日一度こっきりの魔法をここで使うはずもなし、あやつもアーティファクトを持っておったか?)

 

 死霊王がそう考えた刹那、強化された"炎の泉(ファイアーブランド)"の火柱が残っていたエレメンタルを一掃し、吸血鬼達にも重傷を負わせる。

 更に続けて、彼本人を含めて生き残っていた吸血鬼全てを"力場の檻(フォースケージ)"が包んだ。

 

『なっ・・・何っ?!』

 

 "たとえミストラの使徒であろうとも、魔法を使えるのは一日一回"

 その大前提を崩されて、一瞬行動を忘れる死霊王。

 そこで詰みだった。

 

「"我願う! この一瞬太陽の光を!"」

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?!」

 

 "力場の檻(フォースケージ)"に包まれて逃げることもならない吸血鬼達を、魔法で産み出されたものではない、地球の裏側から呼び出された本物の太陽の光が灼く。

 一瞬ゆえに滅ぼされるまでには至らないものの、吸血鬼にとっては致命的な弱点。

 死霊王本人には効かないものの、それ以外の吸血鬼達はもはや息も絶え絶え。

 

「さて、どうする死霊王。お望みなら俺は後何度だって魔法を放てるぜ。降伏するなら受け付けてやる」

『・・・わかった』

 

 がっくりと肩を落とす死霊王。

 イサミの胸で、イサミの首から下がった鎖の先――ゴンドラに乗った新婦のようなヘスティアが何故かえっへんと胸を張っていた。

 

 

 

 タネを明かせば、このヘスティアこそがイサミの魔術の素であった。

 ヘスティアがすっぽり入るような魔法の護符を作り、このヘスティアの分体と封印世界のヘスティアの本体とのリンクを利用し、

 僅かな――とは言っても、ミストラの秘儀を修めたイサミにとっては魔法を使うに十分な――マナを補給する事に成功していたのだ。

 にわかごしらえで耐久度に不安があったため、使用をギリギリまで控えてはいたが。

 

 むしろ吸血鬼達を人質に取るような形で降伏を迫って、死霊王がそれに応じるかどうかの方がイサミにとっては不安だったと言っていい。

 高位のアンデッドにとって、従える下僕は使い捨てのコマに過ぎないことも多いからだ。

 状況が状況としても、こうもあっさり行くとは思っていなかった。

 

「さて、じゃあ聞かせて貰おうか。何故こんな事をした?」

 

 イサミの問いに、死霊王は星の見えぬ空を見上げた。

 心なしか、その虚ろな眼窩が揺れているようにも見える。

 

『・・・帰りたかったからだ』

「帰りたかった? オラリオにか?」

『違う! 私の・・・私の生まれた場所にだ』

「・・・!」

 

 それはやはり、と問いただそうとしたとき、宙にまばゆい光が走った。

 

「な、なんだいこれは!? 君かイサミくん!?」

「違います、これは・・・!」

『これは次元移動・・・いや"次元門(ゲート)"か?!』

 

 緑色の光は一瞬で収まり、そこから何かが落ちてきた。

 それは空中で姿勢を制御し、駐車場の看板の上に軽やかに着地する。

 そして仁王立ちになり、腰に手を当て、大声で呼ばわった。

 

「ただのクリーチャーには興味がありません!

 この中に英雄、神格、異世界人、千年以上生きた何かがいたらあたしの所に来なさい!」

「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」

 

 沈黙。

 痛いほどの沈黙。

 冒険者達が、ヘスティアが、死霊王が、吸血鬼達が。

 程度の差はあるものの、全員が胡乱な目で「それ」を見上げている。

 

「・・・あれ? わたし、ひょっとしてもの凄く空気読めてない?」

 

 栗色の長髪の女性、直前までの雰囲気をぶちこわしにした闖入者は、真顔でそんなことをのたまった。




申し上げておきますが、D&D3.5版においてSOS団は公式設定として存在します。

繰り返します。

D & D 公 式 設 定 と し て S O S 団 は 存 在 し ま す 。
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