ダンジョンでドラゴンと戦うのは間違っているだろうか ~マンチキン・ミィス~ 作:ケ・セラ・セラ
18-1 世界を大いに賞味する団
『ただの人間には興味ありません。
この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上!』
―― 『涼宮ハルヒの憂鬱』 ――
いきなり現れてトンチキな事を言いだし、周囲を停止させた謎の闖入者。
いち早く再起動を果たしたのは、やはりイサミだった。
前世で似たような事を言うヒロインの出てくるアニメを見ていたからかどうかはさだかではない。
「あー、取りあえず降りてこないか。今ちょっと立て込んでてな」
「あ、うん」
闖入者は素直に頷いてぴょんと飛び降り、綺麗な身のこなしで着地する。
その動き自体はかなり高度に訓練された見事なものだったが、明らかに技能と身体能力が一致していない――オラリオの冒険者としては。
改めて闖入者を観察する。
栗色の髪を長く伸ばした若い女だ。
空色を基調とした衣装とマント、軽量堅牢な
胸元には剣と太陽をあしらった盾の聖印。
("盾の乙女"マイアヘンの信者かな。だとしたら"グレイホーク"出身か)
そんな事を考えつつ、あらためて話しかけようとしたイサミの機先を制するように女が自己紹介をする。
「はじめまして、フェリスよ。
「ヘスティア・ファミリア団長のイサミだ。とするとあれか、お前さん、"
「Yes, I am! この多元宇宙のありとあらゆる事を味わい尽くすのがSOS団のエリートたる私の目的よ! これが、ここが神々が封印した世界なのね! 素晴らしい! 素晴らしいわ! 今まで訪れたどんな次元世界とも違う!」
ソサエティ・オブ・センセーション。直訳すれば「知覚協会」とでもなるだろうか。
そこに所属するメンバーはおのれの個人的充足のためにあらゆる経験――楽しいものもそうでないものも――を追い求める。
(要するに次元を股に掛けた暇人の集団なわけだ)
高位のメンバーが"
たとえば生きる喜びを思い出させたり、犬の様に鼻が鋭くなったり、相手の呪文をコピーしたり。
歌も歌えば罠も外し、水泳と精神集中が得意で、揃って博識。剣も振るえば秘術魔法も信仰魔法も使う(使いこなせるとは言ってない)。
まあぶっちゃけ器用貧乏と言って差し支えあるまい。
「この世界のことを知って以来、来たくて来たくてしょうがなかったのよ!
神々が丸ごと封印した世界! そこには一体、いかなる未知が私を待っているのかしら!」
話している内にテンションが上がってきたのか、再び興奮状態で語り始めるフェリス。
「それはいいんだがお前さん、どうやって帰るつもりだ? この世界にはマナがほとんど存在しないんだぞ?」
それをイサミが口にした瞬間、フェリスの表情が劇的に変化した。
猫のような笑みを顔一面に浮かべ、ピンと指を立ててイサミを見上げる。
「ふふん、そりゃあもちろん考えてますとも。ねえ、知りたい? 知りたいでしょう!
でも教えて貰うにはちょーっとばかり親密度が足りないと思わない?」
「なんかマナを溜め込むマジックアイテムでも持ってるんだろ」
「う"っ」
イサミにばっさり一刀両断されて、フェリスの顔が今度は酸っぱい木の実を口にした時のようなそれになる。
「まあ興味は無くもないがな。それがあればこの世界でも・・・」
「でしょでしょ!? いやあ、これ作ってもらうのに大枚はたいたんだから!
あれだけのお金があれば、ギルドホールの
「ちょいちょい君たちィ。今どういう状況か忘れてないだろうねえ?」
不機嫌そうな紐神の声が、イサミを現実に引き戻す。
はっと振り向けば、そこにはじとっとした視線を向けてくる冒険者達。
なんとなく死霊王や吸血鬼達も似たような目つきをしている気がする。
「大変。大変興味深いお話ですがイサミ君。神ヘスティアのおっしゃるとおりです。
取りあえずこの場を離れることこそ肝要かと」
「「アッハイ」」
何かをこらえているようなアスフィの声と無表情。
くいっと眼鏡を直すその仕草に、思わず姿勢を正すイサミとフェリスであった。
ダンジョンでドラゴンと戦うのは間違っているだろうか ~マンチキン・ミィス~
第十八話「次元界巡りツアー三泊四日プラン」
ともかく周囲を見回せば確かに煙も晴れており、見物人や警察官もこわごわとこちらの様子をうかがっている状況である。
厄介ごとになる前にこの場を離脱しようと、"
「勇・・・勇なのかい?」
半壊した警察署の正面入り口。
そこに、警官に支えて貰いながら老女――前世でのイサミの母が立っていた。
「・・・っ」
その声とイサミの表情で何かを察したのか、ベルが息を呑む。
驚くほど静かな表情で、ゆっくりとイサミが振り向く。
その顔からは、何も読み取れない。
「勇・・・」
「あなたの息子は死にました。ここにいるのは名前を騙るただの詐欺師ですよ。
あなたが気にしなければいけない事は、何一つありません」
「でも・・・でもっ」
老女の目に涙が浮かぶ。
相変わらず静かな表情で、それでもイサミはやわらかく微笑んだ。
「それでは失礼致します――幾久しく、お健やかに」
次の瞬間警察署前から彼らの姿が消え、すすり泣く老女を警察官があわてて支えた。
ベルが気がつくと、そこは真っ暗な場所だった。
「明かりを持ってる奴は出してくれ。こっちで買った道具か、魔石灯なら多分つくから」
その言葉と共に光が灯り、イサミの姿と部屋の中を浮かび上がらせた。
続いて生まれたいくつかの明かりで周囲を見渡すと、かまぼこ形の大きな部屋だった。
煉瓦造りで、中央には朽ちかけた木の机の残骸とおぼしきものがある。
そこそこ広いが冒険者達30人と死霊王たち十数人が入るとかなりいっぱいいっぱいだ。
「・・・!」
死霊王たちの姿を見た瞬間、ぎょっとする冒険者達。
転移する時に置いていかれたのか、
思わず身構えた冒険者達を、死霊王が手を上げて制止する。
『降伏したからにはこちらからは何もせん。
わしはともかく、こやつらは先ほどのように太陽の光を呼ばれれば、為すすべ無く滅ぶしかないからな』
「ご理解頂けて何よりですな」
表情を見せずにイサミが頷く。
再びはっとして、多くの者がイサミの顔を見上げた。
「イサミ君・・・その、大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ、アスフィさん。今はそんな事を考えてられる状況じゃありませんから。
ベルもそんな顔するな。な?」
「うん・・・」
くしゃくしゃっ、と頭を撫でられる。
いつも安心するその感触にも、今日だけはベルの心は晴れなかった。
「ところでここはどこだ? 随分古そうだが」
漆喰のはげたレンガ壁に目をやりつつ、意図的なものだろう、いつも通りの声音でシャーナがのんびりと尋ねる。
「あ、レーテーわかったよ! ここ"ひみつきち"ってやつでしょ!」
どこから仕入れてきた知識なのか、レーテーが妙なことを言い出し、イサミが思わず苦笑を漏らした。
ある意味ではまさにその通りだったからだ。
「え、本当にそうなのかい、イサミ君?」
「ええまあ。ここは昔の要塞――城なんです。普段は施錠されてますから、まず人は来ませんよ」
神奈川県横須賀市猿島。
明治時代に東京湾防衛のための要塞が建造され、かつて某国民的特撮番組の撮影において悪の組織の秘密基地として使用された場所である。
ソサエティ・オブ・センセーションは本編で語ったとおりの団体で、多次元冒険サプリ「プラナーハンドブック(未訳)」出典です。
3.0版の「次元界の書」の3.5版版みたいなサプリですね。
略称が「SOS」で内容がこれなら、もう間違いなくハルヒパロだろうと思いまして、このようなことにw
意外に思うかも知れませんが、この界隈でも結構日本のサブカルのパロは多いです。
日本のほうでもロボットバトルものTRPGのサンプル機体なんてまーひどいことひどいことw
なのでソサエティ・オブ・センセーションの元ネタは間違いなくSOS団! ゲドの魂を賭けるぜ!
フェリスは「プラナーハンドブック」のサンプルキャラから名前と外見だけ借りてきました。
この話ではファクトタム8/クレリック(マイアヘン)1/アーデント・ディレッタント6と設定。
マンチキンを貫くなら、本編で言ってた通りザン・ヤイ(領域:知識、欺き、戦、素早さ)を信仰して戦の領域でアーデント・ディレッタントの前提条件を満たしつつ《知識への献身》を取らせて知力による戦闘力ブーストをさらにかけるところですが、キャラ的にはやりそうにないなあってことでマイアヘン信仰に。
まああれです、マンチキンなプレイヤーはイサミ一人だけで十分ってことでw
猿島は東京湾に浮かぶ無人島で、作中でも語った通り明治時代に要塞が作られました。
元祖仮面ライダーでショッカーの秘密基地として使用されたことでも有名です。
今は市立公園になっており、横須賀市から船が出ているので、割と簡単に行くことが出来ます(ちょっとお値段お高めですが)。