ダンジョンでドラゴンと戦うのは間違っているだろうか ~マンチキン・ミィス~   作:ケ・セラ・セラ

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19-2 ネイキッド・ダイブ

 二時間ほどヘスティアと挨拶回りをした後、休憩なのかヘスティアと別れてベルは外のバルコニーに出て行った。

 

(む・・・)

(弟君は私が見てるわ。あなたが必要なのはこっちでしょ)

 

 一瞬迷ったが、フェリスの言葉にイサミは頷いた。万が一の時に守らねばならないのはヘスティアの方だ。

 彼女が音もなく姿を消し、ややあって性懲りもなくとっくみあいを始めたヘスティアとロキにイサミが三度目の溜息をついた頃。

 ベルと共に会場に戻ってきたヘルメスがおろおろしていたアイズに素早く近づいて強引にダンスの約束を取り付け、急用と言ってベルにダンスの相手を押しつける。

 

(おお!)

 

 ミアハやタケミカヅチのそれとないフォローもあり、アイズをダンスに誘って踊り始めるベル。

 更にそれに気づいて乱入しようとするヘスティアとロキを、ヘルメスに命じられたアスフィが捕獲。

 

(今回はいい仕事してくれたなあ。気まぐれだとしてもありがたい)

 

 真っ赤になりながらもアイズと踊り続けるベルを見て、満足そうに笑みを浮かべる。

 フレイヤがミノタウロスの群れをけしかけるとかぶっそうな事を口走っていたが、さすがにそちらはイサミも気づいていなかった。

 そんなイサミをつんつん、とつつく指。

 振り向くとフェリスが満面の――ただしにやついた――笑みを浮かべている。

 

(ねえねえ、やっぱりベルの本命ってあの金髪の子?)

(・・・神様やリリの前では言うなよ、それ? 気にしてんだから)

(はいはい、私だって空気は読めますよーだ。でもロマンじゃない? 敵対派閥どうしの禁断の恋! リディアスとバロメみたい!)

(こっちとしちゃ笑い事じゃないんだがな・・・)

 

 憧れで済んでれば良かったが、レアスキルを得てこのままだと本当にアイズに追いつくかも知れない状況で、兄としては嬉しいやら不安やらである。

 取りあえずこいつに《憧憬一途》の事は教えられんな、と改めて心に決めた。

 

(ねえねえ、何がきっかけでこういうラヴい展開になったの? 劇的なエピソードとかない?)

(おまえはな・・・話してやってもいいが、見張りは忘れるなよ)

(はーい♪)

 

 溜息を一つついて、イサミはベルがミノタウロスに襲われた時のエピソードを話し始めた。

 

 

 

 たっぷり数曲を踊ったベルとアイズは壁際のミアハやタケミカヅチたちのもとへ戻り、手を離した。

 僅かに指先に未練を残しているのが見て取れて、語りを終えたイサミの口元が再び緩む。

 直後ヘスティアとロキに処刑されたヘルメスにそっと手を合わせ、その視線がふと正面舞台の方へ向いた。

 ベルとアイズのなれそめにニマニマしていたフェリスの表情も一転して真剣な物になる。

 

 従者を連れたアポロンが――明らかにベル達を目指して――歩いてくる。

 そばに控える黒髪の細身の美青年が団長のヒュアキントスであろう。

 互いの眷族に今度は自分が、とダンスを申し込んでいたヘスティア達の目も、自然そちらへ向いた。

 

「諸君、宴は楽しんでいるかな? 盛上がっているようならば何より。こちらとしても開いた甲斐があるというものだ――

 さて、ヘスティア。遅くなったが、先日は私の眷族が世話になったようだな」

「・・・ああ、ボクの方こそ」

 

 どう話をつけたものかと言葉を切るヘスティア、緊張した顔になるベル。

 だがヘスティアが何かを言う前に、アポロンが即座に言葉を被せてくる。

 

「私の眷族は君の眷族に重傷を負わされた。代償を貰い受けたい」

「何だとぉ!?」

 

 言いがかりだ、と食ってかかるヘスティアをものともせず、アポロンは胸を押さえ、天を仰いで大げさに嘆く。

 

「ああ、私の愛しいルアンは、あの日、目を背けたくなるような姿で帰って来た!

 私の心は悲しみで砕け散ってしまいそうだった!」

 

 それにあわせて周囲の従者たちもよよよ、と泣き崩れ、同時に人垣がさっと割れて小人族らしき全身包帯のミイラが現れる。

 

「ああ、ルアン!」

「痛ぇ、痛ぇですアポロン様・・・痛ぇですよぉ~~」

 

 主に比べても大根役者の演技ではあったが、その場にいた者達を騙すには十分であったらしい。

 

「ま、まさかベルくん!?」

「してません! してませんっ!」

 

 顔面蒼白になったヘスティアの問いかけに、ベルが必死で首を振る。

 

(ああ、こう来たか・・・)

 

 怒り半分、呆れ半分で取りあえず待機組に事情を伝える。動くのはまだ。

 とは言え、向こうが直接的な実力行使に出てくるのでなければ彼らの出番はあるまい。

 

「さらに、先に仕掛けてきたのはそちらだと聞いている! このとおり、証人もいるぞ!」

 

 アポロンが指をパチンと鳴らすと、周囲の人垣から複数の神とその従者らしき団員たちが歩みでる。

 従者たちはそろって無言だが神達は揃ってニヤニヤ笑いを浮かべており、口々にベルのしたという「乱暴狼藉」を言い立てた。

 

 やったやらないは水掛け論、更に神でも神の心は読めないため、ヘスティアやヘファイストスも有効な反論ができていない。

 直情漢のタケミカヅチや天然のミアハは言わずもがな、こう言う時頼りになりそうなヘルメスはたった今ロキとヘスティアによって処刑されボロクズのような姿をさらしている。

 それに意を強くしたか、アポロンが再び大げさな身振りで小人族のミイラを指し示す。

 

「見てくれみんな! このルアンの無惨な姿を! 私は怒りと悲しみの涙を禁じ得ない! 

 なにゆえに! なにゆえにヘスティアの眷族は罪もないこの子をここまで傷つける必要があったのか!」

「ああっ! 痛い! 痛いぃぃぃ!」

 

 ルアンが身をよじった瞬間、その全身を覆う包帯が一斉にはらりとほどけた。

 

「え」

「え?」

「あら」

「「うわあああああああああああああああ!?」」

 

 絶叫するのは顔を真っ赤にして手で覆ったヘスティアと、いきなり全裸になったルアン本人。

 慌てて手で股間を隠すその体は全身つやつやとしていて、大怪我どころかあざ一つない。

 

「ぷっ・・・」

「「「「「ブワハハハハハハハハ!」」」」」

 

 次の瞬間、会場が爆笑に包まれた。

 一番大笑いしているのはルアンを指さして笑い転げているロキだが、大半の神と眷族の半分くらいは笑っている。

 笑っていないのは顔を真っ赤にしているヘスティアや同じく赤い顔で目を背けているアイズなど、まともな羞恥心を持っている女性陣とベルくらいだ。

 ちなみにいつの間にか戻ってきた椿は、その他の男連中と並んで指さしながら笑っていた。フェリスについては言うまでもない。

 

「プギャー!」

「草生えるwwwww」

「ねえどんな気持ち? ヘスティアにいちゃもん付けようとしてばれちゃったの、どんな気持ち? NDK? NDK?」

「き・さ・ま・らーっ!」

 

 先ほどまでルアンに対するベルの狼藉を「証言」していた神々にさえ指さして笑われ、アポロンが――こちらは怒りで――顔を真っ赤にする。

 

「デュフフフwww 顔真っ赤にして机叩いておりますぞwww」

「ウケるーwwww」

「大草原不可避wwwww」

「~~~~~~~っ!」

 

 怒りの余り、もはや何を言っているかわからぬアポロンの姿が更に会場の笑いを誘った。

 もちろん偶然包帯がほどけたわけではない。イサミの仕業だ。

 

 "脱衣(ディスローブ)"。見ての通り相手の鎧や服を剥ぎ取り、全裸にする。

 実にろくでもない名前と効果だが、イサミのオリジナルではない。

 「ブック・オブ・エロティック・ファンタジー」というまんま過ぎるタイトルの、D&Dの亜流ながらも「 公 式 」のサプリメントに載っている呪文である。

 

 まあなんというか、名前通りの本で・・・ゴニョゴニョをD&Dで判定する方法とか、どの種族間であれば子供ができるかとかいったアレな設定や、性愛の力でパワーアップする魔術師クラスとか、ムニャムニャなマジックアイテムの山とか。

 とにかくそういう文章やデータが山盛りで載っている、頭の悪さここに極まれりとでも言うべき書物だ。

 もちろん呪文も目を覆わんばかりの惨状で、「ピロートーク」とか「オーガズム・バイブレーション」とか、名前を聞いただけで思わず頭を抱えたくなるような代物が満載である。

 

(奥が深すぎるだろD&D・・・)

 

 一応習得はしていたが正直使うとは思わなかった、むしろ使いたくなかったというのが本音だった。

 いや一応武装解除などに使えないこともないのだが・・・フェリスが生暖かい表情をしているのがむかつくイサミである。




ネイキッド・ダイブは「無彩限のファントム・ワールド」OP。
「フル・モンティ」とどっちにしようか迷ったw

正確に言うと「ブック・オブ・エロティックファンタジー」はD&Dではなく、D&Dから派生した「D20システム」というルールのサプリメントです。
まあ大して変わりゃしないだろうと言われればその通りですがw
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