ダンジョンでドラゴンと戦うのは間違っているだろうか ~マンチキン・ミィス~   作:ケ・セラ・セラ

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19-6 会見

「フレイヤ様は神ヘスティア及びイサミ・クラネルと話がしたいと仰せです。ご同道願えましょうか?」

 

 イサミがちらりとヘスティアを見、彼女は大きく頷いた。

 

「いいよ、一緒に行こう。今からかい?」

「はい。ご案内いたします」

 

 オッタルも頷き、ゆっくりときびすを返す。

 ヘスティアとイサミがそれに続いた。

 

「シャーナ、後は任せる。何かあったら地下に行け」

「ああ。そっちも気をつけろよ」

「大丈夫・・・とは思うがね。あっちがその気なら、ここは今頃【女神の戦車】やら【四兄弟】やら含めたオールスターで包囲されてるよ」

「そりゃまあそうか」

 

 互いに肩をすくめる。

 心配そうだが何も言えないベルの頭をくしゃりと撫で、イサミ達は闇の中に消えた。

 

 

 

 城壁の詰め所からほど近い路地の奥にフレイヤはいた。

 丁度名前の挙がった【女神の戦車】アレン・フローメルがそばに控えている。

 

「呼び立ててごめんなさいね、ヘスティア。あなたも忙しいときに」

「細かい事は優秀な眷属たちがやってくれるからそうでもないさ。で、何の用だい?」

 

 内心はともかく、胸を張ってフレイヤの謝罪を軽く流すヘスティア。

 それを見て美の女神はくすりと微笑む。

 

「そうね、単刀直入に言いましょう。もし〈戦争遊戯〉を行うなら、私はあなたのファミリアに手を貸す用意があるわ」

「・・・・・・・・・・・・・・・はっ?」

 

 一瞬前までの取り繕った外見もどこへやら、大口を開けて呆然とするヘスティア。

 くすくすと、美の女神の笑顔が深くなる。

 

「な、何が目的だい!? 言っておくけどベルくんもイサミくんも渡さないぞ!」

「あら、言わなかったかしら? 私結構あなたの事が好きなのよ?」

「ふわっ!? ま、まさか君ってばそう言う趣味が・・・!?」

 

 顔を真っ赤にして自分の体をかき抱く紐女神。

 それを見て耐えきれなくなったか、ついにフレイヤは体を折って大笑いし始めた。

 

「あは、あははははは! 本当、あなたって最高!」

「な、何がおかしいんだよ!」

「だって・・・ふふっ、あはは、だめ、こらえきれない! あはははははは!」

 

 今度は怒りで顔を真っ赤にするヘスティアに、更に笑いが止まらなくなるフレイヤ。

 オッタルとアレンの二人も、心なしか憮然としているようにイサミには思えた。

 

「あーはいはい。このままじゃ話が進みませんので取りあえず戻しましょう。

 神フレイヤ、手を貸して頂けると言うことですが、交換条件は?」

 

 ぱんぱん、と手を打ってその場の雰囲気を変える。

 笑いの発作を収めたフレイヤが――笑みは変わらないが――姿勢を戻してイサミに向き直る。

 

「そうね、あなたたちのファミリアに対しては特にないわ。でもただ一つ・・・

 イサミ・クラネル。次の戦争遊戯ではあなた、全力を出しなさい」

「・・・それはどういう意味で?」

「そのままの意味よ。わからないって事は、無いでしょう?」

「・・・・・・・・・」

「? ? ?」

 

 謎めかすフレイヤ。唇を引き結んで表情を硬くするイサミ。クエスチョンマークを浮かべながら、二人の顔を交互に見るヘスティア。

 僅かな時間の後、イサミは頷いた。

 

「意味はわかりかねますが、それでお味方頂けるというのであれば」

「商談成立ね」

 

 今度は満足げに、艶然とフレイヤが微笑む。

 くらりと来そうな自分をイサミは必死に叱咤した。

 あらゆる精神干渉を防ぐ"空白の心(マインドブランク)"であっても、純粋な魅力を防ぐことはできない。

 

 その瞬間、唐突に――本当に唐突に――イサミの脳裏に確信が灯った。

 何かとベルに絡んできた謎のウェイトレス。怪物騒ぎ。魔導書。元フレイヤ・ファミリアの女将と構成員の運営する酒場。

 ミノタウロスとオッタルの剣技の共通点。目の前の女神にまつわるもろもろの噂。

 

「そうか・・・そう言う事でしたか」

「あら、なあに?」

 

 艶然たる笑みを浮かべつつ、フレイヤが問い返す。

 それをじっと睨んだ後、イサミは溜息をついて肩をすくめた。

 

「いえいえ。弟の件、あなたには感謝すればいいのか、恨み言を言えばいいのか」

「あらあら、何の事かしら。さっぱりわからないわ」

「そのままですよ。まあ聞き流して頂けると幸いです」

「???」

 

 ヘスティアがまたしてもクエスチョンマークを浮かべ、今度はフレイヤが興味津々の態で問いを投げかける。

 

「そう言えばこれは協力とは関係ないのだけれど、一ついいかしら?」

「なんでしょう?」

「どうして私はあなたの心が読めないのかしら?」

 

 今度はアレンとオッタルの顔にはっきりと驚愕が浮かぶ。

 だがそれも一瞬のことで、次の瞬間その顔には最大級の警戒の表情が現れた。

 それに気づいた紐神がびくりと震えるが、イサミは敢えて平静を装う。

 

「さてね――世の中にはわからない方が面白いことが沢山ありますよ」

「なるほど、確かにその通りだわね」

 

 くすり、と笑うフレイヤ。

 それがこの奇妙な会見の終わりだった。

 

 

 

 ヘスティアとイサミの二人が去った後、オッタルが口を開く。

 

「一つお尋ねしてよろしいでしょうか、フレイヤ様」

「何かしら?」

「なにゆえ、彼の者達を手助けすることにされたので? やはりベル・クラネルの?」

「ええ。最近ちょっと目立ち過ぎだし、お兄さんが目立てば多少は緩和されるでしょう」

 

 つまり、ベルに付く悪い虫を多少なりともイサミの方に向けようと言うことだ。

 この女神にとって、それこそが一番大事なこと。

 

「それにアポロンとイシュタルも気にくわないし・・・後はサンドイッチのお礼かしらね」

「・・・・・・・・・?」

 

 無言のまま、顔に疑問符を浮かべるオッタル。

 フレイヤは同じく無言のまま、だが楽しそうな笑みを浮かべた。

 

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