ダンジョンでドラゴンと戦うのは間違っているだろうか ~マンチキン・ミィス~ 作:ケ・セラ・セラ
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・は! ははははははははは! はははははははははははははははははははははははははははははは!」
オラリオでは誰もが呆然としていた。
その中、たった一人笑い始めた男がいる。行きつけの酒場で鍛冶師仲間と〈戦争遊戯〉を見物していたヴェルフ・クロッゾだ。
「お、おい、ヴェルフ。何がそんなおかしいんだよ!?」
「そうだよ! なんだよ! なんだよあれ!?」
「おかしいさ! だって、そうじゃねえか! あんなの〈クロッゾの魔剣〉どころじゃねえ! あんなのを見せられたら・・・魔剣だの血筋だのにこだわってた自分がばかばかしく思えてくるぜ! ははははは! ははははははは!」
「・・・・・・・・・・」
唖然とする同僚たちをよそに、ヴェルフの高笑いはしばらくやむことがなかった。
「お・・・」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
「すげえ、すげえぜヘスティア・ファミリア! すげえぜイサミ・クラネル!」
一方で、オラリオのほかの場所でもきっちり一分ほど遅れてどよめきが上がっていた。
ついさっきまでの懐疑的な雰囲気はどこにもない。
だが、これでもまだこの戦いのほんの序の口だったことを、彼らはすぐ思い知ることになる。
"
春姫、命、ゲドなどレベルが低い面々は"
イサミはまだしもLv.3のベルが馬に乗らずに追随できていることに、クロエとルノアなどは目を丸くしていたりする。
2kmの距離をぐんぐん縮めていく面々に、オラリオの各所、そして
「はえええっ!」
「ちょっと待てあの馬どこから出した!?」
「・・・一番遅い奴に合わせている、そして多少の
「ああ、やっぱり君は素敵だ! ああ、ベルきゅん! ベルきゅん! スーハースーハークンカクンカペロペロしたぁい!」
「ヘファイストス、今のうちにこいつ殺せないかな」
「やめときなさい、あなたには向いてないから」
イシュタル・ファミリア所属のLv.3、"
射撃の心得はあまりないので他のアマゾネス達と一緒に城壁の下で待機していたのだが、運悪く崩れてきた主塔に巻き込まれてしまったのだ。
さすがに第二級冒険者、潰されたくらいで死にはしないが、それでも身動きの取れない連中が沢山いる。
しかし、そうこうしているうちに城壁のあたりで爆発音が連続して起こり、敵が来たのがわかった。とにかく這い出て他の連中を、と思った時点で瓦礫の山に重みがかかる。
「おい、何をやってる! 見ればわかるだろう、手、を・・・」
途切れる声と視線の先にいたのは忍者のような装束の極東出身とわかる女。
サミラのその声には答えず、命が詠唱を始める。
「掛けまくも畏きいかなるものを打ち破る我が
(こいつは・・・タケミカヅチ・ファミリア所属ヤマト・命! 情報によれば確かこいつの魔法は・・・っ?!)
命が何をやろうとしているか察したサミラの顔がひきつる。
「お、おい、ちょっと待てお前・・・!」
「すいません! 本当にすいません! でもこうしないと勝てないんです!」
自分がこれからやることのえげつなさをよくわかっている命が、かなり本気でサミラに謝る。しかし、詠唱を止めはしない。
「・・・神武闘征! 【フツノミタマ】!」
「~~~~~~~~~~~~~!?」
サミラが、声にならない絶叫を上げた。瓦礫の下のその他のアマゾネスもまた。
光の剣が降り来たる、直径40mの超重力結界。ありったけの精神力を注ぎ込み、イサミ特製の魔道具によって一時的に範囲を増幅させたそれは、瓦礫とその下にいるアマゾネス達を恐るべき重みで圧迫する。
腐っても二級冒険者、死ぬ人間はいないだろう。だがただでさえ身動き取れない瓦礫の下、そこに重みが数倍にもなる効果がかかったとしたら? たとえ救出されてもエリクサーなどで治療しない限り鬱血などで最低数時間、下手すれば数週間は動けまい。
そしてエリクサーのたぐいがある倉庫は城塞の一階にあり、最初の攻撃で周囲の建物ごと粉々に粉砕されている。彼女たちが持っていたものも同様だ。石壁を粉砕する衝撃波に、冒険者本人はともかくガラスの瓶が耐えられるはずもない。
イシュタル・ファミリアのアマゾネス達――
雑兵(と言っても多くはLv.3だが)の抑えを命に任せ、イサミ達が主塔(だったもの)に近づいたとき、瓦礫の上に立つ10ほどの人影があった。
「まあ余り期待はしてませんでしたけどねえ・・・全員無傷かあ」
「そうでもないさ。エリクサーやらが結構やられたし、備蓄分もこの分じゃ全滅だ。他にいくらか用意してたものもまとめて吹き飛ばされたし、無傷だなんてとてもとても」
ボリボリと頭をかくイサミに対し、肩をすくめるフィン・ディムナ。
高さ5mほどの瓦礫の上に並ぶのは事実上彼を頭とするロキ・カーリー連合軍。
ロキ・ファミリアの三首領、小人族の英雄【
【
カーリー・ファミリア団長【
そして・・・
(【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタイン・・・!)
緊張した面持ちで金髪の戦乙女を見上げるベル。
憧憬であり恋慕であり師でもある少女は、感情を読み取れない、静かな眼で彼を見下ろしている。
本来まともに機能しないはずのロキとカーリーの混成軍ではあるが、アルガナはフィンにぞっこん、バーチェは特に気にするたちでもなく、ほぼ一枚岩の連携を、しかもオラリオ最高の指揮官であるフィン・ディムナのもとで発揮してくるだろう。
一方同じ混成軍、数がほぼ同数とは言えヘスティア側は本当の烏合の衆で、しかもレベルが圧倒的に低い。
レフィーヤ以外Lv.6の彼ら十人に対して、Lv.7のオッタルはともかくそれ以外はリドを含めてもLv.5が五人、Lv.4が4人。Lv.3、2が一人ずつ、Lv.1が二人。
「正直勝負にならないニャ」
「よねぇ」
「二人とも黙っててください・・・」
渋い顔になるリューだが否定はしない。
個人差もあるが、レベルが1違えば1対5くらいでも何とかなってしまうのがランク差というものだ。
彼女たち三人がかりでもLv.6相手では一蹴されてしまう、それほどの差がこちらと向こうの間にはある。
「ん」
瓦礫を踏みしだき、凶悪な表情で前に出た男がいる。
銀髪の狼人、ベート・ローガだ。
「いよう、虎刈り頭! ようやっとテメエを堂々とぶちのめせる機会がやってきたなあ!
今度はオラリオ中が見ている前で叩きのめしてやるよ! 勿論てめえが必死に掻き集めた雑魚どももなあ!」
「面白い。それじゃあいっちょ一騎打ちと行こうじゃないか。降りてこいよ。ぶちのめしてやる」
「あ?」
「は?」
「「「はぁぁぁぁぁぁ!?」」」
敵味方から一斉に驚愕の声が上がった。
「おいイサミ! 何考えてんだよ!?」
「そうだよぉ! いくらなんでもステイタスが違いすぎるよ!?」
「まあそう言うなよ。ちゃんと策はあるからさ」
胸元・・・には届かないのでイサミのベルトをつかんでガタガタ揺らすシャーナ。
こっちは肩を掴んでぐらぐら揺らすレーテー。
しかしイサミは動じず、安心させるように二人の肩を叩く。
クロエが(こいつ、ついにイカれたニャ)というゼスチャーをして、リューにはたかれていた。
「は・・・はははははは! 面白ェ! 面白ェよテメエ! そこだけは褒めてやらあ! いいよな、フィン!」
驚愕からさめて大笑いするベート。許可を求められた小人族の勇者は、黙って肩をすくめた。「好きにしろ」というサインだ。
「はは! そうでなくちゃあな!」
「いいのか、フィン?」
「ンー、まあ〈戦争
言いつつ、フィンは右手の親指を口元に当てている。その目はあくまで冷静、そして冷徹。
リヴェリアとガレスも、それ以上は何も言わない。
バーチェの二つ名は原作では存在しないのですが、ここでは正式にオラリオのファミリアになっているので、適当にでっち上げました。半年経ってるから
元ネタはわかる人はわかるでしょうが、シュワちゃんのコナンシリーズと微妙にリンクしてる映画「レッド・ソニア」からです。ヒリュテ姉妹の妹の方がネタに走った二つ名なので、こっちの妹もある程度ネタに走るべきだろうとw