ダンジョンでドラゴンと戦うのは間違っているだろうか ~マンチキン・ミィス~ 作:ケ・セラ・セラ
『『『『『ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!』』』』』
『おーっと、これはまさかの展開だーっ! 城を丸ごと倒壊させる大大大魔法! イシュタル・ファミリアのアマゾネス達を丸ごと封じた重力魔法! そして両軍主力全面激突必死の展開から、まさかの一騎打ち!
合意と見てよろしいですか? よろしいですねっ! ガネーシャ様、何かありますか!』
『うむ! 俺がガネーシャだ!』
遠く離れたオラリオでも、歓声が渦巻いている。
「俺見たぜ! 半年くらい前、西のメインストリートで、あの二人がすげえ殴り合いしてたんだ! 最後には【
「Lv.1の魔導士がかよ! すげえな! やっぱレベル詐称してんじゃねえのか!?」
「俺ベート・ローガに2000ヴァリス!」
「こっちはあの虎縞頭に500だ!」
「はいはいないか他にないか! 賭け締め切るよー!」
一方で古城でも、双方の大将が一騎打ちを決めてしまったので、早々に見物人モードに入ってしまうものもいる。
「行けー、お兄さん! クソ狼をやっちゃえ!」
「おいクソバカゾネス、どっちの応援してんだ」
「向こうに決まってるでしょ!」
「ティ、ティオナさん!」
「(汗)」
「・・・お前達どういう関係なんダ、ティオネ?」
「まあ色々あって・・・」
珍しく素のアルガナの真顔の問いかけに、ティオネは眉間をもみほぐしつつ答えた。
「言っておくが俺は魔導士だ。術はバンバン使わせて貰うぜ」
「好きにしろよ見かけ倒しのモヤシ野郎。俺の前で詠唱なんざできるもんならなあ!」
「よく吠えた。降りてきやがれ!」
「おう、今ぶちのめしてやるぜ!」
瓦礫から飛び降りるベート。
きらり、とこのタイミングを待っていたイサミの目が光る。
「"
「「「「「「「「えっ」」」」」」」」
「のうぉわああっ!?」
さしものLv.6、さしもの
「《高速化》《光線分枝化》《二重化》《最大化》"
ぴっ、と。
四本の赤い光線がイサミの指先からほとばしる。
それは尻餅をついて回避もままならないベートの体に命中し、ベートは一瞬びくんと跳ねてから動かなくなった。
「ヴィクトリー!」
その場の全ての人間が、余りと言えば余りの展開に唖然としている。
勝ちどきを上げるイサミに、荒野を吹き抜ける風の音だけが応えた。
『『『『『ふっざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁあぁあぁぁぁ!!!!!!』』』』』
一方オラリオでは怒号が渦巻いていた。まあ当然である。
「ざっけんな! 金返せ!(※払ってません)」
「キンタマついてんのかてめえ!」
『何たる卑劣! 何たる卑怯! この魔導士は一騎打ちに応じた
あれ、でも魔法使っていいって言ってるんだから問題なくね?』
『いや、あるだろ。ガネーシャ断言!』
ベートは目を見開いたまま微動だにしない。
イサミの魔法によって知力にダメージを受け、精神活動を停止してしまっているのだ。
肉体は無傷でも、精神が活動しないのでは屍と変わらない。
「なんだよその反応?! 俺は魔導士なんだから魔法で勝って何が悪い! こいつだって認めてたろ!」
「いやまあ・・・それはそうなんだがな・・・」
さすがにここまで拒否反応があるとは思わなかったのか、イサミが不機嫌な顔で抗議する。辛うじて言葉を返すリヴェリアは頭痛をこらえるような顔だ。
「ねーよ」
「兄さん、今のはさすがに・・・」
「レーテーもちょっとどうかと思うの・・・」
「ひきょうものー! キンタマついてんのかー!」
「フェ、フェリスさま! 女性がそのような・・・!」
「いやまあ実戦なら何でもありだとは思いますが・・・」
「そーだよイサミっち! 男と男の勝負だぜ!」
「お兄さん、さすがにそれはないと思う」
「・・・」
「お前らまで・・・」
身内(+真顔のティオナ)からもやんわりと、あるいは直裁に否定され、憮然とするイサミ。
「ええい、くそ! しょうがないな、仕切り直しだ」
転がって微動だにしないベートに近寄り、"
強力な治癒の魔力が停止していた思考力を回復させ、ベートはパチパチと目をまばたきさせた。
「よう、気がついたか?」
「・・・っ! このクソ野郎が!」
跳ね起きて牙を剥くベート。イサミも軽くバックステップで飛びすさり、杖をベルに放り投げる。
「ベル、ちょいと持っててくれ」
「あ、うん」
反射的に杖を受け取り、ベルが頷く。
空になった両手で、イサミがファイティングポーズを取った。
ちょいちょい、とベートを差し招くように指で挑発する。
「どうやらみなさんお気に召さないようだからな。仕切り直してやるよ。泣いて喜べ」
「この野郎・・・!」
顔中に血管を浮き立たせ、もはや戦争遊戯など関係ない、こいつだけはブッ殺すとばかりに"凶狼"の二つ名そのものの面相になるベート。
その殺気にさすがにプレッシャーを感じつつも、イサミは短く「力ある言葉」を呟いた。
「ヒャッホォォォォ!」
「やれ! ブッ殺せ!」
「男の勝負を舐めた奴に制裁を加えてやれー!」
一方オラリオは大盛り上がりであった。イサミはすっかりヒール扱いで、普段なら間違いなく悪役の嫌われ者ベートを揃って応援するという珍しい状況になっている。
『おーっと、ここでまさかの仕切り直し! 卑怯卑劣の男にも一片の廉恥心、正々堂々と試合開始の冒険者魂があった! わたくしも魂のバーストオイルが沸騰しております!
とはいえLv.1がLv.6に戦いを挑むのだからあれくらいは許される気がしないでもない! まあ本当に申告通りLv.1ならですが! ガネーシャ様、何か一言お願いします!』
『うむ! 俺がガネーシャだ!』
「!?」
「あ、あれ? リヴェリア様、今、クラネルさんが・・・? 私の気のせいでしょうか?」
「お前も感じたか・・・恐らく間違いではない。彼が魔法を発動した瞬間
「はっ、もうろくしたか、ババア! 話は後で聞いてやるよ! こいつをブッ殺してからな!」
ざわり、とベルの全身が総毛立った。Lv.6の本気の殺気の放射に、全身が拒否反応を示している。
春姫がぐらり、と揺れてフェリスに支えられた。ゲドなど今にも泡を吹いて倒れそうなくらい顔色が悪い。
Lv.5やLv.4の面々すら、緊張を強いられるプレッシャー。
だがそれでも、イサミは悠然と拳を構えて立っている。
今にも飛びかかりそうな態勢で、力を蓄えるかのように身をかがめるベート。
半身で拳を軽く握り、左拳を僅かに前に出す構えのイサミ。
誰もが無言で二人を注視している。
そして、唐突に「機」が二人の間を通り過ぎた。
「死ねっ!」
ベートの神速の踏み込み。
蹴り出した足から腰、背中、肩、腕、拳への完璧な力の伝達。
理想のフォーム、理想の速度、理想のタイミング。
当たった、と誰もが思った。終わった、と何人かは思った。
だが。
「!?」
ベートの拳は、イサミの顔面1cm手前で止まっていた。
ベートが止めたわけではない。ベートの拳が伸びきって自然に止まった。
イサミは、ただ5cmほど後ろに上体を反らしただけ。
ベートが拳を引き戻す。
その間にあるはずの反撃が、ない。
そもそもあの夜の殴り合いでは、しつこいほどにカウンター狙いに徹していたのに、それもない。
「わざと」攻撃もカウンターもしなかったのだ、この男は。
回避されたことへの驚愕で一瞬で冷静になっていたはずの頭に、再びカッと血が昇る。
イサミが前に出していた左拳が、再びちょいちょい、と挑発の動きを取る。
ぶちん、と何かが切れる音がした。
"
なお"
(リプレイでオーク神の分体をこれですっ転がしたので)