ダンジョンでドラゴンと戦うのは間違っているだろうか ~マンチキン・ミィス~ 作:ケ・セラ・セラ
「説曹操、曹操就到!?」
「兄さん、落ち着いて!」
「何を言ってるのかはわからんが、何を言いたいのかはわかるな・・・」
軽く錯乱するイサミを揺らして正気に戻そうとするベル。
苦虫を噛みつぶしきったような顔のシャーナ。彼女もロビラーの力の一端は目の当たりにしている。
レーテーは緊張しきった顔だ。記憶は曖昧だが、かつて無造作に腕を切り飛ばされた時の印象は簡単にはぬぐいされない。
「う、うわー! 本物! 本物のロビラー卿よ! 凄い! 生ロビラー! 写し絵よりよっぽどいい男じゃない! ねえ、頼んだらサインくれるかしら!」
「うん、ちょっと黙ってろなお前」
なおイサミを正気に戻したのはベルの声ではなく、ミーハー丸出しのフェリスの反応であった(フェリスはロビラーと同じオアース世界の出身である)。
自分より騒いでる人間を見ると落ち着くのは、人間の不思議な習性だ。
「お、なんだ嬢ちゃん、俺のファンか? 何か書く物持ってたら書いてやるぞ」
「キャー! 凄い! 本物! 本物のロビラーのサインよ! ああもう、モルデンカイネンのサインも貰っとくんだった!」
「はいそこのおっさんもちょっと黙ってような」
「だからおっさん扱いはやめろと言ってるじゃねえか」
「おっさん扱いをやめて欲しいならせめて髭を剃れ、この怪人モジャ公が」
「・・・・・・」
一方でロキ・ファミリアの面々も目をみはっている。
かつてベルがミノタウロスと戦った時、イサミを「人質」にとっていたロビラーと彼らは一悶着を起こしている。
当時Lv.5だったティオナを一蹴したその実力は、彼らをしてオッタルと同等、あるいはそれ以上の難敵と認識させていた。
アルガナとバーチェもまた、そのたたずまいだけで察するに余りある。
「それで何の御用かな。見ての通り僕たちは取り込み中なんだ。イサミ・クラネルとの因縁であれば後回しにしてほしいのだけれども」
「いや何ね。見物のつもりだったが、『俺に勝てる』なんて言われちゃあ黙ってるわけにもいかなくてな」
フィンの問いかけにへっへ、と軽薄に笑うロビラー。
「・・・今この場でということかな?」
「もちろん。今でなけりゃ意味がないだろ。よくわからねえが魔法でどうにかしてるみてえだしな」
ちらりとイサミに視線をやるロビラー。
む、とイサミが口をへの字に曲げた。
「それは、こちらに立って戦うという意味かな?」
「いやいや、それだと〈戦争遊戯〉のルールに抵触するだろ? だから俺は勝手にあいつに殴りかかるのさ」
「ムウ・・・」
渋い顔になるフィン。
一応の理屈は立っているものの、ロビラーの言はもちろん詭弁である。神々、そしてギルドの裁定次第では十分反則になりうる。
一方でこうした不慮の事態であれば、展開によっては〈戦争遊戯〉自体最初から仕切り直しになる可能性もある。ここまで完全にペースを握られているフィンとしてはそれに持ち込めないかと思わなくもないが、むしろ反則負けを取られるリスクの方が高い。
(やっかいな事に・・・)
「そんなのずるい! ただでさえこっちの方が有利じゃない! 決めた! 私【
「「「「ファーッ!?」」」」
沈思黙考に入りかける、絶妙のタイミングで炸裂したティオナの爆弾発言。
この日、ティオナは常に冷静沈着な【勇者】を盛大に吹き出させるという偉業を達成した。
「ティオナ?!」
「あんた何考えてんのよバカティオナ!」
「だってそうじゃん! 【
助っ人は1ファミリア一人ならいいんでしょ? だったらあたしがロキ・ファミリアから助っ人に入るよ!」
「そ、それはそうですが・・・! いやそう言う話じゃなくて!」
本当にそう言う問題ではない。
まさかの飛び入り助っ人と、まさかどころではないLv.6冒険者の離反。
当のロキ・ファミリアだけでなく、ヘスティア連合軍やオラリオにもざわめきが広がる。
『おおっとここで謎の冒険者の飛び入りだ! 所属も経歴も全く不明だが、両陣営の反応からしてかなりの実力者なのは間違いない! というか今【猛者】並に強いって言ってなかった!?』
『うむ、言ってたな! それはそれとして、俺がガネーシャだ!』
『よかった聞き間違いじゃありませんでした! しかもあろうことか、【大切断】が離反! これも神々の策、全ては我が戯れ言なのかーっ!』
『ロキだってきっと認めてくれるよ! 凄く面白いって!』
「認めるかあほー! 何言っとんねんティオナー!?」
頭を抱えたロキが絶叫するが、悲しいかな《神の鏡》は一方通行、悲痛な叫びはティオナに届かない。
「これほどまでとは・・・読めなかった・・・このリセイの目をもってしても!」
「てめーの敗因は・・・たったひとつだぜ・・・ロキ・・・たったひとつの単純な答えだ・・・『てめーの子はお馬鹿すぎた』」
「ティオナのことは忘れろ。そうすればお前は強くなる」
「『表がえる』と心の中で思ったならッ! その時スデに行動は終わっているんだッ!」
「貧乳! 貧乳ゥ! PUTIYYYYYY!」
「ブッ殺すぞオドレらァッ!」
ここぞとばかりにいじる神々と吠えるロキ。
ヘスティアやヘファイストスは唖然とし、フレイヤが玉を転がすような声で笑い続けていた。
「あー、ティオナ。だがルール的には問題があるぞ」
再び痛む頭を抱えつつ、リヴェリアがやんわりと指摘する。
「どうして!? こっちに一人増えて向こうに一人増えるんだからとんとんじゃない!」
「あのな。向こうの助っ人は10人、お前が加われば11人。こちらは一人増えて一人減るわけだから10人。
あちらの助っ人の数はこちらの助っ人の数までだから、お前が抜けるまではいいとしてもお前が向こうについたら一人多くなるんだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ」
気付いてなかったのか、リヴェリアの指摘にぽかんと口を開けるティオナ。
ヘスティア側でもレーテーが同じような表情をしていたがそれはさておき。
「そうでもないですよ、リヴェリアさん」
「む?」
イサミの意外な発言に、首をかしげる【九魔姫】。
「だがそちらの助っ人は今十人一杯だろう? 向こうにいる一人と、ここにいる九人と」
「いいえ。助っ人は今
「???」
(あ、そうか・・・そういうことかあ・・・)
リヴェリアのみならずその場のほとんど全員がクエスチョンマークを浮かべる中、ゲドだけは納得したような顔になっていた。
全てを理解した人間に特有の、あきらめとすがすがしさが入り交じった表情で何度も頷く。
(そうだよな。大した芸もないLv.2より、Lv.6の【
ゲドがキラキラ輝く笑顔で自ら一歩前に出ようとしたとき、イサミがアスフィに視線をやり、アスフィが頷きを返した。
「【九魔姫】。彼の言っている事は事実です。私は十日ほど前、ヘスティア・ファミリアに『
「・・・何?」
女神より美しいと称されるその美貌が、先ほどのティオナと同じようなぽかんとした表情を浮かべる。
「「「「「えええええええええええええええ!?」」」」」
一瞬遅れて、今日何度目かの驚愕の叫びが古城とオラリオを揺るがした。
『なぁんてこったぁ! 我々は一体何度驚かされればいいのか! それとも全ては我が掌の上! 暗躍するへらへら仮面、信義無用のJ9、ヘルメス神の仕組んだことなのか!
さて、ここでゲストに来て頂いております! シルバーリムレスツーポイントの、やわらかくも知性をかもし出すオーバルレンズ眼鏡がまぶしい!
アスフィ様と並び我ら眼鏡族の希望の星、受付人気はナンバーワン! 指導の苛烈さもナンバーワン! 登録GO眼鏡GO! 妖精美神エイナ・チュールさんです!』
『エイナ・チュールと申します。よろしくお願いします。・・・その紹介要りました?』
『おう! よろしく頼む! そして俺がガネーシャだ!』
【
『極めて重要です! 個人的に! さて、アスフィ・アル・アンドロメダさんが実はヘスティア・ファミリアに移籍していたということですが!』
『は、はい、事実です。本日付でヘスティア・ファミリアへの『改宗』の届け出が出されました。なおレベルはランクアップして4とのことです』
『なんとぉーっ! このタイミングで都合良くランクアップしてるのはさておき、驚愕の事実! オラリオ最高の
スキル複数持ちの謎のLv.1の兄と驚異的なランクアップを続ける弟の団長兄弟に加えてLv.5が3人、加えてさらに眼鏡の女神アスフィ・アル・アンドロメダが参入! 設立9ヶ月で恐るべき成長を遂げております、恐るべしヘスティア・ファミリア!』
『うむ、ヘスティアの神徳の賜物だな! そして俺がガネーシャだ!』
「「「「オオオオオオオオオオオオオッ!?」」」」
「ヘルメス、貴様ぁぁぁぁぁっ!?」
「言ったろう?
さすがに驚愕が爆発する
激昂しているんだか驚いているんだかわからないアポロンに、ヘルメスはここぞとばかりに最高の笑みを浮かべてやった。
『改宗』に元の主神の許可が要ることは敢えて口にしない。
硬直してしまったイシュタルは怒りよりも驚愕が勝っているようであり、元々アスフィに無関心なカーリーはつまらなそうにそれらを見やっている。
それら全てを楽しげに見やりつつ、ヘルメスは二十日ほど前の事を思い出していた。
今回改めて原作チェックしてて気付きましたけど、アスフィさん本人はレベル偽ってるとも偽ってないとも書いてませんね。
まあトップがLv.4だと、他の団員のレベルが低くても派閥ランクはそう変わらないと思われるので、多分偽ってるとは思いますが。
なおロビラーのサインは貰いました。