ダンジョンでドラゴンと戦うのは間違っているだろうか ~マンチキン・ミィス~   作:ケ・セラ・セラ

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19-22 神に迫る剣

『おーっと、今度は謎の男ロビラーと【猛者(おうじゃ)】オッタルが対峙する!

 いかにもな強キャラ臭を漂わせるロビラーですが、果たしてその自信は本物か、はたまたただのハッタリ野郎なのか!

 マントにくるまれて装備は判然としませんが、黒の戦闘衣に防具らしい防具は腕甲(ブレイサー)くらいしか付けていない!

 腰に下げているのは柄が長めの片手半剣(バスタードソード)か! ゴーグルその他の小物も身につけてはいますが、悲しいかなただのアナウンサーのわたくしにはそれが魔道具かどうかは判別できません!

 アスフィ様がその辺解説してくださるとわたくし大感激なのですが!』

『まあ戦闘中に解説している暇は普通ないだろうな。そして俺がガネーシャだ!』

 

 

 

 ロビラーとオッタル。二人の超戦士が対峙する。

 イサミ達とフィン達、本来戦わねばならない両陣営が、互いの動きを注視しつつもこの二人の対峙から目をそらせない。

 この頃になると幸運にも生き埋めを免れた、あるいは瓦礫から這い出せたアポロン・イシュタル・ソーマの団員たちがちらほらと周囲に姿を見せていたが、彼らもまたこの状況を注視するしかできない。

 

 ロビラーが腰の剣の柄に手をかけた。オッタルもまた自らの背中のそれに。

 互いに僅かに身をよじり、刃渡り1mを越える大剣をすらりと抜く。

 並の冒険者がダガーを抜くよりも素早く、無駄なく、隙のない動作。

 

「・・・おお・・・!」

「・・・!」

 

 ロビラーが目を見張った。そして椿もまた。

 

「なっ!」

 

 オラリオでは、椅子を蹴倒して思わずヴェルフが立ち上がっている。

 その顔には愕然とした表情。彼の周囲にいる同僚の鍛冶師、いや、オラリオ全ての剣鍛冶師が同様の表情を浮かべていた。

 

「なにあれ・・・」

「すげえ・・・」

 

 驚愕の度合いでは彼らに劣るが前衛系の冒険者たち、特に高レベルの者も目を見張っている。

 この瞬間、オラリオの目の半ばがオッタルの剣に集中していた。

 

 作りに目を引くところはない。刃渡り1.2m、平均幅9cm、柄は40cm余りの直剣。鍔にも柄にも装飾は一切なく、柄には鹿皮が巻かれている。

 極々一般的な両手剣と言っていい。

 素人目でも唯一わかるのはその輝き。鋼色ではあるが、ただの鋼鉄ではあり得ないそれ。

 最硬精製金属(オリハルコン)、そして不壊属性武器(デュランダル)特有のそれだ。

 

 高レベルの前衛にはそれ以上のこともわかる。自分たちが振るっているそれとは格が違うとわかってしまう。

 オラリオ最高レベルの武器を持つフィンやガレス、あるいはイサミ製の武器を日常的に使っているシャーナやレーテーですらそれは同じだ。

 

 そして鍛冶師達にとって、それは羨望であり絶望であった。全体のバランス、刃紋、構えるオッタルとの完璧な調和。そしてなにより剣の放つオーラめいたものを、彼らは感じ取れる。

 ヘファイストスの鍛冶師達にとっては、それはより具体的なものとして迫ってくる。

 彼らはいずれも入団の際に神ヘファイストスが鍛えた剣を見ている。だからわかってしまう。()()()()()()()()()()と。

 

 

 

 ぱち、ぱち、ぱち。と。

 神会(デナトゥス)の間に拍手が響いた。

 神々の視線が一斉に集中する。

 ほほえみを浮かべて手を叩いているのはヘファイストス。

 

「素晴らしいわ。鍛冶神として断言する。今、子供達は私たちの技に並んだのよ」

 

 ゴブニュなど、数人の神が深く頷いた。いずれも鍛冶や工作を司る神々だ。

 ヘスティアは自慢げな笑みを抑えるのに必死である。イサミから余り公言しないようにと釘を刺されたので黙っているが、神友が自分の子に、それも専門分野で最大級の賛辞を送っているのが嬉しくないはずがない。

 なお神本人が鍛造したロビラーの"ブレード・オブ・ブラックアイス"であるが、そちらは一目見て人の手による物では無いとわかったのか、いずれの神も言及はしなかった。

 

「そうなのか! 何かすげえ剣なんだな!」

「へのつっぱりはいらんですよ!」

「言葉の意味はよくわからんが、何やら凄い自信だ!」

「あんたらね・・・」

 

 もっとも、大多数の神々(ばか)どもにはよくわからないことではあったのだが。

 まあ専門家にしか分からない事もある。素人にわかるのは値段くらいだ。

 

「ちなみにあれ、180億ヴァリスしたそうよ。その価値はあるとも言ってたけどね」

「「「「「ブーッ?!」」」」」

 

 そこにタイミングよく爆弾発言を叩き込むのがフレイヤ。

 フィン達トップクラスの武器でも大体一億ほどであるから、どれだけ法外な額かがわかるだろう。

 さすがのオッタルでも稼ぐのに何年かかるかわからないレベルであり、実はフレイヤが立て替えていたりする。

 この額をぽんと出してしまえる辺り、やはりフレイヤ・ファミリアの財力は凄まじいというべきか。

 

 

 

 ずんっ、と。

 椿が自らの得物である太刀を鞘ごと地面に突き立てた。

 うつむくその表情は影になって、上背のあるイサミからはうかがえない。

 

「・・・あれはお手前が打ったのか」

「はい」

 

 怒りと憎しみと悔しさをない交ぜにしたような、地の底から響くような声。

 普段の椿しか知らない面々が、その声の響きにギョッとして振り向く。

 イサミは表情を変えることなく、言葉少なに頷いた。

 

「先を、越されてしまったなあ」

 

 しばしの沈黙の後、悔しさを振り切るように背筋を伸ばし、椿がイサミを見上げた。

 歯を見せ、それでも男前に笑ってみせる。

 

「いずれ手前もあれに並ぶ・・・いや、あれを越える剣を打ってみせる。待っておれよ、イサミ殿」

「ええ、楽しみにしてます」

 

 イサミも男前に笑って返した。

 

 

 

 ロビラーもまた、惜しみない称賛をイサミに贈る。

 

「褒めてやるよ、小僧。こいつぁ、俺が今まで見た中でも一等すげえ剣だ」

「そりゃどうも。だがあんたの感想はいらんね。俺が感想を求めるのは、求めなきゃならないのはただ一人さ」

 

 彼なりの称賛を減らず口で返されても、ロビラーの笑顔は変わらない。むしろ深くなる。

 そしてオッタルが頷いた。

 

「最高だ、イサミ・クラネル。お前は最高の仕事をしてくれた」

「ありがとうございます。ですが、お褒めの言葉はそいつに勝った後で」

「そうしよう」

 

 珍しく、オッタルがはっきりと笑みを浮かべる。

 オラリオでそれを見ていたフレイヤもまた、楽しげに微笑んだ。




オッタルの剣 +24デュランダル・グレートソード 
術者レベル72;前提条件:《魔法の武器と鎧作成》特技&《伝説級魔法の武器と鎧作成》特技;市価:1800万gp(180億ヴァリス);コスト:900万gp+19万xp+オリハルコン

不壊属性(デュランダル):近接武器特殊能力 
この強化を持つ武器は決して壊れない。
強力・変成術;術者レベル13;前提条件:《魔法の武器と鎧作成》特技 〈武器鍛冶〉技能15ランク;市価:+6相当 特殊:要オリハルコン、非エピック
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