ダンジョンでドラゴンと戦うのは間違っているだろうか ~マンチキン・ミィス~   作:ケ・セラ・セラ

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19-37 だが戦いは続く

「じゃあこれで終わりか・・・やれやれ、やっとだな」

「いや、それは公平ではないな」

 

 どこか陰気な声がヘスティアの声を遮った。

 振り向いた紐神が目を丸くする。

 

「ソーマ!? どうしてここに?」

「私のファミリアが・・・戦争遊戯に出ているのだろう。確かめようと思って当然だ」

 

 整った顔立ちではあるが、どこか陰気な長髪の青年がいつの間にかそこに立っていた。

 

「おお、超レアもののソーマさんだ!」

「俺、神会(デナトゥス)の時もあいつの顔見たことないぜ・・・」

 

 野次馬がざわつく中、タケミカヅチがいぶかしげに口を開く。

 

「公平ではないとはどういう意味だ、ソーマ?」

「言葉の通りだ。私のファミリアは負けたのだろう? なら私も賠償なり何なりの罰を受けて当然だ。財産没収、脱退許可、私闘禁止・・・でよかったな?」

「ああうん、まあそうなんだけど」

 

 困ったような顔になるヘスティア。

 確かにその通りなのだが、今回の件は明らかに団長であるザニスの暴走であり、ソーマに直接の責任は(ザニスの壟断を許していたことは別として)ない。

 フレイヤの方を見るが、肩をすくめられただけだった。

 

「じゃあこうしよう。団員脱退と私闘禁止はそのまま。財産没収は勘弁してやるから、その代わり自分の派閥をちゃんと管理しろ。ザニスみたいな奴がもう出てこないようにな」

「わかった・・・」

 

 無反応に頷くソーマ。

 本当に大丈夫かこいつと少なくない神が思ったが、ザニスは即日更迭・監禁され、ソーマ・ファミリアの運営は少しずつ正常化していくことになる。

 

 

 

「そういえばソーマで思いだしたけど、当然ロキの所にもペナルティがあるんだよな! 何にしようかな!」

「ちょい待てぇ!? 何でウチまで?!」

 

 目を剥く貧乳女神に、ニマニマした表情を向けるロリ巨乳。ご丁寧に胸の大きさを見せつける腕組みポーズつきだ。

 

「だってさー、助っ人にもペナルティないといけないしさー。ロキだけ埒外ってのはよくないんじゃないかな!」

「じょ、冗談やないで!」

 

 余裕の笑顔で攻めるヘスティアに、冷や汗を流して抗議するロキ。

 珍しい光景に笑みを浮かべていたフレイヤが、ややあって助け船を出した。

 

「まあまあ、いいじゃないのヘスティア。ロキは巻き込まれただけだし、これでペナルティまでって言うのは気の毒よ」

「巻き込んだのはオノレやけどな・・・」

 

 ジト目で睨むロキにも、フレイヤの微笑は微動だにしない。

 一方でヘスティアは不満そうに唇を尖らせる。いつもいじられているので、反撃のチャンスは逃したくないのだろう。

 

「えー、でもなー。ソーマだってペナルティを受けたのに・・・」

「そうねえ。それなら【剣姫】でも移籍させてみる?」

「「 絶 対 に ノ ウ ! 」」

 

 綺麗にハモる巨乳と貧乳。

 それでこの件はおしまいになった。

 

 

 

 ともかく、これが神々同士の一つの決着であった。

 後日「移籍自由」の話を聞いたアルガナ達が大挙ロキ・ファミリアに移籍しようとして、カーリーが泣き落としまで使って引き留める羽目になったが・・・まあ些細なことだ。

 

 

 

 がやがやという話し声、そして瓦礫を踏みしめる音にベルは振り返った。

 イサミをはじめとするヘスティア・ファミリア連合軍にロキ、カーリー。全員一団になって瓦礫の山を登ってきていた。

 兄がこちらに気付いて手を振る。

 手を振り返すが、視線は無意識にある人物を探してしまう。

 

 白金の剣姫。

 こちらの視線に気付いて、にこっと微笑む。

 それだけでベルは真っ赤になった。

 更に不機嫌な顔になるルアン(リリ)に、軽くショックを受けた顔の春姫とカサンドラ。アイシャは「おやま」という顔。

 微妙な雰囲気になりかけたところでイサミ達が到着する。

 

「いやはやお見事。随分と勇戦したようだね。【勇者(ブレイバー)】の二つ名も形無しだ」

「称賛しよう、ベル・クラネル。ヘスティア・ファミリアに手を貸した我が女神の判断は間違っていなかった」

「え、あ、・・・ありがとうございます!」

 

 フィン・ディムナとオッタル。

 事実上オラリオのトップ2とも言える冒険者に掛け値無しの称賛を受け、ベルはそれだけを言うのが精一杯だった。

 

「あっはー! すごいよ【英雄譚(アルゴノゥト)】くん!」

「ふわっ!?」

 

 飛びついてきたティオナを皮切りに、シャーナ、レーテー、フェリスや椿たちにもみくちゃにされるベル。

 イサミやアイズがその様を微笑ましそうに眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「!?」」」」」

 

 唐突に、その場にいた全員が顔色を変えた。

 高レベルの者ほど厳しい顔をしている。

 

「な、なんだ? 何だこれ!?」

 

 慌てふためくゲドに、誰も説明ができない。彼らにも何が起きたのかわかっていないのだ。

 ただ、何か恐ろしい存在を感じた。オッタルやフィン達ですらそれだけしか言えない。

 

「・・・・・・・・・・・!」

「アイズ、さん?」

 

 だがただ一人。

 アイズだけが明白な感情をむき出しにしていた。

 憎悪。殺意。そうしたものが瞳の中で燃えている。

 ベルの声も聞こえないかのように剣に手をかけ、ゆっくりと東の方を向く。

 

「!?」

 

 その瞬間、日がかげった。

 地平線から指一本ほど離れた太陽を、巨大な影が遮ったのだ。

 

「ちょっと待てよ・・・どんだけでかいんだ・・・あれ・・・!?」

 

 太陽と彼らを隔てる影。

 それは、翼を広げた巨大な黒き竜の姿をしていた。

 

『Gwoooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooo!』

 

 魂を消し飛ばすがごとき咆哮が天地を揺るがす。

 戦いはまだ、終わらない。

 

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