ダンジョンでドラゴンと戦うのは間違っているだろうか ~マンチキン・ミィス~ 作:ケ・セラ・セラ
「じゃあこれで終わりか・・・やれやれ、やっとだな」
「いや、それは公平ではないな」
どこか陰気な声がヘスティアの声を遮った。
振り向いた紐神が目を丸くする。
「ソーマ!? どうしてここに?」
「私のファミリアが・・・戦争遊戯に出ているのだろう。確かめようと思って当然だ」
整った顔立ちではあるが、どこか陰気な長髪の青年がいつの間にかそこに立っていた。
「おお、超レアもののソーマさんだ!」
「俺、
野次馬がざわつく中、タケミカヅチがいぶかしげに口を開く。
「公平ではないとはどういう意味だ、ソーマ?」
「言葉の通りだ。私のファミリアは負けたのだろう? なら私も賠償なり何なりの罰を受けて当然だ。財産没収、脱退許可、私闘禁止・・・でよかったな?」
「ああうん、まあそうなんだけど」
困ったような顔になるヘスティア。
確かにその通りなのだが、今回の件は明らかに団長であるザニスの暴走であり、ソーマに直接の責任は(ザニスの壟断を許していたことは別として)ない。
フレイヤの方を見るが、肩をすくめられただけだった。
「じゃあこうしよう。団員脱退と私闘禁止はそのまま。財産没収は勘弁してやるから、その代わり自分の派閥をちゃんと管理しろ。ザニスみたいな奴がもう出てこないようにな」
「わかった・・・」
無反応に頷くソーマ。
本当に大丈夫かこいつと少なくない神が思ったが、ザニスは即日更迭・監禁され、ソーマ・ファミリアの運営は少しずつ正常化していくことになる。
「そういえばソーマで思いだしたけど、当然ロキの所にもペナルティがあるんだよな! 何にしようかな!」
「ちょい待てぇ!? 何でウチまで?!」
目を剥く貧乳女神に、ニマニマした表情を向けるロリ巨乳。ご丁寧に胸の大きさを見せつける腕組みポーズつきだ。
「だってさー、助っ人にもペナルティないといけないしさー。ロキだけ埒外ってのはよくないんじゃないかな!」
「じょ、冗談やないで!」
余裕の笑顔で攻めるヘスティアに、冷や汗を流して抗議するロキ。
珍しい光景に笑みを浮かべていたフレイヤが、ややあって助け船を出した。
「まあまあ、いいじゃないのヘスティア。ロキは巻き込まれただけだし、これでペナルティまでって言うのは気の毒よ」
「巻き込んだのはオノレやけどな・・・」
ジト目で睨むロキにも、フレイヤの微笑は微動だにしない。
一方でヘスティアは不満そうに唇を尖らせる。いつもいじられているので、反撃のチャンスは逃したくないのだろう。
「えー、でもなー。ソーマだってペナルティを受けたのに・・・」
「そうねえ。それなら【剣姫】でも移籍させてみる?」
「「 絶 対 に ノ ウ ! 」」
綺麗にハモる巨乳と貧乳。
それでこの件はおしまいになった。
ともかく、これが神々同士の一つの決着であった。
後日「移籍自由」の話を聞いたアルガナ達が大挙ロキ・ファミリアに移籍しようとして、カーリーが泣き落としまで使って引き留める羽目になったが・・・まあ些細なことだ。
がやがやという話し声、そして瓦礫を踏みしめる音にベルは振り返った。
イサミをはじめとするヘスティア・ファミリア連合軍にロキ、カーリー。全員一団になって瓦礫の山を登ってきていた。
兄がこちらに気付いて手を振る。
手を振り返すが、視線は無意識にある人物を探してしまう。
白金の剣姫。
こちらの視線に気付いて、にこっと微笑む。
それだけでベルは真っ赤になった。
更に不機嫌な顔になる
微妙な雰囲気になりかけたところでイサミ達が到着する。
「いやはやお見事。随分と勇戦したようだね。【
「称賛しよう、ベル・クラネル。ヘスティア・ファミリアに手を貸した我が女神の判断は間違っていなかった」
「え、あ、・・・ありがとうございます!」
フィン・ディムナとオッタル。
事実上オラリオのトップ2とも言える冒険者に掛け値無しの称賛を受け、ベルはそれだけを言うのが精一杯だった。
「あっはー! すごいよ【
「ふわっ!?」
飛びついてきたティオナを皮切りに、シャーナ、レーテー、フェリスや椿たちにもみくちゃにされるベル。
イサミやアイズがその様を微笑ましそうに眺めていた。
「「「「「!?」」」」」
唐突に、その場にいた全員が顔色を変えた。
高レベルの者ほど厳しい顔をしている。
「な、なんだ? 何だこれ!?」
慌てふためくゲドに、誰も説明ができない。彼らにも何が起きたのかわかっていないのだ。
ただ、何か恐ろしい存在を感じた。オッタルやフィン達ですらそれだけしか言えない。
「・・・・・・・・・・・!」
「アイズ、さん?」
だがただ一人。
アイズだけが明白な感情をむき出しにしていた。
憎悪。殺意。そうしたものが瞳の中で燃えている。
ベルの声も聞こえないかのように剣に手をかけ、ゆっくりと東の方を向く。
「!?」
その瞬間、日がかげった。
地平線から指一本ほど離れた太陽を、巨大な影が遮ったのだ。
「ちょっと待てよ・・・どんだけでかいんだ・・・あれ・・・!?」
太陽と彼らを隔てる影。
それは、翼を広げた巨大な黒き竜の姿をしていた。
『Gwoooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooo!』
魂を消し飛ばすがごとき咆哮が天地を揺るがす。
戦いはまだ、終わらない。