ダンジョンでドラゴンと戦うのは間違っているだろうか ~マンチキン・ミィス~   作:ケ・セラ・セラ

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予想はついてるでしょうが今回からしばらく作者の性癖全開になります。
「こんなのダンまちじゃねえよ!」って方はブラウザをそっ閉じしてください。


20-06 こちらオラリオの何でも屋

 ガネーシャ・ファミリアホーム「アイアム・ガネーシャ」最上階、神の居室。

 居間の奥、普段は使われない奇妙な玉座にガネーシャが座していた。

 床と壁に固定され、着席者を固定する革のベルトに加えて伝声管や肘掛けのレバー、ボタンなど様々な物が取り付けられている。

 この世界の人間なら拷問椅子に見えたかもしれないし、イサミが見たらコックピットシートのように見えたかも知れない。

 左右にも席がしつらえられており、万が一のときに主神を守るべく二人のLv.5冒険者が座っていた。

 

 差し渡し6,7mほどの部屋の中は、狭くはないがそこまで広くもない。大きめとは言え人型像の頭部にある都合上、そこまでスペースを確保できないためだ。

 正面の壁は鏡のように変化し、巨像の額の紋様から送られてくる映像を映し出すモニターとなっていた。

 部屋の中には正面の視界をなるべく遮らないように十を越える【神の鏡】が浮かんでおり、像の側面や後方、神会(デナトゥス)の間、そしてオラリオに向けゆっくりと(と言っても時速百km以上は出ているだろう)飛行する黒竜の姿が複数映し出されていた。

 

『おお、神ガネーシャ! 準備は整ったのですか!? 見ての通り黒竜が・・・!』

「わかっている」

 

 鏡の一つの中で、脂汗をダラダラ流したギルド長ロイマンが必死にもみ手をする。見かけによらず肝は座っている男だが、それでも伝説の大魔獣が近づいて来ているのを前に平静ではいられないらしい。

 それに短く頷き、視線を横の【鏡】に移す。

 そこに映っていたのはギルドの主神ウラノス。その厳しい表情は常に似て巌の如く、僅かたりともゆらぎはない。

 

『頼む、ガネーシャ』

「わかっている、ウラノス。後のことは頼むぞ」

『オラリオにはお前とお前の派閥が必要だ。命を無駄に捨ててはくれるな』

「無論だ! 俺は最後の最後まで諦めたりはしない。何故なら・・・俺がガネーシャだからだ!」

 

 ガネーシャの言葉に失笑することもなく、ウラノスは重々しく頷いた。

 その間にも【鏡】の中の黒竜は恐ろしい速度でオラリオに近づいている。

 最後にそれに一瞥をくれると、ガネーシャは頭部脇の伝声管を掴んでスイッチを入れ、ホームの中で待機している全ての団員たちに声を届ける。

 

「わが子らよ! ついにその時が来た! 敵は隻眼の黒竜! 白銀の剣士アルバートとその仲間たちを打ち倒し、ゼウス・ファミリアとヘラ・ファミリアを壊滅させた伝説の魔獣だ!

 だが俺達は負けん! 負けるわけにはいかん! 何故なら俺達の後ろにはオラリオ五十万の人々がいるからだ! 世界全ての人々の未来があるからだ!

 だから子らよ、俺に力を貸してくれ! オラリオのために! 世界のために!」

「「「「「オオオオオオーッ!」」」」」

 

 怒号が巨像を揺らした。「アイアム・ガネーシャ」にすし詰めにされた、一千人を超える団員たちの咆哮だ。

 普段はクールな男装の麗人、ガネーシャ・ファミリア団長シャクティ・ヴァルマでさえも拳を突き上げ、吼えている。

 黒竜に対する恐れ、オラリオ存亡の危機、そしてそれらを吹き飛ばすほどの主神に対する信頼と使命感。

 今自分たちはまぎれもなく正しい場所にいるのだという確信がその闘志を赤々と燃やしている。

 

「お前達の意志に感謝する、わが子らよ! では行くぞ! 【アイアム・ガネーシャ】起動!

 起動コード"俺がガネーシャだ!(アイ・アム・ガネーシャ!)"」

 

 ぎんっ。

 巨像の目が赤く光った。

 それと共にガネーシャの座る玉座も赤く光った。まるで神のナイフに刻まれた【恩恵】が光るように。

 そこを起点としてガネーシャの部屋の、そしてホームの廊下や部屋の壁や床、天井の梁にびっしりと刻まれていた紋様を赤い光が伝わっていく。

 象頭の巨像が今度は目の錯覚ではなく、小刻みに揺れ始める。

 

「な、何だ!?」

「ガネーシャ様のホームが!」

 

 驚く通行人や周囲の住人の耳に、場違いなほど涼やかな声が響く。

 

"ご通行中の皆様、毎度お騒がせして申し訳ございません。ただいまよりアイアム・ガネーシャ、変形(トランスフォーム)いたします。危険ですから敷地の外までお下がりください。繰り返します・・・"

 

 

 

「うおおおおおお!?」

「ぬわあああーっ!」

 

 通行人たちが驚いているのと同様、いやそれ以上に中のガネーシャ・ファミリア団員たちも大騒ぎだった。

 待機していた部屋が揺れ、時には斜めになり、また元に戻る。「アイアム・ガネーシャ」内にある部屋が組み変わり、新たな形をなしていく。

 巨像が「立ち上がる」。

 

 三十秒ほどで変形は終わり、そこには今や巨大な立像となった「アイアム・ガネーシャ」があった。

 いや、ただの立像ではない。

 一歩足を踏み出し、歩いた。そしてもう一歩。その動きによどみはない。

 

「よし!」

 

 頭部でガネーシャが拳を握る。

 

「身長57m! 体重5500t! 巨体が唸って空を飛ぶ!」

「「飛ぶんですか?!」」

 

 ガネーシャの左右に控えていた二人が同時に叫んだ。

 

「飛ぶ! 行け、移動神像G(ジャイアント)・ガネーシャ!」

『了解! G(ジャイアント)・ガネーシャ、飛行します!』

 

 【鏡】の中、ガネーシャと同じような玉座に座るシャクティが答えた。

 シャクティが念じるとともに、G(ジャイアント)・ガネーシャが腰を沈め、全身、特に脚部を赤い光が覆う。

 次の瞬間巨像は跳躍し、白い雲の環と赤い光の残像を残して空の彼方に消えた。

 

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 

 イサミが吼えていた。

 オラリオ外周を飛行していた彼は、「アイアム・ガネーシャ」、いやG(ジャイアント)・ガネーシャが立ち上がり、飛行するところをつぶさに目撃していたのだ。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 

 両手の拳を高々と掲げ、吼える。

 この衝撃と感動と畏怖と憧れと、様々なものが相まった感情を腹の底から吐き出す。

 ひょっとしたら涙すら浮かべていたかも知れない。

 

「ちくしょう、俺がやりたかった! 俺が作りたかった!」

 

 悔しさを顔に浮かべながらも、それを遥かに上回る喜びを浮かべる。

 イサミはこの世界では掛け値無しに最高の大魔術師だ。だがそれでも届かない、及ばない分野がある。憧れをいまだ形に出来ない領域がある。それ故の喜び、それ故の悔しさ。

 だからイサミは拳を掲げる。叫ぶ。

 名状しがたい思いのありったけを吐き出すように。

 

 やがてイサミは咆哮を止め、地平線の彼方を見る。

 黒竜との戦いを始めた巨像を。

 再び厳しい表情を取り戻し、イサミは飛び始める。

 彼にしかできない、彼のつとめを果たすために




座高が30mを越すくらいなら、身長が57mでも全くおかしくないと思います(真顔)
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