ダンジョンでドラゴンと戦うのは間違っているだろうか ~マンチキン・ミィス~   作:ケ・セラ・セラ

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20-09 眷族の力を借りて、今必殺の

 

 

「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」」」」」」

「「「「「「イエーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」」」」」」

「今度金出しあってあれの武器作ろうぜ! ミサイルとかビームとか剣とか弓とかヨーヨーとか!」

 

 神会(デナトゥス)の間に歓声が響いた。

 口笛が鳴り響き、ノリのいい神が用意していた紙吹雪が舞う。

 

 ロイマンは思わず立ち上がっていたし、ロキでさえも「っしゃあっ!」とガッツポーズを取っている。

 フレイヤも微笑んでいたが、その後ろに控えている猪人は厳しい顔を崩さない。

 ロキの後ろに立っている小人族の英雄も同様だ。

 色が白くなるほどに親指を噛みしめ、【神の鏡】に視線を注いでいる。

 

 

 

『GOAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!』

 

 黒竜の絶叫が止まらない。

 苦痛と怒りの咆哮を上げて両腕を巨神の背中と頭部に叩き付けるが、G(ジャイアント)・ガネーシャは牙を突き刺したまま黒竜の胴体にしがみついて離れない。

 

『シャクティ、一気にとどめだ! ガネーシャビーム蓄力(チャージ)開始!』

「はい! ガネーシャビーム、蓄力(チャージ)開始します!」

 

 シャクティが操縦席のレバーの一つを引いた。G(ジャイアント)・ガネーシャの両目に赤い光が集まり始める。至近距離から放たれた神の眼光(ガネーシャビーム)は間違いなく黒竜の鱗を貫き、致命傷を与えるだろう。

 それまで保たせれば勝ちだと、主神(ガネーシャ)眷族(シャクティ)の思考が一致した瞬間。

 

「『何ッ!?』」

 

 背中に強烈な衝撃を受けて、G(ジャイアント)・ガネーシャは地面に叩き落とされた。

 両手は鱗の上を滑り、うつぶせに大の字になる。

 

『■■■■■■■■■■■■■■――!』

「くっ!」

 

 混乱しつつもシャクティは咄嗟に巨像を右に転がした。

 一瞬遅れて放たれた黒竜の蹴りが空を切る。

 先ほどの膝蹴りでダメージが蓄積していなければ命中していただろう。

 

 やはり足にダメージが残っているのか、黒竜は先ほどのように追撃はしてこない。

 数歩分の距離を取り、シャクティはG(ジャイアント)・ガネーシャを立ち上がらせた。

 

「一体何が・・・」

『シャクティ! これを見るのだ!』

「・・・・・・・!」

 

 ガネーシャの声と共に浮かび上がった銀色の円盤。

 正面から巨像を映した【神の鏡】には、二本の牙を根元から失い、傷口から白煙を上げるG(ジャイアント)・ガネーシャの姿があった。

 

 

 

「――――――――!」

 

 神会(デナトゥス)の間は痛いほどの沈黙に満ちていた。

 先ほどの熱狂ぶりから一転して、誰もが声もない。

 基本的に自分で自分を見れないG(ジャイアント)・ガネーシャと違い、神会(デナトゥス)の間からは神の鏡を通して状況を客観的に見て取ることが出来る。

 今、その【鏡】の中で巨神の牙の付け根と、そこから垂れた黒い血に触れた部分がしゅうしゅうと白い煙を上げていた。

 

「強酸性の血か・・・!」

 

 フィンがぎりりと親指を噛みしめる。

 オッタルが小人族に視線をやった。

 

勇者(ブレイバー)、あれは例の芋虫型の・・・?」

「いや、違う。けど同じ位厄介だ。ガネーシャ像が石で出来ていたのがまだしもだった。金属や木で出来ていれば、突き刺した瞬間にああなっていたろうね」

 

 言いつつも視線は【神の鏡】から外さない。

 

 

 

 ワンテンポ遅れて、神会(デナトゥス)の間からの連絡を受けたガネーシャたちも状況を把握した。

 

『どうするのだ、シャクティ?』

 

 主神の問いに答えが返ってくるまで僅かに間があった。

 

「・・・やりようは、あります。打撃でダメージを蓄積させ、動きが鈍った所でガネーシャビームでとどめを刺します。これならあの酸性体液を回避しつつ戦えるでしょう」

『わかった、任せる』

 

 伝声管を通してガネーシャが頷くのがわかった。

 シャクティも頷き、操縦席に沈黙が落ちる。

 

「ところでガネーシャ様」

『なんだ、シャクティ?』

「ガネーシャビームという名称はどうにかなりませんか。せめてこう何か・・・魔法っぽい名称にするとか」

『ならない! ガネーシャ信念!』

 

 シャクティは深く溜息をつくと、G(ジャイアント)・ガネーシャを再び構えさせた。

 

 

 

 巨像が僅かに構えを変えつつ、じりじりと横に移動する。

 それを警戒しつつ、黒竜も僅かに向きを変える。

 

 実のところG(ジャイアント)・ガネーシャは余り格闘戦に向いていない。

 ガネーシャ本神ではなく、地球の伝承に近いズングリしたフォルムのせいだ。

 手足も短く、殴る蹴るをするにも組み討ちをするにしても有利とは言い難い。

 シャクティの際だった格闘の技量を活かすにはかなり役不足と言わねばなるまい。

 

(ガネーシャ様ご自身のような均整の取れた体つきにしてくれればよかったものを)

 

 シャクティはひそかに溜息をつくが、口には出さない。強度の問題でこのデザインに落ち着いたことも理解しているからだ。

 G(ジャイアント)・ガネーシャは上質の超硬金属(アダマンタイト)の骨組みに木組みと大理石の外装で構成されている。

 手足を人間並みに長く細くすると、予想出力に耐えきれない恐れがあった。

 

 理想を言えば最硬精製金属(オリハルコン)の骨格なり、全身超硬金属(アダマンタイト)の外骨格構造なりにすべきだったのだが、さしもの都市最大派閥にもそこまでの資金はなかった。

 千年かけて営々と資金と資材を集めてきた死霊王一派ではあるまいし、むしろ骨格の分だけでも超硬金属(アダマンタイト)を用意できたのは驚嘆に値するだろう。

 

(ですが・・・やらねばなりません)

 

 ここを抜かれれば後がない。

 それがガネーシャ・ファミリアの共通認識だった。

 敵はLv.9の大英雄すら退けた伝説の大魔獣。

 主神は次善の策があるような事を言っていたが、"頂天"を始めとしたオラリオの冒険者が一丸となっても、G(ジャイアント)・ガネーシャ以上の戦力になろうとは思えない。

 

(ゆえにここで止める。たとえ相打ちになろうとも、差し違えてみせる)

 

 主神だけは何とか助けたいとも思うが、自ら戦場に出て来ているのだ、あの方も覚悟は決めているのだろうとシャクティは思う。

 ならば余計な事は考えるまい。今はあの黒竜を討ち、オラリオを救う。

 ただそれだけを念じて、シャクティはG(ジャイアント)・ガネーシャを走らせた。

 

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

『うおおおおおおおおおおおおおおおおお!』

「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!」」」」」」

 

 シャクティとガネーシャ、そしてガネーシャ・ファミリア団員。

 【神の力】と【恩恵】で繋がる彼らは一個の生き物であるかのように声を揃えて咆哮する。

 何度目かになる巨像の突進を、黒竜は体を低くして迎え撃つ。

 その黒竜より更に体を低くして走るG(ジャイアント)・ガネーシャ。

 

 タックルを狙うように両手を構えて走るG(ジャイアント)・ガネーシャ。

 それを潰す、あるいは迎撃するかのように低い姿勢で構える黒竜。

 

 双方がぶつかり合うかと見えたその瞬間、G(ジャイアント)・ガネーシャが跳ねた。

 低い姿勢から体のバネを全力で使い、先ほどのドロップキックより更に高く跳ぶ。

 

 体操選手のように、空中で前回転。

 そのまま臀部を相手に叩き付ける。

 プロレス技で言えばトペ・コンヒーロ。

 あるいは・・・

 

『ウルトラ・ガネーシャ・ドロップ!』

「ガネーシャ様うるさい!」

 

 回転のエネルギーと重力を加えた大質量。

 それは迎撃しようと身を起こした黒竜に見事に命中する。

 そのまま巨像は巨竜を押しつぶし、大地に這いつくばらせ・・・はしなかった。

 

「『なにっ!?』」

 

 Lv.10を越える魔石の力か、半ばまで崩れた体勢を無理矢理にこらえる黒竜。

 気がつくとその胴体が黒竜の太い両前足でクラッチされている。

 

『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?』

 

 再びG(ジャイアント)・ガネーシャの天地が回転した。

 ただし、今度は黒竜の手で。

 両前足で胴体をがっちり固められ、そのまま地面に叩き付けられる。

 

「ぐっ!」

「「がっっ!」」

 

 ドラゴン・パワーボム。衝撃がG(ジャイアント)・ガネーシャを貫く。

 【神の力】に守られているとは言え、100mを超える高さから大魔獣の膂力で叩き付けられた。

 巨像本体のみならず、内部のガネーシャ・ファミリア団員たちにもかなりのダメージを与えている。

 

『まだだ、まだ終わらんよ!』

「行けぇ、お姉さま!」

「やっちまえ、団長!」

 

 だが団員の意気は衰えない。

 使命感と正義感、そして必死さが彼らを突き動かしている。

 

「言われずとも!」

 

 頭から叩き付けられたG(ジャイアント)・ガネーシャが逆立ちの姿勢で蹴りを放つ。

 それは巨像の足に牙を突き立てようとしていた黒竜の顎にクリーンヒットし、巨竜の体がぐらりと傾いた。巨像は素早くバク転し、三回ほどそれを繰り返したところで再び立ち上がって構えを取る。

 黒竜が意識をはっきりさせるかのように頭を振った。体勢を立て直し、再び低い姿勢から巨神を睨み付ける。仕切り直しだ。

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