ダンジョンでドラゴンと戦うのは間違っているだろうか ~マンチキン・ミィス~ 作:ケ・セラ・セラ
「――――!」
古城を一撃で吹き飛ばした黒竜の
漆黒の閃光が赤い神像の姿を覆い隠す。
心臓の停止するような一瞬が過ぎ、黒い閃光が途切れる。
その中から巨神のシルエットが現れた時、思わず誰もが安堵のため息を漏らした。
広範囲にわたって扇状に黒くえぐられた大地。
その中央に立つ白い石像。
ほぼ原形をとどめてはいるが、しかしその周囲を覆っていた赤いオーラはほぼ消えてしまっている。
「ぬう・・・」
親指の爪を噛み、ロキが唸った。
『ここまで、だな』
「ガネーシャ様・・・」
伝声管から聞こえてくる声に、シャクティがうなだれた。常日頃テンションの高い主神が冷静な声を出しているという事実そのものが、現状を物語っている。
わかっている。
【神の力】を全力で防御に回したせいであのブレスは防げたが、それで巨神はほぼ全ての力を使い尽くしてしまった。高レベルであるシャクティ自身はまだ余裕があるが、大半の一般団員は【神の力】と共に体力を搾り尽くし、もはや声を上げることもできない。
「! ガネーシャ様!」
『わかっている! ・・・願いの石よ、今再び我と我が子らを助けよ!』
ガネーシャが懐のルーンを刻まれた小石を握りしめ、念じる。
次の瞬間、再度漆黒の閃光が黒竜の口から放たれ、大理石の巨神は今度こそこの世から姿を消した。
「――――――――――――――――――」
痛いほどの沈黙が
【神の鏡】の中、文字通り塵ひとつ残さず消失した
そのまま誰も声を上げられず数分が経過した頃、大扉が開いた。
「待たせたな皆のもの! 失敗して正直すまなかった! そして――」
「わかっとるから言わんでもええがな。『俺がガネーシャだ』やろ?」
この状況で余りと言えば余りにもいつも通りな馬鹿に、思わずロキが失笑した。
「うむその通り! だがあえて言わせて貰う―― 俺 が ガ ネ ー シ ャ だ ! 」
タネを明かせば、彼らが
つまり、イサミの"
ガネーシャが使ったのはイサミが作り出した、"
上級クラス"
それがガネーシャたちを瞬時にバベル前の広場にまで転移させ、ガネーシャ自身はこうして昇降機で
「それにしてもこの男はつくづく便利なものを作る! そう言えばあの石を作る時に血を吐いていたが大丈夫か!」
「ええまあ呪文で治るような傷ですし。それにガネーシャ様以下、ファミリアの人たちを助けられるなら血の2Lや3Lはお釣りが来ますよ」
肩をすくめて答えたのはガネーシャに続いて
なお吐血云々については"
生命力と引き替えに一時的に能力を高めるものだが、千人以上を脱出させる術力となると、タフネス強化に強化を重ねたイサミでもさすがに死にかけるレベルであった。
レベルが足りないのでウィッシュで一時的に取得するという裏技を使ってのことだが、その甲斐はあった。
それについて余り
「まあ、ガネーシャはホンマご苦労さんやったわ。そんで? ここに来るって事は準備が終わったゆうことやな?」
ロキの言葉にイサミが頷いた。
「準備は終わりました。働くかどうかはぶっつけ本番です」
「なるほど! つまり
「ええまあ」
苦笑するイサミ。
視線を転じると【神の鏡】の中の黒竜が翼を広げていた。既に折れた両翼も触手によって修復されており、前以上に力強く羽ばたいているように見える。
ざわり、とひときわ強いさざめきと共に鏡の中の黒竜が体を浮かせた。
翼を大きく羽ばたかせ、空へ空へと舞い上がる。既に地面から生えた緑色の触手はちぎれており、黒竜を大地に縛り付けるものは何もない。
黒竜が、オラリオへの侵攻を再開した。
わずか十分ほどの後、黒竜はオラリオを視認した。
黒竜に潜り込み融合した「もの」もまた。
既に光を失った黒竜の右目がぎょろりと動く。
不自然で無機質な動きだったが、そこには明らかに何者かの意志があった。
時速200kmで飛行しつつ「それ」は思う。
まずはオラリオの建築物を外縁部から破壊しつくす。最後にあの目障りな塔を跡形もなく吹き飛ばし・・・
そこまで考えて、「それ」は目をみはった。
人間とはまったく違う思考形態を持つ「それ」が抱いた現状認識に関するノイズ・・・それを人間の言葉で表すならば、「驚き」が一番近かったろう。
オラリオの周囲の地面が陥没を始めていた。
違う。
黒竜に、あるいは黒竜に命令を下している存在に人間並みの感性があれば、恐らく力の限りに驚愕の叫びを発していた事だろう。
迷宮都市が隆起している。
見る見るうちにそれは限界を超え、大地と都市は切り離される。
直径8km、50万人の住む巨大城塞都市が宙に浮く。
見る見るうちに大地との距離は離れ、黒竜よりも高くなる。
黒竜と融合した「それ」は考える。
このままではこの肉体が飛べる高さを越えるかも知れない。その前に――
ワ レ ヲ カ イ ホ ウ セ ヨ
再び「声」が響いた。
黒竜は上に向けた視線を大地に下ろす。
オラリオの存在したそこには同じだけの直径のすり鉢状のクレーター。
その中央に存在するドーム状の巨大な構造物と、それを囲む堀のような深いみぞ。
黒竜が翼をはためかせ、クレーターの縁に降り立つ。
うずくまり、頭を垂れる姿は、あたかも王にかしずく騎士のように見えた。
戦いは、次のラウンドに移行する。
ラピュタは本当にあったんだ!
詳しいことはまた次回に。
ちなみに今エピソードのタイトル元ネタ一覧。
DRAGON … OVA「新ゲッターロボ」OP
ガネーシャ・ザ・フール … トンチキロボットアニメ「ノブナガ・ザ・フール」
銀(しろがね)の城 … マジンガーZの異名「鉄の城」
魔獣英雄伝アルバート … TVアニメ「魔神英雄伝ワタル」
この都市の明日のためのスクランブル … スーパーロボット大戦オリジナルソング「出撃スーパーロボット大戦」
こちらオラリオの何でも屋 … トライダーG7を運用する「竹尾ゼネラルカンパニー」のキャッチコピー
紅の流星機 … OVA「流星機ガクセイバー」主題歌
人を超え、獣を超え … 「超獣機神ダンクーガ」のキャッチフレーズ
眷族の力を借りて、今必殺の … 「無敵鋼人ダイターン3」必殺技の口上
怒りの象神 … 獣神ライガーOP「怒りの獣神」
俺のこの手が真っ赤に燃える … 「機動武闘伝Gガンダム」後期必殺技ゴッドフィンガーの口上
人、それを飛翔という … 「マシンロボ クロノスの大逆襲」ロム兄さんの名乗り口上の一つ