ダンジョンでドラゴンと戦うのは間違っているだろうか ~マンチキン・ミィス~ 作:ケ・セラ・セラ
4-1 俺がガネーシャだ
『テクマクマヤコンテクマクマヤコン お姫様になぁ~れ』
―― 『ひみつのアッコちゃん』 ――
「空まで飛べるのかよおまえ。本当に何でもありだな」
「マジックアイテムの力だって言ったでしょう? 後静かにしてください。姿は消えますけど、音は聞こえるんですから」
呪文で生成した
黒ローブを取り逃した後、彼らは透明化してオラリオ上空100mの夜空にいた。
「で、どこがハシャーナさんの神様の部屋ですか?」
「額のところが丸々ガネーシャ様の居室になってる・・・しかしなんだな、上から見ると一層・・・本当にもう、あの方は・・・」
ため息をつくハシャーナに、イサミが苦笑を漏らす。
彼らの足下に見えるのはあぐらをかいた象頭の巨人像。
構成員から絶賛大不評のガネーシャ・ファミリア本拠地『アイアム・ガネーシャ』であった。
ガネーシャは寝る前に情報紙――日本で言えば瓦版のような――を読んでいた。
『グラン・カジノのオーナー、実は犯罪者 囚われの娘たちを救出 正義か悪か
「ふむ、相変わらず活躍しているようだな・・・結構なことだ」
象頭の神が満足げに頷くのと同時、きい、と音を立てて、ベランダに通じる扉が開いた。
顔を上げるが、開いた扉からは誰かが入ってくるような様子もない。
「風か?」
つぶやいて立ち上がり、扉を閉めようとしたとき、突如黒髪に白いメッシュの入った巨漢と金髪碧眼のエルフの少女が虚空から現れる。
無言のままガネーシャがそちらに向き直ると、虎縞の巨漢は丁寧な一礼を返してよこした。
「お初にお目にかかります、神ガネーシャ。深夜のぶしつけなる訪問、お許しください。
わたくしはヘスティア・ファミリアの・・・」
「待て」
ガネーシャが手を突き出して口上を遮った。
神威と威厳のこもった言葉に、男は口を閉じる。
「どうやら盗賊刺客のたぐいではないようだが・・・
しかし、いかなる目的があろうともこれだけは言っておかねばならぬ」
「・・・」
ガネーシャが言葉を切り、巨漢のヒューマンとエルフの少女にそれぞれ視線をやる。
「俺が! ガネーシャだっ!」
「知ってるわい!」
耐えきれず、エルフの少女が全力で突っ込んだ。
ダンジョンでドラゴンと戦うのは間違っているだろうか ~マンチキン・ミィス~
第四話「ゴスロリ・つるぺた・エルフ幼女・ドラゴンハーフ・女神という属性の塊、ただしリッチ」
「あのー、ガネーシャ様はいつもこういう?」
「まぁ心配すんな。すぐ慣れる」
妙に弛緩した空気の中で、巨漢とエルフの少女―ーイサミとハシャーナが会話を交わしている。
「そこ、俺を放って内緒話か! というかそこの少女よ、何やら知った風だが、我が眷属におまえのような者はおらん! 何者だ!」
「えーとその・・・信じて貰えるかどうかわからないんですが、ハシャーナ・ドルリアさんです、これ」
「あーその、すんません、神様・・・ハシャーナッス・・・」
「は?」
引きつった笑みを浮かべるエルフの少女。
ガネーシャは間抜けな声を上げて停止した。
どう説明したもんかとハシャーナが頭をひねるより早く、イサミが言葉を続ける。
「つまりですね、ハシャーナさんはリヴィラの街で・・・」
「みなまで言うな! リヴィラの街でその娘を引っかけて一晩しっぽり!
だがハシャーナは料金を払わずにトンズラ! その料金を立て替えてほしいと頼みに来たのであろう!
ファミリアの者に断られたので俺に直訴するしかないと思い詰めたのだな!」
「違げぇよこのタコ!」
もはや自らの神に一片の敬意も示さず、ハシャーナが食ってかかった。
が、神は腕を組んで平然と答える。
「違うと言われても、前にもあったことだぞ?」
「・・・ハシャーナさん?」
「い、いやその! 待て! あの時は事情がだな・・・!」
白い目で見下ろすイサミと、必死に否定するハシャーナ。
「だが娘よ、嘘はいかんな。奴は少女には優しいが、欲情はしない男。そなたは奴の好みからすると発育不全に過ぎる。
奴のフェイバリットはボンバーな美女と細身の美少年である!」
「へーえ」
「ち、違う! 誤解だ!」
ますます冷たい目になるイサミ、脂汗を浮かべながら両手を振るハシャーナ。
「何が違うものか! 二人で歓楽街に繰り出した時、奴は自慢げに言ったものだ! たとえノンケの少年でも、俺にかかればものの10分で・・・」
「いいからもう黙れクソ神ぃぃぃぃ!」
もはや涙目でガネーシャに飛びかかるハシャーナ。
「ぬおおおお、ガネーシャピンチ!?」
「ちょっ! ハシャーナさん、落ち着いてー!」
バーサークした彼女の指が神ののど笛に食い込む直前、イサミの"
二度目なので慣れてきたらしい。
「ぐすっ・・・ひっく・・・」
薄手の戦闘衣だけを着たエルフの少女が体を丸め、頭をクッションでおおい、ソファに顔を埋めている。
突き出した尻がぷるぷると震えていた。
「まさかマジ泣きするとは思わなかった。許せ。というか本当にハシャーナなのだな。ガネーシャびっくり」
言いながら、妙に綺麗な動きでくるりと回ってポーズを決める神。
突っ込んだら負けかなと思いつつ、一部始終を説明し終えたイサミが気になっていたことを質問する。
「それでですね・・・ハシャーナさん蘇生させちゃいましたけど、それについては大丈夫なんでしょうか?」
「問題あるまい。あれは神々同士が決めたこと、子らが自ら蘇生を行うというのであれば止める理由はない」
「ですか」
ほっと息をつくイサミ。
さすがにこれでお尋ね者扱いになったりしたら目も当てられない。
「しかし、ハシャーナさんがこうして女の子になってしまったのは? そのあたりも禁止された理由じゃないんですか?」
「うむ、他に理由があった気もするが覚えてない!」
「さようでございますか」
扱いが順調にぞんざいになっている自分を自覚しつつ、イサミがまだ尻を震えさせているハシャーナの方に向き直る。
「いい加減起きて下さいよ。ガチホモでもヤリチンでも女装Mの変態でも気にしないって言ったでしょうが」
「うう・・・そ、そりゃそうだけどよ・・・」
涙目で起き上がるハシャーナ。
ガネーシャもなだめる側に回る。
「まあまあ、俺も悪かったから許せ。それにイサミ・クラネルよ。そもそもハシャーナは素人童貞だ。
娼婦や男娼はしょっちゅう買ってるが、俺の知る限り男女問わず誰かを口説けた試しはない! このガネーシャが保証しよう!」
「・・・」
「な、なんだよ。そんな目で見るなよ・・・」
哀れむともさげすむともつかない微妙な視線に、身を縮こまらせるエルフの少女。
気づいていないのか気にしないのか、ガネーシャが更に言葉を重ねる。
「それに自慢のテクにしても、商売女に演技してもらってるのに気づかない程度の・・・」
「それ以上はやめろこの脳天底抜け神ぃぃぃ!」
ハシャーナが再び涙目になった。
ちなみに章タイトルの人(エベロンのレディ・ヴォル)はこんなの。
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