ダンジョンでドラゴンと戦うのは間違っているだろうか ~マンチキン・ミィス~   作:ケ・セラ・セラ

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22-17 魔王咆哮

 戦闘が再開する。

 だが戦力比が変わらない以上、結果も変わらない。

 フィン達が連携をもって致命傷を避ける中、魔王の体の傷はどんどん増えていく。

 

 傷が蓄積した下半身の動きが鈍くなったかと思われた瞬間、またしても魔王が宙に飛んだ。

 小人族の【勇者(ブレイバー)】はそのタイミングを見逃さない。

 

「一同、吶喊っ!」

「「「「オオッ!」」」」

「!」

 

 命令一下、冒険者たちが走り始めた。

 宙に浮く魔王を無視して、祭壇に向かって。

 

『ahirapput-oneh……』

 

 呟いた魔王の口元に浮かぶのは嘲笑か。

 インファーナルの目的はフィン達の祭壇到達を防ぐこと。

 ならば時間稼ぎを無視して祭壇に向かえば、魔王は下りてこざるを得ない。

 

 ――その程度の浅い策でどうにかなるとでも?

 魔王の嘲笑はそう言っているかのようだった。

 

『oyusednari!』

 

 魔王が急降下する。

 フィン達に続いて走るリヴェリア達を目がけて。

 攻撃呪文はどのみち通用しないが、防御と回復の呪文は中々厄介だ。

 一人二人は落とさせて貰う。

 

「【ヴィア・シルヘイム】!」

『onabotok!?』

 

 その皮算用は、突如出現した緑の障壁に止められた。

 魔王の攻撃に完璧にタイミングを合わせて出現したドーム状の緑のバリアは、最硬金属(アダマンタイト)の鎧を軽々切り裂く彼の爪を完璧に防ぎ止める。

 

『ahimi!』

 

 爪。牙。翼のかぎ爪。尾。

 全力の攻撃を叩き付けるが、その一撃たりとて障壁を揺るがすことは出来ない。

 

 【ヴィア・シルヘイム】。

 リヴェリア最強の防御結界呪文。

 あらゆる物理攻撃と魔法攻撃を遮断する絶対の護り。

 その強度はあるいはイサミの"力場の壁(ウォール・オブ・フォース)"すら上回る。

 

 そしてそれと同時に、全力疾走していたはずの前衛達がぴたりと止まり、輪を作った。

 その輪の中央にはカーリー・ファミリア首領姉妹の妹、バーチェ。

 その体を毒々しいオーラが覆い、周囲を囲んだ冒険者たちは素早く武器を振りかぶり――バーチェに一斉に叩き付ける。

 血しぶきが舞った。

 

 

 

「ひっ・・・!」

 

 結界の中のレフィーヤの顔が引きつった。

 

「落ち着け、レフィーヤ!」

「は、はい。申し訳ありません」

 

 それをたしなめるリヴェリアの顔も僅かにこわばっている。

 後ろで固まっている椿やサポーターたちも似たようなものだ。

 怒りにまかせて更に全力攻撃を叩き込んでいた魔王が、何かを感じてか振り向いた。

 

「オラァッ!」

 

 一番槍は最速の男、ベート。

 双剣による連続攻撃を、翼のカギ爪で撃ち落とす。

 

 フィン、ガレス、フィルヴィス、アルガナ、ティオネ、ティオナ、そしてバーチェ。

 次々と襲いかかる冒険者たちをあるいはさばき、あるいは表皮で弾き、そしていくらかは傷を受ける。

 

 更に数合の攻防を重ね、魔王は人間で言えば舌打ちに当たる動作をした。

 多少時間は稼いだものの、肉体が再生しきっていないまま戦闘継続するのは不利だ。もう一度仕切り直しが必要だろう。

 

 翼を広げ、羽ばたく。

 1トンを越える体重を軽々と宙に浮かせる揚力が、烈風となって冒険者たちに吹き付ける。

 そのまま空中高く飛び上がろうとして、がくん、と何かに引っ張られた。

 

 右足に鎖の付いた大戦斧が絡まっている。

 鎖の先には戦いの当初からずっと邪魔をし続けた、鬱陶しいドワーフ。

 再び舌打ちして、構わず翼を羽ばたかせる。

 いくら重いとは言え、たかが亜人一匹。

 一緒に飛び上がってしまえばいい。

 

『agmarakaw-ukoy!?』

 

 そこで愕然とした。

 いくら羽ばたいても、翼に力を入れても、それ以上高度を上げられない。

 この亜人ごと空に舞うことが出来ない。

 

 ようやっと気がつく。

 体の重さ。

 全身に走る痺れ。

 感覚の鈍化。

 これは――。

 

「バーチェ、もう一度!」

「了解だ」

 

 フィンの指令に応じて、バーチェが何かを迎えるように両手を広げる。

 その体を再び、ガレスを除く前衛達の武器が切り刻んだ。

 

『ukakinot・・・!』

 

 そこではっと気付いた。

 先ほどからこいつは自分では直接攻撃せず、他の冒険者のつけた傷口に毒をすり込んでいたはず。

 もしその毒が何かから抽出したものではなく、こいつ自身が分泌しているなら――!

 

 魔王の考えはほぼ正鵠を得ていた。

 正確に言えば毒を帯びるのはバーチェの全身を覆う魔法のオーラ。

 だが武器についた血、既に自分の一部ではないそれに毒を与える事はできる。

 結果として、彼女の血の付いた武器は伝説のヒドラの毒矢の如く、触れただけで命を奪う猛毒の武器と化したのだ。

 

 驚愕と共に、魔王が必死にもがく。

 脱出しようとする。

 だがもう遅い。

 毒の回りきった体は本来の性能を発揮せず、普段なら小指一本で振り回せる矮躯の亜人を振り切ることが出来ない。

 

 毒血のしたたる武器を手に、冒険者たちが彼に殺到する。

 最初のベートの一撃で翼を切り裂かれ、ドワーフの膂力で振り回され、魔王は地に墜ちて叩き付けられる。

 次々と突き出される刃が、動きの鈍った彼の肉体を穿っていく。

 毒血が更に体内に注ぎ込まれ、体が弱っていく。

 

『nisij! iogus!』

 

 やめろ。

 こんな事は認められない。

 俺は神と悪魔の忌み子、地獄そのものの力を授かりし魔王。

 無限の命と最強の力を持ち、いずれはグラシアなどを越え、アスモデウスに挑み、九層地獄を支配するもの。

 それがたかが人間に、たかが毒に、こんな風に殺されていいわけがない――!

 

『oyezad ―――!』

 

 ついに毒で動けなくなった魔王の胸を、狂戦士化したフィンの黄金の長槍が穿つ。

 塵と化した魔王の断末魔は、あたかも悲鳴のようだった。




 データ精査したらなんと毒に対する抵抗力を持ってなかったインファーナルくん。
 聖なる武器ぬきでどう倒そうか、フェリス助っ人に来させようかと思ってましたが、まさかの毒特効とはwww
 首をはねられても復活するけど、毒は有効なんですよねえ、D&Dの再生能力って・・・w
 本来なら毒が効いても死にはしません(動けなくはなる)が、胸に魔石があるのでそれを砕かれると死ぬわけで。

 ちなみに死んだらそれ以上再生しないのが高速治癒(ファスト・ヒーリング)、死んでも再生する(普通はそれを破る何らかの手段がある)のが再生(リジェネレーション)となっております。
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