ダンジョンでドラゴンと戦うのは間違っているだろうか ~マンチキン・ミィス~   作:ケ・セラ・セラ

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22-18 四色の巨竜たち

 敵はいずれも30mを越える巨躯の竜が四匹。

 Lv.5のリューがこちらに加わり、かつ58階層を攻略したときの対竜装備があるとは言え、イサミとベルの二人を欠いたヘスティア・ファミリアの不利は歴然。

 

 そこで指揮官であり、実質的な副団長でもあるアスフィが取った戦術は、戦争遊戯で使った【タマテバコ】と【リレハァ・ヴィフルゥ】のコンビネーションであった。

 春姫の幻影魔法【タマテバコ】で霧を発生させ、リリの音声操作魔法【リレハァ・ヴィフルゥ】で音を封じる。

 視界と声による意志疎通を封じた上で、霧を見通す"看破の宝石"とリリの音声操作で味方側はその影響を受けずに戦闘ができる。

 さすがに戦争遊戯の時のように同士討ちを誘発するのは難しいが、目と耳を封じられた相手であればやりようもある。そのはずだった。

 

『GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!』

「ふえっっ!?」

「なんだ、全然影響受けてないぞ!?」

 

 シャーナの言う通り、四匹の巨竜は霧や音の遮断を物ともせず攻撃を続けていた。

 ブレス、呪文、物理攻撃。

 いずれも霧を見透かしているとしか思えない動きで、正確にこちらに狙いを定めてきている。

 

「ぐわぁぁぁーっ!?」

「ゲド!?」

「だ、大丈夫、やられたのは分身の方ッス!」

 

 青竜の吐いた雷の吐息が一直線に走り抜ける。右半身を焼かれた"戦いの影"がほどけて消えた。

 素早く回避したアイシャもそれなりのダメージを負っている。

 

「やっぱグレートワームのブレスはサポーターの子たちにはきつい・・・あっ」

「おい、『あっ』ってなんだ『あっ』って。この状況で言われるとすげえ気になるぞ!?」

 

 独り言の途中で、フェリスがはたと何かに気付いた。

 やや剣呑な口調で問い詰めるシャーナに、ごまかし笑いを浮かべる。

 

「いやね、ドラゴンって基本的に周囲・・・ええと20mくらいの範囲に何がいるか、何があるか、見えなくても大体わかるみたいなのよね」

「ちょっと待て! それじゃこの作戦全く意味がねーじゃねーか?!」

 

 絶句するシャーナ。

 フェリスのごまかし笑いが大きくなる。

 緑竜と黒竜の攻撃を単身凌いでいたレーテーが悲鳴を上げた。

 

「最初に言ってよー! こいつらすっごい強いんだよー!?」

「しょうがないじゃん! 私だってドラゴンに会ったの今日が初めてなんだから!」

 

 いいわけに聞こえるが、実際そんなものである。

 付け加えるなら、イサミのようなチートもない上にあれやこれやと色々かじっているフェリスは、知識の幅広さはともかく深さが絶対的に足りていない。

 

「はいそこまで! フェリス、それではこの作戦では相手の行動を全く掣肘できないのですね?」

 

 言いたい事をぐっと飲み込んで、アスフィが現状の打開を図る。

 問われたフェリスは表情を真剣な物に変え、数秒間考え込んだ。

 

「あいつらの感知能力は闇や霧の中でも全く影響を受けないってほどじゃなくて、この辺にこれくらいの大きさのものがいて動いている、くらいの大雑把な能力だったはず。

 白兵戦をやるならそれなりに意味はあるけど、範囲攻撃・・・ブレスや呪文を喰らったら余り意味がないわね」

「確かにそんな感じはします! 見えているにしては攻撃が荒い!」

 

 こちらは白竜相手に何とかしのいでいるリューが、振り向かないままに叫ぶ。

 冷気を漂わせた巨竜の爪や牙は確かに彼女に向けられているのだが、二回に一回ほどは間合いを計り損ねて黒曜石の大地を削ったり、空を切ったりしている。

 リューの動きが速いのと、巨大な怪物でたまにある小さい敵と戦うのが苦手なタイプかと思ったが、そうではないようだった。

 

「・・・」

 

 僅かな時間を置いてアスフィは決断した。

 

「霧は維持します! 各員は当初の方針通り、まずは青竜を倒して下さい!」

「「「「了解!」」」」

 

 アスフィの号令に、各員が返事を返す。

 

「やっぱりブレスですか、アスフィ様?」

「ええ。少なくとも情報を相手に与えないことはできますから」

 

 リリの問いかけにアスフィが短く頷いた。

 さほど長い付き合いでもないが、戦争遊戯以来アスフィはこの小人族の術と判断力、視野の意外な広さに一目を置いている。

 その彼女たちの会話の内容を詳しく解説するなら、以下のようになる。

 

 怪物の王。

 そう称されるだけあって、ドラゴンはあらゆる意味で「強い」。

 全モンスター中最強の物理攻撃力に圧倒的防御力とタフネス、種々の特殊能力、耐性、呪文まで自在に操る。

 

 中でも物理戦闘力と並んで恐れられ、竜の代名詞ともなっているのがその吐息――ドラゴンブレスだ。

 その威力は先に見たとおり。

 封印外世界の冒険者たちに比べて圧倒的なステイタスを誇るオラリオの冒険者にとっても、グレートワーム・ドラゴンのそれとなれば脅威の一言。

 一級二級の上位冒険者たちにとってはまだ脅威ですむが、Lv.2や1のサポーター達がまともに食らえば即死は間違いない。

 

 しかも竜によって吐き出すブレスの属性は違う。

 緑竜と黒竜とは酸(腐食性ガス)、青竜は電撃、白竜は冷気。

 D&Dのエネルギー防御呪文は属性ごとに特化しており、全ての属性を無効化ないし軽減するような便利な呪文はない。あったとしても伝説級呪文(エピックスペル)だろう。

 D&D世界全体の基準で見ても、リヴェリアの防御呪文は破格なのだ。

 

 現状、ヘスティア・ファミリアのバフデバフをほぼ一手に引き受けるフェリスは、自身の魔力とイサミから預かったマジックアイテムを大車輪に活用して対応していた。

 まず、切り札の願いの指輪(リング・オブ・スリーウィッシィズ)を(泣く泣く)使って全員に酸への完全耐性を付与。

 続いて準万能呪文"リミテッド・ウィッシュ"の巻物を二本読み上げて、自分とリューの周囲にそれぞれ対冷気結界(アンチ・コールド・スフィア)を張る。

 これで二人の周囲にいる限り、サポーター達も緑竜・黒竜・白竜のブレスからは完全に守られることになる。

 加えてこちらは自前の電撃への耐性呪文(マス・レジストエナジー・エレクトリック)で青竜のブレスのダメージも幾分かは軽減。

 

 後は青竜を倒してしまえば、少なくともブレスは気にせずに戦闘を進められる。

 加えて霧の中では物理攻撃も命中率が半減する。そうすれば自然、相手の攻撃はブレスや呪文に傾くだろう。

 

 ここで霧によって視覚を遮ったことが再び効いてくる。

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 加えて直接視認できないがゆえに、魔力視覚でどのようなバフが彼女たちに掛かっているかも確認できない。

 竜も愚かではないから時間が経てばおかしいと気付くだろうが、それまでの間は受けるダメージを大きく抑えられるはずであった。

 

(・・・とはいえ、イサミ君や【三月兎(マーチ・ラビット)】への援護は難しい所ですか)

 

 最強戦力であるレーテーは黒竜と緑竜を押さえ込むのに欠かせないし、それに次ぐシャーナとリューのどちらかには白竜を抑えていて貰わなくてはならない。

 リューがイサミから借りた装備で防御力と機動力が圧倒的に強化されているとなれば、青竜に当てるのは対竜大剣(ドラゴンスレイヤー)を持つシャーナ一択だ。

 もう一人のLv.5であるフェリスはサポートに手一杯だし、Lv.4であるアスフィとアイシャが支援するしかない。ちらり、と邪竜神を相手に単身飛び回るイサミに目をやる。

 

(まあ、やるしかありません。最悪でも負けなければ仕事は果たせます)

 

 イサミを助けたい気持ち、彼我の戦力差の判断、イサミならやってくれるという信頼が彼女の中でせめぎ合うが、それらをぐっと飲み込んで、彼女は命令を下す。

 それが出来るからこそ、彼女は優秀な指揮官なのだ。

 

「ちまちまでも青竜を削ります! 手すきの者は全力でシャーナを援護! 【男殺し】と【疾風】はその間何とか凌いで下さい!」

「「「「了解!」」」」

 

 再び全員が声を揃えて返事を返し、リリたちサポーターが全力で魔剣を振り始めた。

 ほとんどは呪文抵抗で弾かれるものの、青竜の注意を削ぐ役には立つ。

 

「わかったけど、【男殺し】はいい加減やめて欲しいのー!」

 

 巨竜二匹と壮絶な殴り合いを演じつつも、どこかのんきな悲鳴をレーテーが上げる。

 冷静で有能な指揮官らしく、アスフィは聞こえないふりをした。

 

 




 竜の知覚能力(非視覚感知)ってつまりあれです、ミノフスキーレーダー(ぉ
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