ダンジョンでドラゴンと戦うのは間違っているだろうか ~マンチキン・ミィス~   作:ケ・セラ・セラ

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22-19 万色の魔竜

「GOAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!」

「GYAAAAAAAAAAAAAAA!」

「WOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!」

「VOOOOOOOOOOOOM!」

「QEEEEEEEEEEEEEEE!」

 

 赤青緑黒白。

 五色の竜の口から一斉にエネルギーの吐息が放たれる。

 円錐形に拡散する炎、一直線に走る雷撃と強酸液、拡散する腐食ガスと冷気。

 九層地獄に名高きティアマトの五連ブレス。

 魔王や邪神でもない者がまともに食らえば魂も残らない。

 

「うおっ、と!」

 

 だがその致死のブレスを、イサミはひらりひらりとかわしてみせる。

 無数の魔法と魔道具による強化がもたらす、超絶的な体術と見切り。

 熱や冷気を肌に感じつつも、それらはイサミの髪の毛一本焦がすことはない。

 

「《最強化》《高速化》《分枝化》《二重化》《エネルギー上乗せ・炎・雷・冷気・酸》"《極天の光線(ポーラー・レイ)》"!」

「《最強化》《高速化》《分枝化》《二重化》《エネルギー上乗せ・炎・雷・冷気・酸》"《極天の光線(ポーラー・レイ)》"!」

「《最強化》《高速化》《分枝化》《二重化》《エネルギー上乗せ・炎・雷・冷気・酸》"《極天の光線(ポーラー・レイ)》"!」

「《最強化》《高速化》《分枝化》《二重化》《エネルギー上乗せ・炎・雷・冷気・酸》"《極天の光線(ポーラー・レイ)》"!」

「「「「「GYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!?」」」」」

 

 《分枝化》《二重化》されて四本、《高速化》を合わせて合計十六本の虹色の光線が五色の龍神の体を貫く。

 五つの頭が揃って苦悶の悲鳴を上げると同時に、その目が語っていた。

 何故に、と。

 

 

 

 ティアマトは俗に五色の邪竜と呼ばれる赤竜、青竜、緑竜、黒竜、白竜の力を併せ持つ原初の竜王だ。当然それらの持つ耐性も全て併せ持っている。

 火も、酸も、冷気も、電撃もティアマトには効かない。

 効かないはずなのだ。

 

 D&D世界においてエネルギー攻撃と呼ばれるのは通常上の四つに加えて音波。

 これは純粋な物理攻撃であるために、大抵の存在はこれへの耐性を持っていない。

 強大な魔術師であり司祭でもあるティアマトは、当然音波属性に対する完全な防御を自らに施していた。

 

 だというのに。

 イサミは音波攻撃など最初からしてこなかった。

 その代わりに四属性を混ぜた"《極天の光線(ポーラー・レイ)》"呪文をひっきりなしに放ち、そしてそれが何故か龍神の不可侵の肉体を傷つけている。

 

 不可解だった。

 ティアマトの抱いた未知への恐怖、だがそれは怒りに変わる。

 分体とは言え不滅の龍神たる我に、たかが常命の人の子が恐れを与えるなどあってはならない。

 恐れるべきは我。畏れられるべきも我。

 五色の魔竜神を傷つけた報いは、その魂を五つに引き裂いて喰らい尽くすことで思い知らせてやろう――!

 

 

 

 ティアマトの五つの頭が再び咆哮を上げた。

 今度はそれぞれの頭が矢継ぎ早に別の呪文を発動し始める。

 発動している呪文はいずれも自己強化。恐らくはこちらを魔術師と見て、肉弾戦に切り替えるつもりだろう。

 次の呪文の詠唱を始めながらイサミはニヤリと笑った。

 

(そりゃあ知るまいさ、お前は・・・いや世界の内にある限り誰も知ることはできない)

 

 炎で傷つけられない肉体を焼く炎、冷気を帯びた肉体を凍て付かせる冷気。

 それらを可能としたのが、イサミがウィッシュで呼び出した能力、【精霊の偉力(エレメンタル・パワー)】だった。

 

 これはD&Dの能力ではない。

 ルールブックに載っている能力でもない。

 D&D三版の後継として設計されたゲーム、「パスファインダー」。

 その試作版にのみ存在した、20レベルの力術専門魔術師のみが習得できる能力。

 全てのエネルギー抵抗を無効化出来るという、破格の、そして破格すぎて製品版では抹消された能力だ。

 だがそれでも魔術師の能力には違いない。

 ごく僅かな時間のみウィッシュで呼び出す事は不可能ではなかった。

 

 ウィッシュ呪文をもってしても数秒しか維持できないそれを連打し、持続時間の間に高速化された"《極天の光線(ポーラー・レイ)》"呪文を4回放つ。

 伝説級特技《呪文多重化(マルチスペル)》が可能にする連射と、呪文修正圧縮が可能にする桁外れの高ダメージ。

 だがそれでもなお竜神の生命は容易く削りきれない。

 イサミの無限の魔力が尽きるのが先か、魔石の力を得た竜神の無限の生命力が尽きるのが先か。

 これはそう言う泥仕合だった。

 

(さんざんチートを貰ってるのに、俺はこんなんばっかりだな・・・まあ、そのほうがらしいか)

 

 いつぞやの、ベートとの泥沼の殴り合いを思い出してイサミが苦笑する。

 だがそれでも負ける気はなかった。

 世界を、オラリオを、そして弟を救うために。

 

 

 

 黒曜石の巨大な祭壇を目指し、矢のような速度でベルは飛ぶ。

 ピラミッドの手前でちらりと下に目をやるが、魔将が襲いかかってくる様子はない。

 そのまま飛び続けたベルは、一瞬の後に祭壇ピラミッドの頂上、先端を切り取られた黒く四角い平面の端に着地した。

 

 それを迎えるのは魔姫グラシア。

 その後ろ、ピラミッドの中心には時折黒い稲妻を放つ黒曜石の祭壇。その上に横たわるのは金の【剣姫】。

 【剣姫】の胸元には黒い多面水晶が浮かび、時折やはり黒い稲妻を放っている。

 

「ようこそ坊や。この世界が滅びるか、私たちが滅びるか。最後の・・・」

「お願いです、グラシアさん! アイズさんを放して下さい!

 あなたとは戦いたくない! あなたが悪い人だとは、やっぱり思えないんです!」

「・・・」

 

 自分の言葉を遮られた怒りなどどこへやら、グラシアはぽかんと口を開けた。

 九層地獄での彼女を知るものがいれば、恐らくは目を丸くしただろう。

 

「あは・・・あはははは!」

「グラシアさん!」

 

 思わず、と言った風に笑い出すグラシアに、なおもベルが言いつのった。

 それでもなお笑い続けるグラシアをベルが睨み付ける。

 しばらくそのままにらみ合い?が続き、ようやく笑いを収めたグラシアが目じりの涙をぬぐいながらベルにほほえみかけた。

 

「あはは、ああ、あなたって本当に最高だわ。

 こんなに私を楽しませてくれる人間なんて初めてよ」

「・・・どいてはくれないんですね」

 

 グラシアを睨み付けつつも、悲しそうにベルはこうべを振る。

 

「ええ。それともあなた、私のものになる? そうしたら考えてあげてもいいわよ」

「・・・・・・・・・・・・・・」

 

 本気かそれともからかいか、惑わすようなグラシアの言葉にベルがうつむく。

 僅かな時間の後ベルの視線が上がり、グラシアを真っ直ぐに見据えた。

 

「――少し前に、ある人に教わりました」

「?」

「『男なら、女は力づくでものにしろ』と。だから――アイズさんは、力づくで貰っていきます」

「!!」

 

 ぞくぞくっ、と。グラシアの背筋にしびれが走った。

 今までの真っ直ぐで純粋な、だがそれだけの美しさではない。

 

 雄の目。

 男の目。

 姫君のために戦う騎士の目。

 女を求めて戦う英雄(けもの)のまなざし。

 それがグラシアの女の部分をとろかす。

 

「・・・・・・・・・」

 

 無言のまま、ベルが構えた。

 右逆手に《神のナイフ》、同じく左逆手には兄から借りた《太陽剣(サンブレード)》。

 黄金に輝くこの長剣は、バスタードソードの形をしていながらショートソード並みの軽さと扱いやすさを持ち、邪悪な者に対する特攻効果を持つ。

 軽戦士であるベルに、そしてこの敵に対する最良の武器。

 

 グラシアの唇がつうっ、とつり上がる。

 微笑ましいものに対する好意の笑みから、純粋な歓喜の笑みへと。

 

「いいわ、来なさい、ベル・クラネル! 今のあなたは美しい!」

 

 その右手から鉄トゲを埋め込んだ多條鞭が奔り、階段ピラミッドの石床を打ってその表面を削り、黒曜石の破片が飛び散る。

 ベルの背中の【恩恵】が炎のように燃えさかり、光を放つ。

 戦いが始まった。

 




【悲報】主人公のラストバトル、ダイジェスト化【残当】

 しゃあないんや、エピック呪文使い切った上での勝ち筋がこれしかないんや!
 ひたすら火力呪文ブッパしてHP削り合うだけの戦闘を面白く書く技量がワイにはないんやぁ!
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