ダンジョンでドラゴンと戦うのは間違っているだろうか ~マンチキン・ミィス~ 作:ケ・セラ・セラ
23-01 「変身物語」
事の始めは、買い出しに出たリリとヒリュテ姉妹がばったり出会ったことだった。
「あ、
「これはどうも。あれ以来ですね」
「そうね。そっちは変わりなかった? まあ、いきなりオラリオNo.3派閥に躍り出たわけだし、色々はあるか」
「そうですね。おかげさまで嬉しい悲鳴と言ったところです」
敵対派閥(主にロキがヘスティアを敵視しているだけだが)ではあるが、共に異世界に飛ばされたり、世界の危機を救ったりした間柄。
ヘスティア・ファミリア(というかベル)に敵意を燃やす約二名がいなかったこともあり、にこやかに話は弾んだ。
そしてティオネもリリも年頃の乙女同士、話は自然と
「ダンジョンの底でやり合った悪魔が変な幻見せてきてね。その時団長とは気持ちが通じ合ったはずなんだけど、その後はやっぱりいつもの団長で・・・まだ何かが足りないのかしら・・・」
「そうですね・・・ベル様も私の事はまったく眼中にないようで、完全に
「私は
私が
「わたくしもせめてアマゾネスだったら・・・」
ティオネとリリ、二人の恋する乙女が溜息をつく。
ティオナがいつもの如く脳天気に笑った。
「あはは、二人の種族が逆だったら良かったのにねー・・・え、なに、
「イサミ様っ! 一生のお願いです! リリを人間にして下さいましっ!」
「お願いします! 私は
「ほわっ!?」
ヘスティア・ファミリア旧本拠地である廃教会の地下。
新本拠地に引っ越したことによって空き家となったここは、現在避難所兼非常倉庫兼イサミの作業スペースとなっていた。
傍から見ても実際にもマッドサイエンティストの秘密研究所だがイサミは気にしていない(時々使っているアスフィはちょっと気にしている)。
ともあれ、いきなり作業室に入って来るなりファーイースト・ドゲザを決めたリリとティオネにイサミが吹き出した。
その後ろではティオナがあははー、と申し訳なさそうに笑っている。
「取りあえず最初から順序立てて話せ」
居間のソファに闖入者たちを座らせ、
「実はかくかくしかじかで、イサミ様が他人を変身させる魔法を使えるのを思い出しまして・・・」
「それかあ」
呆れと納得が半々くらいの顔で天井を見上げるイサミ。
「しかしこいつらとは言え、一応別派閥の人間を無断で案内するなよ」
「申し訳ありません。ですが放ってはおけませんで・・・」
「ごめんなさい・・・」
「まあ気持ちはわからんでもないが」
心底申し訳なさそうなリリとティオネ。
勢いでここまで来てしまったものの、反省はしているらしい。
なおティオナは我関せずとばかりにクッキーと紅茶を堪能していた。
「お前も少しは済まなそうにしろ」
「あいたっ」
ティオナの脳天に軽くチョップを落としてから少し考え込む。
リリとティオネにとっては息詰まる数瞬が過ぎ、イサミが溜息をついた。
「まあいいか。
「それでは!」
「ああ、変えてやる。ただ、いくつか条件があるぞ」
「私の操以外なら何でも差しあげます!」
「いらんわ」
顔をしかめるイサミだが、すぐにまじめな顔に戻って話を続ける。
「まず一つは手間賃。まあ
D&Dで魔法をかけて貰うときの基本料金が術者のレベルx呪文レベルx10gpである。
使うつもりの呪文"
オラリオの貨幣に直すと120万ヴァリスであるが、濫用されても困るのとほぼ独占市場なのでプレミアをつけてこの値段だ。
それにLv.6のティオネにとってはこれでも大した額ではない。
「わかりました!」
「す、少しお待ち願えますでしょうか・・・」
「リリはつけといてやる。流石にぱっと用意できる金額じゃあるまい」
盗賊めいた真似をしていたときの貯金は、ファミリアに入ったときに全部派閥に収めてある。その後も消耗品を自腹で補充していたりと、今のリリにはほとんど蓄えがない。
「
「ティオネ様、それは・・・」
「いいの、払わせて。あなたがいなければそんな手段があることすらわからなかったんだから。私の感謝の気持ちよ」
「ティオネ様・・・!」
手を取り合って何やら小芝居をやってる二人を放置して話を続ける。
「後は施術したのが俺だと誰にも言わないこと。
それと、今までの装備は使えなくなるし、体のバランスも崩れて慣らすのに随分時間が必要になる。特に前衛のティオネにとって
その覚悟があるか?」
「あります!」
「勿論です!」
異口同音に叫ぶ二人。
意志の固さを見てとって、イサミがふたたび溜息をついた。
「わかった。それじゃ取りあえずそこの部屋で服を脱いでこれを羽織れ」
どこかの400年生きて転生の法で甦った大魔法使いよろしく、どこからか白いマントを取りだして二人に放り投げる。
「え・・・それはどういう?」
「人間からエルフならともかく、小人族が人間に、アマゾネスが小人族になったら服が破れるか脱げるかだろーが」
「あ、そりゃそうか」
ティオナがうんうんと頷いた。
白いマント・・・というか貫頭衣を着て二人が部屋から出てきた。
だぼだぼだが、日本の病院で検査の時に着るようなそれが近い。
「で、これから二人を変えるわけだが・・・大体こんな感じか?」
イサミが呪文を唱えると、人間と小人族の女性の幻影が宙に浮かび上がる。
身長以外はほぼ今のリリとティオネそのままだ。
「おー」
「はい、これで」
「・・・」
「リリ?」
ティオネは即答したが、リリは何やらじっと考え込んでいる。
「イサミ様、外見はある程度いじれるんですよね?」
「ああ。なんなら男にだってなれるぞ」
「それは遠慮させて下さい。そうですね、まず外見はベル様よりはっきり年上とわかって、しかも年上過ぎない感じ・・・16、出来れば17、8がベストでしょうか。
髪は金髪で癖のないストレートロング、体型は細身が基本ですがある程度出る所が出ているほうがベル様の目を引きやすいので、下品にならない程度にグラマーにお願いします。
ベル様は清楚系がお好みのようですが、それはそれとして色気も有効ですので、少し色気がにじみ出る感じで・・・」
微に入り細に入り、リリの注文が続く。
(良く見てるなあ)
呆れ半分感心半分でイサミがそれをメモしていた。
「・・・で。それで全部か?」
「はい、これで・・・いえ、どうしましょう。ベル様は担当受付にエルフという指定をするくらいのエルフフェチのようですし、いっそ人間ではなくエルフに・・・
そうです! これはいいアイデアですね! エルフは元々スレンダーな種族ですし、そこにグラマラスという付加価値が加われば無敵・・・」
「言っておくが俺の魔法は種族ごと変えるからな。エルフになったらベルが寿命で死んだ後もずっと生き続けることになるぞ」
「!?」
喜々として勝利の未来を思い描いていたリリが、"
「で、どうするね」
どうでもよさそうに訊ねるイサミ。長い時間が過ぎる。
「・・・・・・・・・・・人間でっ! お願いしますっ・・・!」
「リリ・・・!」
血を吐くような言葉を発するリリ。
ティオネが涙ぐんでその背中を抱きしめる。
「・・・」
「・・・」
イサミとティオナが白けた表情でそれを見ていた。
その日の午後。
「団長! 結婚して下さい!」
「ファーッ!?」
「どうです? ベ・ル・さ・ま?」
「りりりりりりりりりりりり、リリーっ!?」
オラリオの二箇所で驚愕の声が同時に上がったが、その後どうなったかは神ですら知らない。
なお。
「何で俺の仕業だって即座にばれるんだ!?」
「あれだけ滅茶苦茶やっていれば、それは第一容疑者はイサミ君になりますよ・・・」
団長にして恋人のずれた認識に、実質的な副団長であるアスフィが大きく溜息をつくのはそう遠くない将来のことである。
ちなみに《エレメンタル招来》とは召喚(サモン)呪文を準備しておくと、レベルに応じて1m~3mの地水火風のエレメンタルを2、3分ほど召喚出来る《特技》。
ファイヤーなら火を起こす手間が省けるし、アースならテント設置とか穴掘りが楽だし、ウォーターなら水くみが不要になるんじゃないかなとw
ヘスティア・ファミリアが都市三番手派閥扱いなのはイサミ君がLv.7扱いだからです。
【恩恵】のシステム的に、数より質のほうが重視されるでしょう。
現在
一位:ロキ・ファミリア(Lv.7四人、Lv.6が三人、Lv.5一人) ※三首領とアイズ、ラウルがランクアップ
二位:フレイヤ・ファミリア(Lv.7一人、Lv.6三人、Lv.5四人)
三位:ヘスティア・ファミリア(Lv.7扱い一人、Lv.6二人、Lv.5二人) ※レーテー、フェリスがLv.6、シャーナとベルがLv.5
四位:ガネーシャ・ファミリア(Lv.6一人、Lv.5十一人) ※シャクティとモブLv.4がランクアップ
という感じですね。